スコルペヌ型潜水艦

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スコルペヌ型潜水艦
Scorpene Tunku Abdul Rahman.jpg
艦級概観
艦種 潜水艦
就役期間 2005年 - 就役中
前級 ダフネ級潜水艦
次級
性能諸元
排水量 水中排水量
1,668 t(CM-2000型)
1,800 t(AM-2000型)
1,070 t(CA-2000型)
全長 66.4m(CM-2000型)
76.2m(AM-2000型)
60.3m(CA-2000型)
全幅 6.2m
吃水 5.8m
機関 ディーゼル・エレクトリック方式; 3,808馬力
MTU 16V396 SE84 ディーゼルエンジン 4基
Jeumont Schneider 電動機 1基
スクリュープロペラ(7翼スクリュー) 1軸
速力 水中: 20ノット以上
水上: 12ノット
連続行動 50日間(CM-2000型)
50+21日間(AM-2000型)
航続距離 6,400海里(8ノット, 浮上航行)
550海里(4ノット、潜航時)
潜航深度 350m
乗員 32人
武装 533mm 魚雷発射管
(魚雷/USM×18基[1]
6門
C4I SUBTICS 指揮統制+SISDEF 通信
レーダー ケルビン・ヒューズ・コンパクト 航法用 1基
ソナー TSM-2233 エレドン

スコルペヌ型潜水艦 (Scorpène class submarine) は、フランスのDCNS社とスペインのナバンティア社が共同で開発した通常動力型潜水艦。通常型のCM-2000型、沿岸向けに小型化したCA-2000型、AIPを搭載したAM-2000型がある。

輸出も念頭においており、カ国の海軍に採用されている。また、顧客の要求に応じて非大気依存推進(AIP)を搭載できる準備もなされている。

来歴[編集]

本型は、老朽化したダフネ級(S-60型)の後継として開発された。既にダフネ級の発達型としてアゴスタ級(S-70型) が開発されていたものの、これは、特に艦首の設計が旧式であったため、水中での運動性に限界を抱えていたことから、フランス海軍は、より新型の設計による潜水艦の開発を要求した。これに応じて、DCNS社はS-80型の開発を開始したものの、しかし、弾道ミサイル原子力潜水艦の開発などによる予算の圧迫のため、結局、フランス海軍はアゴスタ級の小改良型であるS-90B型で妥協せざるをえなくなった。これを受けて、DCNS社はS-80型の開発をプライベート・ベンチャーとして続行することとした。

一方、同じくダフネ級を導入したスペイン海軍にとっても、その老朽化は重大な問題であったため、スペインイサル社は後継艦の開発を要求された。1980年代後半、この両者の計画は合流することとなった。これによって開発されたのがスコルペヌ級であり、1990年10月に発表された。ただし、スペイン海軍による導入計画は途中で撤回され、スコルペヌ型は輸出専用の計画に切り替えられた。また、2005年には、イサル社はナバンティア社に改編された。

設計と装備[編集]

船体[編集]

Scorpene cg.svg

本型の船体設計において、アゴスタ級からの最大の進歩点である艦首の設計については、リュビ級原子力潜水艦アメティスト改正で改修された際の設計が流用されたとされている。これにより、水中高速潜航時の発生雑音は大幅に低減されており、被探知性、さらに自艦装備ソナーによる目標探知能力のいずれもが向上している。なお、艦首部にはHY-80高張力鋼が使用されている。

艦内は2層の甲板から構成されており、上の甲板に居住区が、下の甲板には機関系が収容されている。居住区は、特殊作戦に対応しており、6人分の予備の寝台が確保されている。また、艦首部には魚雷発射管が設置されているほか、その下方の「顎」部分にはシリンダー状のソナー・アレイが収容されている。

機関[編集]

本型は、通常のディーゼル・エレクトリック方式のみを使用するもの(CM-2000型, CA-2000)と、非大気依存推進(AIP)を併用できるもの(AM-2000型)とが開発されている。

AM-2000型において搭載されるのは、DCNS社が開発したMESMA(水中自律エネルギー・モジュール、Module d'Energie Sous-Marine Autonome)システムである。これは、液体酸素を気化して得られた酸素とエタノールの混合気体を燃焼させて得た700の燃焼ガスを用いて、蒸気発生装置で500℃の水蒸気を発生させ、この水蒸気で蒸気タービンを作動させて発電を行うというもので、スウェーデンコックムス社のスターリングエンジンドイツホヴァルツヴェルケ=ドイツ造船社またはカナダ・バラード社の燃料電池方式とともに、現在実用段階に達している数少ないAIPシステムのひとつである。

