ルナ25号
 ルナ25号月着陸船のイメージ図 | |
| 名称 | ルナ・グローブ着陸船 |
|---|---|
| 任務種別 | 技術実証, 探査 |
| 運用者 | ロシア宇宙科学研究所 |
| COSPAR ID | 2023-118A |
| 任務期間 | 9日（計画では1年[1]） |
| 特性 | |
| 宇宙機種別 | 探査機 |
| 製造者 | S・A・ラヴォーチキン記念科学製造合同 |
| 打ち上げ時重量 | 1,750 kg (3,860 lb)[2] |
| ペイロード重量 | 30 kg (66 lb) |
| 任務開始 | |
| 打ち上げ日 | 2023年8月10日23:10 (UTC)[3] |
| ロケット | ソユーズ2.1b / フレガート[4] |
| 打上げ場所 | ボストチヌイ宇宙基地[5] |
| 任務終了 | |
| 破壊 | 2023年8月19日11:57 (UTC) |
| 月着陸船 | |
| 着陸 | 2023年8月19日11:57 (UTC) (墜落) |
| 着陸地点 | ボグスラフスキークレーター (計画)[6][7] |
ルナ25号（ロシア語: Луна-25, 英語: Luna 25）[8]は、ロシアのロスコスモスによって計画された月探査計画である。ルナグローブ着陸船としても知られる。月の南極付近にあるボグスラフスキークレーターに着陸予定であった[2]。
ロシアにとって旧ソ連時代の1976年のルナ24号以来、半世紀ぶりとなる月探査機であった。ルナ計画からの継続性を強調するためにルナグローブ着陸船からルナ25号に名称を変更されたが、ルナグローブ計画の一部である。
打ち上げは2023年8月11日に行われた[9]。月周回軌道に到達するも、着陸前に月面に墜落し失敗に終わった[10]。
歴史[編集]
現在のルナ25号の初期計画は1990年代後半に始まり、1998年までに2つの宇宙船の設計評価行われた。
このプロジェクトを復活させようとする試みは2000年代を通して続き、JAXAのLUNAR-A月探査機との併合による国際協力の中止やインド宇宙研究機関 (ISRO) との月探査協力に対する外部からの圧力によって中断された[11]。
2010年代における計画の遅れは、2011年のフォボス・グルントの失敗による大幅な修正と遅延から始まった。
その後の着陸船の開発は、ロシアがエクソマーズ2020のプラットフォームを提供していることや[12]、気象衛星Elektro-L No.2とSpektr-RG望遠鏡の開発者であるS・A・ラヴォーチキン記念科学製造合同のリソースが逼迫していることから遅れていった[13]。
2023年8月11日、ボストチヌイ宇宙基地からソユーズ2.1bロケットとフレガート上段を使用して打ち上げられた[15][6]。16日には月周回軌道への投入に成功、21日に着陸予定であったが、19日に軌道遷移のためのエンジン噴射を行った後に通信が途絶[10]。エンジン噴射のパラメータの誤りで予定外の軌道に遷移してしまい、月面に衝突して機体は失われたとみられている[10]。
同年8月21日、ロスコスモスのボリソフ社長はロジア国営テレビのインタビューに対し、84秒間の予定だった軌道修正のエンジン噴射について、停止が43秒遅れて127秒間噴射しつづけたことが衝突の原因であることを明かした。またルナ24号以来、約半世紀にわたり月面着陸が実施されなかったことも要因として挙げた。[16]
ミッション[編集]
当初のミッション計画はランダーとオービターで構成され後者には衝撃貫通装置も搭載予定であった。
その後ルナ25号は着陸船のみとなっており、着陸技術の実証を主な任務としていた。
このミッションには、土壌サンプルのためのロボットアームや掘削装置を含む30 kgの科学機器が搭載された[2][17]。
搭載機器[編集]
以下の9つの測定機器から構成される33 kgのペイロードが搭載されていた[18][1]。
- ADRON-LR
- レゴリス内の中性子及びガンマ線分析
- ARIES-L
- 大気圏外のプラズマ測定
- LASMA-LR
- レーザ質量分析
- LIS-TV-RPM
- 鉱物の赤外分光分析及び撮影
- PmL
- THERMO-L
- レゴリスの熱特性の測定
- STS-L
- パノラマ及びローカル撮影
- Laser retroreflector
- 月の秤動と測距実験
- BUN
- 電源及び科学データの支援
スェーデンのLINA-XSANはルナ25号と共に打ち上げ予定であったが、打ち上げ延期のため計画を中止し2019年に嫦娥4号で打ち上げられた。
欧州宇宙機関 (ESA) のPILOT-Dナビゲーション実証カメラはこのミッションで打ち上げ予定であったが、2022年のロシアによるウクライナ侵攻とそれに関するロシアへの制裁によって国際協力の継続が疑問視されたため[19]、既に調達済みの商業サービスプロバイダによって打ち上げが行われた[20][21]。
関連項目[編集]
出典[編集]
- ^ a b Carter (2019年7月26日). “A Soviet-Era "Moon Digger" Program Is Being Revived To Hunt For Water At The Moon's South Pole”. Forbes. 2020年1月14日閲覧。
- ^ a b c Krebs (2019年12月3日). “Luna-Glob (Luna 25)”. Gunter's Space Page. 2020年1月14日閲覧。
- ^ “Запуск первой в истории современной России миссии на Луну запланировали на 11 августа” [The launch of the first mission to the Moon in the history of modern Russia was scheduled for August 11] (ロシア語). TASS (2023年6月5日). 2023年6月5日閲覧。
- ^ Mitrofanov, Igor. "Luna-Glob" and "Luna-Resurs": science goals, payload and status (PDF). EGU General Assembly 2014.
