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「静岡県立中央図書館」の版間の差分

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{{図書館
{{図書館
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'''静岡県立中央図書館'''(しずおかけんりつちゅうおうとしょかん)は、[[静岡県]][[静岡市]][[駿河区]]にある静岡県立の[[図書館]]。
'''静岡県立中央図書館'''(しずおかけんりつちゅうおうとしょかん)は、[[静岡県]][[静岡市]][[駿河区]]にある[[公共図書館]]。静岡県[[図書館]]に基づき設置している


「調べる・考える・解決する」をスローガンに{{sfn|土屋|2007}}、[[レファレンスサービス|レファレンス]]を軸とした[[静岡県]]内128館の図書館のネットワークづくり、資料の永年保存、地域資料の情報収集などを行い、県内図書館の中核として市町立図書館を支援している{{sfn|清水|2014|p=136}}。[[静岡県立美術館]]に隣接し、近隣に[[静岡県立大学]]がある。
== 概要 ==
[[1925年]](大正14年)に'''静岡県立葵文庫'''として開館した。現在の施設は[[1970年]](昭和45年)4月から使用開始し、図書館名も現在のものに変わった。一般図書のほか、静岡県や県内[[市町村]]の資料が充実している。また、[[明治維新]]後に[[徳川慶喜]]ら[[徳川氏]]が静岡に移り住んだことから、[[江戸幕府]]由来の書籍が「葵文庫」として所蔵されている。


== 歴史 ==
; 施設概要
=== 前史(明治期) ===
:* 蔵書数 586,200冊(2005年度時点)
静岡県における近代的図書館の計画は、[[1886年]]([[明治]]19年)の第3代静岡県[[県令]]・[[関口隆吉]]による自己の蔵書を中心にした公開図書館「久能文庫」であったが、関口の急逝により実現しなかった{{sfn|図書館報|2016|p=21}}。
:* 延床面積 8,696[[平方メートル|m<sup>2</sup>]]
:* 開館時間 9:00 - 17:00(土日月火) 9:00 - 19:00(水木金)


[[1907年]]([[明治]]40年)、柴田普門、松岡友吉、三浦元利の尽力で、最初の公開通俗図書館・'''私立丁未図書館'''が瑞光寺内に開設されたが、[[1910年]]([[明治]]43年)に静岡市教育会が通俗図書館を開設するにともない、蔵書を寄贈して閉館となった{{sfn|図書館報|2016|p=21}}。さらに、同年9月、静岡市城内に設立された静岡県教育会附設図書館に合併されたが、同館は[[1924年]]([[大正]]13年)に静岡県立葵文庫設立により閉館し、蔵書はそのまま葵文庫に引き継がれた{{sfn|図書館報|2016|p=21}}。
== サービス ==
県立中央図書館の資料は県内の公立図書館に請求することで借りることができる。また、県立中央図書館で借りた資料は県内の公立図書館で返却することができる([[静岡市立図書館]]は除く。ただし、例外的に静岡市立蒲原図書館には返却できる。)。


=== 県立葵文庫(1925-1970) ===
葵文庫に所蔵の書籍の一部はホームページのデジタルライブラリーで閲覧可能。
[[File:Shizuoka Prefectural Library Aoi Bunko ac (1).jpg|thumb|right|開館時に館内に掲げられたという、徳川家第16代当主徳川家達書による扁額(レプリカ)<ref name="entrance">{{Cite web|url=http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/tour/2F/information_hall.html|title=インフォメーションホール |work=静岡県立中央図書館ウェブサイト |publisher=静岡県立中央図書館|accessdate=2016-12-16}}</ref>]]
;大正期
徳川家の記念事業として、[[静岡県知事]]・[[関屋貞三郎]]の相談を受けた[[渋沢栄一]]が斡旋を行って集めた寄付により、県立図書館の設立提案が県会に議決される{{sfn|図書館報|2016|p=21}}{{sfn|図書館報|2016|p=61}}。設立費17万円で、[[1923年]]([[大正]]12年)12月起工、[[1924年]]([[大正]]13年)10月竣工し、[[1925年]](大正14年)4月1日、'''静岡県立葵文庫'''として開館した{{sfn|図書館報|2016|p=21}}。初代館長は貞松修蔵、開館時の蔵書は約22,000冊、職員数は16名であった{{sfn|図書館報|2016|p=61}}。春夏季は午前8時から午後9時、秋冬季は午前9時から午後9時と労働者の夜間の来館に配慮した開館時間を設定し、使用料3円を納付すると交付される「図書携出特許証」により図書貸出を行った{{sfn|青木|2012}}。

;昭和初期
葵文庫は、「館内閲覧」「貸出」「巡回文庫」「講座」を事業の4本柱として活動を開始し、「公衆に図書を閲覧させること」を使命としていた{{sfn|図書館報|2016|p=22}}。[[1930年]]([[昭和]]5年)には、[[昭和天皇]]が葵文庫に行幸したが、これは、地方の公私立の図書館で初めてのことであった{{sfn|図書館報|2016|p=22}}。[[1935年]]([[昭和]]8年)の[[図書館令]]改正により、葵文庫が[[静岡県]]の中央図書館に指定される{{sfn|図書館報|2016|p=61}}。これにより県内の図書館を指導する権限が付与され、運営や蔵書整理、講習会の開催などで町村図書館の指導育成を行った{{sfn|図書館報|2016|p=22}}。

;戦時下
[[1937年]]([[昭和]]12年)[[日中戦争]]の勃発以来、図書と図書館の機能が国論の統一と国策の徹底に利用されることになった{{sfn|図書館報|2016|p=22}}。[[1941年]]([[昭和]]16年)[[太平洋戦争]]に拡大すると、戦時体制が一層強化され、国民思想指導に基づく読書指導が図書館最大の任務となり、葵文庫においても戦時読書指導者協議会が行われる{{sfn|図書館報|2016|p=22}}。展覧会や講演も、国体、時局、軍事に関するもののみ開催された{{sfn|図書館報|2016|p=22}}。戦局が悪化する[[1945年]]([[昭和]]20年)3月に、貴重図書を市外7か所に疎開、6月には、空襲を受けて講堂その他を焼失したが、加藤忠雄館長(当時)の消火活動などが功を奏し、書庫は無事だったため基本図書は守られた{{sfn|図書館報|2016|p=23}}。

;戦後
[[1946年]]([[昭和]]21年)、疎開してあった貴重図書を回収、活動を再開する{{sfn|図書館報|2016|p=23}}。戦時中は規制されていた活字を求めて、毎日多くの人が来館したという{{sfn|外川|2016|p=1}}。[[1948年]]([[昭和]]23年)には占領軍総司令部民間情報局が[[CIE図書館#静岡CIE図書館|静岡CIE図書館]](のちにアメリカ文化センターと改称)を設立したが、[[1953年]]([[昭和]]28年)、葵文庫に分館として併置された{{sfn|図書館報|2016|p=23}}{{sfn|図書館報|2016|p=61}}。

[[1956年]]([[昭和]]31年)には[[図書館法]]に従って'''静岡県立中央図書館葵文庫'''に名称変更している{{sfn|図書館報|2016|p=61}}。

=== 県立中央図書館(1970-) ===
;移転新築
1950年代([[昭和]]30年代)から、老朽化と周辺環境の悪化が問題となり、図書館の移転新築の要望が起こり、[[1963年]]([[昭和]]38年)、県政の重点施策として[[草薙 (静岡市)|草薙地区]]に図書館、美術館兼博物館、体育館、音楽ホールを内包する大規模文化エリア「県文化センター」の建設構想がまとめられる{{sfn|図書館報|2016|p=24}}。1960年度([[昭和]]40年度)には、県の広報課に文化センター建設準備室を設置、教育委員会は新図書館研究委員会を設けて、調査研究に入った{{sfn|図書館報|2016|p=24}}。[[1961年]]([[昭和]]41年)8月には、企画調整部長の意見聴取に対し同研究委員会による成果物「新図書館の望ましい姿」を教育長名で回答、翌[[1962年]]([[昭和]]42年)9月、県会の議決を得て、12月に着工する{{sfn|図書館報|2016|p=24}}。名称変更と準備期間を経て、[[1970年]]([[昭和]]45年)4月に[[静岡県立美術館]]に隣接する現在地に移転し、'''静岡県立中央図書館'''が開館した{{sfn|図書館報|2016|p=61}}。初代館長は高林静夫{{sfn|図書館報|2016|p=25}}。

;平成期
[[1994年]]([[平成]]6年)、電算システムを導入し、業務を開始する{{sfn|図書館報|2016|p=61}}。以降、コンピュータ技術と情報メディアの革新的発展の中で、[[1998年]]([[平成]]10年)には、「静岡県
年生涯学習情報提供システム:マナビット」のインターネット化、静岡県立中央図書館ウェブサイトの開設、さらに、[[2000年]]([[平成]]12年)に「デジタル葵文庫」、[[2004年]]([[平成]]16年)には「静岡県横断検索システム:おうだんくん」を構築するなど、新サービスの提供を行っている{{sfn|図書館報|2016|p=61}}。

