トル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

トル (torr)
記号 Torr
非SI単位
圧力
定義 (101325/760) Pa
SI 約 133.322 Pa
  

トル(torr, 記号:Torr)は、圧力単位である。その名前は、17世紀のイタリアの科学者、エヴァンジェリスタ・トリチェリに因む。

圧力を求める方法の一つに、その圧力によって支えられる流体の柱の高さを使う方法がある。流体はどんなものであっても良いが、のような日常よく使われる液体では、柱の高さは非常に高くなってしまう(一応、水柱を使用した水柱ミリメートル(mmH2O)などの単位はあるが、標準大気圧を水柱で表すと10メートルを超える値になる)。よって通常は密度の高い液体、すなわち水銀が使われる。標準大気圧は約760 mmの水銀柱を支えることができる。すなわち、標準大気圧の760分の1は1 mmの水銀柱を支えることができ、その圧力を1 水銀柱ミリメートル(mmHg)と呼ぶ。水銀柱ミリメートルの別名がトル(Torr)である(厳密には異なる。後述)。

同様にして、1センチメートルの水銀柱を支えることのできる圧力を水銀柱センチメートル(cmHg)、1メートルの水銀柱を支えることのできる圧力を水銀柱メートル(mHg)という。これらには別名はない。

「トル」は、日本語の表記上は「トル」であるが、日本においては「トール」のように発音されることがある。mmHgは、「ミリ水銀」「ミリエイチジー」と読まれることがある。

1954年の第10回国際度量衡総会(CGPM)において定義された標準大気圧の値(101 325パスカル(Pa))により、1トルは正確に(101 325/760) Pa ≈ 133.322 368 4 Paとなる。

国際単位系(SI)においては、圧力の単位はパスカルを用いることになっており、トルや水銀柱ミリメートルは併用単位にもなっていない。日本の計量法においては、血圧および眼圧の計量に限って水銀柱ミリメートル、生体内の圧力の計量に限ってトルおよび10-3倍のミリトル(mTorr)、10-6倍のマイクロトル(µTorr)の使用が認められている。また、2013年9月30日までは生体内の圧力の計量に限って水銀柱メートル・水柱メートルの使用が認められている(当初は1999年9月30日までであったが、猶予期限が何度か延期されている)。未だに真空工学等の分野ではトルが使用されることが多いが、これはパスカルへ置き換えることが推奨されている。

[編集] トルと水銀柱ミリメートル

トルと水銀柱ミリメートルは同じ値とされているが、厳密には異なる([1], [2])。上述のトルの定義がされるまでは、水銀柱ミリメートル(正確には協定水銀柱ミリメートル)は、世界気象機関 (WMO) によって「重力加速度が正確に980.665 cm/s²である地点において、密度が正確に13.5951 g/cm³である流体の高さが正確に1 mmである垂直な柱の底面における圧力」と定義されていた[3]。この定義を厳密に適用すると、760 mmHgは101 325.014 435 4 Paとなり、標準大気圧の値と約0.14 ppm異なる。もっとも、そのようなごくわずかな差は、実用上問題になることはない。

圧力の単位
パスカルSI単位) バール 工学気圧 気圧 トル psi
1 Pa ≡ 1 N/m² = 10-5 bar ≈ 10.2×10-6 at ≈ 9.87×10-6 atm ≈ 7.5×10-3 Torr ≈ 145×10-6 psi
1 bar = 100 000 Pa ≡ 106 dyn/cm² ≈ 1.02 at ≈ 0.987 atm ≈ 750 Torr ≈ 14.504 psi
1 at = 98 066.5 Pa = 0.980665 bar ≡ 1 kgf/cm² ≈ 0.968 atm ≈ 736 Torr ≈ 14.223 psi
1 atm = 101 325 Pa = 1.01325 bar ≈ 1.033 at p0 = 760 Torr ≈ 14.696 psi
1 Torr ≈ 133.322 Pa ≈ 1.333×10-3 bar ≈ 1.360×10-3 at ≈ 1.316×10-3 atm ≡ 1 mmHg ≈ 19.337×10-3 psi
1 psi ≈ 6894.757 Pa ≈ 68.948×10-3 bar ≈ 70.307×10-3 at ≈ 68.046×10-3 atm ≈ 51.7149 Torr ≡ 1 lbf/in²