アマランサス

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ヒユ属
Amaranthus caudatus
Amaranthus caudatus
(2006年10月22日)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
: ナデシコ目 Caryophyllales
: ヒユ科 Amaranthaceae
亜科 : Amaranthoideae
: ヒユ属 Amaranthus
学名
Amaranthus
L.
英名
Pigweed
Amaranth
亜属
  • Acnida
  • Albersia
  • Amaranthus

アマランサス学名: Amaranthus)はヒユ科ヒユ属(アマランサス属)の植物の総称。アマランスとも。

ギリシャ語Αμάρανθος(アマラントス、(花が)しおれることがない)が語源である。

形態・生態[編集]

一年草。非耐寒性。互生し、晩夏から初秋にかけて色づく。

栽培[編集]

アマランサスは紀元前6世紀から栽培されている[1]アステカ人には「 huauhtli 」と呼ばれ、彼らの主食であり、儀式の食事と飲み物にも加工されるためアステカ宗教英語版に欠かせない穀物であった。スペイン人に侵略されて栽培が禁止される以前では、エネルギー消費量の80%を占めていたと考えられている。

アマランサスは、pH塩分環境温度の変化、干ばつに強い丈夫な植物である[2]。遺伝的多様性と環境適応能力に優れている[3]

人間との関わり[編集]

南米の祝祭「死者の日」には、ドクロの形をしたアマランサスのおこしが作られる。
アマランサス種子, 未調理
100 gあたりの栄養価
エネルギー 1,554 kJ (371 kcal)
65 g
糖類 1.7 g
食物繊維 7 g
7 g
14 g
ビタミン
チアミン (B1)
(9%)
0.1 mg
リボフラビン (B2)
(17%)
0.2 mg
ナイアシン (B3)
(6%)
0.9 mg
パントテン酸 (B5)
(30%)
1.5 mg
ビタミンB6
(46%)
0.6 mg
葉酸 (B9)
(21%)
82 μg
ミネラル
カリウム
(11%)
508 mg
カルシウム
(16%)
159 mg
マグネシウム
(70%)
248 mg
リン
(80%)
557 mg
鉄分
(58%)
7.6 mg
亜鉛
(31%)
2.9 mg
マンガン
(162%)
3.4 mg
他の成分
水分 11 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
アマランサス種子, 調理後
100 gあたりの栄養価
エネルギー 429 kJ (103 kcal)
19 g
食物繊維 2 g
2 g
4 g
ビタミン
チアミン (B1)
(2%)
0.02 mg
リボフラビン (B2)
(2%)
0.02 mg
ナイアシン (B3)
(2%)
0.24 mg
ビタミンB6
(8%)
0.1 mg
葉酸 (B9)
(6%)
22 μg
ミネラル
カリウム
(3%)
135 mg
カルシウム
(5%)
47 mg
マグネシウム
(18%)
65 mg
リン
(21%)
148 mg
鉄分
(16%)
2.1 mg
亜鉛
(9%)
0.9 mg
マンガン
(43%)
0.9 mg
他の成分
水分 75 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

観葉植物としても栽培される。花からは系の染料ベタレイン)が採れ、その色はアマランス色英語版)と呼ばれる。ただし、合成着色料赤色2号もアマランスと名づけられているが、色が似ているだけで無関係な物質である。

油も作られる。

アマランサスの中でも、ヒモゲイトウ (Amaranthus caudatus) が最も大規模に栽培されている。

食用[編集]

古代南米インカ文明などでは、種子を穀物として食用にしてきた。これはトウモロコシ豆類に匹敵する重要作物であった。19世紀に入るとインドなどでも大規模に栽培されるようになった。日本へは江戸時代に、主に観賞用として伝来した。東北地方では小規模ながら、アカアワなどの名前で食用にも栽培されていた。

中国では、中国語北京語)で 莧菜xiàncài、シエンツァイ)、広東語莧菜yin6choi3、インチョイ)、上海語米莧 (ミーシ)と呼び、緑色の葉とを食用にしている。英語では、一般に chinese spinach(中国のホウレンソウ)などと呼ぶが、オーストラリアでは、広東語を英語風に書いた een choy(イーンチョイ)を野菜としての標準名としている。独特のえぐ味と濃い風味がある。炒めると葉に含まれる色素に溶出して、紅色に染まる品種が多いが、赤くならない品種もある。

アフリカの一部では、ホナガイヌビユの葉が食用とされている[4][5]。ジャマイカでは、カラルー英語版と呼ばれ、モルディブでもディベヒ語で massaagu と呼ばれ料理に使われる[6]。ほか、インドでも野菜として食され、サンスクリット語で Tanduliya と呼ばれる伝統的なアーユルヴェーダ医学のハーブとして利用されている[7]。葉以外の種子も水で茹でたり、ビスケットにしたり、スナックとしても食用可能である[8]

栄養[編集]