1997年度([[平成]]9年度)、年間20万人だった入館者数が15万人まで落ち込むと貸出数も減少し、それにともない資料費も減額される{{sfn|鈴木|2001}}。当時の静岡県立図書館は、職員数、資料費、所蔵冊数等が全国的に最下位に近く、県内の市町立図書館の格差もあり、貧しい図書館事情にあった{{sfn|草谷|2003}}。[[1998年]]([[平成]]10年)4月に鈴木善彦が館長として着任すると、利用率の低下と予算の減額の悪循環を断ち切るべく、「開かれた図書館」「信頼される図書館」「成長し続ける図書館」を3つの基本理念に据えて、3年間にわたり計画的・持続的な改革が行われた{{sfn|鈴木|2001}}。具体的には、貸出冊数の増加や、貸出可能図書の範囲拡大、県外在住者への規制緩和、開館時間延長など{{sfn|草谷|2003}}、「調査研究活動の支援」から「県民の学習活動の支援」へサービスの重点を見直し、利用者に見える形での実践を行った{{sfn|鈴木|2001}}。こうした県立図書館側の変化は、県民の心も動かし、図書館協議会委員が立ち上げた「県立図書館サポーターネットワーク」を中心とした、減額の危機にあった予算の獲得のための署名活動が行われる{{sfn|草谷|2003}}。署名は2か月で1万数千名分が集まり、賛同団体29、賛同人124名によって要望書が知事に届けられた{{sfn|草谷|2003}}。それにより、7千万円の予定だった資料費は、2001年度([[平成]]13年度)には1億円にまで大幅増額が実現した{{sfn|鈴木|2001}}{{sfn|草谷|2003}}。また、図書館協議会より要望のあった児童図書の購入が[[2001年]]([[平成]]13年)4月から開始され{{sfn|図書館報|2016|p=26}}、その後[[2004年]]([[平成]]16年)6月には「子ども図書研究室」が開設された{{sfn|図書館報|2016|p=61}}。

外部機関との連携としては、2007年度([[平成]]19年度)に[[中国]]浙江図書館と姉妹図書館関係を結び、研修員の受け入れや資料の交換を継続して行っているほか、[[静岡県立美術館]]、[[静岡県埋蔵文化財調査研究所|静岡県埋蔵文化財調査研究所]](現在の静岡県埋蔵文化財センター)、[[静岡県立大学]]と4機関で始めた「[[ムセイオン静岡]]」と呼ぶ文化の情報発信の協働を行っている{{sfn|図書館報|2016|p=27}}。

[[2015年]]([[平成]]27年)、創立90周年をむかえ、記念事業を実施した{{sfn|図書館報|2016|p=27}}。同年6月2日、[[富士山]]に関する情報発信強化を目的とし、[[山梨県立図書館]]と、[[富士山]]に関する資料の相互利用に関して、3年間の連携協定を結んでいる「<ref name="prefyamanashihp">{{Cite web|url=https://www.lib.pref.yamanashi.jp/oshirase/2015/06/post-125.html |title=静岡県立中央図書館と富士山関係資料に関する連携協定を締結しました。 |work=山梨県立図書館ホームページ |publisher=山梨県立図書館|accessdate=2016-12-12}}</ref><ref name="asahi20150603">"富士山の資料、互いに利用へ 山梨・静岡の県立図書館が協定"、[[朝日新聞]]2015年6月3日[[朝刊]](山梨版)、p.29</ref>。

[[2016年]]([[平成]]28年)11月16日、静岡図書館友の会により、老朽化が進む静岡県立中央図書館の新館建設と今後の図書館サービスについての期待を盛り込んだ「静岡県立図書館の新館建設についての要望書」が静岡県教育長に提出されている<ref name="tomonokaihp">{{Cite web|url=http://www4.tokai.or.jp/sizu.tomo/ |title=静岡図書館友の会 |publisher=静岡図書館友の会 |accessdate=2016-12-10}}</ref><ref name="tomonokai201611_1">{{Cite web|url=http://www4.tokai.or.jp/sizu.tomo/sizuokakennhenoyoubousyo.pdf
|title=静岡県立図書館の新館建設についての要望書:本文 |publisher=静岡図書館友の会 |date=2016-11-01|format=PDF|accessdate=2016-12-10}}</ref><ref name="tomonokai201611_2">{{Cite web|url=http://www4.tokai.or.jp/sizu.tomo/sizuokakennheno.siryyou.pdf |title=静岡県立図書館の新館建設についての要望書:資料 |publisher=静岡図書館友の会 |date=2016-11-01|format=PDF|accessdate=2016-12-10}}</ref>。

== 特殊コレクション ==
葵文庫、久能文庫、上村順太郎収集浮世絵コレクションの資料は全て電子化が完了しており、公式ウェブサイト上のデジタルライブラリー「ふじのくにアーカイブ」で公開されている。閲覧だけでなく、PDFファイルのダウンロードも可能となっている{{sfn|渡辺|2013}}。

=== 葵文庫 ===
[[File:Shizuoka Prefectural Library Aoi Bunko ac (2).jpg|thumb|left|葵文庫]]

[[江戸幕府]]が崩壊し、[[駿府藩]]に移封となった[[徳川氏]]やその家臣たちは、幕府の公的機関が所有していた膨大な貴重資料を集めた教育施設「静岡学問所」を設立した{{sfn|土屋|2007}}{{sfn|渡辺|2013}}。この学問所は幕臣関係者のみならず、希望者は誰でも就学可能であり、海外から教師を招へいするなど、先進的な教育を行っていた{{sfn|渡辺|2013}}。[[学制]]の発布などの影響で学問所が閉鎖した後、駿府学校、静岡学校、静岡県師範学校を経て、その蔵書が引き継がれる形で、静岡県立葵文庫が設立した{{sfn|国史1|1979|p=36}}{{sfn|渡辺|2013}}。徳川家記念事業として設立されたことにより、同家の家紋にちなんで命名されている{{sfn|渡辺|2013}}{{sfn|図書館報|2016|p=21}}。 [[1969年]]([[昭和]]44年)、静岡県立図書館が[[静岡市]]谷田に移転すると、館名から葵文庫の名は除かれたが、蔵書は特殊コレクションとして引き継がれた{{sfn|国史1|1979|p=36}}。

多くの異なる所有元から引き継がれ収集されているため、コレクション全体を俯瞰することにより、江戸幕府が当時西洋の学問や最新技術の研究を行っていたことや、[[明治]]初頭の近代教育の様子などがうかがえる{{sfn|渡辺|2013}}。和漢書は1,261冊<ref name="collection">{{Cite web|url=http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/data/open/cnt/3/3010/1/28.4_syozou.tokusyukorekusyon.pdf |title= 所蔵資料・特殊コレクション |work=静岡県立中央図書館ウェブサイト |publisher=静岡県立中央図書館|format=PDF|accessdate=2016-12-16}}</ref>、「[[昌平坂学問所]]」「箱館御役所」「諸術調所」などに由来し{{sfn|国史1|1979|p=36}}、代表的なものに[[後陽成天皇]]が印刷させた『[[論語]]』、百科事典『[[厚生新編]]』、[[蝦夷地]]の地図などがある{{sfn|渡辺|2013}}。洋書は2,325冊<ref name="collection"/>、「蕃書調所」「洋書調所」「[[開成所]]」「外国方」などからのもので{{sfn|国史1|1979|p=36}}、内容は法律、経済、政治学から地図、歴史、物理、数学、反射炉の製図まで多岐にわたる{{sfn|渡辺|2013}}。また、ピカードの『英蘭辞書』、日本初のドイツ語辞書『官版独逸単語篇』など外国語の辞書も多く、兵術や戦術、軍事関係の技術書も多く収蔵している{{sfn|渡辺|2013}}。和漢書・洋書あわせて3,586冊からなるコレクションである<ref name="collection"/>。

[[2014年]]([[平成]]26年)、映画「疎開した40万冊の図書」([[2013年]]公開、金高謙二監督)の上映が契機となり、元静岡県立中央図書館職員の田中文雄が、「葵文庫」蔵書の戦時中の疎開先の調査を行った<ref name="asahi20140520">"葵文庫 戦時疎開の歴史 調査へ"、[[朝日新聞]]2014年5月20日[[朝刊]](静岡版)、p.24</ref>。その結果、行政資料の中に、戦時中の文庫長・加藤忠雄による「昭和20年度 事務室日記」が発見され、国民学校4校と民家2軒に蔵書が運搬されたことが判明した<ref name="asahi20140520"/>。同調査では、空襲により蔵書を焼失した市民の署名や拇印がある「免除届」も発見され、約1,500冊が貸出先で焼失されたことが分かっている<ref name="asahi20140520"/>。田中は、[[2015年]]([[平成27年]])10月に創立90周年記念事業「葵レク 貴重書講座」にて、その調査研究の成果を発表している{{sfn|図書館報|2016|pp=7-10}}。

