カッテージチーズ

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ボウルに入れたカッテージチーズ
ボウルに入れたカッテージチーズ

カッテージチーズ(英: cottage cheese)は脱脂乳(skim milk脂肪0~0.5%)を原料に乳酸発酵レンネットで凝固したフレッシュチーズである。世界最古のチーズの一つであり、さわやかな酸味とくせのない軽い風味、白く脆いまたはクリーミーで半流動的な外観を持つ。(脂肪を除去していない)牛乳が原料の他の種類のチーズと比較し低脂肪低カロリーである[1]。さまざまな料理に使用できる。コッテージ、コテージ、カテージとも言う。

しばしばカッテージチーズの紹介と同時にレモン汁と牛乳(脂肪約3.8%)で安価に手作りできる自家製チーズも低カロリーと紹介されるが、こちらは100gあたり約300キロカロリー脂質約20gの他の種類のチーズである。[2]

概要[編集]

生乳から乳脂肪分を取りのぞいた脱脂乳を原料に作られるチーズ。脂肪分を除去しても、たんぱく質カルシウムなどの栄養成分はそのまま残されているため、ヘルシー志向の料理の材料や、ダイエット中のカロリーコントロールとしても注目されている。

もともと自然に酸敗した乳からつくられたといわれており、世界最古のチーズの一つ[1]

歴史[編集]

起源[編集]

肥沃な三日月地帯と呼ばれる地域

チーズの起源に関する人気のある物語は、叙事詩人ホメロスオデッセイから引用されており、サイクロプス ポリュペーモスが動物の胃にミルクを保存してチーズを作った方法を説明している。[3]胃からの酵素が凝乳をミルクから分離する凝固プロセスを誘発したと想定される。.[4]

チーズは諸説あるが紀元前5000年頃に中東の肥沃な三日月地帯で生まれたと考えられている。[3]チーズの証拠は紀元前3000年にさかのぼる古代メソポタミアの神殿の壁にある彫刻の帯に見られる。古代の彫刻は、文明がチーズのような物質を作り、塩と牛乳を使って、今日のカッテージチーズにいくぶん似ていると信じられている塩辛い酸っぱいカードの混合物を作る過程を示している。[5]ローマが帝国を拡大するにつれて彼らはチーズの知識を広めチーズの多くの新しい形を発見した。[6]

普及[編集]

19世紀後半のミネソタ州では、ミルクが酸っぱくなったときに、悪いミルクを無駄にしないために、農家は「オランダのチーズ」と呼ばれるものを作ることがあった。これは、現代の工業用カッテージチーズに似ていると言われている。[7]20世紀初頭、ブリティッシュコロンビア州北東部の農家は、現代の工業用カッテージチーズに似ていると言われる「ホームステッドチーズ」と呼ばれるものを作った(当時は「オランダチーズ」も存在していたが、これは別のものだった)。[8]カッテージチーズという用語は、19世紀半ばにアメリカでこのような単純な自家製チーズに最初に使用され始めた。

1868年に最初のアメリカンチーズ工場がオープンし、アメリカでチーズの卸売業が始まった。一般に、米国での工業用チーズの人気は、19世紀の終わりに大幅に増加した。世紀の変わり目までに、チーズの農場生産は重要になった。[4]

肉製品の代わりにカッテージチーズを消費することを米国市民に奨励する第一次世界大戦のポスター
肉製品の代わりにカッテージチーズを消費することを米国市民に奨励する第一次世界大戦のポスター

カッテージチーズは、第一次世界大戦中、歩兵用の肉を節約するために、他の乳製品とともにアメリカで広く宣伝された。このプロモーションは、1ポンドのカッテージチーズに1ポンドの子羊、豚肉、牛肉、鶏肉よりも多くのタンパク質が含まれていると主張するものを含め、多くの戦争ポスターに示された。

第一次世界大戦後、カッテージチーズはすぐに人気を博した。1919年に3千万ポンド(14,000トン)のカッテージチーズが生産された(1920年の一般的なチーズの4億1800万ポンド(19万トン)のうち)[4]が、1928年までに87,000,000ポンド(39,000トン)が生産された。消費は、ダイエットが普及した1970年代に米国でピークに達し、年間約13億ドルが販売されたが、1980年代にはヨーグルトの人気が高まり、2000年代には売上が大幅に減少した。[9]

2016年、ウォールストリートジャーナルの記事は、高タンパク低糖質であるため、ギリシャヨーグルトの人気に続いてカッテージチーズが流行る可能性があると理論付けた[10]

製法[編集]

