栄 (エンジン)

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(さかえ)は第二次世界大戦期に中島飛行機が開発・製造した空冷星型航空機用レシプロエンジン海軍名称として陸軍にはハ25として採用された後、性能向上型としてハ105ハ115。後に陸海軍統合名称としてはハ35と呼称されるようになる。複列14気筒でバルブ駆動方式はOHV。遠心式の過給器で過給された。設計的には、中島飛行機がライセンス生産していたプラット・アンド・ホイットニーのエンジンの影響を受けている。

気化器に多重の逆流防止用の弁が備え付けられており、英米製のエンジンで燃料の供給に支障が出るような運動を行っても、安定して燃料が供給されると言う特長を有する。そのため、零戦の運動性の優位に大きく貢献した。

アメリカ側は、ハ25をホイットニーの1,000馬力級エンジンのコピーだと主張しているが、ハ25はそれよりも直径が小さく、空冷エンジン設計の重要ポイントのひとつである空気抵抗の軽減が計られており、単純にコピーと片付けるには無理があろう。ただし、部品の規格そのものがプラット・アンド・ホイットニーと同規格であり、現在もアメリカ国内でオリジナルのゼロ戦が飛行しているのは、このためである。

零戦のエンジンとして有名であり、合計33,233台製造された。このエンジンを元に18気筒化しが開発された。

国立科学博物館カウルを外されて展示されている零戦の栄エンジン
同上の気筒部分。冷却フィン構造と気筒列間の導風板が見て取れる。

主要諸元

栄12型(ハ25)

  • タイプ:空冷星型14気筒
  • ボア×ストローク:130mm×150mm
  • 排気量:27.9L
  • 全長:1,472mm
  • 直径:1,150mm
  • 乾燥重量:530 kg
  • 圧縮比:7.2
  • 燃料供給方式:キャブレター
  • 過給機:遠心式スーパーチャージャー1段1速
  • 離昇馬力 
    • 940HP / 2,550RPM / ブースト+250mmhg
  • 公称馬力 
    • 950HP / 2,500RPM / ブースト+150mmhg (高度4,200m)

栄21型(ハ115)

  • 全長:1,630mm
  • 直径:1,150mm
  • 乾燥重量:590 kg
  • 圧縮比:7.2
  • 燃料供給方式:キャブレター式
  • 過給機:遠心式スーパーチャージャー1段2速
  • 離昇馬力 
    • 1,130HP / 2,750RPM / ブースト+300mmhg
  • 公称馬力 
    • 一速全開 1,100HP / 2,700RPM / ブースト+200mmhg (高度2,850m)
    • 二速全開  980HP / 2,700RPM / ブースト+200mmhg (高度6,000m)

主な搭載機

参考文献

  • 中川良一・水谷総太郎『中島飛行機エンジン史』(酣灯社、1985年5月)

外部リンク

中島のエンジン[1]