谷口ジロー
谷口 ジロー | |
---|---|
(2015年) | |
本名 | 谷口 治郎 |
生誕 |
1947年8月14日 日本・鳥取県鳥取市 |
死没 | 2017年2月11日(69歳没) |
職業 | 漫画家 |
活動期間 | 1971年 - 2017年 |
ジャンル | 青年漫画 |
代表作 |
『「坊っちゃん」の時代』(原作:関川夏央) 『孤独のグルメ』(原作:久住昌之) |
受賞 |
第37回小学館漫画賞審査員特別賞(『犬を飼う』) 第12回日本漫画家協会賞優秀賞(『「坊っちゃん」の時代』) 2011年フランス政府芸術文化勲章シュヴァリエ章 |
谷口 ジロー(たにぐち ジロー、男性、1947年8月14日 - 2017年2月11日)は、日本の漫画家。鳥取県鳥取市出身。
来歴
鳥取商業高校を卒業後に京都の繊維会社に就職したが、漫画家を目指して1966年に上京、石川球太のアシスタントとなり漫画の技術を学ぶ。1971年に『嗄れた部屋』(『週刊ヤングコミック』)でデビューする。その後、上村一夫のアシスタントを経て独立した。以後、関川夏央ら漫画原作者と組み、青年向け漫画においてハードボイルドや動物もの、冒険、格闘、文芸、SFと多彩な分野の作品を手がける。
絵はジャン・ジロー(メビウス)やフランソワ・シュイッテンなどのバンド・デシネの作家に強い影響を受けており、インタビューでは「日本で一番影響を受けているんじゃないか」と語っている(ティム・リーマン『マンガマスター』美術出版社、2005年)。1991年の『犬を飼う』では中流家庭の日常を題材にして新境地を開き、これ以降は人と動物、人と人とのつながりをテーマにした日常的なドラマも多く手がけるようになった。
『歩くひと』や『遥かな町へ』などの翻訳版刊行を期に2000年代からヨーロッパでの評価が高まり、フランス語圏を中心に数々の芸術系統の賞を受賞。カルティエの2007 - 2008年の広告を複数の画家とともに担当し、本国フランスのブティックではカルティエに関する漫画の入った小冊子が配布されている。ルイ・ヴィトンが刊行するトラベルブックのヴェニス編(2014年)も担当した[1]。
2010年には『遙かな町へ』を原作に、舞台をリヨン近郊としたフランス映画 "Quartier Lointain" が制作・公開された(日本では2013年2月に小学館集英社プロダクション・メディアファクトリーからビデオスルーでDVDソフトが発売された)。これとは別に、2012年公開を目標に原作の舞台となった鳥取県倉吉市をロケ地とする邦画オリジナル版の制作も東映・小学館らの製作委員会方式で計画されていたが、資金不足を理由として2012年夏に事実上断念している。
2012年に『孤独のグルメ』がテレビ東京でドラマ化され、海外でも放映されたほか、中国版も製作された。2014年にはフランス人のNicolas FinetとNicolas Albertによるドキュメンタリー『谷口ジローの足跡 歩く人』が制作され、翌年 第46回アングレーム国際漫画祭で公開された[2]。
2017年2月11日、多臓器不全により死去[3][4]。69歳没。
2017年11月18日、イラストレーター寺田克也、バンド・デシネ研究家・翻訳家原正人らをゲストに招き、鳥取市で「ふるさと鳥取で谷口ジローさんを偲ぶ会」が開かれた。
スマートフォン向け配信アプリ「タテアニメ」(現・アニメBeans)で『孤独のグルメ』のアニメを2017年11月29日より配信開始。
闘病中に執筆した遺稿をまとめた単行本2冊『光年の森』『いざなうもの』が、2017年12月8日、小学館から刊行された[5]。
人物
谷口の雰囲気について、久住昌之は「静かな感じで。谷口さんが声を荒らげたところなんて見たことないし、いつもニコニコしていて」と述べている[6]。
アシスタントに対し、特に何も言わず指示や指導もしないため、谷口の絵のレベルまで仕上げるべく、アシスタントたちは自力で努力したという[6]。
作画に関して、新作を描くたびに毎回新しい手法を取り入れていた[6]。
通販生活で連載していた『散歩もの』は、特注の大きい原稿用紙を使用し背景はスクリーントーンを3重に貼って描いていた[6]。
作品リスト
連載
- 無防備都市(原作:関川夏央、1978年、漫画パンチ、芳文社)
- リンド!3(原作:関川夏央、1978年、漫画ギャング、双葉社)
- 事件屋稼業(原作:関川夏央、1980年、漫画ギャング、双葉社)
- 新・事件屋稼業(原作:関川夏央、1982年 - 1994年、週刊漫画ゴラク、日本文芸社)
- ハンティングドッグ(1980年 - 1982年、エロトピアデラックス、ワニマガジン社)
