汁粉
汁粉(しるこ)は、主に小豆を砂糖で甘く煮て、この中に餅や白玉団子、栗の甘露煮などを入れた食べ物。おしることも呼ばれる。
種類
汁粉は餡(あん)の違いによって区別される場合が多い。基本的なものはこの3種類である。
- 御前汁粉 – 漉(こ)し餡を用いている。
- 田舎汁粉 – つぶし餡を用いている。
- 善哉 - ぜんざいとも表記され、粒餡を用いている。
関東等一部地域では善哉を小倉汁粉と呼ぶ事がある。
汁粉には種類も多く、こうした基本的なものの他に以下のような物がある。
- 粟ぜんざい – 粟餅に濃い目の漉し餡をかけたもの。
- 懐中汁粉 – もなかの皮の中に粉末の漉し餡とあられを入れた日本古来のインスタント食品。湯を掛けて溶いて食べる。
- クリームぜんざい – 粒餡の汁粉を冷やし、その上からソフトクリームやアイスクリームといった冷たい西洋菓子をのせた物。
地域色
地方料理の一環として、小豆以外に白餡、栗、かぼちゃ、百合根、枝豆(ずんだ)を用いて作る場合もある
- 小豆ぼうとう - 山梨県で、餅の代わりにほうとうを入れたもの。
- そばがき汁粉 - 長野県松本市周辺地域で、餅の代わりに蕎麦がきを入れたもの。
- かぼちゃ汁粉 - 米の収穫が困難だった青森や北海道十勝地方では、餅の代用としてかぼちゃ・かぼちゃだんごを入れたものがある。福井県では「冬至南瓜」と呼ばれる同様の料理がある。
- 高知県とその周辺でよく作られる皿鉢料理では、甘味の料理として小倉汁粉が鉢に盛って出され、ぜんざいと称される。作り方はほぼ普通の小倉汁粉と同じだが、餅や白玉団子の代わりに、鳴門巻きや蒲鉾が用いられ、場合によってはホウボウなどの茹でた魚が丸ごと入れられる事もある。
歴史
江戸時代の寛永12年(1635年)の『料理物語』の後段(宴会の後に出される間食で、うどんやそうめん、饅頭などが含まれる)の欄に、「すすりだんご」と称される物が載っている。これはもち米6に対しうるち米4で作った団子を小豆の粉の汁で煮込み、塩味を付けたものであり、その上から白砂糖をかけた一種の汁物である。当初は甘い物ではなく、塩味で調理されており、酒の肴として用いられる事もあった。鳥取県・島根県東部での雑煮における汁粉も、元来はこうした塩味の料理であったと考えられる。餡餅やおはぎなどとの関連性もあるものと見られる。
現在は甘みを増して喫茶店や甘味屋・茶店などで供されており、大阪の「夫婦善哉」(白玉団子の御前汁粉が2つの小さな御椀に入れられて供される)、仙台のずんだ汁粉など地域色の出た汁粉が出されている。
特に甘味屋や茶店においては、口直しや甘味を際立たせるものとして、塩昆布や漬物など塩味の濃い食品を添えて出す事が多い。また、長崎の卓袱料理においては「梅椀」という名で御前汁粉がデザートとして出される。梅椀という名前は梅の花の塩漬けを汁粉に浮かべて出したからともいわれる。砂糖が貴重品だった時代の名残ともいわれるが、古い時代の卓袱料理の献立では汁粉以外の菓子類等が出されており、確証は無い。
「すすりだんご」と称するものは現在でも大分県等に残っており、トウモロコシ団子の汁粉を指したり、団子を野菜と煮たすいとんのような料理を指す事もある。
インスタント
冬場になると、従来からの懐中汁粉のようなものでカップラーメンのようにカップにお湯を注いで作る「即席汁粉」や、缶入りでジュースのようにそのまま飲むことができる「汁粉ドリンク」などが店頭に見られるようになる。
行事
鏡開きにおいては、一般家庭でも鏡餅を用いて汁粉や善哉を作る。正月の代表的な食べ物の一つ。島根県や鳥取県においては雑煮として正月に汁粉を食べる風習がある。また香川県など四国の一部では雑煮に餡入りの餅が使用される。
他の料理
沖縄県では「ぜんざい」の語は汁粉の一種でなく、主に砂糖で煮た金時豆の上に氷を盛ったかき氷を指す。沖縄県のぜんざいを参照。
汁粉に類似した食品は中国やベトナムにもあり、栗やハスの実、タピオカ団子を中に入れたり、黒ゴマやココナッツミルクの餡を用いたデザートがあるが、日本の汁粉との関連性はよく分かっていない。
関連項目
- ぜんざい(善哉)
- ぜんざいとおしるこの違い (食育大事典)