モザイク処理

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顔や個人情報を判別できないようにモザイク処理をした例

モザイク処理(モザイクしょり)とは、写真画像静止画ならびに映像動画において、表示させたくない部分をピクセル単位でぼかすために使用される映像処理のこと。

概要[編集]

主に映像(もしくは画像)内に登場する人物の肖像権など知的財産権の保護、およびその個人情報の保護のために利用される事が多い。テレビ番組では番組宣伝などの演出[1]や、番組とは無関係な企業名や商品名が写り込んでいる場合にそれを伏せるためにも使用される。また、昔の番組放送素材を再放送やDVD作品化する際に提供スポンサーやCMなどのテロップを伏せるときに使用するケースもある(テロップの無い素材がなく、差し替えができない場合)。近年ではロケ・取材時に防犯・テロ対策として場所を特定されなくするために、出演者以外の画面全体にモザイクをかけることもある。また、店の看板などの電話番号、車のナンバープレート、選挙ポスター、画面に写り込んでしまった通行人の顔など、個人情報の保護および見ている人が不愉快にならないようにするため、それらを伏せるためにも使われる。

日本ではアダルトビデオの普及とともにモザイク処理の認知度が広まっていった[2]ため「モザイク処理=卑猥」という固定観念は今も根強い。

同様の目的に使用される処理としては、ぼかし処理・反転処理などがある。モザイク処理には、非可逆変換可逆変換とがある。

モザイク (フランス語 moseïq) は、寄せ木細工のような美術作品を意味する用語から来ている。英語でもmosaic(発音はモゼーイック)と言うこともあるが、pixelization(直訳すればピクセル化)のほうが一般的である。なお、モザイク写真とは、モザイクのように継ぎ合わせて作った写真のことで、モザイク処理とは関係ない。

処理方法[編集]

可逆変換モザイクの例(猫の顔)。白枠内は、マトリクスに分割して並べ替えただけであり、切り張りをすれば元に戻せる。

非可逆変換[編集]

「非可逆変換」によってモザイク処理を施したものは、元に戻すことができない(シャノン=ハートレーの定理を参照)。非可逆変換の方法としては、一定領域の色情報を読み込んでその平均値を算出し求められた結果をもとに画像を処理する方法や、一定領域の代表値で全体を塗りつぶす方法などがある。大半の動画・静止画のモザイク処理は、非可逆変換である。

なお、領域を狭く設定するなどの「甘い処理」を施しているだけならば、近似的な画像を得ることは可能である(例画像ほど処理されたケースでは不可能)。これは非可逆モザイク処理の多くは実質的に特定領域の解像度を下げているだけにすぎないので、適切な画素補完を施せばある程度の復元は可能だからである。

可逆変換[編集]

「可逆変換」のモザイク処理は、元に戻すことが可能である。可逆変換の方法としては「処理範囲を縦横に分割して並べ替える」という方法が代表例。静止画では、パソコン通信などにおけるわいせつ画像など非合法画像の合法化処理用ソフトウェアとしてFLMASKなどの実用例がある。

動画では皆無であるか、稀有である。しかしながら、静止画における可逆変換モザイクは、その後「復元が可能な方法でモザイクをかけたものは、復元が可能であるため、合法化したものとはみなせない」という法的判断が出されたことから急速にすたれ(→ハイパーリンク#大阪FLMASK事件参照)、現在(21世紀)ではほとんど見かけることがなくなった。

モザイクの復元[編集]

モザイクの復元は、ビットマップ画像の解像度を(実サイズを保ったまま)上げるという、超解像の問題に帰着できる。

超解像は、1枚の画像からは情報理論から原理的に不可能である。だが、同じ被写体を写した複数の画像があれば、情報理論的な制約はなくなり可能である。ここでいう「複数の画像」は、1つの動画の中の複数のフレームでもかまわない。

基本原理としては、元画像のピクセルを複数のピクセルに分割し、それぞれの輝度を未知数とした連立方程式を解く。解像度は使用した画像枚数の平方根比例して向上する。ただし、被写体が変化していたり(形を保ったままの移動は可)、ノイズが混入したりすると、意味のある解が求まらないこともある。

ドラマなどのモザイク復元シーン[編集]

推理ドラマなどで、科学特捜班などがモザイク処理された画像や、写真に写った極小の犯人像(拡大するとモザイクの様になる)から、画像処理を施すことで犯人の顔車両ナンバーを突き止めるという描写がなされることがある[3]。しかしそれは原理上実現できないものであり、当然ながら実際には開発されていないテクノロジーであり、現実の犯罪捜査で使われることはない。(ただし、動画の場合はその限りでは無い)

「シャープ処理」や「コントラスト処理」を施すことで、見栄えのする画像を生成することは可能な場合があるが、それが元の画像に類似したものだという保障はない。欠落した情報が復元されるわけではなく、モザイク処理が中度・強度にかかっている場合や解像度的に小さすぎる場合、つまり情報量が不足している場合に、それを補うことは不可能である。

編集機材[編集]

テレビの動画処理は、DVE(デジタル特殊効果装置)で行われることが多い。ノンリニア編集システムなどのコンピュータベースの編集装置でも同等の機能を備えるものがある。DVEの処理方式の一例は、フレームメモリからの読み出しアドレスを飛び飛びに変化させ、縦横それぞれの画素を指定したピクセル数/ライン数だけ固定することにより画素数を減少させるものである。この方式はハードウェア規模は比較的小さくて済むため、最初期の2次元DVEの世代から実装されていた。

Adobe Photoshop等の画像修正ソフトウェアAdobe Premiere等の動画処理ソフトなどを使用することで、近年はユーザーレベルでも簡単にモザイク処理をすることができる。非可逆変換で処理されたモザイクは、原理上、絶対に元の画像を復元することはできない。モザイク除去ソフトなどが高価で取引されることがあるが、そのようなものを使っても復元できないのである。

脚注[編集]

  1. ^ 番組宣伝や番組冒頭での放送内容のハイライト映像の一部にモザイク処理をして視聴者に興味をもたせる演出手法。
  2. ^ 「アダルトビデオ」出現以前の「ポルノ映画」ではモザイク処理ではなくフィルムに光学的なぼかしが使われていた。
  3. ^ 例として、ドラマアンフェア』や『科捜研の女』など)。

関連項目[編集]