選挙管理内閣

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選挙管理内閣(せんきょかんりないかく)とは、内閣制度をとる国家における暫定内閣の一種で、国政選挙が間近い政治日程状況の際に新たに組閣される内閣の名称[1]。特定の内閣を指す正式な呼称ではない。

政治制度の違いにより、主に以下のような状況で組閣される。

  • 政情が不安な国において、大統領君主が、国政選挙の安定的な実施に向けて行政府の運営に当たらせるために、政治的に中立な人物を任命する例。
  • 独裁政権民政移管する際に設置される例。
  • 議院内閣制かつ政党内閣制を採用している国が、国政選挙に際し、政治的に中立な人物を首相(暫定首相)に任命し、選挙期間中に代理で行政を執行する内閣を特別に組閣させる制度を採用している例。
    多党制の少数与党内閣のような政治状況では、議会が内閣を不信任とし、政権を交代させた場合にも、次に別の少数与党内閣ができるだけで、政治の安定が期待できず、選挙による議会勢力の一変によるほか打開の方法がない場合がある。しかし少数与党では議会を解散することに正当性を見いだせないという指摘が起き得るため、既存政党と無関係な人物を暫定首相とし、選挙を管理させる方法として考え出された[1]
  • 議院内閣制・政党内閣制を採用し、かつ与党による首相の任免が比較的自由である慣例をとっている国において、目前に議会任期満了を控えた時期に組閣される内閣を、単純にそう呼称する例。

前2者は暫定政権の性格を持つものであり、通常「選挙管理内閣」と呼称されるのは後2者である。4つ目の例では、組閣直後の選挙で与党が敗北すれば与党党首たる首相がその地位を失い、短命内閣となることもありうる。逆に勝利すれば長期政権が見込まれることになる。

海外の例[編集]

日本の例[編集]

大日本帝国憲法(旧憲法)下の日本で新内閣が組閣された直後(おおむね半年以内)に国政選挙が実施された例として、以下がある。ただしいずれも、当時は選挙管理内閣とは呼称されなかった(大命降下の慣例上、選挙結果と内閣の消長には直接の関係がなかったためである)。

しかしながら、上記のうち、清浦奎吾への大命降下は、事実上の選挙管理内閣としての機能を期待されたものであり、清浦内閣と対立する護憲三派が総選挙で勝利したのを受け、清浦は退陣している[6]

日本国憲法施行以降は、衆議院および参議院の任期満了が近づいている時期、あるいは与党が衆議院議員総選挙を実施する思惑を持った際に、新たに指名された内閣総理大臣(首相)によって組閣された内閣が「選挙管理内閣」と報道または評論される例が一般的である。このような内閣のもとでの選挙で与党が勝利した際は、ひきつづき同じ首相が指名されて長期政権が見込まれることから、対義語として「本格政権」と呼称される。

以下、国政選挙を間近(おおむね半年以内)に控えた日程で、新たな首相によって組閣された内閣を挙げる。

衆議院議員総選挙の実施を期待されて組閣し、組閣しておおむね半年以内に衆議院解散をして選挙を実行し勝利した例[7]
参議院議員通常選挙直前に組閣し、勝利した例
参議院議員通常選挙直前に組閣し、敗北して内閣総辞職した例
参議院議員通常選挙直前に組閣し、敗北したが内閣総辞職しなかった例

脚注[編集]

  1. ^ a b 田中善一郎選挙管理内閣イミダス時事用語事典
  2. ^ IDEスクエア 世界を見る眼 バングラデシュ:9次総選挙に向けて選挙管理内閣成立 日本貿易振興機構アジア経済研究所
  3. ^ バングラデシュで議会選挙 与党強行、野党と対立 日本経済新聞、2014年1月5日
  4. ^ ギリシャ暫定首相が就任宣誓、6月17日に再選挙 AFP、2012年5月17日
  5. ^ ギリシャ暫定首相にタヌー最高裁長官、選挙管理内閣発足へ ロイター、2015年8月28日
  6. ^ 政党から国務大臣を起用しなかったことから「超然内閣」と評され、衆議院の反発を買い、第二次護憲運動を誘発することとなった。
  7. ^ ただし第1次森内閣・第1次岸田内閣の場合は衆議院議員の任期満了直前の組閣だった。

関連項目[編集]