空軍大戦略
空軍大戦略 | |
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Battle of Britain | |
監督 | ガイ・ハミルトン |
脚本 |
ジェームズ・ケナウェイ ウィルフレッド・グレートレックス |
製作 |
ハリー・サルツマン ベンジャミン・フィッツ |
出演者 | ローレンス・オリヴィエ |
音楽 | ロン・グッドウィン、ウィリアム・ウォルトン |
撮影 | フレディ・ヤング |
編集 | バート・ベイツ |
配給 | ユナイテッド・アーティスツ |
公開 |
1969年9月15日 1969年9月20日 |
上映時間 | 151分(オリジナル133分) |
製作国 | イギリス |
言語 |
英語 ドイツ語 ポーランド語 フランス語 |
製作費 | $13,000,000 |
『空軍大戦略』(くうぐんだいせんりゃく、Battle of Britain)は、1969年に公開された戦争映画。第二次世界大戦中のバトル・オブ・ブリテンを題材にしている。
概要
第二次世界大戦前期、1940年7月から10月にかけて行われた英本土上空の制空権を巡る英独の戦い「バトル・オブ・ブリテン」を描く。戦いの中の様々なエピソードを綴っていく群像劇の形になっており、明確な主人公やストーリーは存在しない。
この映画には、多数の実物の飛行機が当時のままの姿で登場する。しかもイギリス側の戦闘機スピットファイアやハリケーンだけでなく、敵国ドイツの戦闘機(メッサーシュミットBf109)や爆撃機(ハインケルHe111)も実物で登場する。最後の大空戦シーンでは、一切の効果音が消され、音楽(ウォルトン作曲)に乗ってスピットファイアやメッサーシュミットがスクリーンを舞う。
あらすじ
注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。
1940年5月、突如としてドイツ軍はフランスになだれ込み、いわゆる電撃戦によってフランスを占領してしまった。次の目標はイギリス。英仏海峡に上陸用舟艇を並べ、いまにも侵攻するという構えを見せたドイツ軍は、まず優勢の空軍によってイギリスの制空権を奪取しようとする。英本土上空の航空戦、バトル・オブ・ブリテンの開始である。
2500機を有するドイツ空軍に対して、イギリス空軍が有するのはわずか600機だったが、イギリス側はレーダー網を駆使した指揮管制による効率的な迎撃を行い、なんとか持ちこたえる。
8月、戦局を一変させる事態が発生する。夜間爆撃を行ったドイツの爆撃機が誤ってロンドン市街地に爆弾を投下してしまったのだ。イギリスは直ちに報復としてベルリンの夜間空襲を行った。ドイツ側の直接的な被害は小さかったが、面子をつぶされたドイツ国家元帥ゲーリングは激怒し、以後、空襲目標は軍事施設から市街地への無差別爆撃へと変わった。それは市民にとっては耐え難い事態であったが、イギリス空軍にとっては力を盛り返すきっかけでもあった。
9月15日、乾坤一擲の大空襲を仕掛けたドイツ空軍に、ポーランドの亡命パイロットも加わったイギリス空軍は全機を出動させて徹底的な反撃を加え、ついにこれを撃退する。大損害を受けたドイツ空軍がこの後大規模な昼間空襲を行うことは無かった。空からのイギリス攻略をあきらめたドイツ軍は集結していた上陸部隊も撤収させ、ここにドイツ軍英本土上陸の危機は去ったのだった。
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹替 | ||
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イギリス政府関係 | ||||
サー=フランシス・ストーク(空軍省次官) | ハリー・アンドリュース | |||
サー=デビッド・ケリー(駐スイス英国大使) | ラルフ・リチャードソン | |||
イギリス空軍関係 | ||||
サー=ヒュー・ダウディング大将(空軍最高司令官) | ローレンス・オリヴィエ | 中村正 | ||
サー=キース・パーク少将(第11航空師団長) | トレヴァー・ハワード | あずさ欣平 | ||
トラッフォード・リー・マロリー少将(第12航空師団長) | パトリック・ワイマーク | |||
コリン・ハーヴェイ少佐(戦闘機パイロット) | クリストファー・プラマー | 日高晤郎 | ||
マギー・ハーヴェイ(空軍婦人部隊分隊長/コリンの妻) | スザンナ・ヨーク | 信沢三恵子 | ||
キャンフィールド少佐 | マイケル・ケイン | 若本規夫 | ||
“スキッパー”少佐 | ロバート・ショウ | 小林清志 | ||
アンディ上等兵曹 | イアン・マクシェーン | 飯塚昭三 | ||
アンディの妻 | アイラ・ブレア | |||
ベイカー大佐(ダクスフォード空軍基地司令官) | ケネス・モア | |||
アーチー少尉 | エドワード・フォックス | |||
ドイツ政府関係 | ||||
アドルフ・ヒトラー(ドイツ総統) | ロルフ・シュティーフェル | |||
ヘルマン・ゲーリング(ドイツ国家元帥/空軍最高司令官) | ハイン・リース | 富田耕生 | ||
フォン・リヒター男爵(ドイツ外務省の密使) | クルト・ユルゲンス | 上田敏也 | ||
ドイツ空軍関係 | ||||
ファルケ(上級パイロット) | マンフレッド・レッドマン | |||
ハンス・ファルケ(ファルケの弟) | ダーゴヴェルト・ヴァルター | |||
ブラント少佐(爆撃隊指揮官) | アレクサンダー・アラーソン |
その他
- 映画で使用されたドイツ軍機は、第二次世界大戦中、枢軸国寄りながらも中立を貫いたスペインが保有してものである。ただしエンジンはオリジナルではなくイスパノ・スイザ製のものに換装されている。
- ハーヴェイ少佐役のクリストファー・プラマーはカナダ人であるため、自分用の制服の肩に「CANADA」(カナダ空軍)の縫い取りを付けている。
- ゲーリング元帥がパイロットたちに「なにが必要か」と尋ねた時、アドルフ・ガーランド(映画ではファルケ)が「スピットファイアを1個飛行隊欲しい」と答えてゲーリングの不興を買ったという有名な逸話があり、映画でも再現されているが、字幕では「敵戦闘機隊をお任せを」という意味不明な訳になってしまっていた(DVD版では「スピットファイアの中隊を」に訂正されている)。
- この映画のイギリスでの公開日は最後の大空戦が行われた日と同じ9月15日。
- この映画のために倉庫に眠っていたイギリス軍機がレストアされた。
- イギリス空襲のシーンでは実際にハインケル爆撃機が戦後初めてイギリス上空を飛ぶという、国民感情を考えればぎりぎりの撮影が行われた。飛行したのは2機だけだったが、あっけにとられて空を見上げるロンドン市民の姿がメイキングフィルムに映っている。
- さすがにスツーカ(Ju 87)までは実機を用意できなかったので、これは精密なラジコンと、プロクター練習機の改造機が用意された。
- 空撮映像はその後「ダーク・ブルー」でも手直しされた上で使われている。
関連書籍
- リチャード・コリヤー『空軍大戦略』 早川書房(ハヤカワ文庫NF) ISBN 4150500509