=== 久能文庫 ===
第3代[[静岡県]][[県令]]・[[関口隆吉]]が図書館設置を目指して収集した図書・文書・記録類835部2,454冊からなる<ref name="collection"/>。隆吉が事故により急逝した後{{sfn|図書館報|2016|p=21}}、[[久能山東照宮]]に保管されていたが、[[1924年]]([[大正]]13年)、隆吉の長男・関口荘吉により県立図書館に寄贈され、「久能文庫」と名付けられた。以降、関口家から[[1929年]]([[昭和]]4年),
[[1981年]]([[昭和]]56年)、[[1984年]]([[昭和]] 59年)と、3回にわたり寄贈があった<ref name="collection"/>。関口は、欧米諸国を例にして、過去の古い資料が学問において尊重されていることを重視し、[[1886年]]([[明治]]19年)当時の[[静岡県]]にとって有用な情報資源となる歴史、地理、統計、法律など諸分野の資料を網羅的に収集することを目的に掲げ、構想した{{sfn|青木|2012}}。図書は[[徳川氏]]関係のものや、軍事、外交、農業をテーマとしたものが中心で、[[三条実美]]、[[大久保利通]]、[[伊藤博文]]、[[勝海舟]]、[[山岡鉄舟]]らの書簡文書も含まれる<ref name="collection"/>。

=== 上村順太郎収集浮世絵コレクション ===
上村五郎、上村順太郎が集めた[[江戸時代]]から[[明治]]までの[[浮世絵]]([[錦絵]])などの版画類約 5,100枚のコレクション<ref name="collection"/>。

=== 草柳大蔵コーナー ===
[[File:Shizuoka Prefectural Library Kusayanagi Daizo corner ac.jpg|thumb|right|草柳大蔵コーナー]]

静岡県ゆかりのジャーナリスト、[[草柳大蔵]]の蔵書7,148冊の蔵書を集めたコーナー。[[2003年]]([[平成]]15年)3月に妻の草柳アキから県に寄贈された<ref name="kusayanagi">{{Cite web|url=https://www.pref.shizuoka.jp/bunka/bk-170a/teigen/iinkai_kusayanagisi.html |title=静岡県の人づくり:草柳大蔵氏の紹介 |work=静岡県公式ホームページ|publisher=静岡県|date=2014-01-20|accessdate=2016-12-16}}</ref>。

蔵書は、社会科学、人文科学の分野が中心<ref name="kusayanagi"/>。草柳が著書の『実録満鉄調査部』を執筆する際に参考にしたという「満州読本」などの貴重書もある<ref name="kusayanagi"/>。利用は館内閲覧のみ<ref name="kusayanagi"/>。

=== 浙江省文庫 ===
[[File:Shizuoka Prefectural Library Zhejiang Bunko ac.jpg|thumb|right|浙江省文庫]]

[[静岡県]]は[[中国]][[浙江省]]と友好提携を結んでおり、[[1998年]]([[平成]]10年)以来、同省から書籍の寄贈があった。[[2007年]]([[平成]]19年)に友好提携25周年を記念する交流事業の一環であらたに寄贈を受けると、静岡県立中央図書館で閲覧するために排架された{{sfn|図書館報|2016|p=18}}。また、9月18日から半年間、浙江図書館の職員を海外技術研修員として受け入れた{{sfn|図書館報|2016|p=18,62}}<ref name="tomonken20090608">{{Cite web|url=http://tomonken-weekly.seesaa.net/article/121064997.html |title=我是愛国館員 |work=ともんけんウィークリー|publisher=図書館問題研究会|date=2009-06-08|accessdate=2016-12-16}}</ref>。同年10月26日に、浙江図書館で「静岡県立中央図書館と浙江図書館に関する姉妹図書館締結の意向書」を、さらに[[2009年]]
([[平成]]21年)2月24日、静岡県立中央図書館で「静岡県立中央図書館と浙江図書館との友好提携書」を締結し{{sfn|図書館報|2016|p=18,62}}、資料の交換を行い、静岡県立中央図書館では「浙江省文庫」、浙江図書館では「静岡文庫」として排架し、展示なども行うとした{{sfn|図書館報|2016|p=18}}。以後も継続して図書交換が行われている{{sfn|図書館報|2016|p=18}}。

== 事業・取り組みなど ==
=== ビジネスコーナー ===
[[File:Shizuoka Prefectural Library interior ac (1).jpg|thumb|right|【奥】ビジネスコーナー【手前】健康医療情報コーナー]]
[[2003年]]([[平成]]15年)7月2日にレファレンスコーナーの一部を使い開設{{sfn|図書館報|2007|p=47}}{{sfn|図書館報|2016|p=62}}。[[2004年]]([[平成]]16年)には、ビジネスサービス委員会、「静岡県ビジネス支援図書館連絡協議会」が設置され、静岡県中部地区SOHO推進協議会のSOHOしずおかの協力のもと、全5回の連続講座「図書館活用・ビジネスセミナー」を行った([[平成]]19年度まで実施){{sfn|図書館報|2007|p=47}}<ref name="shizuoka20040801">"図書館のビジネス利用を 静岡県立中央図書館で促進セミナーが開講"、[[静岡新聞]]2004年8月1日[[朝刊]]、p.19</ref>。同年11月には、静岡県ビジネス支援図書館連絡協議会による提言書「静岡県における図書館のビジネス支援政策について」をまとめ、静岡県教育長に提出する{{sfn|図書館報|2007|p=47}}。[[2006年]]([[平成]]18年)3月の『図書館のビジネス支援 はじめの一歩』発行をもって、協議会は解散している{{sfn|図書館報|2007|p=47}}。

コーナーは健康医療情報コーナーに隣接し、企業情報、会社史、白書をはじめ、JISハンドブックや業界情報、統計に関する資料を揃えている<ref name="hpbusiness">{{Cite web|url=http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/institution/floor/floor_buji.html |title=ビジネスコーナー |work=静岡県立中央図書館ウェブサイト |publisher=静岡県立中央図書館|accessdate=2016-12-26}}</ref>。

=== 健康医療情報コーナー ===
[[2011年]]([[平成]]23年)7月9日に開設{{sfn|図書館報|2016|p=62}}。テーマに沿った特集展示や、関連書籍をそろえるほか、健康・医療情報に関する新聞記事の切抜や、患者会の資料やパンフレットも配置している<ref name="hphealth">{{Cite web|url=http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/institution/healthinfo/index.html |title=健康医療情報 |work=静岡県立中央図書館ウェブサイト |publisher=静岡県立中央図書館|accessdate=2016-12-24}}</ref>。静岡県看護協会と連携し、健康相談会「まちの保健室」も館内で開催している<ref name="hphealth"/>。

=== 子ども図書研究室 ===
[[2004年]]([[平成]]16年)6月18日開室{{sfn|図書館報|2016|p=26}}。県内の子どもの読書活動推進や、子どもと本とを結ぶ活動に関わる人々の研究を支援し、コミック、ゲーム攻略本、学習参考書を除く児童図書の全点購入<ref name="collection"/>、参考図書の収集・保存を行っている<ref name="hpkodomo">{{Cite web|url=http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/labo/index.html |title=子ども図書研究室 |work=静岡県立中央図書館ウェブサイト |publisher=静岡県立中央図書館|accessdate=2016-12-12}}</ref>。これは、[[2001年]]([[平成]]13年)12月の「[[子どもの読書活動の推進に関する法律]]」の施行と、[[2002年]]([[平成]]14年)の「子ども読書活動の推進に関する基本的な計画について」の通知を受けて公表された「静岡県子ども読書活動推進計画」([[平成]]16年1月)に基づくものである{{sfn|図書館報|2016|p=26}}。[[2012年]]([[平成]]24年)にリニューアル後は、子ども図書研究室の一部の複本資料(約1万冊)について個人への貸出も行っている{{sfn|図書館報|2016|p=61}}{{sfn|図書館年鑑|2013|p=35}}。
<gallery>
File:The Research room of children's book ac (1).jpg||子ども図書研究室入口
File:The Research room of children's book ac (2).jpg|展示架
File:The Research room of children's book ac (3).jpg|書架
File:The Research room of children's book ac (4).jpg|書架
</gallery>

=== ふじのくにアーカイブ ===
静岡県立中央図書館が所蔵する特殊コレクション、地域資料、県内の市町村立図書館所蔵の一部のデジタル画像を検索し、閲覧することができるデジタルライブラリーである<ref name="ca20160329">{{Cite web|url=http://current.ndl.go.jp/node/31146 |title=静岡県立中央図書館、デジタルライブラリーを「ふじのくにアーカイブ」としてリニューアル |work=カレントアウェアネス・ポータル |publisher=国立国会図書館|date=2016-03-29|accessdate=2016-12-16}}</ref>。[[静岡市]]、[[富士市]]、[[袋井市]]、[[磐田市]]の4市の図書館が参加することにより、それまでの「デジタルライブラリー」から名称を変更しリニューアルした<ref name="ca20160329"/>。公開されている資料数は597点(2016年3月現在)、今後参加館を拡大していく予定となっている<ref name="hpdigital">{{Cite web|url=http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/library/about_simati.html |title=デジタルライブラリー県内図書館所蔵資料について |work=静岡県立中央図書館ウェブサイト |publisher=静岡県立中央図書館|accessdate=2016-12-16}}</ref>。

