漆黒のシャルノス

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漆黒のシャルノス
- What a beautiful tomorrow -
ジャンル スチームパンク・ホラー
対応機種 DVD-ROM for Windows98se later (含Vista)
発売元 Liar-soft
発売日 2008年11月21日
レイティング 18禁
キャラクター名設定 不可
エンディング数 1
セーブファイル数 100
メディア DVD-ROM 1枚
画面サイズ 800×600
BGMフォーマット ogg
キャラクターボイス パートボイス
CGモード あり
音楽モード あり
回想モード あり
メッセージスキップ 既読・未読設定可能
オートモード あり
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漆黒のシャルノス〜What a beautiful tomorrow〜』(しっこくのしゃるのす)は、2008年11月21日ライアーソフトから発売されたアダルトゲーム。 ライアーソフトの第24作であり、スチームパンク・ホラーADVと銘打っている [1]。 企画原案・シナリオは桜井光。全10幕。

作品概要

漆黒のシャルノス - what a beautiful tomorrow -』はライアーソフトが過去に発表した『蒼天のセレナリア』、『赫炎のインガノック』と世界観を共有する作品である [2]。 また、公式サイトには天野佑一の企画の下、桜井がシナリオの一部を手がけたANGEL BULLETも世界観を共有していることをほのめかす記述がある [3]

『セレナリア』、『インガノック』同様、地名等には『ディファレンス・エンジン』を始めとするスチームパンククトゥルフ神話からの影響がある。キャラクターにおいてはシャーロック・ホームズシリーズ登場人物やイギリス文学関係者が数多く登場することも特色のひとつである。その他に大デュマモンテ・クリスト伯(巌窟王)からも影響を受けている[4]

音楽はマッツミュージックスタジオによるもので、オープニング、エンディングのボーカル2曲を含む全15曲が使用されている。ケルトを意識したオープニング曲『dorchadas』はゲール語で「暗闇」を意味する。また、アコーディオンに蛇腹姉妹として知られる藤野由佳を起用したことでも話題を呼んだ。藤野の起用はボーカルのRitaの強い希望によるものである [5]

本作は18禁指定作品ではあるが、直接的な性的描写に重点を置いていない。ベッドシーンを映したCGにおいても乳首は描写されているが、性器は描写されていない。このため、モザイク処理されたCGが1枚もない。アダルトゲームとしては異例の作品といえるが[6]、2008年2ch葱板ベストエロゲで9位になるなどユーザからの評価が高い作品のひとつである [7]。 また、アダルトゲーム専門小売店げっちゅ屋2008年11月の月間売り上げランキングでは9位になるなどセールス面でも好評であった [8]

ストーリー

舞台

1905年の英国首都ロンドンが舞台。史実とは異なりヴィクトリア女王は健在である[9]。機関(エンジン)文明の中心地で煤煙のために青空は見えない。このため外出時には傘を煤よけのために使う。また、北方の異境であるカダス地方[10]と交易がある唯一の都市であり、交易のために飛行船が飛び交う。

「エイダ主義」[11]によって女性の社会進出が進む。一方若い女性が公共の場でオスカー・ワイルドサロメについて話すのは憚れるようである[12]。「王立碩学院」という男女共学の高等教育機関があり、主人公のメアリ、その友人のシャーロット、アーシェリカも通っている。

機関都市ロンドン
西亨における最大の都市のひとつ。英国首都。カダス地方との交流が唯一行われている都市である。第二次産業革命こと「機関革命」の後に最大級の
機関工業都市として発展し、霧と排煙の満ちる機関都市となった。チューブ状の地下鉄が伸び、ガーニー(蒸気自動車)が走り、馬車が行きかう大都市。
西亨の多くの国はそうだが、空が排煙によって覆われておりほとんど見えない状態となっている。まれに“隙間”と呼ばれる現象によって太陽光が覗くことがあり、ロンドンにおいてはクリスタルパレス跡地公園が唯一“隙間”からの「陽射し」を確認できる場所である。日々、工業と文化の発展を続ける科学都市であるといわれるが、同時に《怪異》と呼ばれる「現代のおとぎ話」がまことしやかに囁かれているという二面性を持つ街。
未だ健在のヴィクトリア女王による治世がおこなわれている。

