ナンテン
ナンテン | ||||||||||||||||||||||||
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分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Nandina domestica Thunb.[1] | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
ナンテン(南天) | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
heavenly bamboo | ||||||||||||||||||||||||
栽培品種 | ||||||||||||||||||||||||
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ナンテン(南天、学名:Nandina domestica)は、メギ科ナンテン属の常緑低木。
和名の由来は、漢名の「南天燭」の略。南天の花は、仲夏の季語。実は三冬の季語。
特徴[編集]
高さは2m位、高いもので4〜5mほど。幹の先端にだけ葉が集まって付く独特の姿をしている。葉は互生し、三回羽状複葉で、小葉は広披針形で先端が少し突きだし、革質で深い緑色、ややつやがある。
先端の葉の間から、花序を上に伸ばし、初夏に白い花が咲き、晩秋から初冬にかけて赤色の小球形の果実をつける。(白色の実を付ける品種もある。)
分布・生育地[編集]
中国原産。日本では西日本、四国、九州に自生しているが、古くに渡来した栽培種が野生化したものだとされている。東北、中部、東日本でもみられる。山口県萩市川上の「川上のユズおよびナンテン自生地」は、国の天然記念物(1941年指定)[2]。
利用[編集]
栽培[編集]
庭木としてや玄関前などに植えられることが多い。
江戸時代に様々な葉変わり品種が選び出され、盛んに栽培された。古典園芸植物として現在もその一部が保存栽培されている。錦糸南天等とよばれる。園芸種のオタフクナンテンは葉が紅葉しやすく真夏でも赤い葉を付ける。実がつかないのが特徴で、高さも50cm程度しか伸びないので、下草などと一緒に庭園によく使用される。葉がやや円形なので別名オカメナンテンとも呼ばれる。
稀に太く育ったものは、幹を床柱として使うことがあり、鹿苑寺(金閣寺)の茶室、柴又帝釈天の大客殿などで見られる。
縁起物として[編集]
音が「難転」即ち「難を転ずる」に通ずることから、縁起の良い木とされ、鬼門または裏鬼門に植えると良いなどという俗信がある。福寿草とセットで、「災い転じて福となす」ともいわれる。また、江戸の百科事典「和漢三才図会」には「南天を庭に植えれば火災を避けられる」とあり、江戸時代はどの家も「火災除け」として玄関前に植えられた[3]。赤い色にも縁起が良く厄除けの力があると信じられ、江戸後期から慶事に用いるようになった[3]。トイレの前にも「南天手水」と称し、葉で手を清めるためなどの目的で植えられた[3]。
薬用・実用[編集]
葉は、南天葉(なんてんよう)という生薬で、健胃、解熱、鎮咳などの作用がある。葉に含まれるシアン化水素は猛毒であるが、含有量はわずかであるために危険性は殆どなく、食品の防腐に役立つ。このため、彩りも兼ねて弁当などに入れる。熊本県旧飽田町(現熊本市)では、すり潰したナンテンの葉の汁を濾したものを小麦粉の生地に加えた麺料理「しるかえ」を作る。[4][5]もっとも、これは薬用でなく、食あたりの「難を転ずる」というまじないの意味との説もあり[6]、当初から、殺菌効果があると分かって赤飯に添えられたり、厠(手洗い)の近くに植えられたのかは定かではない。
南天実に含まれる成分としては、アルカロイドであるヒゲナミン、イソコリジン、ドメスチン(domesticine)、プロトピン、ナンテニン(nantenine:o- methyldomesticine)、ナンジニン(nandinine)、メチルドメスチン、配糖体のナンジノシド(nandinoside)などの他、リノリン酸、オレイン酸が知られている。鎮咳作用をもつドメスチンは、多量に摂取すると知覚や運動神経の麻痺を引き起こすため、素人が安易に試すのは危険である。また、近年の研究でナンテニンに気管平滑筋を弛緩させる作用があることが分かった[7]。また、ナンジノシドは抗アレルギー作用を持ち、これを元にして人工的に合成されたトラニラストが抗アレルギー薬及びケロイドの治療薬として実用化されている[8]。
- 毒成分
- ナンテニン、ナンジニン、メチルドメスチシン、プロトピン、イソコリジン、ドメスチシン、リノリン酸、オレイン酸
- 毒部位
- 全株、葉、樹皮、実、新芽
- 毒症状
- 痙攣、神経麻痺、呼吸麻痺
文化[編集]
- 花言葉は「私の愛は増すばかり」、「良い家庭」。
- 活け花などでは、ナンテンの実は長持ちし最後まで枝に残っている。このことから一部地方では、酒席に最後まで残って飲み続け、なかなか席を立とうとしない人々のことを「ナンテン組」という[9]。
- 1962年(昭和37年)2月20日発売の6円普通切手の意匠になった。
脚注[編集]
- ^ 米倉浩司; 梶田忠 (2003-). “「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)”. 2012年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年11月22日閲覧。
- ^ 文化庁. “国指定文化財等データベース:主情報詳細”. 国指定文化財等データベース. 2011年11月22日閲覧。
- ^ a b c 常盤薬品「南天研究所~南天豆知識~」。
- ^ 日本の食生活全集43 聞き書 熊本の食 P.198, p.211-212 農文協刊 1987年 ISBN 4-540-87031-9
- ^ https://www.youtube.com/watch?v=oI30J_C4-wc
- ^ 北村・村田(1979)、p.173
- ^ Muneo Tsukiyama; et al. (2007). “The Extract from Nandina domestica THUNBERG Inhibits Histamine- and Serotonin-Induced Contraction in Isolated Guinea Pig Trachea”. Biological & pharmaceutical bulletin (The Pharmaceutical Society of Japan) 30 (11): 2063-2068. doi:10.1248/bpb.30.2063. ISSN 0918-6158. NAID 110006473483 .
- ^ リザベン(トラニラスト)、病院でもらった薬の値段
- ^ 『土佐の風土と食べもの』岩貞好、223頁、調理科学4巻4号(1971年)
参考文献[編集]
- 茂木透写真『樹に咲く花 離弁花2』高橋秀男・勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2000年、144-145頁。ISBN 4-635-07004-2。
- 北村四郎・村田源、『原色日本植物図鑑・木本編II』、(1979)、保育社
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- Nandina domestica Thunb., ITIS 2011年11月22日閲覧。 (英語)
- "Nandina domestica". National Center for Biotechnology Information (NCBI). (英語)
- "Nandina domestica" - Encyclopedia of Life (英語)
- 波田善夫. “ナンテン”. 植物雑学事典. 岡山理科大学. 2011年11月22日閲覧。
- いがりまさし. “ナンテン”. 植物図鑑・撮れたてドットコム. 2011年11月22日閲覧。
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