=== 静岡県図書館大会 ===
静岡県図書館協会、静岡県読書推進運動協議会と共催して毎年開催している{{sfn|土屋|2007}}<ref name="hptaikai">{{Cite web|url=http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/toshokantaikai/2016event_top/event_top.html |title= 2016/11/07平成28年度第24回静岡県図書館大会 |work=静岡県立中央図書館ウェブサイト |publisher=静岡県立中央図書館|accessdate=2016-12-16}}</ref>。四半世紀にわたり日本一の参加者数で{{sfn|岡本|2016|p=82}}、[[2006年]]([[平成]]20年)に1,000人を超え{{sfn|土屋|2007}}、以後も参加者数を維持しており、[[2014年]]([[平成]]26年)12月8日に開催された第22回大会には、1,023人の参加があった{{sfn|図書館年鑑|2015|p=34}}。

== 施設概要 ==
*構造:[[鉄筋コンクリート構造|鉄筋コンクリート]]、地上3階、地下1階{{sfn|図書館報|2016|p=132}}

{| class="wikitable"
|-
| 3階 || 会議室、中集会室、小集会室A、小集会室B、展示室{{sfn|図書館報|2016|p=132}}
|-
| 2階 || 講堂、開架閲覧室{{sfn|図書館報|2016|p=132}}
|-
| 1階 || 子ども図書研究室、事務室、書庫{{sfn|図書館報|2016|p=132}}
|-
| 地下1階 || 書庫、車庫{{sfn|図書館報|2016|p=132}}
|}

*改修による長期休館
**[[2002年]]([[平成]]14年)1月1日-7月31日 地震対策緊急整備工事{{sfn|図書館報|2016|p=61}}
**[[2009年]]([[平成]]21年)7月1日-9月30日 インフォメーション棟の耐震補強工事{{sfn|図書館報|2016|p=62}}
**[[2009年]]([[平成]]21年)10月1日-[[2010年]]([[平成]]22年)3月30日 館内の一部を工事のため閉鎖{{sfn|図書館報|2016|p=62}}
**[[2012年]]([[平成]]24年)2月1日-3月15日 閲覧室等の空調設備工事、資料棟屋上の防水工事、防火設備の改修、非常用照明設備工事、分電盤の改修等の大規模改修工事{{sfn|図書館報|2016|p=62}}

<gallery>
File:Shizuoka Prefectural Library interior ac (2).jpg|閲覧席
File:Shizuoka Prefectural Library interior ac (5).jpg|書架
File:Shizuoka Prefectural Library interior ac (6).jpg|地域資料
</gallery>

== 利用案内 ==
=== 開館時間・休館日 ===
*土・日・月・火曜日、休日{{Refnest|group="†"|国民の祝日、振替休日、国民の祝日に挟まれた日<ref name="hpusage">{{cite web|url=http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/institution/kento.html|title=ご利用案内|work=静岡県立中央図書館ウェブサイト|publisher=静岡県立中央図書館|accessdate=2016-12-10}}</ref>}}・・・午前9時から午後5時<ref name="hpusage"/>
*水・木・金曜日(休日を除く) ・・・午前9時から午後7時<ref name="hpusage"/>

*休館日
**毎月第1、第3、第5月曜日(月の末日に当たる場合を除く。休日に当たる場合は、翌日以降の休日でない最初の日)<ref name="hpusage"/>
**毎月月末(土、日、休日に当たる場合は、その前の最も近い土、日、休日でない日)<ref name="hpusage"/>
**年末年始 、特別整理期間等<ref name="hpusage"/>
::※視聴覚ライブラリーの休館日は上記のほか土・日曜日<ref name="hpusage"/>

=== 県内市町立図書館等への資料返却 ===
県立中央図書館で利用登録して直接借りた資料は、県内の公立図書館で返却することができる([[静岡市立図書館]]は除く。ただし、例外的に静岡市立蒲原図書館には返却できる。)<ref name="hpsimachihen">{{cite web|url=http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/institution/henkyaku.html|title=資料の返却が可能な施設名|work=静岡県立中央図書館ウェブサイト|publisher=静岡県立中央図書館|accessdate=2016-12-12}}</ref>。「県立図書館で借りた本を地元の図書館で返却したい」という要望に応え、[[1999年]]([[平成]]11年)5月から開始した{{sfn|関根|2001}}。

=== インターネット予約による市町立図書館等での受取サービス ===
静岡県立中央図書館の蔵書をインターネットで予約し、県内の一部の市町立図書館等で受け取ることができるサービス<ref name="hpshimachinet">{{cite web|url=http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/institution/simatiuketori.html|title=インターネット予約による市町立図書館受取サービス
|work=静岡県立中央図書館ウェブサイト|publisher=静岡県立中央図書館|accessdate=2016-12-16}}</ref>。県民に対する直接サービスであり、従来の相互貸借サービスとは異なる。2015年度([[平成]]27年度)からサービスを開始し、2016年度([[平成]]28年度)に新たに受取可能館が増えた<ref name="hpshimachinet"/>。
貸出カードと連絡用のメールアドレスが必要<ref name="hpshimachinet"/>。なお、貸出カードの登録申込は郵送でも受け付けている<ref name="hpshimachinet"/>。

;受取が可能な図書館
{| class="wikitable"
|-
| 伊東市立伊東図書館、伊東市立伊東図書館、函南町立図書館、三島市立図書館、沼津市立図書館、

富士市立中央図書館、富士宮市立中央図書館、藤枝市立駅南図書館、掛川市立中央図書館、

磐田市立中央図書館、浜松市立城北図書館、県総合教育センター(あすなろ)図書室<ref name="hpshimachinet"/>
|}

== 交通アクセス ==
*JR草薙駅から
**徒歩約25分<ref name="hpaccess">{{cite web|url=http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/access/kento.html|title=交通案内|work=静岡県立中央図書館ウェブサイト|publisher=静岡県立中央図書館|accessdate=2016-12-24}}</ref>
**静鉄バス「草薙瀬名新田線」で「県立美術館」(所要時間役6分)下車、徒歩約2分<ref name="hpaccess"/>
*静岡鉄道・県立美術館前駅から
**徒歩約15分<ref name="hpaccess"/>
**静鉄バス「草薙瀬名新田線」で「県立美術館」(所要時間役3分)下車、徒歩約2分<ref name="hpaccess"/>
*静岡駅前または新静岡バスターミナルから
**静鉄バス「県立美術館線」で「県立美術館」(所要時間約30分)下車、徒歩約2分<ref name="hpaccess"/>
草薙駅からは傾斜のある登り坂である{{sfn|図書館報|2016|p=16}}。


== 関連施設 ==
== 関連施設 ==
=== グランシップ県立図書館コーナー ===
; グランシップ県立図書館コーナー :[[静岡県コンベンションアーツセンター]](グランシップ)にある分館で、絵本などの児童書は県立中央図書館ではなく、こちらに所蔵されている。
[[1999年]]([[平成]]11年)3月、[[静岡県コンベンションアーツセンター]](グランシップ)内に「グランシップ情報ラウンジ・県立図書館コーナー」として開設され、芸術関係の雑誌閲覧や、ビデオテープの貸出を実施していた{{sfn|図書館報|2016|p=26}}。その後、名称を「グランシップ県立図書館コーナー」とし、[[2006年]]([[平成]]18年)からは絵本のみを配置、「えほんのひろば」という愛称でリニューアルした{{sfn|図書館報|2016|p=27}}。約5,000冊の絵本の閲覧と貸出ができる<ref name="hpgran">{{Cite web|url=http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/granship/gran.html |title=ご利用案内(グランシップえほんのひろば)|work=静岡県立中央図書館ウェブサイト |publisher=静岡県立中央図書館|accessdate=2016-12-12}}</ref>。
; 歴史文化情報センター :県の資料などが所蔵されている。

<!-- ; 県総合教育センター(あすなろ) :葵文庫などの貴重書は掛川市にある県総合教育センターに所蔵されている。 -->
*所在地 ・・・〒422-8005 静岡県静岡市駿河区池田79-4
*開館時間・・・午前9時30分から午後6時<ref name="hpgran"/>
*休館日 ・・・グランシップの休館日に準ずる<ref name="hpgran"/>

