オワスコ級カッター

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オワスコ級カッター
基本情報
艦種 カッター
運用者  アメリカ沿岸警備隊
就役期間 1945年 - 1974年
建造数 13隻
前級 トレジャリー型英語版
次級 ハミルトン級
要目 (戦時)
満載排水量 2,010トン
全長 79.72 m
13.11 m (型幅)
吃水 4.88 m (最大)
機関方式 ターボ・エレクトリック方式
ボイラー 水管ボイラー×2缶
主機
推進器 スクリュープロペラ×1軸
出力 4,000馬力
速力 19ノット
航続距離 12,200海里 (12kt巡航時)
燃料 重油379トン
乗員 276名
兵装
レーダー
  • SC-4 対空捜索用
  • SF-1 対水上捜索用
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    オワスコ級カッター英語: Owasco-class cutter)は、アメリカ沿岸警備隊カッターの艦級[1]。当初は砲艦型カッター(WPG)と類別されていたが、1965年に長距離カッター(WHEC)に類別変更された[2]

    来歴[編集]

    1920年代のアメリカ沿岸警備隊では、禁酒法に対応するため、海軍から旧式駆逐艦の移管を受けてラム・パトロールとして配備するとともに、大規模な船艇建造計画を発動した。これによって建造されたカッターの1つがレイク型英語版であり、1927年から1931年にかけて10隻が進水した[1]

    この設計は非常に成功したことから、これを大型化したカッターの建造が計画された。これは結局、海軍が建造を進めていたエリー級砲艦英語版と一部を共通化したトレジャリー型英語版となり、当初は10隻を建造する計画だったが、実際の建造は7隻に留まり、1936年・1937年に順次に進水した[1]

    そして1941年に、この残り3隻を振り替えるかたちで発注されたのが本級である。また同年には、第二次世界大戦の勃発を受けて、上記のレイク型カッターの10隻全てがレンドリースとしてイギリス海軍に引き渡されたことから、その代替も兼ねて、計13隻が建造された[2]。ただし建造の計画は1941年7月に承認されたものの、戦時下とあって優先順位は低く、1943年になるまで建造は着手されなかった[1]

    設計[編集]

    船型は航洋性を重視して、高乾舷・幅広・短船長とされており、とくに短船長のために外見上はトップヘビーな印象となった[1]。北方海域の警備・哨戒・護衛を主任務として計画されたことから、重耐氷構造の船体は相応の砕氷能力も備えている[2]

    機関は、トレジャリー型ではギアード・タービン方式だったのに対し、本級では、レイク型と同様のターボ・エレクトリック方式に差し戻された[1]フォスター・ホイーラー式2胴エキスプレス水管ボイラー2基とウェスティングハウス蒸気タービンによって発電機を駆動し、1軸のスクリュープロペラを駆動する[2]

    なお本級は、軍艦に近い設計のために巡視船には不向きな点もあり[2]、運用者からは不満足なものであった[1]

    装備[編集]

    兵装と艤装は海軍式で、大戦中に就役した艦では、砲熕兵器として38口径12.7cm連装両用砲56口径40mm4連装機銃を前後に1基ずつ備えた。また対潜兵器としては、ヘッジホッグ対潜迫撃砲爆雷(K砲6基と投下軌条2条)を備えた[2]

    戦後に就役した艦の多くは、砲や機銃兵装を半減して竣工し、その他の艦も同様に改修された。1960年代には3連装短魚雷発射管が搭載された。また運用末期には、備砲1門のほか、81mm迫撃砲2門、12.7mm機銃数挺を装備していた[2]

    同型艦一覧[編集]

    # 艦名 造船所 就役 その後
    WPG→WHEC-39 オワスコ
    USCGC Owasco
    ウェスタンパイプ 1945年5月18日 1974年10月7日売却
    WPG→WHEC-40 ウィンネバゴ
    USCGC Winnebago
    1945年6月21日
    WPG→WHEC-41 シャートクワ
    USCGC Chautauqua
    1945年8月4日 1973年8月1日退役
    WPG→WHEC-42 セバゴ
    USCGC Sebago
    1945年9月20日 1972年2月29日退役
    WPG→WHEC-43 イロコイ
    USCGC Iroquois
    1946年2月9日 1965年6月1日売却
    WPG→WHEC-44 ワチュセット
    USCGC Wachusett
    1946年3月23日 1974年11月18日売却
    WPG→WHEC-64 エスカナバ
    USCGC Escanaba
    1946年3月20日 1973年6月28日退役
    WPG→WHEC-65 ウィノナ
    USCGC Winona
    1946年4月19日 1974年5月31日退役
    WPG→WHEC-66 クラマス
    USCGC Klamath
    1946年6月19日 1973年5月1日退役
    WPG→WHEC-67 ミネトンカ
    USCGC Minnetonka
    1946年7月11日 1974年5月31日退役
    WPG→WHEC-68 アンドロスコギン
    USCGC Androscoggin
    1946年9月26日 1974年10月7日売却
    WPG→WHEC-69 メンドータ
    USCGC Mendota
    沿岸警備隊工廠 1945年6月2日 1973年11月1日退役
    WPG→WHEC-70 ポンチャートレイン
    USCGC Pontchartrain
    1945年7月28日 1973年10月19日退役

    脚注[編集]

    出典[編集]

    1. ^ a b c d e f g Gardiner 1979, pp. 164–165.
    2. ^ a b c d e f g 阿部 2019, p. 69.

    参考文献[編集]

    • Gardiner, Robert (1979). Conway's All the World's Fighting Ships 1860-1905. Naval Institute Press. ISBN 978-0870219122 
    • 阿部, 安雄「アメリカ護衛艦史」『世界の艦船』第910号、海人社、2019年10月、NCID AN00026307 

    関連項目[編集]

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