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可能涼介

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かのう りょうすけ

可能 涼介
可能涼介
生誕 (1969-04-10) 1969年4月10日(55歳)
日本の旗 日本兵庫県
出身校 早稲田大学第一文学部
職業 文芸評論家劇作家批評家
配偶者 山田詠美(作家)
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可能 涼介(かのう りょうすけ、1969年4月10日 - )は、日本文芸評論家劇作家批評家精神保健福祉士である。

人物

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兵庫県生まれ。灘中学校・高等学校を経て、早稲田大学第一文学部演劇専修卒業。

劇作家としての作品に『反論の熱帯雨林』、『不可触高原』(第一部「地平線の音階」、第二部「水平線の標的」、第三部「黒い虹/白い紙」)などがあり、また、上演不可能な戯曲「頭脳演劇」を書き続けている。自身では、作品の源流に埴谷雄高の『死霊』があるとしている[1]

経歴

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1995年平成7年)、阪神・淡路大震災をめぐるエッセイ「被災地やぶれかぶれ」を『テアトロ』(1995年4月号)に寄稿して文壇にデビューした[2]。活字化された作品の中で最も古いものは1986年昭和61年)の「異音集」である。

また、1990年代半ばには、批評家として雑誌『SPA!』誌等で書評を書き始め、2007年度には『週刊読書人』紙上で文芸時評を連載。更に翌2008年度には『文學界』誌において新人小説の月評を担当した。これら十数年の成果をまとめ、2009年『圧縮批評宣言』を出版。帯には島田雅彦が「可能は脳死状態にある文芸批評の蘇生を図り、近代文学の延命に貢献している」との一文を寄せている。巻末に収められた座談会では椹木野衣大竹伸朗論」に言及、これに対する椹木の応答が「美術と時評 第1回大竹伸朗の現在はどこにあるのか」である

1999年(平成11年)、結城座が「アンチェイン・マイ・ハート」(『不可触高原』の第一部と第三部に基づく)を上演。宮台真司が「幼少期以来の「右翼マインド」を刺激された」と評する[3]

作家としての処女小説は、『はじまりのことば』で、同書は「2001年度・第13回読書感想画中央コンクール指定図書」に選出されている。また、『演劇誌キマイラ』(1998年)、『重力01』(2002年)、web誌『キャロル(仮)』(2004-07年)の編集委員を務めた。

2014年(平成26年)10月1日から5日にかけて、江戸糸あやつり人形座(結城座出身の結城一糸らが結成)が「人間人形世代」(活字版は「紳士淑女名鑑」。『圧縮文学集成』所収)を上演した[4]

私生活

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2011年(平成23年)11月、作家・山田詠美と結婚した[5]。また、2012年(平成24年)3月には精神保健福祉士の資格を取得した。これに伴って精神医療をテーマとした書籍の書評も手がけている。2019年令和元年)10月には公認心理師の資格も取得した。

著書

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  • 『反論の熱帯雨林 可能涼介戯曲集 1』(テアトロ)1996年

「反論の熱帯雨林」、「架空のオペラ」、「季節の地獄」、「異音集」の4作を収める。解説は川村毅、帯文は西堂行人の手になる。

  • 『はじまりのことば』(理論社)2001年

 帯文は室井佑月枡野浩一

  • 『圧縮批評宣言』(論創社)2009年

 1995年から2009年にかけて発表した文芸時評などを集めた単行本。他に「頭脳演劇」についての文章があり、音楽評論・映画評論も収められている。巻末には島田雅彦との対談、絓秀実らとの座談会が付されている。

  • 『圧縮文学集成』(論創社)2010年

 帯文:柄谷行人(可能性の文学がここにある。)、康芳夫
第一部 小説「エピファニー」(『はじまりのことば』の続編を含む)、第二部 戯曲/詩篇(戯曲:『不可触高原』ほか、詩篇:「異音集」)、第三部 エッセイ。
なお、『反論の熱帯雨林 可能涼介戯曲集 1』が入手困難となったため、第二部に「反論の熱帯雨林」、「架空のオペラ」、「季節の地獄」が収録されている。

書評

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(精神・心理分野の本に限ったもの)

  • 「心の病の諸相を『貫く棒の如きもの』」(「週刊読書人」2005年11月11日号)

 岡田尊司『誇大自己症候群』(ちくま新書)書評☆

  • 「八十歳、海へ」(「週刊読書人」2012年9月7日号)

 木村敏『臨床哲学講義』(創元社)書評

  • 「だらだらと傷つく時代に」(「週刊読書人」2012年11月30日号)

 野間俊一『解離する生命』(みすず書房)書評

  • 「今こそ振り返るべき『歴史』」(「週刊読書人」2013年10月18日号)

 中村治『洛北岩倉と精神医療』(世界思想社)書評

  • 「精神医療のダブルシンク」(「週刊読書人」2014年5月23日号)

 立岩真也『造反有理』(青土社)・最相葉月『セラピスト』(新潮社)書評

  • 「海とプロット」(「週刊読書人」2015年1月9日号)

