ウイグル人大量虐殺

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ウイグル人大量虐殺(ウイグルじんたいりょうぎゃくさつ、英語: Uyghur genocide)は、中華人民共和国新疆ウイグル自治区(1955年に設立)およびその周辺で、中国政府ウイグル人およびその他の民族的・宗教的少数派に対して行っている、現在進行中の一連の人権侵害である。

概要[編集]

2014年以降[1]、中国政府は、習近平総書記の政権下にある中国共産党の指示の下、ホロコースト以来最大規模かつ最も組織的な少数民族・宗教の抑留となっている[2][3][4]、100万人以上のイスラム教徒(その大半はウイグル人)を法的手続きを経ず[5][6]に秘密裏に収容所に収容することにつながる政策を追求してきた[7][8][9][10][11]

この政策を批判する人たちは、新疆の中国化と表現し、民族虐殺や文化的大虐殺と呼んでいる[18]が、一部の政府、活動家、独立系NGO人権専門家、学者、政府高官、東トルキスタン亡命政府なども、この政策を大量虐殺(ジェノサイド)と呼んでいる。特に批判者たちは、国家が支援する収容所へのウイグル人の集中[21]、ウイグル人の宗教的慣習の弾圧、深刻な虐待[22]、さらには強制的な不妊手術、避妊、中絶[23][24][25][26]などの人権侵害を詳細に示す証言や広範な証拠[27][28]を取り上げている。

中国政治が専門の平野聡東京大学大学院法学政治学研究科教授は、『ニューヨーク・タイムズ』が2019年11月にリークした新疆秘密文書、現実に伝えられる報道や画像、当事者の証言、中国の正式な国家統計である『中国統計年鑑』の数字などから、新疆ウイグル自治区でジェノサイドがおこなわれているのは明らかと述べている[29][30]

新疆ウイグル自治区における出生率の低下[編集]

中国政府の統計によると、2015年から2018年にかけて、ウイグル人が多く住む地域であるホータンカシュガル出生率が60%以上低下している。同時期に、国全体の出生率は1000人あたり12.07人から10.9人へと9.69%減少した[31]。中国当局は、新疆ウイグル自治区で2018年に出生率が3分の1近く低下したことを認めたが、強制的な不妊手術や大量虐殺の報告を否定した[32]。新疆では出生率の急落が続いており、全国ではわずか4.2%であるのに対し、2019年だけで24%近くも低下している。

国際社会の反応[編集]

超国家組織の反応[編集]

国際社会の反応は様々で、数十の国連加盟国が2020年に新疆における中国の政策を支持・非難する反対書簡を国連人権理事会に提出している[33][34]。2020年12月、国際刑事裁判所は、疑われている犯罪のほとんどについて中国に管轄権がないことを理由に、中国に対する捜査措置をとることを断念した[35][36]

2021年6月22日に開かれた国連人権理事会で、オーストラリアイギリスフランスドイツ日本アメリカなど40カ国超が、新疆ウイグル自治区の人権状況について「深刻な懸念を抱いている」との共同声明を発表し、国連人権高等弁務官ミシェル・バチェレの新疆ウイグル自治区訪問と調査を受け入れるよう中国に要求した[37][38]。声明は「信頼できる報告では、新疆で100万人超が恣意的に拘束され、ウイグル族やその他少数民族に偏った監視が広がり、基本的な自由やウイグル文化への制限を示している」として、拷問強制不妊手術性的暴行や子供を親から引き離すなどの報告もあるとし、さらに「国家安全維持法下での香港の基本的自由悪化とチベットでの人権状況を引き続き深く懸念している」とも指摘した[37][38]