- ^ “Запуск станции «Луна-25» запланирован на май 2022 года” [The launch of the Luna-25 spacecraft is scheduled for May 2022] (ロシア語). Roscosmos (2021年8月10日). 2021年8月10日閲覧。
- ^ a b “Россия запустит космический аппарат на Луну 1 октября 2021 года” (ロシア語) (2020年3月17日). 2020年3月18日閲覧。
- ^ Russia's Luna-25 lunar landing station scheduled for 2019 Russian Aviation 25 January 2018
- ^ “Missions to the Moon”. The Planetary Society. 2020年1月14日閲覧。
- ^ “ロシア、月探査機「ルナ25号」打ち上げ成功 月面着陸は8月21日の予定”. sorae. 2023年8月21日閲覧。
- ^ a b c “【速報・更新】ロシアの月探査機「ルナ25号」で問題発生 月面に衝突か”. sorae (2023年8月20日). 2023年8月23日閲覧。
- ^ Zak (2019年6月19日). “Luna-Glob project”. RussianSpaceWeb.com. 2020年1月14日閲覧。
- ^ Zak (2018年1月12日). “Development of the Luna-Glob project in 2014 and 2015”. RussianSpaceWeb.com. 2018年3月15日閲覧。
- ^ Zak (2017年12月11日). “Luna-Glob (Luna-25) project in 2013”. RussianSpaceWeb.com. 2018年3月15日閲覧。
- ^ Zak (2018年3月31日). “Luna-Glob's stop and go”. RussianSpaceWeb.com. 2020年1月14日閲覧。
- ^ “Запуск миссии "Луна-25" с космодрома Восточный запланировали на 22 августа” (ロシア語). RIA Novosti (2022年4月8日). 2022年4月8日閲覧。
- ^ “エンジンの停止遅れで月面衝突 ロシア探査機の軟着陸失敗”. 共同通信. (2023年8月22日) 2023年8月23日閲覧。
- ^ Zak (2019年10月9日). “The Luna-Glob lander”. RussianSpaceWeb.com. 2020年1月14日閲覧。
- ^ “Luna-25 (Luna-Glob Lander) Payload”. Iki.rssi.ru. 2023年8月23日閲覧。
- ^ Witze, Alexandra (11 March 2022). “Russia's invasion of Ukraine is redrawing the geopolitics of space” (英語). Nature. doi:10.1038/d41586-022-00727-x. PMID 35277688 2022年3月13日閲覧。.
- ^ “ESA's PROSPECT lunar drill (originally scheduled to fly on Luna-27) will now fly on a NASA CLPS mission. ESA's PILoT-D (originally planned for Luna-25) navigation camera is "already being procured from a commercial service provider."” (英語). Twitter. 2022年4月14日閲覧。
- ^ “Redirecting ESA programmes in response to geopolitical crisis” (英語). www.esa.int. 2022年4月14日閲覧。
外部リンク[編集]
- “Flight of Luna 25 to the Moon” (Russian). spec.tass.ru. 2023年7月26日閲覧。
- Lunar and Planetary Department Moscow University
- Soviet Luna Chronology
- Exploring the Moon: Luna Missions