電子装備[編集]

本型の戦闘システムについては、フランス海軍が現用する攻撃原子力潜水艦および戦略原子力潜水艦であるリュビ級およびル・トリオンファン級から、多くの技術が導入されている。

SUBTICS 戦術情報処理装置は、6基の多機能コンソールを有しており、ソナーやレーダー、他艦からもたらされた情報を総合し、指揮官の決断を含めて戦闘全体の統制を支援する。また、水中攻撃指揮装置(UBFCS)としての機能も有しており、魚雷や対艦ミサイルによる攻撃の際には射撃諸元の算出も行なう。

本型は、長距離用のシリンダー型パッシブ・ソナーと脅威警報機、アクティブ・ソナー、平面アレイ・ソナー、曳航ソナーを有している。

攻撃装備[編集]

本型の攻撃装備の中核となるのが、艦首に束ねる形で配置された6門の533mm魚雷発射管である。魚雷発射管には、1門あたり3基の兵装が搭載できるので、合計搭載量は18基となる。また、これにかえて30基の機雷を搭載することもできる。ただし、CA-2000型では、合計兵装搭載量は12基となる。

また、本型の魚雷発射管および水中攻撃指揮装置は、水中発射型のSM39対艦ミサイルの発射に対応している。これにより、本型は長距離での対水上攻撃能力を付与されることになる。

運用状況[編集]

マレーシア海軍のスコルペヌ型

輸出市場において、本型は、ドイツHDW社の209型および214型というライバルとの対決を余儀なくされている。209型はやや古いものの、既に多くの国によって採用された優秀艦であり、また、214型はこれを発展させたものである。特に209型には非常に多くのラインナップがあり、これまでの輸出経験とあいまって、顧客の要求に対してきめ細かに対応できた。

また、ドイツには、輸出用フリゲートであるMEKO型があり、しばしば209型とセットとして売り込まれている。これに対し、スコルペヌ型を売り込もうとしているフランスDCNS社やスペイン・ナヴァンティア社にはこのような選択肢がなく、例えば南アフリカ海軍に対する売込みでは、まさにこの点が問題となって敗退を余儀なくされた。

しかし、スコルペヌ型の設計そのものは非常に優秀であり、また、水中発射型対艦ミサイルをセットにして売り込めるなどといった固有のメリットも持っていた。このことから、1997年にチリ海軍が採用を決定したのを皮切りに、2001年にはインド、2002年にはマレーシアが採用を決定した。さらに、一度は採用の取り消しを発表したスペイン海軍も、2003年、本型を発展させたS-80型の採用を決定している。

同型艦一覧
船台番号 艦名 起工 進水 就役 母港
チリの旗 チリ S22 O'Higgins 1999年
11月18日
2003年
11月1日
2005年
9月8日
タルカワノ
S23 Carrera 2000年
11月
2004年
11月24日
2006年
7月20日
マレーシアの旗 マレーシア KD Abdul Rahman 2004年
4月25日
2007年
10月23日
2009年
1月
Sepanggar
KD Abdul Razak 2005年
4月25日
2008年
10月
2009年
12月
インドの旗 インド S50 2006年
12月
2015年予定 ヴィシャーカパトナム / ムンバイ
S51 2007年
12月
2016年予定
S52 2008年
12月
2017年予定
S53 不明 不明
S54 不明 不明
S55 不明 不明
ブラジルの旗 ブラジル S35 2010年
5月27日
2015年予定 Sepetiba
S36 不明 不明
S37 不明 不明
S38 不明 不明

脚注[編集]

  1. ^ 兵装搭載量は、CA-2000型では12基となる。

参考文献[編集]

  • SPG Media Limited (2009年). “SSK Scorpene Attack Submarine, Chile (HTML)” (英語). 2009年8月24日閲覧。
  • www.forecastinternational.com (2008年8月). “The Market for Submarines (PDF)” (英語). 2009年8月24日閲覧。
  • 多田智彦「輸出市場のライバル ドイツとフランスの通常動力潜水艦」、『世界の艦船』618号、海人社、2003年11月、 96-99頁。

関連項目[編集]

同時期・同規模の通常動力型潜水艦

外部リンク[編集]