JOTS

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JOTSの後継機種であるGCCS-Mの端末。

統合作戦戦術システム英語: USQ-112 JOTS, Joint Operational Tactical System)は、アメリカ海軍が運用していた作戦級の指揮用C4Iシステム。1981年より運用を開始し、改良を重ねたのち、発展型のUSQ-119A~D JMCIS (Joint Maritime Command Information System) 、さらにGCCSとの連接に対応したUSQ-119E(V) GCCS-M (Global Command and Control System - Maritime) によって更新された。現在、アメリカ全軍で使用されているGCCSの基礎となったシステムであり、アメリカ軍C4I改革のブレークスルーとして知られている。

概要[編集]

USQ-112 JOTSは、ジェリー・O・タトル提督によって開発されたC4Iシステムであり、のちにアメリカ全軍で採用されるGCCSの基礎となった。軍用仕様(MIL規格)に拘らず、性能に優れた民生品を積極的に採用し、また、後にコペルニクスC4Iコンセプトとして海軍全体で採択されることになるシステム哲学に基づき、各種のデータリンクや衛星通信などを次々にサブシステムとして組み込むことで、極めて柔軟かつ包括的なC4Iシステムとなった。なお、このシステムの名称は、その創設者であるタトル提督の名前から、ジェリー・オー・タトル・システム(Jerry. O. Tuttle System)の略であると称されることもある。

JOTS I[編集]

1970年代、アメリカ海軍の一部では、ヒューレット・パッカード社製のプログラム可能な卓上計算機によって、潜水艦捜索計画などの立案を行なうことが行なわれていた。当時、既にもっと大掛かりで高性能な戦術情報処理装置NTDSなど)は配備されていたが、軍制式のそれらの情報処理装置より、低性能ではあっても柔軟性に優れたHP社製の電卓のほうが優れていた状況もしばしば発生した。

これに注目したのが、のちにアメリカ軍C4I改革の父と呼ばれることになるジェリー・O・タトルであった。1981年、第8空母機動任務群司令で あったタトル少将は、司令部用の部隊管理費から捻出した2万5000ドルの資金と3人の部下を使い、艦隊で開発・使用中の数々の計算機用プログラムを、共通のコンピュータ・アーキテクチャに則ったシステムとして開発した。しかし、この時点で採用されていたHP社製の9845B型コンピュータは、性能面で、タトルの要求にはとうてい答え得なかった。

まもなく、ヒューレット・パッカード社は、機能を大幅に増強したコンピュータ9020を開発し、また、タトルも新たな援助資金を獲得した。タトルは、上記のシステムを1ヵ月でカラー表示に対応させ、海軍大学でデモンストレーションして大反響を呼んだ。これはその後、航空母艦アメリカ」での運用試験を経て、対潜戦闘における空母外周ゾーン防衛、対空戦闘における遠距離でのパッシブでの迎撃、対水上監視および攻撃などに幅広く活用され、USQ-112 JOTS Iと呼ばれた。また、HP 9020コンピュータは、DTC-1(Desktop Tactical Computer - 1)として制式化された。

1983年、JOTS Iは、既開発のすべての戦術的意思決定支援システムの機能を統合し、大西洋艦隊のすべての航空母艦および巡洋艦に装備された。

JOTS II, III[編集]

1984年、JOTS Iにリンク 11を統合し、C4Iシステムとして必須の4つめのC(コミュニケーション)を具備することとなった。これがUSQ-112A JOTS IIで、戦術データ・リンク機能の追加のほか、従来より備えてきた機能についても全面的に改良されており、基本的なプログラムは30万行のコードからなっている。

JOTS IIは、UNIX系のシステム上で動作しており、より進歩したSun-4/110をDTC-2として採用している。DTC-2は、32メガバイトの主記憶装置と500メガバイトのハードディスクドライブを有し、処理能力は7 MIPSである。また、同年、空母艦上において、複数の戦術家によってより効率的に情報処理を行えるようネットワーク化され、これはJOTS IIIと呼称された。またコンピュータも、マイナーチェンジしたSun-4/330(15 MIPS)をDTC-3として採用した。

JOTS IV[編集]

1985年、JOTSは、空母艦上に設置されている空母戦闘群司令部指揮所(TFCC)に統合され、JOTS IVとなった。空母戦闘群司令部指揮所は、指揮統制上、作戦と戦術の結節点となるきわめて重要な立場にあり、ここにJOTSが導入されたことは重大な意味を持つ。また、JOTS IVはさらに、艦上と陸上との双方向データ通信衛星回線であるCUDIXS (Common User Digital Information Exchange Subsystem)にJOTSIXS (JOTS Information Exchange Subsystem)として乗り入れ、これにより、全世界において艦対艦、艦対地上でリアルタイムに戦術データを伝達できるようになった。

そして1987年、大西洋艦隊参謀長となったタトルは、ノーフォークの大西洋艦隊司令部(FCC)にJOTS IVを設置、アメリカ海軍唯一にして世界初の情報融合センター(Fusion Center)として構築した。これにより、大西洋艦隊FCCは、指揮下の各艦隊に対して、それぞれの部隊の状況や任務計画、敵情や気象・海象情報などを統合して伝達できるようになった。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 大熊康之『軍事システム エンジニアリング』かや書房、2006年