歴史学研究会

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歴史学研究会(れきしがくけんきゅうかい、英名 The Historical Science Society of Japan、略称歴研)は、日本の歴史研究の民間学術団体。戦後はマルクス主義史観が占めた左派歴史学者団体[1][2][3]日本歴史学協会加盟学会[4]

概要[編集]

設立当初は1931年に結成された「庚午会」という東京帝国大学文学部史学科出身の若手有志による会が前身である。「歴史の大衆化」、「歴史の科学的研究」の発展を目的として、翌1932年に設立された。主たる事業として月刊雑誌『歴史学研究[5](1933年創刊)の編集が挙げられる。解散となる昭和19年(1944年)5・6月號までは中立的な歴史観を標榜し、『歴史学研究』の版元は、自社であった。戦後は左派・親ソ・親中・反米・反天皇的な研究者が集まり、マルクス主義史観のイデオロギー偏った歴史観が指摘されているしかし、ソ連視点の史観や中国視点の史観も、韓国批判北朝鮮賛美も、後のスターリン批判とハンガリー事件、大躍進政策、文化大革命、天安門事件、チベット・ウイグル問題、社会主義国家おける国家悪の根深さを暴露されてきたことで、彼らがあたかも無垢の天使でもあるかのように記述や主張してきた社会主義・東側諸国がより間違っていたこと、ソ連崩壊後も反省がないことが指摘されてる[1][3]。1946年6月号 - 1959年3月号は岩波書店、1959年6月号 - 2017年2月号は青木書店、2017年3月号 - 績文堂出版となっている。2015年度時点の委員長は久保亨、事務局住所は東京都千代田区神田神保町2-2千代田三信ビル。

特に朝鮮学校や慰安婦など朝鮮半島関連、反天皇制など左派的な声明活動を行っており2003年に「民族学校出身者に大学受験資格を認めよ」[6]、2007年には「沖縄戦の事実を歪める教科書検定の撤回を求める歴史研究者・教育者のアピール」[7]、2011年には緊急アピール「育鵬社版・自由社版教科書は子どもたちに渡せない」等を表明している[8]。2014年10月15日に『吉田証言の内容の真偽にかかわらず、日本軍が「慰安婦」の強制連行に深く関与し、実行したことは、揺るぎない事実』との意見を含む声明を出した。「強制連行」について、甘言や詐欺、脅迫、人身売買をともなう、本人の意思に反した連行を含むとし、被害者と称する韓国人女性の証言が存在することによって立証されていると主張している[9][注釈 1]。 2015年5月25日には国内16団体の中心となって連名で声明を出し、「安倍政権に対し、過去の加害の事実と真摯に向き合い、被害者に対する誠実な対応をとることを求める」と主張した[10][11]。 中央日報によると、韓国政府はこの声明を受けて、安倍内閣が「内外の歴史学者、有識者の手に委ねるべき」との見解を示していたことを指摘し、「歴史団体がこのような立場を明らかにした以上、日本政府の前向きな対応を期待する」と発言したとされている[12][13][14]

2019年の11月7日即位の礼・大嘗祭に反対し、天皇の政治利用だと批判声明を出している[15]

会綱領[編集]

会綱領として、

  • 第一 われわれは、科学的真理以外のどのような権威をも認めないで、つねに、学問の完全な独立と研究の自由とを主張する。
  • 第二 われわれは、歴史学の自由と発展とが、歴史学と人民との、正しいむすびつきのうちのみにあることを主張する。
  • 第三 われわれは、国家的な、民族的な、そのほかすべての古い偏見をうち破り、民主主義的な、世界史的な立場を主張する。
  • 第四 われわれは、これまでの学問上の成果を正しくうけつぎ、これをいっそう発展させ、科学的な歴史学の伝統をきずきあげようとする。
  • 第五 われわれは、国の内外を問わず、すべての進歩的な学徒や団体と力を合わせ、祖国と人民との文化を高めようとする。

の5項目を定めている。

歴代委員長[編集]

歴代編集長[編集]

歴代事務局長[編集]

共産主義・マルクス主義歴史観との関係[編集]

2001年に三谷博は「戦後日本の歴史学は、かつて日本共産党と不即不離の関係にあった歴史学研究会によってリードされてきた」と指摘している[16]。ただし、三谷博は「歴史学研究会の会員でもなく、その標榜する『科学としての歴史』を信奉しているわけでもない」と述べている[17]

2015年、米学者声明に強い疑問を感じる日本の学者110人が出した声明では、その「米学者声明」を取りまとめたアレクシス・ダデンがインタビューで、「歴史学研究会が2014年12月に出した声明に影響を受けた」と述べていることを受けて、「歴史学研究会は『日米安保条約に反対してきたマルクス主義系の組織』であることを『米学者声明』に参加した学者は知っていたのか」と疑問を呈している[18][19]