種子
種子は生の状態では、栄養の吸収が阻害されるため消化できない[9]。したがって、ほかの穀物のように調理しなければならない。
リンマンガンなどのミネラルを豊富に含む。アミノ酸リシンタンパク質にも優れる[10]。しかし、必須アミノ酸ロイシントレオニンは不足している[11][12]
Educational Concerns For Hunger Organization (ECHO)によれば、シュウ酸塩硝酸塩サポニンポリフェノール化合物などの反栄養素英語版を含む[1]。これらは水で茹でた後、水を捨てる等の調理法で毒性を減らせる。
グルテンを含まないため、グルテン関連障害の人々、グルテンフリー・ダイエットに最適である[13][14][15]
調理した葉には、ビタミンAビタミンCカルシウム、マンガン、葉酸が豊富である[16]

分類[編集]

ヒユ(莧、A. tricolor)の仲間であるが、形態は多様である。和名に「ケイトウ(鶏頭)」を含む種も多いが、ケイトウ (Celosia argentea) は同科別属である。

ヒユ属の種分化は非常に多様で、雑種も多く、分類は難しい。の数は分類により約20種 - 約300種と大きな幅がある[17]。近年の研究によると、ヒユ属は3亜属[18]70種[19]に分類できる。

ITISによる42種を挙げる。和名・英名との対応は、別の分類では異なることもある。

脚注[編集]

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  1. ^ a b Amaranth: Grain & Vegetable Types (PDF)”. ECHO Technical Note (1983年). 2018年3月18日閲覧。
  2. ^ Zhu, Fan (2017-01-22). “Structures, physicochemical properties, and applications of amaranth starch”. Critical Reviews in Food Science and Nutrition 57 (2): 313–325. doi:10.1080/10408398.2013.862784. ISSN 1040-8398. PMID 25831476. https://dx.doi.org/10.1080/10408398.2013.862784. 
  3. ^ Rastogi, A; Shukla, S (2013). “Amaranth: A new millennium crop of nutraceutical values”. Critical Reviews in Food Science and Nutrition 53 (2): 109–25. doi:10.1080/10408398.2010.517876. PMID 23072528. 
  4. ^ 写真で見る外来雑草畜産技術協会1995年、5頁。ISBN 4-88137-056-1
  5. ^ Grubben, G.J.H. & Denton, O.A. (2004) Plant Resources of Tropical Africa 2. Vegetables. PROTA Foundation, Wageningen; Backhuys, Leiden; CTA, Wageningen.
  6. ^ Xavier Romero-Frias, The Maldive Islanders, A Study of the Popular Culture of an Ancient Ocean Kingdom. Barcelona 1999, 84-7254-801-5
  7. ^ R.V. Nair, Controversial drug plants
  8. ^ Low, Tim (1985). Wild Herbs of Australia & New Zealand. Angus & Robertson Publishers. pp. 44. ISBN 0207151679. 
  9. ^ All About Amaranth”. USA Emergency Supply. 2018年3月18日閲覧。
  10. ^ Amaranth - Alternative Field Crops Manual”. University of Wisconsin & University of Minneasota. 2011年9月1日閲覧。
  11. ^ Ricardo Bressani, Luiz G. Elias and Arnoldo Garcia-Soto (1989). “Limiting amino acids in raw and processed amaranth grain protein from biological tests”. Plant Foods for Human Nutrition (Kluwer Academic Publishers) 39 (3): 223–234. doi:10.1007/BF01091933. 
  12. ^ “Chemical Composition of the Above-ground Biomass of Amaranthus cruentus and A. hypochondriacus”. ACTA VET. BRNO 75: 133–138. (2006). http://actavet.vfu.cz/pdf/200675010133.pdf. 
  13. ^ “Cereal-based gluten-free food: how to reconcile nutritional and technological properties of wheat proteins with safety for celiac disease patients”. Nutrients 6 (2): 575–90. (Jan 29, 2014). doi:10.3390/nu6020575. PMC 3942718. PMID 24481131. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=3942718. 
  14. ^ “Gluten-free diet in children: an approach to a nutritionally adequate and balanced diet”. Nutrients 5 (11): 4553–65. (Nov 18, 2013). doi:10.3390/nu5114553. PMC 3847748. PMID 24253052. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=3847748. 
  15. ^ Gallagher, E.; T. R. Gormley; E. K. Arendt. “Recent advances in the formulation of gluten-free cereal-based products”. Trends in Food Science & Technology 15 (3–4): 143–152. doi:10.1016/j.tifs.2003.09.012. https://www.researchgate.net/profile/T_Gormley/publication/228866803_Recent_advances_in_the_formulation_of_gluten-free_cereal-based_products/links/00b7d526109c175ac9000000.pdf. 
  16. ^ Amaranth leaves, cooked, boiled, drained, without salt, per 100 g”. Conde Nast for the USDA National Nutrient Database, release SR-21 (2015年). 2016年2月4日閲覧。
  17. ^ NBCI Taxonomy Browserは(雑種・未記載除き)23種、ITISは42種
  18. ^ Mosyakin, S.L.; Robertson, K.R. (1996), “New infrageneric taxa and combinations in Amaranthus (Amaranthaceae)”, Ann. Bot. Fennici 33: 275-281 
  19. ^ Juan, R.; et al. (2007), “Electrophoretic characterization of Amaranthus L. seed proteins and its systematic implication”, Botanical Journal of the Linnean Society 155: 57-63. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]