=== 歴史文化情報センター ===
『静岡県史』、『静岡県史研究』、『マンガ静岡県史』、『静岡県史料』、県内各市町村史、など約7,000点の図書・雑誌資料を閲覧できる<ref name="hprekibun">{{Cite web|url=http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/history/history.html|title=ご利用案内(歴史文化情報センター)|work=静岡県立中央図書館ウェブサイト |publisher=静岡県立中央図書館|accessdate=2016-12-12}}</ref>。また、明治以降県内で発行された「重新静岡新聞」、「函右日報」、「静岡大務新聞」、「静岡民友新聞」、「静岡新報」などの複製写真も閲覧できる<ref name="hprekibun"/>。県史編さんの際に使用した資料・写真は、「県史編さん資料管理システム」で検索することができる<ref name="hprekibun"/>。

*所在地・・・〒420-0853 静岡市葵区追手町9-18 静岡中央ビル7階<ref name="hprekibun"/>
*開館時間・・・午前9時から午後5時(資料の閲覧請求は午後4時30分まで)<ref name="hprekibun"/>
*休館日 ・・・土・日曜日、国民の祝日、年末年始<ref name="hprekibun"/>
(特別整理期間中も歴史文化情報センターは通常通り開館)<ref name="hprekibun"/>

== 脚注 ==
=== 注釈 ===
{{Reflist|group=†}}

=== 出典 ===
{{Reflist|2}}

== 参考文献 ==
=== 書籍 ===
* {{cite book|和書
|editor=国史大辞典編集委員会
|title=国史大辞典
|volume =1
|publisher=吉川弘文館
|year=1979
|ref= {{sfnref|国史1|1979}}
}}
* {{cite book|和書
|last=清水|first=麻子
|title=静岡 本のある場所
|publisher=インプレス
|year=2014
|ref= harv }}
* {{cite book|和書
|editor=図書館年鑑編集委員会
|title=図書館年鑑2013
|publisher=日本図書館協会
|year=2013-07
|ref={{sfnref|図書館年鑑|2013}}
}}
* {{cite book|和書
|editor=図書館年鑑編集委員会
|title=図書館年鑑2015
|publisher=日本図書館協会
|year=2015-07
|ref={{sfnref|図書館年鑑|2015}}
}}

=== 逐次刊行物 ===
* {{Cite journal|和書
|last=関根|first=睦
|date = 2001-01
|title =静岡県立中央図書館の非来館型サービスについて
|journal =みんなの図書館
|issue =285
|volume =
|publisher =教育史料出版会
|pages=22-26
|naid =
|ref = harv }}
* {{Cite journal|和書
|last=鈴木|first=善彦
|date = 2001-08
|title =静岡県立中央図書館の改革と資料費の確保
|journal =図書館雑誌
|issue =8
|volume =95
|publisher =教育史料出版会
|pages=558-560
|naid =
|ref = harv }}
* {{Cite journal|和書
|last=草谷|first=桂子
|date = 2003-01
|title =図書館は立場を越えてよくするもの:静岡県立中央図書館協議会委員の経験から
|journal =みんなの図書館
|issue =314
|volume =
|publisher =教育史料出版会
|pages=31-35
|naid =
|ref = harv }}
* {{Cite journal|和書
|date = 2007-05-31
|title = 葵 静岡県立中央図書館報
|issue =41
|publisher = 静岡県立中央図書館
|ref= {{sfnref|図書館報|2007}}
}}
* {{Cite journal|和書
|last=土屋|first=雅彦
|date = 2007-11
|title =文化の丘の図書館から
|journal =図書館雑誌
|issue =11
|volume =101
|publisher =日本図書館協会
|pages=752-753
|naid =
|ref = harv }}
* {{Cite journal|和書
|last=青木|first=祐一
|date=2012-03
|title=静岡県立葵文庫とその事業 : アーカイブズの観点から
|journal=研究年報
|issue=59
|volume=
|url=http://glim-re.glim.gakushuin.ac.jp/bitstream/10959/3006/1/kenkyunenpo_59_99_117.pdf
|format=PDF
|pages=99-117
|publisher=學習院大學文學部
|ref = harv }}
* {{Cite journal|和書
|last=渡辺|first=勝
|date = 2013-11
|title =徳川家臣の思いを継いだ「葵文庫」
|journal =図書館雑誌
|issue =11
|volume =107
|publisher =日本図書館協会
|pages=698-699
|naid =
|ref = harv }}
* {{Cite journal|和書
|last=外川|first=志津子
|date = 2016-04
|title = 古い日記に見る葵文庫のあの頃
|journal = 静岡図書館友の会会報
|issue = 15
|volume =
|publisher = 静岡図書館友の会
|naid =
|ref = harv }}
* {{Cite web
|url = http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/data/open/cnt/3/2997/1/aoi50.pdf
|title = 葵 静岡県立中央図書館報 50号
|publisher = 静岡県立中央図書館
|accessdate = 2016-11-06
|ref= {{sfnref|図書館報|2016}}
}}
* {{Cite journal|和書
|last=岡本|first=真
|date = 2016-11-14
|title = 都道府県立図書館白書
|journal = ライブラリー・リソース・ガイド
|issue = 17
|volume =
|publisher = アカデミック・リソース・ガイド
|naid =
|ref = harv }}


== 立地 ==
== 関連項目 ==
[[ムセイオン静岡]]
=== 近隣施設 ===
* [[静岡県立美術館]](隣接している)
* [[静岡県立大学]]
* [[静岡鉄道静岡清水線|静岡鉄道]][[県立美術館前駅]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
{{Commonscat|Shizuoka Prefectural Central Library}}
* [http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/ 静岡県立中央図書館] - 公式ウェブサイト
* [http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/ 静岡県立中央図書館] - 公式ウェブサイト
* [http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/library/ 静岡県立中央図書館 デジタルライブラリー] - 葵文庫に所蔵の書籍の一部を閲覧可能
* [http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/library/ ふじのくにアーカイブ]- 静岡県立中央図書館デジタルライブラリー
* [http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/kento_public/ 静岡県の図書館] - 静岡県内の図書館へのポータルサイト
* [http://www.granship.or.jp/promoters/guide/library.html 静岡県コンベンションアーツセンター] -県立図書館コーナー「えほんのひろば」
* [http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/history/history.html 歴史文化情報センター ]


{{Library-stub|2|date=2013年5月}}
{{ムセイオン静岡}}
{{ムセイオン静岡}}
{{日本の都道府県立図書館}}
{{日本の都道府県立図書館}}

2016年12月30日 (金) 15:19時点における版

静岡県立中央図書館
Shizuoka Prefectural Central Library
静岡県立中央図書館
施設情報
前身 静岡県立葵文庫
専門分野 総合
事業主体 静岡県
延床面積 8,816.64[1] m2
開館 1925年大正14年)
所在地 422-8002
静岡県静岡市駿河区谷田53-1
位置 北緯34度59分34.3秒 東経138度26分46秒 / 北緯34.992861度 東経138.44611度 / 34.992861; 138.44611座標: 北緯34度59分34.3秒 東経138度26分46秒 / 北緯34.992861度 東経138.44611度 / 34.992861; 138.44611
ISIL JP-1001816
統計情報
蔵書数 801,679冊(2015年[2]時点)
貸出数 135,631冊(2015年[3]
来館者数 207,482人(2015年[3]
公式サイト http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/
地図
地図
プロジェクト:GLAM - プロジェクト:図書館
テンプレートを表示

静岡県立中央図書館(しずおかけんりつちゅうおうとしょかん)は、静岡県静岡市駿河区にある公共図書館。静岡県が図書館法に基づき設置している。

「調べる・考える・解決する」をスローガンに[4]レファレンスを軸とした静岡県内128館の図書館のネットワークづくり、資料の永年保存、地域資料の情報収集などを行い、県内図書館の中核として市町立図書館を支援している[5]静岡県立美術館に隣接し、近隣に静岡県立大学がある。

歴史

前史(明治期)

静岡県における近代的図書館の計画は、1886年明治19年)の第3代静岡県県令関口隆吉による自己の蔵書を中心にした公開図書館「久能文庫」であったが、関口の急逝により実現しなかった[6]

1907年明治40年)、柴田普門、松岡友吉、三浦元利の尽力で、最初の公開通俗図書館・私立丁未図書館が瑞光寺内に開設されたが、1910年明治43年)に静岡市教育会が通俗図書館を開設するにともない、蔵書を寄贈して閉館となった[6]。さらに、同年9月、静岡市城内に設立された静岡県教育会附設図書館に合併されたが、同館は1924年大正13年)に静岡県立葵文庫設立により閉館し、蔵書はそのまま葵文庫に引き継がれた[6]

県立葵文庫(1925-1970)

開館時に館内に掲げられたという、徳川家第16代当主徳川家達書による扁額(レプリカ)[7]
大正期

徳川家の記念事業として、静岡県知事関屋貞三郎の相談を受けた渋沢栄一が斡旋を行って集めた寄付により、県立図書館の設立提案が県会に議決される[6][8]。設立費17万円で、1923年大正12年)12月起工、1924年大正13年)10月竣工し、1925年(大正14年)4月1日、静岡県立葵文庫として開館した[6]。初代館長は貞松修蔵、開館時の蔵書は約22,000冊、職員数は16名であった[8]。春夏季は午前8時から午後9時、秋冬季は午前9時から午後9時と労働者の夜間の来館に配慮した開館時間を設定し、使用料3円を納付すると交付される「図書携出特許証」により図書貸出を行った[9]