2014年に池田信夫は、歴史学研究会を「唯物史観の学会」、歴史学研究会の機関誌『歴史学研究』の版元の青木書店は「共産党御用達」、歴史学研究会の2012年のテーマの「変革の扉を押し開くために-新自由主義への対抗構想と運動主体の形成-」と報告「新自由主義政治転換の構想と主体形成」「アラブ革命の構想力-グローバル化と社会運動-」を「一昔前の労働組合のようなスローガン」、歴史学研究会の科学運動(政府と一部メディアの慰安婦見解批判、集団的自衛権反対、特定秘密保護法案反対、大阪府議会の日の丸掲揚・君が代斉唱起立条例可決抗議)を「まるで朝日新聞の見出し」、日本社会ではマルクス主義は挫折したため、結果歴史学研究会のようなアカデミズムに、「亡霊のように生き残」り、集団的自衛権や秘密保護法というアジェンダが無意味であることに気づかないと評している[20]

竹内洋は大学1回生の時に、日本共産党員だった(かも知れない)歴史学研究会所属の先輩に、『世界』のある論文について話をすると、『世界』など歯牙にもかけない様子で、「『世界』を読んでいる。……傾向はよいが……」と高みから言われたという。あたかも民主社会党よりもマシ程度の扱いだったが、共産党員や日本民主青年同盟の者たちが一方的に持っている『世界』族(共産党員になるほどの勇気はないが「良心的」な左翼の陣営にいたいという進歩的インテリ)に対する優越感だっただろう、と述べている[21]

注釈[編集]

  1. ^ 「家に乗り込んでいって強引に連れて行った」強制連行の事例はインドネシアのスマランや中国の山西省であったと声明で主張されている

脚注[編集]

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  1. ^ a b 池田信夫『戦後リベラルの終焉: なぜ左翼は社会を変えられなかったのか』PHP研究所、2015年5月(日本語)。ISBN 978-4-569-82511-3
  2. ^ ikedanobuo. “左翼歴史学者に残る「性奴隷」の亡霊” (日本語). 池田信夫 blog. 2020年6月28日閲覧。
  3. ^ a b 戦後歴史学 - 法政大学学術機関リポジトリ”. 2020年6月29日閲覧。 “1950 年には『日本の歴史』という研究会独自の教科書を出版していたが、記述内容がマルクス主義理念を多分に含んでいたため、それは帰結的に「社会主義・共産党の礼讃」に陥っていた。その影響は、1963 年に出版された『日本歴史講座』全 8 巻にも及んでいる。”
  4. ^ 日本歴史学協会
  5. ^ 「歴史学研究」(国立情報学研究所収録) 国立情報学研究所
  6. ^ 民族学校出身者に国立大学の受験資格を認めよ
  7. ^ 沖縄戦の事実を歪める教科書検定の撤回を求める歴史研究者・教育者のアピール
  8. ^ 育鵬社版・自由社版教科書は子どもたちに渡せない
  9. ^ 声明 政府首脳と一部マスメディアによる日本軍「慰安婦」問題についての不当な見解を批判する
  10. ^ 「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明
  11. ^ 朝日新聞「加害事実、直視求める声明 慰安婦問題で歴史学16団体」2015年5月26日
  12. ^ 中央日報 2015年05月27日08時36分 韓国政府「日本政府、自国の歴史団体の声を直視すべき」[1]
  13. ^ 中央日報 2014年11月01日09時16分 【社説】日本の歴史学界が認めた慰安婦動員の強制性 [2]
  14. ^ 内閣官房長官記者会見 平成26年10月22日(水)午後(9:20あたりの菅官房長官の発言「この問題については内外の歴史学者、有識者の手に委ねるべきだろう」)
  15. ^ 即位の礼・大嘗祭に反対し、天皇の政治利用を批判する” (日本語). 歴史学研究会. 2020年6月28日閲覧。
  16. ^ 2001年の第1回日韓歴史家会議での発言。板垣雄三歴史家遠山茂樹と東アジア歴史像」『歴史学研究』895号,青木書店,2012年8月,p.8.
  17. ^ 塩川伸明塩川伸明ホームページ』。p10
  18. ^ 慰安婦に関する米学者声明への日本の学者からの返答 事実に基づいた建設的な対話を求めて(「慰安婦の真実」国民運動)
  19. ^ 東洋経済ONLINE 「187人声明」は、"反日"でも"反韓"でもない 実現しなかった「読売新聞への独占提供」 ピーター・エニス :東洋経済特約記者(在ニューヨーク) p.4
  20. ^ 池田信夫 blog 2014年10月19日 [信頼性要検証]
  21. ^ 竹内洋 『革新幻想の戦後史』 中央公論新社、2011年。ISBN 9784120043000 p120

参考文献[編集]

  • 『歴史学研究会40年のあゆみ』 1972年
  • 『歴研半世紀のあゆみ』 1982年
  • 『戦後歴史学と歴研のあゆみ』 1993年
  • 『戦後歴史学を検証する』 2002年
  • 『歴史学研究別冊 総目録・索引 1933 No.1〜2006 No.822』 2007年
  • 『証言 戦後歴史学への道』 2012年
  • 『歴史学のアクチュアリティ』 2013年

関連項目[編集]

外部リンク[編集]