キャラクター

原作で一部のキャラクターに声がついている。 ※2011年発売のFullvoice ReBORN Editionには、登場人物全員に声がついている。

メアリ・クラリッサ・クリスティ
かわしまりの
本作の主人公。王立碩学院で史学を学ぶ女学生。アッシュブロンドの髪に碧色の左眼、黄金色の右瞳を持つ。父親とは死別、母親は「北央帝国」[13]の研究所に勤めているため、下宿先にて一人暮らしをしている。絵本を書くことが趣味で、目標としているのは天才女流作家と謳われるメアリー・シェリー[14]フランケンシュタイン」など、彼女の物語は愛の物語と考えている[12]。普段は淑やかさと快活さを持ち合わせるごく普通の少女だが、苦境に陥った時の芯の強さと行動力は目を見張るものがある。とある事件に巻き込まれた親友・シャーロットを助けるため、謎めいた黒衣の男・The Mと契約を交わし、異界と化したもうひとつのロンドン・「シャルノス」を駆ける。史実では「ミステリの女王」と呼ばれる作家である。代表作に『オリエント急行の殺人』など。
The M
声 : 越雪光
本作のもう一人の主人公とも呼ぶべき存在。右目を眼帯で覆った年齢不詳の謎の男。ロンドンの街に出没する《怪異》を追っている。愛読書はモンテ・クリスト伯。他人など意に介さない無感情な人物だが、なぜかメアリに対しては異様なこだわりを見せる。
シャーロット・ブロンテ
声:野月まひる
ウェールズの資産家の娘で、王立碩学院で史学科を専攻しているメアリの同級生であり親友。通称シャーリィ。メアリやアーシェリカよりは割と落ち着いた性格で、大人びた印象を持つ。が、茶目っけもありメアリのことを「キティ」(仔猫)と呼んでからかったりすることも。オカルティズムに興味がある。1905年、《怪異》と遭遇した影響でいつ覚めるとも知れぬ深い眠りについてしまう。史実では『ジェーン・エア』で知られるイギリスの女流作家である。
アーシェリカ・ダレス
声:金田まひる
メアリ、シャーロットの友人。通称アーシェ。王立碩学院で数学を学ぶ女学生。外見は幼いが細かいところにもよく気づき、明るい性格でムードメーカー的存在である。ハワードと婚約している。史実ではアメリカ合衆国の男性作家、編集者であり、ハワードの作品群を体系化したことなどで知られる。なお、1909年生まれであり、1905年には生まれていない。
モラン大佐
声:桜川未央
赤い陸軍服を身に纏う中性的な人物。肉体を改造された機関人間であり、『M』直属の部下。『M』にのみ忠実に従い、彼に対して恋愛感情に近いものが芽生え始めている節が見られる。驚異的な身体能力を有しており、常にドイツ式拳銃を携帯している。それでも《怪異》に対しては『M』の戦闘力に及ばない。モデルはシャーロック・ホームズシリーズ登場人物で、ホームズと敵対した男性。
シャーロック・ホームズ
声:真木将人 ※(Fullvoice ReBORN Editionで)
理知的で、常に冷静沈着な紳士。イギリスのみならず世界にその名を轟かせる天才私立探偵。特に植物学・化学・地質学に長けている。《怪異》の存在を認めようとせず、あらゆる事件は人間の起こしたものであるとし、幻想を打ち砕く男。『M』のことを毛嫌いしているという噂だが、詳細は不明。モデルはイギリスの小説家アーサー・コナン・ドイルの著作に登場する同名の探偵。創作上の人物であるが、この作品では実在の人物として登場する。
バロン・ミュンヒハウゼン
声:小次狼 ※
もう一人の『M』。獅子のような仮面で顔の上半分を覆った、一昔前の仏蘭西貴族のような出で立ちの謎の男。永遠の命を持つとうそぶき、その思考は計り知れない。錬金術の達人であり、碩学。《怪異》に対して異常な執着を見せる。モデルは「ほらふき男爵」で有名なミュンヒハウゼン男爵
ハインツ・ヘーガー
声:鳴海アキト ※
オックスフォード大学に在籍しながら王立碩学院に通うドイツ人青年。涼やかな美形の好青年で、王立碩学院の生徒からの人気も高い。シャーロット同様オカルティズムに長けている面がある。
涙の少女(バンシー)
声:野月まひる
シャーロットが昏睡してからメアリの前に現れるようになった不思議な少女。泣きながらロンドンの街を徘徊している。バンシーとは、イギリスに伝わる女の妖精のこと。
ハワード・フィリップス
声:ますおかゆうじ ※
アーシェリカの彼氏で、オックスフォード大学に通うアメリカ人留学生。貿易業も営んでおり、自家用のガーニー(蒸気式自動車)を買えるほど儲かっている。少々険しい顔立ちだが、アーシェリカのことを「ハニー」と呼んで溺愛するなど性格はむしろ優しく、肝の据わった男。昔ある事情により調べていたことからオカルティズムに詳しいが、本人はあくまでその手のものは嫌っている。史実では「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」の第一人者であるアメリカの小説家。
ドナ・ワーグマン
声:中家志穂
シャーロットの世話をするオールラウンド・メイド。元はブロンテ家の家庭教師だったが、シャーロットのロンドンでの一人暮らしに伴い自らメイドとして彼女に付き従う。抑揚を抑えた人柄ながら、シャーロットや親友であるメアリ・アーシェに温かいまなざしと愛を注ぐ、彼女たちにとっては姉とも言える存在。
マリー・ハドスン
声:桜川未央
楚々とした容貌を持つ、テムズ沿岸の下宿を経営する未亡人の大家。メアリは友人の娘であり、下宿の店子。穏やかで面倒見が良く、メアリの事を気に掛け何かと世話を焼く。