2021年6月10日、アムネスティは、ウイグル人などイスラム教徒少数民族が暮らす新疆ウイグル自治区で、中国政府人道に対する罪を犯しており、中国政府ウイグル人カザフ人などイスラム教徒の少数民族に対し、集団拘束や監視拷問をしていたとする報告書を公表した[39]。報告書では、「中国当局が地獄のような恐ろしい光景を圧倒的な規模で作り出している」「ものすごい人数が強制収容所洗脳拷問などの人格を破壊するような扱いを受け、何百万人もが強大な監視機関におびえながら暮らしており、人間の良心が問われている」「(中国政府の行動は)新疆の人口の一部を宗教と民族に基づいてまとめて標的にし、イスラム教の信仰とテュルク系民族イスラム教文化風習を根絶するため厳しい暴力と脅しを使うという明らかな意図」「(強制収容所に入れられた人が)止まることのない洗脳と、身体的かつ心理的拷問を受けている」として[39]、中国政府は「少なくとも以下の人道に対する罪」を犯しており、「国際法の基本ルールに違反する、収監など厳格な身体的自由の剥奪」「拷問」「迫害」を挙げ、拷問の方法として「殴打、電気ショック、負荷が強い姿勢を取らせる、違法な身体拘束(「タイガーチェア」と呼ばれる鉄製のいすに座らせ手足をロックして動けなくする)、睡眠妨害、身体を壁のフックにかける、極めて低温の環境に置く、独房に入れる」などがあり、タイガーチェアを使った拷問は、数時間~数日にわたることもあり、その様子を強制的に見せられたという証言も得たとしている[39]。また、中国政府は強制収容所で行われているのは「職業訓練」であり、テロ対策として過激思想を解いたりするためのものだと主張しているが、アムネスティは、テロ対策は集団拘束の理由にならないと報告書で反論し、新疆ウイグル自治区の収容制度について、「中国の司法制度や国内の法律の管轄外で運営され」、強制収容所で拘束されていた人々が刑務所に移されたことを示す証拠があるとした[39]

国別の反応[編集]

アメリカは、人権侵害をジェノサイドと宣言した最初の国であり、2021年1月19日にその決定を発表した[40][41]。これに続いて、カナダの下院オランダの議会がそれぞれ、2021年2月に中国の行為をジェノサイドと認める非拘束性の動議を可決した[42][43]

2021年4月にイギリスの下院はジェノサイドと認定する決議を可決した[44]。2021年5月、リトアニア共和国議会もジェノサイドと認定する決議を可決した[45]

その他の反応[編集]

2021年1月、中国在アメリカ合衆国中国大使館英語版が「中国がウイグルの宗教的過激派を抑え込んだ結果、女性は『子供を産む機械』ではなくなり、解放された」とツイートしたところ、Twitterはこの発言をデマとして削除し、アカウントも「人間性を抹殺するもの」として凍結した[46]

アメリカ経済学者であるジェフリー・サックスは、2021年1月インタビューにおいて、インタビュアーからの、中国によるウイグル人抑圧についての質問を「アメリカが犯した巨大な人権侵害」に言及することで回避した[47]。その後、19の人権団体が共同でコロンビア大学ジェフリー・サックスの発言を問題視する書簡を送付した[47][48]。書簡の署名者たちは、サックスは、アメリカの人権侵害の歴史に話を逸らすことで、中国によるウイグル人抑圧を相対化するという中国外務省と全く同じロジックを用い、さらに中国政府に抑圧された人々の視点を矮小化することで、「中国政府の視点を強調し、その政府によって抑圧されている人々の視点を矮小化することによって、ジェフリー・サックスは自らの組織のミッションを裏切っている」と批判している[47][48]。『ザ・グローバリスト英語版』の編集長であるステファン・リクターとJ.D.ビンデナゲルは、サックスが「古典的な共産主義のプロパガンダ策略英語版」を積極的に推進していると批判している[49]

2021年4月、ジェフリー・サックスとウィリアム・シャバス英語版ミドルセックス大学[注釈 1]は、『PROJECT SYNDICATE』への寄稿で、アメリカ国務省が中国によるウイグル人抑圧を「ジェノサイド」であり、かつ「人道に対する罪」に認定したことを「薄っぺらい」と批判し、アメリカ国務省から提供されたジェノサイドの証拠は何もないと述べ、「アメリカ国務省がジェノサイドの告発を立証できない限り、告発を撤回すべきである」と主張している[51]。『ナショナル・レビュー英語版』によると、サックスは「中国共産党を含む権威主義体制に寛容な態度で長年意見を述べてきた」「COVID-19の起源英語版、世界における中国の役割、ウイグル人虐殺など、多くの問題で日常的に北京の路線を採用している」としている[52]

台湾蔡英文総統は『文藝春秋』2021年9月号のインタビューで、「民主主義自由人権は普遍的価値です。私共は北京当局に、香港やウイグルの人々への弾圧をやめるように呼び掛けていきます。日本も含めた民主主義陣営は、民主主義の価値を守るために今こそ団結すべきです」と述べた[53]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ウィリアム・シャバスは、「反イスラエル活動家」であり、国際司法裁判所ロヒンギャに対するジェノサイド英語版を否認して、ミャンマー政府を擁護した[50]

出典[編集]

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関連項目[編集]