- 青の戦士(原作:狩撫麻礼、1980年 - 1981年、ビッグコミックスピリッツ、小学館)
- LIVE!オデッセイ(原作:狩撫麻礼、1981年、平凡パンチ、平凡社)
- ナックルウォーズ(原作:狩撫麻礼、1982年 - 1983年、プレイコミック、秋田書店)
- ルードボーイ(原作:狩撫麻礼、1984年、プレイコミック)
- ブランカ(1984年 - 1986年、コミック・ノストラダムスほか、祥伝社)
- ENEMIGO(原作:M.A.T.、1984年 - 1985年、プレイコミック、秋田書店)
- 「坊っちゃん」の時代(原作:関川夏央、1987年 - 1996年、漫画アクション、双葉社)
- K(原作:遠崎史朗、1986年、リイドコミック、リイド社)
- 地球氷解事紀(1987年 - 1988年、月刊アフタヌーン、講談社 / 1988年 - 1991年、モーニング、講談社)
- 原獣事典(1987年 - 1990年、モーニング カラフル増刊ほか)
- 餓狼伝(原作:夢枕獏、1988年、コミックファイター、朝日ソノラマ / 1989年 - 1990年、獅子王、朝日ソノラマ)
- サムライ・ノングラータ(原作:矢作俊彦、1990年 - 1991年、GORO、小学館)
- 歩くひと(1990年 - 1991年、モーニング パーティ増刊、講談社)
- Benkei in N.Y(原作:毛利甚八、1991年 - 1995年、ビッグコミックオリジナル増刊、小学館)
- 風の抄 柳生秘帖(原作:古山寛、1992年、ヤングチャンピオン、秋田書店)
- 人びとシリーズ「けやきのき」(1993年、ビッグコミック、小学館)
- 父の暦(1994年、ビッグコミック、小学館)
- 孤独のグルメ(原作:久住昌之、1994年 - 1996年、PANjA、扶桑社 / 2008年 - 、SPA!、扶桑社)
- 神の犬 ブランカII(1995年 - 1996年、ビッグコミック)
- イカル (漫画)(原作:メビウス(ジャン・ジロー)、1997年、モーニング。第一部のみで未完)
- 遥かな町へ(1998年、ビッグコミック、小学館) - 働き盛りの主人公が郷里である倉吉市の墓前で1963年・中学2年生の頃へ外見とともに逆戻り(タイムトリップ)する作品。
- 捜索者(1999年、ビッグコミック、小学館)
- 欅の木(原作:内海隆一郎、1999年、ビッグコミック、小学館)
- 神々の山嶺(原作:夢枕獏、2000年 - 2003年、ビジネスジャンプ、集英社)
- 天の鷹(2001年 - 2002年、漫画アクション、双葉社)
- 散歩もの(原作:久住昌之、2003年 - 2005年、通販生活、カタログハウス)
- 晴れゆく空(2004年、週刊ヤングジャンプ、集英社)
- シートン(監修:今泉吉晴、2004年 - 2006年、漫画アクション / 2006年 - 、双葉社Webマガジン、双葉社)
- 冬の動物園(2005年 - 2007年、ビッグコミックオリジナル増刊・ビッグコミック1、小学館)- 谷口自身をモチーフに京都での就職から漫画家への転身を綴った作品。
- センセイの鞄(原作:川上弘美、2008年 - 2010年、漫画アクション、双葉社)
- 名づけえぬもの(2010年、漫画BOX AMASIA、講談社)
- ふらり。(2011年、モーニング、講談社)
- 猟犬探偵(原作:稲見一良、2011年 - 2012年、ビジネスジャンプ→グランドジャンプPREMIUM、集英社)
- 千年の翼 百年の夢(2014年、ビッグコミックオリジナル、小学館) - ルーヴル美術館を訪れた日本人の作家は、「守り人」を自称する謎の女性に誘われて、美術館に関わる19世紀の画家たちや明治の日本人、ナチス侵攻の迫るパリから美術品を運び出した人々など、歴史上の人物たちのいる不思議な時空に迷い込む。単行本のほか、オールカラーの豪華版も発行されている。
作品集
- 大いなる野生(1980年、オハヨー出版)
- 西風は白い(1984年、双葉社)
- 新・大いなる野生(1985年、祥伝社)
- 海景酒店 HOTEL HARBOUR-VIEW(1986年、双葉社)
- 犬を飼う(1992年、小学館)
- 森へ(1994年、河出書房新社)
- 東京幻視行(1999年、講談社)
- 凍土の旅人(2004年、小学館)
- 谷口ジロー選集 犬を飼うと12の短編(2009年、小学館)
- 谷口ジロー選集 ブランカ(2009年、小学館)
- 谷口ジロー選集 神の犬(2009年、小学館)
- 歩くひとPLUS(2010年、光文社)
