ハミルトン級カッター

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ハミルトン級カッター
USCGC Midgett -b.jpg
「ミジェット」 (WHEC-726)
船級概観
船種 WHEC: 長距離用カッター
(High Endurance cutter)
就役期間 1967年 - 現在
前級 オワスコ級英語版
次級 バーソルフ級
性能諸元
排水量 基準2,716トン / 満載3,050トン
全長 115.37 m
全幅 13.06 m
吃水 4.27 m
機関 CODOG方式
FM社製 38TD8-1/8-12ディーゼルエンジン(3,500 hp) 2基
P&W社製FT4A-6ガスタービンエンジン(18,000 hp) 2基
スクリュープロペラ 2軸
隠顕式サイドスラスター (350 shp) 1組
航続距離 ディーゼル推進時:
14,000海里 (12ノット巡航時)
ガスタービン推進時:
9,600海里 (19ノット巡航時)
速力 最大29ノット
電力 計 1,500kW
乗員 167名

ハミルトン級カッター(ハミルトンきゅうカッター、英語: Hamilton-class cutter)は、アメリカ沿岸警備隊が運用する長距離カッターHigh Endurance cutter, WHEC)の艦級[1][2][3][4]

1960年代後半から1970年代前半にかけて就役した大型の哨戒艦であり、法執行任務、防衛任務、そして長距離捜索救難任務などを担当している。同型船は12隻。現在、後継となるバーソルフ級の建造が進んでいる。

設計[編集]

船体は鋼製の溶接構造、上部構造はアルミニウム合金製とされている。船首形状はクリッパー・バウとされた[1]。なお、気象学海洋学のための研究室が設置されている[2]

本級は、アメリカ軍の軍艦として初めてガスタービン主機関を搭載しており[3]海軍スプルーアンス級駆逐艦が就役するまでは、アメリカ軍としては最大のガスタービン主機搭載艦でもあった[1]。主機関はCODOG方式とされており、巡航機としてフェアバンクス・モース社製38TD8-1/8-12ディーゼルエンジン、高速機としてプラット・アンド・ホイットニー社製FT4A-6ガスタービンエンジンを搭載し、減速機を介して2軸の可変ピッチ・プロペラを駆動する。また精密な操艦が求められる場合に備えて、艦首に隠顕式サイドスラスターも装備している[2]

装備[編集]

新造当初、レーダーとしては、対空捜索用のAN/SPS-29Dと対水上捜索用のAN/SPS-51を備えており、また艦砲38口径127mm単装砲Mk.56 砲射撃指揮装置(GFCS)と組み合わせて搭載した。ソナーとしては、海軍のAN/SQS-35可変深度ソナーを船底装備式に改めたAN/SQS-36を搭載し、後に改良型のAN/SQS-38に更新した。対潜兵器としては、当初は初期建造船のみヘッジホッグ対潜迫撃砲を備えていたが、1970年よりこれは撤去され、全船がMk.32 mod.7 3連装短魚雷発射管とこのためのMk.309水中攻撃指揮装置を順次に搭載していった[1]

本級は、アメリカ沿岸警備隊の長距離カッターとしては初めて、建造当初よりヘリコプターを搭載するように設計されている。 小型の艦でヘリコプターを運用する必要上、ヘリコプター甲板は艦の中央部に設けられており、長さ26.82メートル×幅12.2メートルを確保した[2]。またその直前、2本の煙突の間に設けられたハンガーにはHH-52A救難ヘリコプターを収容できた[3]。ただしその後、ハンガーは閉鎖されたが、ヘリコプター甲板は維持された[2]