ジョージ・レストレイド
声:どぶ六郎 ※
スコットランド・ヤードの警部。メアリの叔父。官憲らしい生真面目さと厳しさを持ち合わせる正義漢だが、姪であるメアリには甘いらしく事あるごとに手紙を寄越す心配性でもある。ロンドンに跋扈する「怪異」をマーレイ記者と共に追う。
ケインズ&アンリ
声:金田まひる&歌織
べーカー・ストリートを根城にロンドンを駆け回る少年少女。メアリとは友達。子供らしいはしっこさを生かし、時にホームズやThe Mのメッセンジャーとして仕事を請け負うことも。
クローディア・アクランド
声:桜川未央
メアリ行きつけの無国籍風カフェの女主人で、メアリの母の旧友。何度か結婚と離婚を繰り返した経歴があり、さばさばとした性格で男女ともに人気がある。
ベル・ウェブ
声:歌織
クローディアの店で働くメアリの友人。下流階級の出身であり、メアリたち以外の碩学院の女子学生とは個人的な付き合いがない。
アーサー・コナン・ドイル
声:小次狼 ※
『M』行きつけの古書屋で店番をしている青年。妖精が好きで、何もない空間に向かって話しかけたりするなど不思議な行動を繰り返す。予言じみた詩をメアリに投げかける。史実ではシャーロック・ホームズシリーズで知られるイギリスの小説家で、現代推理小説の父とも呼ばれている。晩年は心霊学や妖精の研究に傾倒した。
ザック・マーレイ
声:来栖川勇 ※
TIMESの新聞記者で、下町気質と騎士道精神にあふれる好漢。メアリやハワードと交友がある。頭を使うよりも体でぶつかる取材が得意。レストレイド警部と共に《怪異》について調査している。この事件の異常性・危険性はなんとなく感じ取っているようで、ハワードに首を突っ込まないように忠告した。
ロビン・ファネル
声:野月まひる
スコットランドヤードお抱えの検視医。世界で一番死体が嫌いと断言しているが、いつでもモルグ(死体安置所)に居続ける重度のマゾヒスト。喪服のような漆黒の衣装を着ており、顔をベールで覆っており容貌はさだかでない。検視医の他に裏の顔を持っている。
ヨゼフ・チャペック
声:山本兼平 ※
第1幕と第2幕に登場する壮年の男性。機関学と社会学を修めた東欧の碩学であり「王立碩学院」にて客員教授を務めている。シャーロットも教え子のひとり。碩学院にて「チャペック研究会」を主催している。穏やかな紳士ではあるが、愛用している鞄を常に抱えているなど、不可解な点があり学院生からは薄気味悪いと思われている。史実同様作品にてロボットという単語をつけた[15]史実では画家作家である。また、1887年生まれであり1905年当時では壮年とは言い難い。1945年ベルゲン・ベルゼン強制収容所にて亡くなる。
ヴァイオラ・バスカヴィル
声:中家志穂
かつてホームズに救われたサー・ヘンリー・バスカヴィル卿の娘。時折、彼女の周囲で「魔犬」の声が聞こえるらしい。落ち着いた性格の淑女で、助けを求めてロンドンを訪れる。英国貴族としての義務感と親族をすべて失った孤独感に常に苛まれている。モデルはシャーロック・ホームズシリーズの「バスカヴィル家の犬」。
ウィンストン・チャーチル
声:古河徹人 ※
元軍人の若き革命家で、天才的戦略家。国内外のさまざまな支援を受けて、英国転覆とヴィクトリア女王の暗殺を謀る野心家。チャペック教授やハインツと交流がある。自分以外の人間はすべて駒だと考えている、若き獅子王。史実ではイギリスの政治家・首相であり第二次世界大戦で勝利に導いた。
エド・オニール
声:暁勇輔 ※
英国空軍少将。カダス地方で飛行要塞理論を学んだエリート。《怪異》を軍事に組み込もうと目論んでいる。利用できるものなら妻子であっても利用する冷徹な男。
ブラム・ストーカー
声:岡田一廣 ※
第5、6幕[16]に登場するメアリー・シェリーと並び称される怪奇作家の一人。作品に登場する不死の吸血鬼の描写から、常に何者かに監視されている。大親友であるヘンリー・アーヴィングに頼まれて劇場主となっており、彼女に対して深い愛情を抱いている。史実ではイギリスの小説家。ヘンリーとは史実でも交友があった。
ヘンリー・アーヴィング
声:かわしまりの
第5、6幕[16]に登場するロンドンを代表する舞台役者。男性のような容姿だが実は女性。正確には「男役の女優」である。世間では女性であることはあまり知られていないが、本人は別に性別を偽っているわけではなく詳しい一部の人間は知っている(アーシェリカなど)。ブラムに愛情を抱いているが、それまでの友情が壊れることを恐れており、また彼が抱えている悩みを他人にも相談できずにいる。史実ではイギリス人舞台俳優。
ジェーン・ドゥ
声:歌織
都市に生きる現代の魔女。ジェーンは現在の仮の名で、既に本当の名は廃棄している。上級エージェントとして秘密活動を行っていたところ、バロン・ミュンヒハウゼンの招きによりロンドンに帰還する。『M』のかつての恋人であるという噂があり、『M』の行動の目的を知る数少ない人物。チャペック研究会の特別メンバーであり、会とは電信でやり取りをしていた。ジェーン・ドゥ(Jane Doe)とは英語でのポピュラーな匿名であり日本語における名無しの権兵衛に相当する。
エリー・バインホルン
声:中家志穂
幼い女の子。ハプスブルク家の末裔であり、大英帝国やドイツ帝国からその身を狙われている。逃亡の果てにロンドンに潜入し、シティエリア周辺の孤児たちに混ざって身を隠そうとしている。夢はカダス地方の果てにあるという青い世界へ至ること。史実ではプロイセン王国出身の女性冒険飛行家。