伝統的な製法Cheeseincheesecloth-sink

温めた脱脂乳に乳酸菌を加えた後にレンネット(凝乳酵素キモシン)を加えて、カゼイン(主な乳たんぱく質)が凝固したもの(凝乳)からホエイ(乳清)を除去したものをカードという。

そのカードをカッティング後、さらに加熱し、カード粒を水洗いしたのちに水を切ったものが「カッテージチーズ」となる。うらごしをしてなめらかなタイプの「カッテージチーズ」も生産されている[1]

詳細[編集]

  1. 低温殺菌した脱脂乳を30℃前後に温め乳酸菌スターター(主に中温性乳酸菌Lactococcus lactis)を加える。(pH6.3)
  2. レンネットを加え温度を8~16時間維持し発酵させる。乳酸発酵の効果で酸性に傾きカゼインタンパク質が凝固しカードとホエイに変わる。(pH4.5)
  3. カードからより多くのホエーを排出できるようにワイヤーで立方体にカットする。
  4. チーズクロスでホエーを排出し絞る、もしくはカードを約49℃に1〜2時間再加熱しカードを更に固まらせてからホエーを排出し絞る。
  5. カードを水ですすいだ後で冷却し冷蔵保存する。

海外ではここからさらにクリーム(状のドレッシング)が加えられクリーミーで半流動的な食感にしたり脂肪含有量を調整した商品が一般的である。[11][12][13][9]

栄養[編集]

日本の市販カッテージチーズ
100 gあたりの栄養価
エネルギー 477 kJ (114 kcal)
0.0 - 2.8 g
2.8 - 5.9 g
17.6 g
ミネラル
ナトリウム
(26%)
390 mg
カルシウム
(4%)
41 mg
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: [1][2]
USAカッテージチーズ
100 gあたりの栄養価
エネルギー 412 kJ (98 kcal)
3.38 g
糖類 2.67 g
4.30 g
11.12 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(5%)
37 µg
(0%)
12 µg
ミネラル
ナトリウム
(24%)
364 mg
カリウム
(2%)
104 mg
カルシウム
(8%)
83 mg
マグネシウム
(2%)
8 mg
リン
(23%)
159 mg
鉄分
(1%)
0.07 mg
亜鉛
(4%)
0.40 mg
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

乳酸発酵による加工を受けているため、カッテージチーズは消化しやすく牛乳と同じ消化困難はない。そのためカルシウムとタンパク質の良い供給源である。しかし、凝乳時間が短いため乳糖はまだ 2 - 3%残っており、乳糖不耐症の人には合わない可能性がある[14][15]

カッテージチーズは、ダイエット[12]や一部の健康食品愛好家の間で人気がある。また、脂肪が少なく、カゼインタンパク質の含有量が高いため、ボディビルダーアスリートの間でも比較的人気がある。推奨されないチーズ製品もあるが、カッテージチーズは妊娠中に食べても安全である。[16][17]

製品の酸味は、124 - 452 mg/kgの乳酸が原因である。芳香には、ギ酸酢酸プロピオン酸酪酸が関与している。[12]

食べ方[編集]

カッテージチーズは多くの料理で人気がある。

欧州ロシアではチーズケーキに使うチーズはカッテージチーズが主である。また正教会の復活祭の特別な菓子に使われる。

アメリカでは果物と砂糖、塩とコショウ、フルーツピューレ、トマト、グラノーラとシナモンと組み合わせたりトースト、サラダ、チップディップ、ツナサラダのマヨネーズの代替品、サラダや各種デザートなどのレシピの材料として食べることができる。カッテージチーズは、梨、桃、みかんなどの果物にも人気がある。カッテージチーズは、タンパク質のレベルが高いため、肉の代わりに使用されることがあるが、肉に含まれるものよりも総カロリーと脂肪が少なくなる。[9]

そのままサラダやパスタにかけたり、ドレッシングサンドイッチ、料理に添えたり、洋菓子スイーツに使ったり、低脂肪で高たんぱくでミルクの味わいが楽しめる「カッテージチーズ」は幅広い料理で使える。保存するときは、冷蔵庫の臭いを吸収するので、タッパーなどの密閉できる容器に入れて保存する[1]

手作り自家製チーズとインドのカッテージチーズ[編集]

マスカルポーネチーズの様にレモン汁と牛乳(脂肪約3.8%)で作る発酵していないチーズ[18]がよく自家製クリームチーズ、自家製モッツアレラチーズ、自家製リコッタ、自家製カッテージチーズと名付けられ紹介されているが、カッテージチーズではない。これはインドパニールを指す俗語でメキシコケソフレスコ日本牛乳豆腐でもある。100gあたり約300キロカロリー脂質約20gある[2]乳糖アレルギー物質 β-ラクトグロブリン カゼイン等が発酵していないため分解されておらず消化しやすさもカッテージチーズとは異なる[15]

