甘酒

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甘酒
甘酒
甘酒[1]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 339 kJ (81 kcal)
18.3g
食物繊維 0.4g
0.1g
飽和脂肪酸 0 g
一価不飽和脂肪酸 0 g
多価不飽和脂肪酸 0 g
1.7g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
0 μg
チアミン (B1)
(1%)
0.01 mg
リボフラビン (B2)
(3%)
0.03 mg
ナイアシン (B3)
(1%)
0.2 mg
(0%)
0 mg
葉酸 (B9)
(2%)
8 μg
ビタミンC
(0%)
0 mg
ビタミンD
(0%)
0 μg
ビタミンE
(0%)
0 mg
ビタミンK
(0%)
0 μg
ミネラル
カルシウム
(0%)
3 mg
鉄分
(1%)
0.1 mg
マグネシウム
(1%)
5 mg
リン
(3%)
21 mg
カリウム
(0%)
14 mg
ナトリウム
塩分の可能性あり)
(4%)
60 mg
亜鉛
(3%)
0.3 mg
他の成分
水分 79.7g

成分名「塩分」を「ナトリウム」に修正したことに伴い、各記事のナトリウム量を確認中ですが、当記事のナトリウム量は未確認です。(詳細

%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

甘酒(あまざけ、カンシュ、)は日本の伝統的な甘味飲料の一種で、見た目はどぶろくに似て混濁している。甘粥(あまがゆ)とも呼ばれる。

主に米こうじ、あるいは酒粕を原料とする。酒という名がつくものの、アルコール含有はわずかで、市販されている商品はソフトドリンク(アルコール度数1%未満)に分類されるものが多い。

歴史

甘酒の起源は古墳時代に遡り、『日本書紀』に甘酒の起源とされる天甜酒(あまのたむざけ)に関する記述がある。古くは「一夜酒(ひとよざけ)」または「醴酒(こさけ、こざけ(「濃い酒」の意))」と呼ばれた[2]

かつてはに、「甘い・甘い・あ〜ま〜ざ〜け〜」などの文句で行商も多く、俳句において夏の季語となっている。夏に飲む場合は夏バテを防ぐ意味合いもあり、栄養豊富な甘酒は体力回復に効果的ないわば「夏の栄養ドリンク」として、江戸時代には夏の風物詩だった[2]。守貞漫稿には、「夏月専ら売り巡るもの」が「甘酒売り」と書かれており、非常に人気がある飲み物であった。当時の江戸幕府は庶民の健康を守るため、老若男女問わず購入できるよう甘酒の価格を最高で4に制限しており、武士内職としても甘酒造りが行われていた。

販売

甘酒茶屋

正月には、参拝客に甘酒を振る舞ったり、自宅に持ち帰る甘酒を販売する寺社が多い。また、農家が収穫を感謝するため、甘酒を造ったり、祭りに甘酒を供える風習が残っている土地もある。

缶入り、瓶入りのほか、粉末やフリーズドライのものが販売されており、ミルクスタンドでは「冷やし甘酒」、また「甘酒ヨーグルト」など各種製品も販売されている。

雛祭りの際に飲まれる「白酒」は製法が異なるよく似た別物であるが、甘酒がアルコール含有が僅かなことや安価だという理由で、代品として使われることが現在では一般的である。

栄養

甘酒には、ビタミンB1ビタミンB2ビタミンB6葉酸食物繊維オリゴ糖や、システインアルギニングルタミンなどのアミノ酸、そして大量のブドウ糖が含まれているが、これらの栄養はいわゆる栄養剤としての点滴とほぼ同じ内容であることから、「飲む点滴」と称されることもある[3]

ただし点滴は栄養豊富という知識は誤りであり、一般的な点滴は決して栄養豊富というわけではない点に注意。あくまでも栄養成分が似ているというだけである。

ブドウ糖以外は製法(後述)による差異も少ない。

冬季では体が温まるようにあるいは風邪の予防として甘酒を熱くし、夏季はさっぱりと飲めるようにショウガ汁を入れて飲まれることがある。

酒粕が甘酒の原料に使用されることがあるが、日本食品標準成分表によると酒粕にはアルコール分が約8%程度残存している。原料に含まれること、あるいは製造過程で生成されることで、甘酒にもアルコールが含まれることがあることに注意が必要である。

