王配
王配(おうはい)は、一般に女王の配偶者のこと。王婿(おうせい)とも言う。英語ではprince consort(ただし、この語は女帝(empress regnant)の配偶者(皇配)も含む)またはking consortという。
- 以下、一般例として英語を用いて説明する。
ヨーロッパでは“prince”の称号が与えられることが通常であり(ただし、歴史的には後述のように“king”も存在した)、この場合の敬称は殿下である。王妃の男性版にあたるが、王妃の場合は女王と同じ“queen”の称号とともに陛下の敬称が付されるのとは対照的である。
概要
ヨーロッパにおける王配の称号には、
- “King Consort” - 「(君主の)配偶者たる王」の意。自身が国王(king)である場合と同様の称号を付与したものである。
- “Prince Consort” - 「(君主の)配偶者たるプリンス(prince, 公)」の意。princeは王族に与えられる称号である。
- “Prince” - 前述のように王族に与えられる称号。最も一般的。
などがある。
中国や日本では配偶者がいる女性が皇帝や天皇として即位した例が殆どないこともあり、これらに対応した適切な訳語が存在しない。日本では外務省や宮内庁などの公式文書で用いられているものの、そもそも「王配」という言葉が報道記事ではまず用いられず、『広辞苑』を始めとする中型国語辞典にも収録されていないなど一般的ではない。そこで他人の夫に対する敬称である「夫君」(ふくん:ご主人、旦那様)が代わりに用いられることが多い。
なお、妻と共に共同君主である場合は王配ではなく(共同)国王なので区別を要する。この例としては以下の人物が挙げられる。
- ポーランド国王ヴワディスワフ2世 - 女王ヤドヴィガの共同君主。女王の死後も単独で王位を保った。
- ポーランド国王ステファン・バートリ - 女王アンナの共同君主。女王に先立って死去した。
- アラゴン国王フェルナンド2世 - 女王イサベル1世の共同君主としてカスティーリャ国王を兼ねた。女王の死後はカスティーリャの王位は失い、イサベル1世との間の娘である女王フアナの摂政としてカスティーリャを治めた。
- イングランド国王(兼スコットランド国王)ウィリアム3世 - 女王メアリー2世と同格の共同君主。女王の死後も単独で王位を保った。
各国の王配
存命する人物は太字で示す。
イングランド、スコットランド、イギリス
- フランス国王フランソワ2世 - スコットランド女王メアリーの最初の王配。“King Consort”の称号(上記1.)。
- ダーンリー卿ヘンリー・ステュアート - スコットランド女王メアリーの2番目の王配。“King Consort”の称号(上記1.)。
- ボスウェル伯ジェームズ・ヘップバーン - スコットランド女王メアリーの3番目の王配。
- カスティーリャ及びレオン国王フェリペ2世 - イングランド女王メアリー1世の王配。“King Consort”の称号(上記1.)。
- カンバーランド公ジョージ - イギリス(グレートブリテン)女王アンの王配。“Prince Consort”の称号(上記2.)。
- ザクセン=コーブルク=ゴータ公子アルバート - イギリス女王ヴィクトリアの王配。“Prince Consort”の称号(上記2.)。
- エディンバラ公フィリップ - イギリス女王エリザベス2世の王配。“Prince of the United Kingdom”の称号(上記3.)。
オランダ
- ヘンドリック・ファン・メクレンブルフ - 女王ウィルヘルミナの王配。“Prins der Nederlanden”の称号(上記3.)。
- ベルンハルト・ファン・リッペ=ビーステルフェルト - 女王ユリアナの王配。“Prins der Nederlanden”の称号(上記3.)。
- クラウス・ファン・アムスベルフ - 女王ベアトリクスの王配。“Prins der Nederlanden”の称号(上記3.)。
ポルトガル
- ペドロ3世 - 女王マリア1世の王配。“Rei Consorte”の称号(上記1.)。
- ロイヒテンベルク公アウグスト - 女王マリア2世の最初の王配。“Príncipe Consorte”の称号(上記2.)。
- フェルナンド2世 - 女王マリア2世の2番目の王配。“Rei Consorte”の称号(上記1.)。
その他
- ヘンリク - デンマーク女王マルグレーテ2世の王配。“Prinsgemal”の称号(上記2.)。
- バルセロナ伯ラモン・ベレンゲー4世 - アラゴン女王ペトロニラの王配。“Príncipe de Aragón”の称号(上記3.)
- カディス公フランシスコ - スペイン女王イサベル2世の王配。“Rey Consorte”の称号(上記1.)。
- 神聖ローマ皇帝フランツ1世 - ハンガリー女王、ボヘミア女王としてのマリア・テレジアの王配。
- ヘッセン=カッセル方伯フリードリヒ1世 - スウェーデン女王ウルリカ・エレオノーラの王配。妻が退位すると代わって自らがスウェーデン王フレドリク1世として即位。
皇配
女帝(empress regnant)の配偶者を皇配(こうはい)あるいは皇婿(こうせい)という。英語ではemperor consortまたは王配と同様にprince consortとなる。歴史上ほとんど存在した例がなく、主に概念的な用語として用いられる。ただし、かつては日本の行政府による独特の用例があった。この語もまた、『広辞苑』などの中型国語辞典に収録されていない。
日本の行政府による使用事例
かつては、日本政府(主に外務省や宮内庁)では、現在では「国王」「大公」等の表現が用いられる外国君主に対し、「皇帝」の称号をもって表記していた(「ノルウェー国皇帝陛下」、「タイ国皇帝陛下」、「ブータン皇帝陛下」など。例えば、1987年1月20日付けの官報(昭和時代の号数で本紙第17975号)以前の官報を参照)。これに関連して、「皇配殿下」との表現が使用されている。現在では、前述のように(女王の夫であれば)「王配殿下」と呼ぶ。
備考
フェリックス・ド・ブルボン=パルムは、ルクセンブルクの女大公シャルロットの夫で“prince de Luxembourg”の称号(上記3.)を有し、女王に対しての王配に相当する人物であるが、「女大公の配偶者」を示す用語は日本語に存在しない(英語ではこの場合も prince consort である)。