また、インドではヒンドゥー教の影響でレンネット製法のチーズが存在しないため言葉の表現が独特であり、固く四角く見た目も香り味食べ方も異なるパニールをカッテージチーズと訳し、ダヒ(ヨーグルト)をカードと訳して紹介する[19]レンネットを使用しないチーズは菜食主義者ヴィーガン等に人気がある。

インドもラテンアメリカも無殺菌牛乳が一般的であり、CDCは低温殺菌ラベルが無いケソフレスコのようなヒスパニックスタイルのチーズを特に妊娠中や高齢者や免疫力が低下している人は食べないよう注意喚起している[20]

参考画像[編集]


出典と参考[編集]

脱脂乳を乳酸発酵しレンネットを使い熟成しない乳製品[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d カッテージチーズ雪印メグミルク チーズクラブ
  2. ^ a b 輸入パニール輸入ケソフレスコのカロリー脂質参照
  3. ^ a b Litopoulou-Tzanetaki, E. (2007). “Soft-ripened and fresh cheeses: Feta, Quark, Halloumi and related varieties”. Improving the Flavour of Cheese. Woodhead Publishing Series in Food Science, Technology and Nutrition. pp. 474–493. doi:10.1533/9781845693053.4.474. ISBN 9781845690076 
  4. ^ a b c History of Cheese - National Historic Cheesemaking Center”. Nationalhistoriccheesemakingcenter.org. 2019年2月21日閲覧。
  5. ^ Let's Explore the History of Cheese”. gourmetcheesedetective.com. 2020年4月14日閲覧。 “These very early cheeses would have tasted slightly sour, salty, somewhat similar in texture to feta or cottage cheese.”
  6. ^ History of Cheese - International Dairy Foods Association”. Idfa.org. 2019年2月21日閲覧。
  7. ^ Iva A. Dingwall. “Pioneers' Dinner Table”. Collections.mnhs.org. 2019年2月21日閲覧。
  8. ^ 08-069: Pioneer Cheese Making”. South Peace Historical Society. 2019年2月21日閲覧。
  9. ^ a b c “Can America learn to love cottage cheese again?” (英語). The Independent. (2019年2月20日). https://www.independent.co.uk/life-style/food-and-drink/cottage-food-america-lifestyle-milk-yoghurt-a8426741.html 2019年2月21日閲覧。 
  10. ^ Byron, Ellen (2016年11月8日). “Could Cottage Cheese Ever Be Cool?” (英語). The Wall Street Journal. 2019年12月5日閲覧。
  11. ^ Л. А. Старостина, М. Н. Вечтомова (1994). Блюда из творога. Самара: «Самарский Дом печати». p. 5. ISBN 5-7350-0018-7
  12. ^ a b c Chandan, R.C. (2003). “CHEESES - Soft and Special Varieties”. Encyclopedia of Food Sciences and Nutrition (2 ed.). Academic Press. pp. 1093–1098. doi:10.1016/B0-12-227055-X/00201-7. ISBN 9780122270550 
  13. ^ “The Manufacture of Cottage Cheese in Iowa Creameries and Milk Plane”. Circular (Iowa State College, Agricultural Experiment Station) 126: 16. https://lib.dr.iastate.edu/cgi/viewcontent.cgi?referer=https://www.google.com/&httpsredir=1&article=1127&context=iaes_circulars. 
  14. ^ lactrase
  15. ^ a b 下橋淳子, 寺田和子「発酵によるアレルゲン性乳たんぱく質の減少について」『日本食生活学会誌』第12巻第1号、日本食生活学会、2001年、 62-67頁、 doi:10.2740/jisdh.12.62ISSN 1346-9770NAID 130004048772
  16. ^ Foods to avoid in pregnancy” (英語). National Health Service (2020年2月12日). 2020年4月14日閲覧。 “Other than mould-ripened soft cheeses, all other soft types of cheese are OK to eat, provided they're made from pasteurised milk. These include: cottage cheese”
  17. ^ Pregnancy nutrition: Foods to avoid during pregnancy” (英語). Mayo Clinic (2019年12月31日). 2020年4月14日閲覧。 “Many low-fat dairy products — such as skim milk, mozzarella cheese and cottage cheese — can be a healthy part of your diet. Anything containing unpasteurized milk, however, is a no-no.”
  18. ^ マスカルポーネ雪印メグミルク チーズクラブ
  19. ^ インドのダヒについてダヒヨーグルト
  20. ^ Listeria Outbreak Linked to Queso Fresco Made by El Abuelito Cheese Inc.疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)

関連項目[編集]