その後、1985年から1992年にかけて、本級はアメリカ本土防衛の重要な戦力として装備を強化するFRAM(延命・近代化改修)を受けた。JMCISをもとにした戦術情報処理装置としてSSCS-378が搭載されたが、これはMX-512端末によりリンク 11を運用でき、海軍戦術情報システム(NTDS)に加入することができる。またAN/WSC-3衛星通信装置も搭載された[5]。主砲およびGFCSは、海軍のオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートと同じ、62口径76mm単装速射砲(Mk.75 3インチ砲; 76mmコンパット砲)およびMk.92に変更されたほか、対空レーダーはAN/SPS-40に換装され、Mk.15 20mmCIWS 1基を追加搭載するなど、防空力は大幅に増強された。ただし、電波探知装置(ESM)をAN/SLQ-32に更新する計画は実現せず、6隻がAN/WLR-1H(V)7へのアップデート改修を受けるに留まった[4]

この際に、入れ子式の部分を追加してハンガーも復活しており、ここには救難用のHH-65 ドルフィンまたはHH-60J ジェイホークが搭載されたほか、有事にはSH-2 シースプライトLAMPS Mk.Iヘリコプターの搭載も想定されており、これに対応するためソノブイ情報伝送用のデータ・リンクおよびAN/SQR-17A(V)1ソノブイ信号処理装置も装備した。しかし冷戦終結を受けて、1992年7月、LAMPS用装備やソナー、対潜兵器などの対潜戦装備を全て撤去する決定が下された[4]

また全船にハープーン艦対艦ミサイルの運用能力が与えられ、1990年1月16日には、3番船の「メロン」(WHEC-717)において初の実射が行われた[2]。ただし実際にミサイルを搭載したのは5隻のみであり、これらも2001年までに撤去されたが、運用能力は維持されているものとされている[4]

兵装・電装要目[編集]

新規建造時 FRAM改修後
兵装 38口径127mm単装砲×1基 62口径76mm単装速射砲×1基
70口径20mm単装機銃×2基 Mk.38 25mm単装機銃×2基
Mk.15 20mmCIWS×1基
M2 12.7mm単装機銃×4基
ハープーンSSM 4連装発射筒×2基
※後に撤去
ヘッジホッグ対潜迫撃砲 Mk.32 3連装短魚雷発射管×2基
※後に撤去
艦載機 HH-52A シーガード
救難ヘリコプター×1機
HH-65 ドルフィン or
HH-60J ジェイホーク×1機
レーダー AN/SPS-29D 対空捜索用 AN/SPS-40B 対空捜索用
AN/SPS-51 対水上捜索用 AN/SPS-73 対水上捜索用
ソナー AN/SQS-36 艦底装備式 AN/SQS-38 艦底装備式
※1990年代後半に撤去
GFCS Mk.56 Mk.92 mod.1
電子戦 AN/WLR-1C 電波探知装置(ESM) AN/WLR-1H(V)5/7 電波探知装置(ESM)
AN/WLR-3 レーダー警報受信機(RWR)
Mk.137 6連装デコイ発射機×2基

配備[編集]

当初は36隻におよぶ大量建造が計画されていたが、実際に建造されたのは12隻に過ぎなかった[2]

基本的にアメリカ周辺海域での法執行任務や捜索救難任務にあたっているが、ベトナム戦争においてはアメリカ沿岸警備隊第3戦隊としてマーケット・タイム作戦に参加して沿岸での海上阻止行動を実施した。また、1990年代以降は、アメリカ海軍の戦力削減を受けて、空母戦闘群の護衛艦として加わるようになり、1996年バルト海諸国海軍合同演習(BALTOPS 96)に「ギャラティン」が、さらには1999年には空母打撃群の一員として「ミジェット」が参加した。さらに近年では、海外においてアメリカ海軍艦船に対するテロを防ぐという任務も付与されており、海軍との合同作戦の頻度は増えている。

2008年8月20日米国務省のウッド副報道官代理は、南オセチア紛争で被害を受けたグルジアへの人道復興支援のため、「ダラス」を始め、アメリカ海軍第6艦隊旗艦ブルー・リッジ級揚陸指揮艦マウント・ホイットニー」及び同艦隊所属のイージス駆逐艦マクファール」の3隻に人道支援物資を積載した上で黒海に派遣する事を発表した[1][2]