 木村敏『あいだと生命』(創元社)書評

  • 「精神科医の生態を読む」(「週刊読書人」2015年5月8日号)

 深尾憲二朗・村井俊哉・野間俊一編『精神医学のおくゆき』(創元社)書評

  • 「抑圧されたものの回帰」(「週刊読書人」2015年9月11日号)

 宮内悠介『エクソダス症候群』(東京創元社)書評

  • 「「諦念」が「明察」を生み出す」(「週刊読書人」2016年3月18日号)

 春日武彦『鬱屈精神科医、占いにすがる』(太田出版)書評

  • 「その時と場所に応じた理論と実践」(「週刊読書人」2016年7月1日号)

 ジャン・ウリ『精神医学と制度精神療法』(春秋社)書評

  • 「定型発達に先行するもの」(「週刊読書人」2017年10月20日号)

 相川翼『自閉症の哲学』(花伝社)書評

  • 「世に棲む思想家たち」(「週刊読書人」2018年3月23日号)

 山竹伸二『こころの病に挑んだ知の巨人』(ちくま新書)書評

  • 「症例を読む醍醐味」(「週刊読書人」2018年11月2日号)

 松本卓也『症例でわかる精神病理学』(誠信書房)書評

  • 「悲しみを解剖する試み」(「週刊読書人」2019年1月25日号)

 ルイス・ウォルパート(白上純一訳)『ヒトはなぜうつ病になるのか』(ミネルヴァ書房)書評

  • 「宙吊りの未来図―ディストピアとして描き出す―」(「週刊読書人」2020年1月17日号)

 岡田尊司『ネオサピエンス 回避型人類の登場』(文藝春秋)書評

  • 「何度でも考え直す 他の史家が目を背けるダークサイドに果敢に踏み込む」(「週刊読書人」2021年1月1日号)

 小俣和一郎『精神医学の近現代史 歴史の潮流を読み解く』(誠信書房)書評

  • 「心理職はいかに鍛えられたか 現場で働く者たちの声を集める」(「週刊読書人」2022年7月22日号)

 井上博文・吉山宜秀・藤本健太朗『心理職大全 公認心理師・臨床心理士の資格取得から就職まで』(東京図書)書評

  • 「「化ける」ための試行錯誤 ある特殊な精神療法について」(「週刊読書人」2022年11月18日号)

 ピエール・ドゥリオン(池田真典・永野仁美・野崎夏生・三脇康生訳)『人間の精神医学のための闘い 発達障害の専門家は語る』(晃洋書房)書評

  • 「自己愛から考える精神・心理」(「週刊読書人」2023年5月19日号)

 手塚千恵子『社会のストレスとこころ』(木立の文庫)書評

共著

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 「ビートたけし全著作解題」「ビートたけし参考文献」を寄稿☆。

 

馳星周京極夏彦らの項を担当※。

 「矢沢永吉について」を寄稿☆。

  • 『文藝別冊 J文学をより楽しむためのブックチャートBEST200』(河出書房新社)1999

 

向井豊昭『BARABARA』、蓮實重彦『オペラ・オペラシオネル』などの書評を担当※。

  • 『文藝別冊 ニーチェ』(河出書房新社)2000

 「私がニーチェだった頃」を寄稿※。

  • 『重力01』(青山出版社)2002

 発刊討議「「重力」は何をしようとしているのか?(前)」に参加。

  • 『文藝別冊 中上健次』(河出書房新社)2002

 「礼儀正しい宇宙人」を寄稿☆。

  • 『文藝別冊 小林秀雄』(河出書房新社)2003

 「二回生きること 『小林秀雄をこえて』をこえて」を寄稿※。
なお、『小林秀雄をこえて』は柄谷行人と中上健次の対談集である。

 「陰謀文学者としての村上春樹」を寄稿☆。本書は中国語及び韓国語に翻訳された。

  • 『文藝別冊 寺山修司の時代』(河出書房新社)2009

 「テラヤマから遠く離れて」を寄稿☆。

 「最も愛する者だけが」を寄稿。

※印が付いているものは後に『圧縮批評宣言』に収録された。
☆印が付いているものは後に『圧縮文学集成』に収録された。

インタビュー

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  • 春風ひとみ「タカラヅカの底力」(『文藝別冊 タカラヅカ』1998年)
  • 高見広春「殺す理由、殺さない理由」(『ユリイカ1999年12月号』)
  • 古井由吉「雑誌、同人誌の構想と現実」(市川真人との共同インタビュー、『重力01』2002年)
  • 山田詠美「言葉が世界を変える」(『週刊読書人 2010年11月19日号』)

脚注

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  1. ^ 『圧縮批評宣言』p.30。また、「頭脳演劇」については同書に収められた「頭脳演劇宣言」(初出は『ユリイカ1996年5月号 ハイナー・ミュラー特集号』)を参照。
  2. ^ 『圧縮批評宣言』所収
  3. ^ 宮台真司・宮崎哲弥『M2 われらの時代に』(朝日文庫)p.127
  4. ^ 「人間人形世代」チラシ
  5. ^ 『毎日新聞』2012年1月24日号朝刊に掲載。

関連項目

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外部リンク

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