モール泉
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モール泉(モールせん)とは、植物起源の有機質を含んだ温泉のこと。モール温泉ともいう。
概要[編集]
モールとは、ドイツ語で亜炭などを含む泥炭 (Moor) のこと。北海道十勝支庁(現・十勝総合振興局)管内音更町の十勝川温泉で20世紀初頭に名付けられた。平成前期までは十勝川温泉、及びドイツ連邦共和国のバーデン=バーデンの、世界で2か所しか確認されていなかったが、その後、別地でもモール成分を含んだ温泉が確認され始めた。
温泉法に基づくの療養泉の分類についての泉質とは全く別の概念である。療養泉の分類上では単純温泉や塩化物泉、炭酸水素塩泉などであり、効能などはそれぞれに準じる。
石炭の形成途上であり炭化が進んでいない泥炭や亜炭層から源泉を汲み上げるため、植物起源の有機質を多く含み、肌に触れるとツルツルとした感触があるのが特徴だが、効能としては認められていない。湯色は飴 - コーラ色を呈し、黒湯(褐色湯)のように透明度が極めて低い湯もある。
これらのうちの一部は、源泉が地下10メートル前後と極めて浅い層からでも得られること、湯温も30度前後と低いことなどから、地下に封入された化石水による温泉ではなく、自由水が泥炭中の有機物から生じる熱で暖められているのではないかという説がある。
日本国内ではモール泉の名は一般的ではないため、一般への分かりやすい解説として「後数万年経てば石油に代わる温泉」や「石油になる一歩手前の温泉」と表現されることがある。
日本のモール泉[編集]
- 北海道十勝総合振興局の帯広市、音更町、士幌町、幕別町、芽室町と広範に存在する。
- 釧路湿原周辺では鶴居村、弟子屈町、別海町、標茶町に点在している。
- オホーツク総合振興局では斜里郡に点在。
- 札幌市 森林公園温泉きよら
- 石狩平野周辺の千歳市、恵庭市、北広島市、南幌町、由仁町などに点在。
- 青森県青森市(旧南津軽郡浪岡町)、上北郡東北町。
- 宮城県大崎市の東鳴子温泉。
- 山形県朝日町のりんご温泉
- 秋田県大潟村
- 福島県南部一帯。
- 東京都(大田区、品川区、港区)、川崎市、横浜市などに点在。大田区のモール泉については、「大田区の黒湯温泉」を参照。
- 神奈川県鎌倉市の稲村ヶ崎温泉
- 佐渡市の佐和田温泉、仙道温泉。
- 富山県中新川郡上市町のアルプスの湯、富山市水橋温泉など富山平野東部。
- 金沢市の深谷温泉をはじめ市内、白山市(旧美川町)や津幡町に存在する。
- 山梨県の甲府盆地一円。甲府市、山梨市などに存在する。
- 長野県の諏訪湖周辺の上諏訪温泉などの一部施設に存在する。
- 静岡県の遠州地方の牧之原市、掛川市、袋井市、磐田市、浜松市舘山寺温泉などの一部施設に存在する。
- 愛媛県八幡浜市[2]。中国・四国地方初のモール泉。
- 福岡県大川市の大川温泉はフルボ酸を含むモール泉
- 熊本県人吉市や鹿児島県湧水町、宮崎県えびの市に点在する。
- 別府湾・大分平野・大分川中流域に沿って広がっており、大分市、由布市、別府市北浜地区の一部に存在する。「大深度地熱温泉」・「挾間温泉」・「庄内温泉」・「別府温泉」を参照のこと。
脚注[編集]
- ^ モール温泉NPO法人北海道遺産協議会事務局
- ^ 八幡浜黒湯温泉みなと湯