スティールパン

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スティールパン
別称:スティールドラム
各言語での名称
Steelpan
Steel-drum
steel pan
鋼鼓(钢鼓
スティールパン
スティールパン
分類

打楽器

関連楽器

ハンドパン

スティールパン(Steelpan)は、ドラム缶から作られた音階のある打楽器。独特の倍音の響きを持った音色が特徴。カリブ海最南端の島国トリニダード・トバゴ共和国で発明された。

名称[編集]

アメリカヨーロッパではスティールドラム(Steel Drum)と呼ばれることが多いが、トリニダード・トバゴにおいてはスティールパン(Steelpan)もしくは単にパン(pan)と呼ぶのが一般的である。日本においてはこのどちらの呼び名も使われており、さらに「steel」という英単語を「スティール」と読むか「スチール」と読むかによる違いもあり、呼び名の統一がなされていない。

用例[編集]

スティールパンは、スティールバンドとよばれる、スティールパンを中心とする音楽グループで演奏されることが多い。また、ポピュラー音楽でも特徴的な音色を生かしたアレンジで伴奏に使われることもある。

スティールパンは、トリニダード・トバゴの首都ポートオブスペインで毎年開催され、世界三大カーニバルにも数えられるカーニバルの場に於いても、欠かせない楽器である。パレードにおいては、「ボート」と呼ばれるオープントレーラーの上で演奏しながら街を周回する姿が見られる。

また、カーニバル期間中に行われるスティールバンドのコンテスト「パノラマ (Panorama)英語版」は大小100組以上ものバンドが参加して毎年盛大に行われ、国内外を問わず大きな注目を集めている。なかでも、ラージバンドと呼ばれる大規模なバンドには100名ものスティールパン奏者が参加し、この日のために練習した大迫力の演奏を披露する。

歴史[編集]

トリニダード・トバゴでは、19世紀半ばに当時占有していたイギリス政府によりドラムの使用を禁止された黒人達が、いろいろな長さにした竹の棒を叩いて音を出すタンブー・バンブー英語版を代用していた。しかし1937年、このタンブー・バンブー英語版Tamboo bamboo)の使用も禁じられた人々は、身近にあったビスケットなどの身近なカン類などを楽器として使用し始めた。そうした中、1939年に、ウインストン・スプリー・サイモン英語版がぼろぼろになったドラム缶を直そうとしていた際、叩く場所によって音が違っていることに偶然気付き、スティールパンの元となるものを作り出したと言われている。当時は、ピンポンPing Pong、現在のSingle Tenorに相当する)と呼ばれていた。それ以後、エリオット・エリー・マネット英語版ネヴィル・ジュレス英語版バーティー・マーシャル英語版アンソニー・ウィリアムズ英語版ルドルフ・キング・チャールズ英語版などの人々が改良を加え、スティールパンを発展させてきた。

トリニダード・トバゴ独立後、アメリカやイギリスなど先進国への移民の奨励によって、世界中にスティールパンが広まった。 1960年代以降、多くのスティールバンドが北中米を中心にワールドツアーを行ったが、当初は「南国の珍しい楽団」という受け取られ方でしかなかった。しかしその後、楽器そのものの発展とともに演奏技術や音楽性を高め、今ではジャズやクラシックの大きなイベントに招待されることも少なくない。

また、スティールパンはヴァン・ダイク・パークスらがいち早く自分の音楽に取り込んだアルバムを発表し、ジョン・レノンの「ビューティフル・ボーイ」やグローヴァー・ワシントン・ジュニア&ビル・ウィザーズジャスト・ザ・トゥー・オブ・アス」、ザ・ビーチ・ボーイズココモ」などの楽曲にも取り入れられ、一躍世界的に有名な楽器となった。

このような発展から「20世紀最後にして最大のアコースティック楽器発明」と呼ばれており、1992年トリニダード・トバゴ政府により、正式に「国民楽器」に認定された。

種類[編集]

スティールパンは、音域によってさまざまな種類がある。

Quadrophonic
  • テナーパン(ソプラノ)/tenor

最も高い音が鳴る。主にメロディーを担当し、音域も2オクターブ以上ある。 さらに、ドから始まるロウテナーパン(lowtenorpan)とレから始まるハイテナーパン(hightenorpan)がある。

  • ダブルテナー/Double tenor
  • ダブルセコンド/Double second
  • ダブルギター/Double guitar
  • クアドロフォニック/Quadrophonic
  • トリプルギター/Triple guitar
  • チェロパン/Cello
  • シックスパン(チャリオット)/Six pan
  • テナーベース/Tenor bass
  • シックスベース/Six bass
  • ナインベース/Nine bass
  • トゥエルヴベース/12

国・地域別の状況[編集]

日本[編集]

日本では、1960年代独楽芸人の筑紫こま鶴が持ち込んだものが最初とされている。

1970年代後半からは細野晴臣が楽曲に使用したほか、1980年発表の郷ひろみのシングル曲「セクシー・ユー」で演奏されたのがきっかけで一般的にもある程度知られるようになった。

プロミュージシャンとして、日本で最初に本格的にスティールパンに取り組んだ人物はヤン富田であり、1980年代を中心に奏者として活躍した後、田村玄一大野由美子らと共にASTRO AGE STEEL ORCHESTRAを結成し、1994年にトリニダード・トバゴでの録音を含むアルバム『HAPPY LIVING』を発売した。

1990年代になると、その印象的な音色からテレビ番組やコマーシャルなどで使用されることも多く、一般的に耳にする機会も増えている。1990年発売のスーパーファミコン用ゲーム「スーパーマリオワールド」はメインテーマ曲がスティールパンの音色で演奏された。

1995年には、トリニダード・トバゴより招いたRenegades Steel Orcestra(レネゲイズ)のブライアン・ブルーマント指導の下、富山県福野町(現南砺市)にて日本初の市民スティールオーケストラであるスキヤキ・スティールオーケストラが結成された[1]

原田芳宏率いるパノラマスティールオーケストラ田村玄一が参加するLITTLE TEMPOは、それまでのワールドミュージックという括りに捉われず、クラブやロックフェスといったシーンに受け入れられ、この楽器の知名度を上げる大きなきっかけとなった。

そのほか、町田良夫山村誠一上々颱風などといったアーティストによって取り組まれるとともに、WAIWAI STEEL BANDなど、各地でスティールバンドが結成されている。

また、武満徹のアルバム『系図 ―若い人たちのための音楽詩―』(2017年)や楽曲「フロム・ミー・ホワット・ユー・コール・タイム」では重要な打楽器として扱われるなど、いわゆる現代音楽の邦人作品にも、次第に登場するようになっている。

トリニダード・トバゴ出身のマイケル"マニッシュ"ロビンソン園部良など、日本で活動するスティールパン製作者も登場し、多くの演奏者が彼らの製作した楽器を使用している。

2016年2月、日本人演奏家がトリニダード・トバゴで死亡し、遺体で発見される事件が起こった。

脚注[編集]

関連文献[編集]

関連項目[編集]