- 荒野よりFROM WILDERNESS(2012年、光文社)
- 谷口ジロー画集 jiro taniguchi(2016年、小学館)
- 犬を飼う そして…猫を飼う(2018年、小学館)
- 谷口ジローコレクション(2021年 - 2022年〈予定〉、小学館・双葉社) - 著者初の本格選集、2021年10月から2022年2月までの5か月間にわたり、毎月2冊ずつ、合計10巻を第1期として刊行する[7]
- 父の暦〈谷口ジローコレクション〉(2021年10月29日、小学館)[8]、ISBN 978-4091793652
- 『坊っちゃん』の時代〈谷口ジローコレクション〉(2021年10月29日、双葉社)[8]、ISBN 978-4575316667
- 遥かな町へ〈谷口ジローコレクション〉(2021年11月30日〈予定〉、小学館)
- 秋の舞姫 「坊っちゃん」の時代 第二部〈谷口ジローコレクション〉(2021年11月30日〈予定〉、双葉社)
- 冬の動物園〈谷口ジローコレクション〉(2021年12月28日〈予定〉、小学館)
- かの蒼空に 「坊ちゃん」の時代 第三部〈谷口ジローコレクション〉(2021年12月28日〈予定〉、双葉社)
- 欅の木(原作:内海隆一郎)〈谷口ジローコレクション〉(2022年1月28日〈予定〉、小学館)
- 明治流星雨 「坊ちゃん」の時代 第四部〈谷口ジローコレクション〉(2022年1月28日〈予定〉、双葉社)
- 青の戦士(原作:狩撫麻礼)〈谷口ジローコレクション〉(2022年2月28日〈予定〉、小学館)
- 不機嫌亭漱石 「坊ちゃん」の時代 第五部〈谷口ジローコレクション〉(2022年2月28日〈予定〉、双葉社)
その他の作品
- 尾崎放哉生誕130周年記念作品展ポスター(2015年、鳥取市) - 尾崎放哉の肖像画を担当。
- 中川酒造株式会社、日本酒「いなば鶴 放哉」のラベル - 尾崎放哉の肖像画を担当。中川酒造は『父の暦』に登場する「大石酒蔵」のモデルであり縁がある。
受賞歴
- 1992年
- 1993年
-
- 第12回日本漫画家協会賞優秀賞(『「坊っちゃん」の時代』)
- 1998年
-
- 第2回手塚治虫文化賞マンガ大賞(『「坊っちゃん」の時代』シリーズ)
- 1999年
-
- 第3回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞(『遥かな町へ』)
- 2001年
-
- 第5回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞(『神々の山嶺』)
- 第28回アングレーム国際漫画祭 全仏キリスト教会コミック審査員会賞(『父の暦』)
- 2002年
-
- 第20回 バルセロナ国際コミック展 読者が選ぶ最優秀漫画賞(『父の暦』)
- 第26回 アストゥリアス公領漫画国際展 Haxtur長編漫画大賞(『父の暦』)
- 2003年
-
- 第30回アングレーム国際漫画祭 最優秀脚本賞/優秀書店賞(『遥かな町へ』)
- ルッカコミックス&ゲームズ ベスト・ロングストーリー賞(『遥かな町へ』)[9]
- ロミックス・フェスティバル Best Book of Japanese school (『遥かな町へ』)
- 2004年
-
- 第6回ナポリCOMICONフェスティバル アッティリオ・ミケルッツィ外国部門賞(『「坊っちゃん」の時代』)
- 9e Artプロモーション 2003Bedelys賞・金賞 他(『遥かな町へ』)
- 映画と文化国際フォーラム 映画化最適コミック賞 (『遥かな町へ』)
- 第22回バルセロナ国際コミック展 最優秀外国作品賞 (『遥かな町へ』)
- 2005年
-
- 第32回アングレーム国際漫画祭 最優秀美術賞(『神々の山嶺』)
- 2008年
-
- 第13回ドイツ国際漫画祭 最優秀作漫画作品賞/年間ベストコミック賞(『遥かな町へ』)
- ロミックス・フェスティバル グランプリ (『晴れゆく空』)
- 2010年
-
- 富川国際漫画フェスティバル 海外作家賞 (韓国の富川市が開催)
- ルッカコミックス&ゲームズ マエストロ・デル・フメット(漫画の巨匠)賞[9]
- 2011年
- 2013年
-
- 第38回 鳥取市文化賞 特別功績賞
企画展示
脚注
出典
- ^ Louis Vuitton Travel Book Venice by Jirô Taniguchi (EN Subtitles) (YouTube配信). Louis Vuitton. 7 May 2014. 2021年9月26日閲覧。