昭和初期

葵文庫は、「館内閲覧」「貸出」「巡回文庫」「講座」を事業の4本柱として活動を開始し、「公衆に図書を閲覧させること」を使命としていた[10]1930年昭和5年)には、昭和天皇が葵文庫に行幸したが、これは、地方の公私立の図書館で初めてのことであった[10]1935年昭和8年)の図書館令改正により、葵文庫が静岡県の中央図書館に指定される[8]。これにより県内の図書館を指導する権限が付与され、運営や蔵書整理、講習会の開催などで町村図書館の指導育成を行った[10]

戦時下

1937年昭和12年)日中戦争の勃発以来、図書と図書館の機能が国論の統一と国策の徹底に利用されることになった[10]1941年昭和16年)太平洋戦争に拡大すると、戦時体制が一層強化され、国民思想指導に基づく読書指導が図書館最大の任務となり、葵文庫においても戦時読書指導者協議会が行われる[10]。展覧会や講演も、国体、時局、軍事に関するもののみ開催された[10]。戦局が悪化する1945年昭和20年)3月に、貴重図書を市外7か所に疎開、6月には、空襲を受けて講堂その他を焼失したが、加藤忠雄館長(当時)の消火活動などが功を奏し、書庫は無事だったため基本図書は守られた[11]

戦後

1946年昭和21年)、疎開してあった貴重図書を回収、活動を再開する[11]。戦時中は規制されていた活字を求めて、毎日多くの人が来館したという[12]1948年昭和23年)には占領軍総司令部民間情報局が静岡CIE図書館(のちにアメリカ文化センターと改称)を設立したが、1953年昭和28年)、葵文庫に分館として併置された[11][8]

1956年昭和31年)には図書館法に従って静岡県立中央図書館葵文庫に名称変更している[8]

県立中央図書館(1970-)

移転新築

1950年代(昭和30年代)から、老朽化と周辺環境の悪化が問題となり、図書館の移転新築の要望が起こり、1963年昭和38年)、県政の重点施策として草薙地区に図書館、美術館兼博物館、体育館、音楽ホールを内包する大規模文化エリア「県文化センター」の建設構想がまとめられる[13]。1960年度(昭和40年度)には、県の広報課に文化センター建設準備室を設置、教育委員会は新図書館研究委員会を設けて、調査研究に入った[13]1961年昭和41年)8月には、企画調整部長の意見聴取に対し同研究委員会による成果物「新図書館の望ましい姿」を教育長名で回答、翌1962年昭和42年)9月、県会の議決を得て、12月に着工する[13]。名称変更と準備期間を経て、1970年昭和45年)4月に静岡県立美術館に隣接する現在地に移転し、静岡県立中央図書館が開館した[8]。初代館長は高林静夫[14]

平成期

1994年平成6年)、電算システムを導入し、業務を開始する[8]。以降、コンピュータ技術と情報メディアの革新的発展の中で、1998年平成10年)には、「静岡県 年生涯学習情報提供システム:マナビット」のインターネット化、静岡県立中央図書館ウェブサイトの開設、さらに、2000年平成12年)に「デジタル葵文庫」、2004年平成16年)には「静岡県横断検索システム:おうだんくん」を構築するなど、新サービスの提供を行っている[8]

1997年度(平成9年度)、年間20万人だった入館者数が15万人まで落ち込むと貸出数も減少し、それにともない資料費も減額される[15]。当時の静岡県立図書館は、職員数、資料費、所蔵冊数等が全国的に最下位に近く、県内の市町立図書館の格差もあり、貧しい図書館事情にあった[16]1998年平成10年)4月に鈴木善彦が館長として着任すると、利用率の低下と予算の減額の悪循環を断ち切るべく、「開かれた図書館」「信頼される図書館」「成長し続ける図書館」を3つの基本理念に据えて、3年間にわたり計画的・持続的な改革が行われた[15]。具体的には、貸出冊数の増加や、貸出可能図書の範囲拡大、県外在住者への規制緩和、開館時間延長など[16]、「調査研究活動の支援」から「県民の学習活動の支援」へサービスの重点を見直し、利用者に見える形での実践を行った[15]。こうした県立図書館側の変化は、県民の心も動かし、図書館協議会委員が立ち上げた「県立図書館サポーターネットワーク」を中心とした、減額の危機にあった予算の獲得のための署名活動が行われる[16]。署名は2か月で1万数千名分が集まり、賛同団体29、賛同人124名によって要望書が知事に届けられた[16]。それにより、7千万円の予定だった資料費は、2001年度(平成13年度)には1億円にまで大幅増額が実現した[15][16]。また、図書館協議会より要望のあった児童図書の購入が2001年平成13年)4月から開始され[17]、その後2004年平成16年)6月には「子ども図書研究室」が開設された[8]

外部機関との連携としては、2007年度(平成19年度)に中国浙江図書館と姉妹図書館関係を結び、研修員の受け入れや資料の交換を継続して行っているほか、静岡県立美術館静岡県埋蔵文化財調査研究所(現在の静岡県埋蔵文化財センター)、静岡県立大学と4機関で始めた「ムセイオン静岡」と呼ぶ文化の情報発信の協働を行っている[18]

2015年平成27年)、創立90周年をむかえ、記念事業を実施した[18]。同年6月2日、富士山に関する情報発信強化を目的とし、山梨県立図書館と、富士山に関する資料の相互利用に関して、3年間の連携協定を結んでいる「[19][20]

2016年平成28年)11月16日、静岡図書館友の会により、老朽化が進む静岡県立中央図書館の新館建設と今後の図書館サービスについての期待を盛り込んだ「静岡県立図書館の新館建設についての要望書」が静岡県教育長に提出されている[21][22][23]

特殊コレクション

葵文庫、久能文庫、上村順太郎収集浮世絵コレクションの資料は全て電子化が完了しており、公式ウェブサイト上のデジタルライブラリー「ふじのくにアーカイブ」で公開されている。閲覧だけでなく、PDFファイルのダウンロードも可能となっている[24]

葵文庫

葵文庫

江戸幕府が崩壊し、駿府藩に移封となった徳川氏やその家臣たちは、幕府の公的機関が所有していた膨大な貴重資料を集めた教育施設「静岡学問所」を設立した[4][24]。この学問所は幕臣関係者のみならず、希望者は誰でも就学可能であり、海外から教師を招へいするなど、先進的な教育を行っていた[24]学制の発布などの影響で学問所が閉鎖した後、駿府学校、静岡学校、静岡県師範学校を経て、その蔵書が引き継がれる形で、静岡県立葵文庫が設立した[25][24]。徳川家記念事業として設立されたことにより、同家の家紋にちなんで命名されている[24][6]1969年昭和44年)、静岡県立図書館が静岡市谷田に移転すると、館名から葵文庫の名は除かれたが、蔵書は特殊コレクションとして引き継がれた[25]

多くの異なる所有元から引き継がれ収集されているため、コレクション全体を俯瞰することにより、江戸幕府が当時西洋の学問や最新技術の研究を行っていたことや、明治初頭の近代教育の様子などがうかがえる[24]。和漢書は1,261冊[26]、「昌平坂学問所」「箱館御役所」「諸術調所」などに由来し[25]、代表的なものに後陽成天皇が印刷させた『論語』、百科事典『厚生新編』、蝦夷地の地図などがある[24]。洋書は2,325冊[26]、「蕃書調所」「洋書調所」「開成所」「外国方」などからのもので[25]、内容は法律、経済、政治学から地図、歴史、物理、数学、反射炉の製図まで多岐にわたる[24]。また、ピカードの『英蘭辞書』、日本初のドイツ語辞書『官版独逸単語篇』など外国語の辞書も多く、兵術や戦術、軍事関係の技術書も多く収蔵している[24]。和漢書・洋書あわせて3,586冊からなるコレクションである[26]

2014年平成26年)、映画「疎開した40万冊の図書」(2013年公開、金高謙二監督)の上映が契機となり、元静岡県立中央図書館職員の田中文雄が、「葵文庫」蔵書の戦時中の疎開先の調査を行った[27]。その結果、行政資料の中に、戦時中の文庫長・加藤忠雄による「昭和20年度 事務室日記」が発見され、国民学校4校と民家2軒に蔵書が運搬されたことが判明した[27]。同調査では、空襲により蔵書を焼失した市民の署名や拇印がある「免除届」も発見され、約1,500冊が貸出先で焼失されたことが分かっている[27]。田中は、2015年平成27年)10月に創立90周年記念事業「葵レク 貴重書講座」にて、その調査研究の成果を発表している[28]

