神秘学
神秘学(しんぴがく)は、オカルティズムまたはオキュルティスム(仏: occultisme、英: occultism、独: Okkultismus)の日本語訳の一つである。オカルト主義、隠秘学(おんひがく、いんぴがく)、玄秘学[1]とも。Geheimwissenschaft の日本語訳でもある[2]。
概説[編集]
オカルティズムは、本来は占星術、錬金術、魔術などの実践を指し[3]、これらを occult sciences (オカルト学)と総称することもある。一般的には、オカルティズムの語は近代の西洋神秘思想、秘教的メイソンリーなどのある種の秘密結社、魔術結社などの教義、世界観、知識体系やその実践などに適用される。事実上、しばしばエソテリシズム(秘教)と同じ意味に用いられる[3]。オカルティズムを諸実践・諸技法に限定し、その背景にある理論的信念体系をエソテリシズムと呼んで区別したり、エソテリシズムの下位概念とする向きもあるが、一般的には両者の意味・用法は錯綜しており、区別は曖昧である[3]。
オカルティズムと呼びうるものは古代より行われており、ルネサンス期になるとオカルト哲学・オカルト諸学という言葉が使われるようになった。フランスのエゾテリスム史家アントワーヌ・フェーブルの推定によれば、オキュルティスムという言葉自体は19世紀の魔術思想家アルフォンス・ルイ・コンスタンが最初に用いたものであり、その英語形であるオカルティズムは神智学者のA・P・シネットによって1880年代に英語圏に導入されたという[3]。オカルティズムの近代的形態は、産業革命と自然科学の進展の時代にあって、心霊主義や幻想文学とともに、近代西欧の合理主義や実証主義の風潮に対するオルタナティブな思潮として登場したとも評される。とはいえ、基本的にはそれ以前のさまざまなオカルティズムの延長線上に多発した諸潮流であって、一つのまとまりのある思想運動であったわけではない[4]。
19世紀には、現代ではオカルティズムの範疇とされる「催眠術」や「動物磁気」の研究は、個としての意識の限界を超える何かを求める、科学として、医学者や物理学者によって実践されてきた。歴史的にみれば科学とオカルトの境界線というのは明瞭なものではない[5]。
オカルティズムのオカルトとはラテン語の occulo [6](隠す)の派生語 occultus (隠れたる)に由来する「隠されたもの」を意味する言葉である。これらのように「隠されて」きたとされる、非西洋の諸伝承にもしばしば転用される。
宗教と深いつながりがあり、哲学や芸術とも密接に関わってきた。「学」とついているが、一般に言われる学問とはその真理に至る認識方法が根本的に異なる。この点については高橋巖が神秘学の側から『神秘学講義』(角川選書)の中で詳細に論じている。
合理的な理性によって万物を理解しようとする近代の自然科学とは相反するが、近代の神秘学もまた、近代の産物なるがゆえに自然科学の成果を取り入れることがよくある。
脚註[編集]
参考文献[編集]
- 『エリアーデ オカルト事典』(ミルチャ・エリアーデ主編、ローレンス・E・サリヴァン編、鶴岡賀雄,島田裕巳,奥山倫明訳、法蔵館) 2002年
関連書籍[編集]
- 『現代オカルトの根源 - 霊性進化論の光と闇』(大田俊寛、筑摩書房、ちくま新書) 2013年 ISBN 978-4-480-06725-8
- 『シークレット・ドクトリン 宇宙発生論』上(H.P.ブラヴァツキー、竜王文庫)
- 『世界の終末 現代世界の危機』(ルネ・ゲノン、田中義廣訳、平河出版社) 1986年 ISBN 4892031127
- 『H・P・ブラヴァツキー夫人 - 近代オカルティズムの母』(ハワード・マーフェット、田中恵美子訳) ISBN 4897413087
- 『20世紀の神秘思想家たち』(アン・バンクロフト、吉福伸逸訳、平河出版社) ISBN 4892030732