{{cite AV media}}
: 名無し引数「LOUIS VUITTON」は無視されます。 (説明) タイトル抄訳:ルイ・ヴィトン トラベル・ブック ヴェニス by 谷口ジロー (英語字幕) - ^ “46e Festival de la Bande Dessinée d'Angoulême – a venir - Du 24 au 27 janvier 2019 - Dans les pas de Jirô Taniguchi, l’homme qui marche” (フランス語). Festival de la Bande Dessinée d'Angoulême (2015年2月25日). 2018年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月26日閲覧。
- ^ a b “漫画家の谷口ジローさん死去 「孤独のグルメ」”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2017年2月12日) 2021年9月26日閲覧。
- ^ “訃報:谷口ジローさん69歳=漫画家「孤独のグルメ」”. 毎日新聞. 毎日新聞社 (2017年2月11日). 2021年9月26日閲覧。
- ^ 「谷口ジローさんに未発表の遺稿 小学館、12月刊行」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2017年10月30日、夕刊。2021年9月26日閲覧。
- ^ a b c d “『谷口ジロー 描くよろこび』刊行記念イベント 久住昌之×竹中直人 「ぼくたちと谷口ジロー」”. マンバ通信 (2019年2月11日). 2021年9月26日閲覧。
- ^ “「谷口ジローコレクション」ついに刊行スタート! 全巻、未発表原画・ラフスケッチ、豪華著名人の寄稿も決定!!”. PR TIMES. 小学館 (2021年10月29日). 2021年11月6日閲覧。
- ^ a b “谷口ジロー作品の本格選集が雑誌掲載時と同じB5サイズで登場、未発表のラフも掲載”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年9月24日) 2021年10月29日閲覧。
- ^ a b “谷口ジロー、イタリア・ルッカの祭典で最高栄誉賞を受賞”. コミックナタリー. ナターシャ (2010年11月5日). 2021年9月26日閲覧。
- ^ “ミッテラン文化・通信大臣がフランス革命記念日祝賀レセプションに出席”. LA FRANCE AU JAPON. 在日フランス大使館 (2011年7月19日). 2011年10月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年10月17日閲覧。
- ^ “仏勲章受章 谷口ジロー氏「日本でももっと評価して」”. 日刊SPA!. SPA! (2011年6月3日). 2021年9月26日閲覧。
- ^ “谷口ジロー、フランスの芸術文化勲章シュヴァリエを受勲”. コミックナタリー. ナターシャ (2011年6月3日). 2021年9月26日閲覧。
- ^ “描くひと 谷口ジロー展”. 世田谷文学館. 2021年11月2日閲覧。
- ^ 伊藤洋一 (2021年10月31日). “【学芸万華鏡】「世界の大人向け作家」 漫画家・谷口ジロー作品の「普遍性」”. 産経ニュース. 産経新聞社. 2021年11月2日閲覧。
関連項目
- アフタヌーン四季賞 - 1994年から2012年まで毎年夏のコンテストの審査員長を務めた。
外部リンク
- 谷口ジローの世界:小学館(archive.is、2013年5月1日) - http://comics.shogakukan.co.jp/jiro/[リンク切れ]
- ジャンプスクエア 直撃インタビュー完全版 完全版 - ウェイバックマシン(2010年12月10日アーカイブ分)
- ジャンプスクエア 谷口ジロー先生 直撃インタビュー 完全版 - ウェイバックマシン(2011年6月6日アーカイブ分)
- 遥かな町へ DVD公式サイト TOPページ | 株式会社メディアファクトリー - ウェイバックマシン(2016年1月21日アーカイブ分)
- 『谷口ジロー』 - コトバンク
- 谷口ジローの足跡 歩く人 - アングレーム国際漫画祭公式YouTubeチャンネル、2015年、33分、カラー、フランス語
- Quartier Lointain 予告編 - ワイルド・バンチ配給会社公式YouTubeチャンネル、2010年