久能文庫

第3代静岡県県令関口隆吉が図書館設置を目指して収集した図書・文書・記録類835部2,454冊からなる[26]。隆吉が事故により急逝した後[6]久能山東照宮に保管されていたが、1924年大正13年)、隆吉の長男・関口荘吉により県立図書館に寄贈され、「久能文庫」と名付けられた。以降、関口家から1929年昭和4年), 1981年昭和56年)、1984年昭和 59年)と、3回にわたり寄贈があった[26]。関口は、欧米諸国を例にして、過去の古い資料が学問において尊重されていることを重視し、1886年明治19年)当時の静岡県にとって有用な情報資源となる歴史、地理、統計、法律など諸分野の資料を網羅的に収集することを目的に掲げ、構想した[9]。図書は徳川氏関係のものや、軍事、外交、農業をテーマとしたものが中心で、三条実美大久保利通伊藤博文勝海舟山岡鉄舟らの書簡文書も含まれる[26]

上村順太郎収集浮世絵コレクション

上村五郎、上村順太郎が集めた江戸時代から明治までの浮世絵錦絵)などの版画類約 5,100枚のコレクション[26]

草柳大蔵コーナー

草柳大蔵コーナー

静岡県ゆかりのジャーナリスト、草柳大蔵の蔵書7,148冊の蔵書を集めたコーナー。2003年平成15年)3月に妻の草柳アキから県に寄贈された[29]

蔵書は、社会科学、人文科学の分野が中心[29]。草柳が著書の『実録満鉄調査部』を執筆する際に参考にしたという「満州読本」などの貴重書もある[29]。利用は館内閲覧のみ[29]

浙江省文庫

浙江省文庫

静岡県中国浙江省と友好提携を結んでおり、1998年平成10年)以来、同省から書籍の寄贈があった。2007年平成19年)に友好提携25周年を記念する交流事業の一環であらたに寄贈を受けると、静岡県立中央図書館で閲覧するために排架された[30]。また、9月18日から半年間、浙江図書館の職員を海外技術研修員として受け入れた[31][32]。同年10月26日に、浙江図書館で「静岡県立中央図書館と浙江図書館に関する姉妹図書館締結の意向書」を、さらに2009年平成21年)2月24日、静岡県立中央図書館で「静岡県立中央図書館と浙江図書館との友好提携書」を締結し[31]、資料の交換を行い、静岡県立中央図書館では「浙江省文庫」、浙江図書館では「静岡文庫」として排架し、展示なども行うとした[30]。以後も継続して図書交換が行われている[30]

事業・取り組みなど

ビジネスコーナー

【奥】ビジネスコーナー【手前】健康医療情報コーナー

2003年平成15年)7月2日にレファレンスコーナーの一部を使い開設[33][34]2004年平成16年)には、ビジネスサービス委員会、「静岡県ビジネス支援図書館連絡協議会」が設置され、静岡県中部地区SOHO推進協議会のSOHOしずおかの協力のもと、全5回の連続講座「図書館活用・ビジネスセミナー」を行った(平成19年度まで実施)[33][35]。同年11月には、静岡県ビジネス支援図書館連絡協議会による提言書「静岡県における図書館のビジネス支援政策について」をまとめ、静岡県教育長に提出する[33]2006年平成18年)3月の『図書館のビジネス支援 はじめの一歩』発行をもって、協議会は解散している[33]

コーナーは健康医療情報コーナーに隣接し、企業情報、会社史、白書をはじめ、JISハンドブックや業界情報、統計に関する資料を揃えている[36]

健康医療情報コーナー

2011年平成23年)7月9日に開設[34]。テーマに沿った特集展示や、関連書籍をそろえるほか、健康・医療情報に関する新聞記事の切抜や、患者会の資料やパンフレットも配置している[37]。静岡県看護協会と連携し、健康相談会「まちの保健室」も館内で開催している[37]

子ども図書研究室

2004年平成16年)6月18日開室[17]。県内の子どもの読書活動推進や、子どもと本とを結ぶ活動に関わる人々の研究を支援し、コミック、ゲーム攻略本、学習参考書を除く児童図書の全点購入[26]、参考図書の収集・保存を行っている[38]。これは、2001年平成13年)12月の「子どもの読書活動の推進に関する法律」の施行と、2002年平成14年)の「子ども読書活動の推進に関する基本的な計画について」の通知を受けて公表された「静岡県子ども読書活動推進計画」(平成16年1月)に基づくものである[17]2012年平成24年)にリニューアル後は、子ども図書研究室の一部の複本資料(約1万冊)について個人への貸出も行っている[8][39]

ふじのくにアーカイブ

静岡県立中央図書館が所蔵する特殊コレクション、地域資料、県内の市町村立図書館所蔵の一部のデジタル画像を検索し、閲覧することができるデジタルライブラリーである[40]静岡市富士市袋井市磐田市の4市の図書館が参加することにより、それまでの「デジタルライブラリー」から名称を変更しリニューアルした[40]。公開されている資料数は597点(2016年3月現在)、今後参加館を拡大していく予定となっている[41]

静岡県図書館大会

静岡県図書館協会、静岡県読書推進運動協議会と共催して毎年開催している[4][42]。四半世紀にわたり日本一の参加者数で[43]2006年平成20年)に1,000人を超え[4]、以後も参加者数を維持しており、2014年平成26年)12月8日に開催された第22回大会には、1,023人の参加があった[44]

施設概要

3階 会議室、中集会室、小集会室A、小集会室B、展示室[1]
2階 講堂、開架閲覧室[1]
1階 子ども図書研究室、事務室、書庫[1]
地下1階 書庫、車庫[1]
  • 改修による長期休館
    • 2002年平成14年)1月1日-7月31日 地震対策緊急整備工事[8]
    • 2009年平成21年)7月1日-9月30日 インフォメーション棟の耐震補強工事[34]
    • 2009年平成21年)10月1日-2010年平成22年)3月30日 館内の一部を工事のため閉鎖[34]
    • 2012年平成24年)2月1日-3月15日 閲覧室等の空調設備工事、資料棟屋上の防水工事、防火設備の改修、非常用照明設備工事、分電盤の改修等の大規模改修工事[34]

利用案内

開館時間・休館日

  • 土・日・月・火曜日、休日[† 1]・・・午前9時から午後5時[45]
  • 水・木・金曜日(休日を除く) ・・・午前9時から午後7時[45]
  • 休館日
    • 毎月第1、第3、第5月曜日(月の末日に当たる場合を除く。休日に当たる場合は、翌日以降の休日でない最初の日)[45]
    • 毎月月末(土、日、休日に当たる場合は、その前の最も近い土、日、休日でない日)[45]
    • 年末年始 、特別整理期間等[45]
※視聴覚ライブラリーの休館日は上記のほか土・日曜日[45]

県内市町立図書館等への資料返却

県立中央図書館で利用登録して直接借りた資料は、県内の公立図書館で返却することができる(静岡市立図書館は除く。ただし、例外的に静岡市立蒲原図書館には返却できる。)[46]。「県立図書館で借りた本を地元の図書館で返却したい」という要望に応え、1999年平成11年)5月から開始した[47]

インターネット予約による市町立図書館等での受取サービス

静岡県立中央図書館の蔵書をインターネットで予約し、県内の一部の市町立図書館等で受け取ることができるサービス[48]。県民に対する直接サービスであり、従来の相互貸借サービスとは異なる。2015年度(平成27年度)からサービスを開始し、2016年度(平成28年度)に新たに受取可能館が増えた[48]。 貸出カードと連絡用のメールアドレスが必要[48]。なお、貸出カードの登録申込は郵送でも受け付けている[48]

受取が可能な図書館
伊東市立伊東図書館、伊東市立伊東図書館、函南町立図書館、三島市立図書館、沼津市立図書館、

富士市立中央図書館、富士宮市立中央図書館、藤枝市立駅南図書館、掛川市立中央図書館、

磐田市立中央図書館、浜松市立城北図書館、県総合教育センター(あすなろ)図書室[48]

交通アクセス

  • JR草薙駅から
    • 徒歩約25分[49]
    • 静鉄バス「草薙瀬名新田線」で「県立美術館」(所要時間役6分)下車、徒歩約2分[49]
  • 静岡鉄道・県立美術館前駅から
    • 徒歩約15分[49]
    • 静鉄バス「草薙瀬名新田線」で「県立美術館」(所要時間役3分)下車、徒歩約2分[49]
  • 静岡駅前または新静岡バスターミナルから
    • 静鉄バス「県立美術館線」で「県立美術館」(所要時間約30分)下車、徒歩約2分[49]

草薙駅からは傾斜のある登り坂である[50]

関連施設

グランシップ県立図書館コーナー

1999年平成11年)3月、静岡県コンベンションアーツセンター(グランシップ)内に「グランシップ情報ラウンジ・県立図書館コーナー」として開設され、芸術関係の雑誌閲覧や、ビデオテープの貸出を実施していた[17]。その後、名称を「グランシップ県立図書館コーナー」とし、2006年平成18年)からは絵本のみを配置、「えほんのひろば」という愛称でリニューアルした[18]。約5,000冊の絵本の閲覧と貸出ができる[51]