スタッフ

  • 企画原案・シナリオ:桜井光
  • 原画・キャラクターデザイン:AKIRA
  • BGM:Blueberry&Yogurt/マッツミュージックスタジオ
  • 主題歌『dorchadas』
    作詞・歌:Rita/作・編曲:Blueberry&Yogurt/Violin:kanaco/Accordion藤野由佳
  • エンディング曲『Saudade』
    作詞・歌:Rita/作・編曲:Blueberry&Yogurt

ウェブノベル

ライアーソフトの『漆黒のシャルノス』公式サイトで、本編の後日談を書いたウェブノベル『ナイハーゴの灰葬』前編・中編・後編を閲覧することが出来る。前述の通り、内容は本編の後日談であるため、本編クリア後に読むのが望ましい。

  1. ^ ライアーソフト. “ライアーソフト第24弾漆黒のシャルノス公式サイト”. 2009年3月18日閲覧。
  2. ^ Getchu.com. “漆黒のシャルノス〜What a beautiful tomorrow〜”. 2009年3月18日閲覧。
  3. ^ ライアーソフト. “『本、小説なるもの』”. 漆黒のシャルノス公式サイト. 2009年3月18日閲覧。
  4. ^ 「待て、しかして希望せよ」がストーリーのキーワードである。
  5. ^ Rita (2008年9月30日). “シャルノスOPムービー公開です!!”. 超りある。. 2009年3月18日閲覧。
  6. ^ 『インガノック』も同様に性器の描写がないためモザイク処理が施されたCGがない。
  7. ^ カレー好き集計人 ◆83j4klZGf6; エロゲネタ&業界板有志. “ベストエロゲ投票集計結果”. 2009年3月18日閲覧。
  8. ^ Getchu.com. “2008年・11月セールスランキング!”. 2009年3月20日閲覧。
  9. ^ 史実では1901年に没している。
  10. ^ 地名の由来はクトゥルフ神話から。『セレナリア』、『インガノック』の舞台である。
  11. ^ レイディ・エイダは『セレナリア』に登場する。
  12. ^ a b 第1幕『灰燼の王/前編』
  13. ^ 『セレナリア』に登場する帝国である。
  14. ^ 『セレナリア』のファンディスクに登場し、セレナリアでは「物語る姫」と呼ばれている。
  15. ^ 第2幕『灰燼の王/後編』
  16. ^ a b 緋色の研究前後編

関連項目

外部リンク