退役したカッターは他国の海軍艦艇として再就役したものがあり、2011年3月に退役した2隻はフィリピン海軍ナイジェリア海軍2013年3月と10月の2隻はフィリピン海軍、バングラデシュ海軍と、それぞれの仕様に改修・改装が行われ、所属国のフリゲートとして再就役している。このうち、フィリピン海軍でグレゴリオ・デル・ピラール級フリゲートとして再就役した船は、南シナ海への海洋進出を強行する中国海軍に対抗するために、フィリピン海軍の「虎の子」として有事の際に活躍が想定される他、優美な外観から東南アジア周辺海域における多国籍共同演習において、各国の軍幹部を外交儀礼としての訪問を受ける際にホストシップとしても活用されている。


同型艦[編集]

 アメリカ沿岸警備隊 退役/再就役後
# 艦名 起工 就役 母港 退役 再就役先 # 艦名
WHEC-715 ハミルトン
USCGC Hamilton
1965年
11月23日
1967年
2月20日
カリフォルニア州
サンディエゴ
2011年
3月28日
 フィリピン海軍 FF-15 グレゴリオ・デル・ピラール
BRP Gregorio del Pilar
WHEC-718 チェイス
USCGC Chase
1966年
10月15日
1968年
3月1日
2011年
3月29日
 ナイジェリア海軍 F-90 サンダー
NNS Thunder
WHEC-717 メロン
USCGC Mellon
1966年
7月25日
1967年
12月22日
ワシントン州
シアトル
 アメリカ沿岸警備隊で就役中
WHEC-726 ミジェット
USCGC Midgett
1971年
4月5日
1972年
3月17日
WHEC-719 バウトウェル
USCGC Boutwell
1966年
12月12日
1968年
6月14日
カリフォルニア州
アラメダ
2016年
3月16日
 フィリピン海軍 FF-17 アンドレス・ボニファシオ
BRP Andrés Bonifacio
WHEC-720 シャーマン
USCGC Sherman
1967年
2月13日
1968年
8月23日
 アメリカ沿岸警備隊で就役中
WHEC-722 モーゲンソー
USCGC Morgenthau
1967年
7月17日
1969年
2月14日
2017年
4月18日
ベトナム海上警察 CSB 8020
WHEC-716 ダラス
USCGC Dallas
1966年
2月7日
1967年
10月1日
サウスカロライナ州
チャールストン
2012年
3月30日
 フィリピン海軍 FF-16 ラモン・アルカラス
BRP Ramon Alcaraz
WHEC-721 ギャラティン
USCGC Gallatin
1967年
4月17日
1968年
12月20日
2014年
3月31日
 ナイジェリア海軍 F-93 NNS Okpabana
WHEC-723 ラッシュ
USCGC Rush
1967年
10月23日
1969年
7月3日
ハワイ州
ホノルル
2015年
2月3日
 バングラデシュ海軍 F-29 サムドラ・アヴィジャン
BNS Somudra Avijan
WHEC-725 ジャーヴィス
USCGC Jarvis
1970年
9月9日
1971年
12月30日
2012年
10月2日
F-28 サムドロ・ジョイ
BNS Somudro Joy
WHEC-724 マンロー
USCGC Munro
1970年
2月18日
1971年
9月10日
アラスカ州
コディアック
 アメリカ沿岸警備隊で就役中

画像集[編集]

参考文献・外部リンク[編集]

  1. ^ a b c d John E. Moore, ed (1975). Jane's Fighting Ships 1974-1975. Watts. p. 516. ASIN B000NHY68W. 
  2. ^ a b c d e f g Bernard Prezelin (1990). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 1990-1991. Naval Institute Press. pp. 891-892. ISBN 978-0870212505. 
  3. ^ a b c Robert Gardiner, ed (1996). Conway's All the World's Fighting Ships 1947-1995. Naval Institute Press. p. 632. ISBN 978-1557501325. 
  4. ^ a b c d Eric Wertheim (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. p. 911. ISBN 978-1591149545. 
  5. ^ Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. ISBN 9781557502629. http://books.google.co.jp/books?id=4S3h8j_NEmkC. 

関連項目[編集]