法的には飲料に含まれるアルコール分が1%未満であればアルコール飲料ではなくソフトドリンクとして扱われ[4]未成年者でも飲用が許される。ただし、酒に弱い者(特に幼児)が大量に飲むと酔う可能性がある。

マクロビオティックでは砂糖の代わりに甘味料として使われることが多い。「ジャパニーズヨーグルト」として海外に販売している企業もある[3]

製法

製法は複数存在し、両製法を使用した製品も存在する[5]

麹を使用する製造方法
米こうじを原料とする。150gの米、3合の水で作ったを50 - 60℃程度に保温し、200gの米こうじを混合、撹拌し、1晩(10 - 12時間)程度かけてコウジカビ由来の酵素アミラーゼ)によってデンプン糖化することで甘味を得る。古く「一夜酒(ひとよざけ)」と呼ばれたのはこの製法から来たもので、冬でないと酒を造れない酒蔵が夏の副業に手掛けていたともいう[6]
糖化の過程では、コウジカビのアミラーゼによる糖化のほか、プロテアーゼによるタンパク質のアミノ酸への分解や、混入乳酸菌による乳酸発酵も進行する。温度が高すぎるとコウジカビの酵素が充分に作用せずに糖化が進まず甘味が乏しくなり、逆に温度が低すぎると乳酸発酵が進行しすぎ、雑菌も繁殖するので、酸味が強く風味が損なわれる。なお、一般的には混入酵母により進行したアルコール発酵の程度に応じ、アルコール(通常は極微量)を含むことになる。
65℃の温度で23秒間加熱すれば乳酸菌殺菌できることが知られている[7]ため、前述のように50 - 60℃程度に長時間保温する。
本来は砂糖を加えないが、市販のものでは砂糖など糖類を加えたものも少なくない。
酒粕を使用する製造方法
酒粕を原料とする。湯に酒粕を溶いて加熱し、砂糖などの甘味を加える。日本酒由来の酒粕には、発酵酵母など各種栄養素も多く含まれており[8][9]、製法も安易である。日本酒由来の酒粕ではなくこぼれ梅(みりん粕)を使用する場合もある。材料の酒粕にはアルコールが含まれているため、作られた甘酒に少量のアルコールが含まれている場合もある。酒粕はすり鉢などを用いて滑らかにとかしたり、塩を一つまみ加えるなどと工夫する人もいる。
麹発酵のための設備が不要であり、酒造の副産物を活用出来るなど利点も多い。
奈良時代歌人である山上憶良が、『貧窮問答歌』において「糟湯酒」と書き記した歌を残しており、その頃から既に酒粕による甘酒の原型があったことが窺える。

市販の甘酒

入り、瓶入り、フリーズドライビニール袋詰めなどの形で販売されている。缶入りは冬場に自動販売機で多く見かけられる。

現在市販品では酒粕製の甘酒が主流であるが、森永製菓の缶入り甘酒(森永甘酒)は、麹と酒粕の双方を使用して製造していると謳っている[10]ミツカングループの中埜酒造ではフルーツを原料に使用したアルコールが一切含まれていないフルーツ甘酒を製造販売している[11] 。また、マルコメは「プラス糀」シリーズの中で麹を使った無加糖の製品を販売しており[12]離乳食としての利用法も提案している。

脚注

  1. ^ 五訂増補日本食品標準成分表
  2. ^ a b 甘酒 森永製菓『甘酒のルーツ』
  3. ^ a b 国菊甘酒 株式会社 篠崎
  4. ^ 「甘酒」はお酒ではないのですか? よくある質問【甘酒】 | 大関株式会社
  5. ^ 万田発酵 甘酒の原材料:米麹、酒粕
  6. ^ http://www.isesou.co.jp/amazake/index.shtml
  7. ^ 野白喜久雄ほか 『改訂醸造学』 1993年3月。ISBN 978-4-06-153706-4
  8. ^ 月桂冠資料
  9. ^ 日本酒造組合中央会 「水分50%、アルコール分8%、デンプン・糖分25%、タンパク質15%、その他B1、B2、B6などのビタミン」
  10. ^ http://www.morinaga.co.jp/amazake/index.html
  11. ^ フルーツあまざけすっきりりんごフルーツあまざけさわやかブルーベリー
  12. ^ プラス糀 甘酒

関連項目

外部リンク