  • 所在地 ・・・〒422-8005 静岡県静岡市駿河区池田79-4
  • 開館時間・・・午前9時30分から午後6時[51]
  • 休館日 ・・・グランシップの休館日に準ずる[51]

歴史文化情報センター

『静岡県史』、『静岡県史研究』、『マンガ静岡県史』、『静岡県史料』、県内各市町村史、など約7,000点の図書・雑誌資料を閲覧できる[52]。また、明治以降県内で発行された「重新静岡新聞」、「函右日報」、「静岡大務新聞」、「静岡民友新聞」、「静岡新報」などの複製写真も閲覧できる[52]。県史編さんの際に使用した資料・写真は、「県史編さん資料管理システム」で検索することができる[52]

  • 所在地・・・〒420-0853 静岡市葵区追手町9-18 静岡中央ビル7階[52]
  • 開館時間・・・午前9時から午後5時(資料の閲覧請求は午後4時30分まで)[52]
  • 休館日 ・・・土・日曜日、国民の祝日、年末年始[52]

(特別整理期間中も歴史文化情報センターは通常通り開館)[52]

脚注

注釈

  1. ^ 国民の祝日、振替休日、国民の祝日に挟まれた日[45]

出典

  1. ^ a b c d e f 図書館報 2016, p. 132.
  2. ^ 図書館報 2016, p. 76.
  3. ^ a b 図書館報 2016, p. 73.
  4. ^ a b c d 土屋 2007.
  5. ^ 清水 2014, p. 136.
  6. ^ a b c d e f g 図書館報 2016, p. 21.
  7. ^ インフォメーションホール”. 静岡県立中央図書館ウェブサイト. 静岡県立中央図書館. 2016年12月16日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j k 図書館報 2016, p. 61.
  9. ^ a b 青木 2012.
  10. ^ a b c d e f 図書館報 2016, p. 22.
  11. ^ a b c 図書館報 2016, p. 23.
  12. ^ 外川 2016, p. 1.
  13. ^ a b c 図書館報 2016, p. 24.
  14. ^ 図書館報 2016, p. 25.
  15. ^ a b c d 鈴木 2001.
  16. ^ a b c d e 草谷 2003.
  17. ^ a b c d 図書館報 2016, p. 26.
  18. ^ a b c 図書館報 2016, p. 27.
  19. ^ 静岡県立中央図書館と富士山関係資料に関する連携協定を締結しました。”. 山梨県立図書館ホームページ. 山梨県立図書館. 2016年12月12日閲覧。
  20. ^ "富士山の資料、互いに利用へ 山梨・静岡の県立図書館が協定"、朝日新聞2015年6月3日朝刊(山梨版)、p.29
  21. ^ 静岡図書館友の会”. 静岡図書館友の会. 2016年12月10日閲覧。
  22. ^ 静岡県立図書館の新館建設についての要望書:本文” (PDF). 静岡図書館友の会 (2016年11月1日). 2016年12月10日閲覧。
  23. ^ 静岡県立図書館の新館建設についての要望書:資料” (PDF). 静岡図書館友の会 (2016年11月1日). 2016年12月10日閲覧。
  24. ^ a b c d e f g h i 渡辺 2013.
  25. ^ a b c d 国史1 1979, p. 36.
  26. ^ a b c d e f g h 所蔵資料・特殊コレクション” (PDF). 静岡県立中央図書館ウェブサイト. 静岡県立中央図書館. 2016年12月16日閲覧。
  27. ^ a b c "葵文庫 戦時疎開の歴史 調査へ"、朝日新聞2014年5月20日朝刊(静岡版)、p.24
  28. ^ 図書館報 2016, pp. 7–10.
  29. ^ a b c d 静岡県の人づくり:草柳大蔵氏の紹介”. 静岡県公式ホームページ. 静岡県 (2014年1月20日). 2016年12月16日閲覧。
  30. ^ a b c 図書館報 2016, p. 18.
  31. ^ a b 図書館報 2016, p. 18,62.
  32. ^ 我是愛国館員”. ともんけんウィークリー. 図書館問題研究会 (2009年6月8日). 2016年12月16日閲覧。
  33. ^ a b c d 図書館報 2007, p. 47.
  34. ^ a b c d e 図書館報 2016, p. 62.
  35. ^ "図書館のビジネス利用を 静岡県立中央図書館で促進セミナーが開講"、静岡新聞2004年8月1日朝刊、p.19
  36. ^ ビジネスコーナー”. 静岡県立中央図書館ウェブサイト. 静岡県立中央図書館. 2016年12月26日閲覧。
  37. ^ a b 健康医療情報”. 静岡県立中央図書館ウェブサイト. 静岡県立中央図書館. 2016年12月24日閲覧。
  38. ^ 子ども図書研究室”. 静岡県立中央図書館ウェブサイト. 静岡県立中央図書館. 2016年12月12日閲覧。
  39. ^ 図書館年鑑 2013, p. 35.
  40. ^ a b 静岡県立中央図書館、デジタルライブラリーを「ふじのくにアーカイブ」としてリニューアル”. カレントアウェアネス・ポータル. 国立国会図書館 (2016年3月29日). 2016年12月16日閲覧。
  41. ^ デジタルライブラリー県内図書館所蔵資料について”. 静岡県立中央図書館ウェブサイト. 静岡県立中央図書館. 2016年12月16日閲覧。
  42. ^ 2016/11/07平成28年度第24回静岡県図書館大会”. 静岡県立中央図書館ウェブサイト. 静岡県立中央図書館. 2016年12月16日閲覧。
  43. ^ 岡本 2016, p. 82.
  44. ^ 図書館年鑑 2015, p. 34.
  45. ^ a b c d e f g ご利用案内”. 静岡県立中央図書館ウェブサイト. 静岡県立中央図書館. 2016年12月10日閲覧。
  46. ^ 資料の返却が可能な施設名”. 静岡県立中央図書館ウェブサイト. 静岡県立中央図書館. 2016年12月12日閲覧。
  47. ^ 関根 2001.
  48. ^ a b c d e インターネット予約による市町立図書館受取サービス”. 静岡県立中央図書館ウェブサイト. 静岡県立中央図書館. 2016年12月16日閲覧。
  49. ^ a b c d e 交通案内”. 静岡県立中央図書館ウェブサイト. 静岡県立中央図書館. 2016年12月24日閲覧。
  50. ^ 図書館報 2016, p. 16.
  51. ^ a b c ご利用案内(グランシップえほんのひろば)”. 静岡県立中央図書館ウェブサイト. 静岡県立中央図書館. 2016年12月12日閲覧。
  52. ^ a b c d e f g ご利用案内(歴史文化情報センター)”. 静岡県立中央図書館ウェブサイト. 静岡県立中央図書館. 2016年12月12日閲覧。

参考文献

書籍

  • 国史大辞典編集委員会 編『国史大辞典』 1巻、吉川弘文館、1979年。 
  • 清水, 麻子『静岡 本のある場所』インプレス、2014年。 
  • 図書館年鑑編集委員会 編『図書館年鑑2013』日本図書館協会、2013年7月。 
  • 図書館年鑑編集委員会 編『図書館年鑑2015』日本図書館協会、2015年7月。 

逐次刊行物

  • 関根, 睦「静岡県立中央図書館の非来館型サービスについて」『みんなの図書館』第285号、教育史料出版会、2001年1月、22-26頁。 
  • 鈴木, 善彦「静岡県立中央図書館の改革と資料費の確保」『図書館雑誌』第95巻第8号、教育史料出版会、2001年8月、558-560頁。 
  • 草谷, 桂子「図書館は立場を越えてよくするもの:静岡県立中央図書館協議会委員の経験から」『みんなの図書館』第314号、教育史料出版会、2003年1月、31-35頁。 
  • 「葵 静岡県立中央図書館報」第41号、静岡県立中央図書館、2007年5月31日。 
  • 土屋, 雅彦「文化の丘の図書館から」『図書館雑誌』第101巻第11号、日本図書館協会、2007年11月、752-753頁。 
  • 青木, 祐一「静岡県立葵文庫とその事業 : アーカイブズの観点から」(PDF)『研究年報』第59号、學習院大學文學部、2012年3月、99-117頁。 
  • 渡辺, 勝「徳川家臣の思いを継いだ「葵文庫」」『図書館雑誌』第107巻第11号、日本図書館協会、2013年11月、698-699頁。 
  • 外川, 志津子「古い日記に見る葵文庫のあの頃」『静岡図書館友の会会報』第15号、静岡図書館友の会、2016年4月。 
  • 葵 静岡県立中央図書館報 50号”. 静岡県立中央図書館. 2016年11月6日閲覧。
  • 岡本, 真「都道府県立図書館白書」『ライブラリー・リソース・ガイド』第17号、アカデミック・リソース・ガイド、2016年11月14日。 

関連項目

ムセイオン静岡

外部リンク