旅団戦闘団
旅団戦闘団(りょだんせんとうだん、brigade combat team:BCT)は、機動作戦におけるアメリカ陸軍の基本な展開部隊である。おおむね旅団規模の部隊であり、近接戦闘部隊(歩兵または戦車)を2個ないし3個大隊、騎兵および砲兵を各1個大隊、その他いくつかの戦闘支援/後方支援部隊(いずれも中隊ないし小隊規模)を保有しており、兵力は3,000〜4,000名。通常、指揮官は大佐(O-6)であるが、稀に准将(O-7)が補せられることもある。
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概要
旅団戦闘団は、米軍再編計画のもとで採択された、新しい戦闘単位である。米陸軍再編では、指揮統制の迅速化と戦力投入の効率化のため、従来採用されてきた、旅団-師団-軍団-軍という4段階の指揮系統が見直され、UEy‐UEx‐UAとして再構築された。このうち、戦術階梯における実戦部隊であり、またもっとも小規模な戦力単位でもあるUA(Unit of Action)を具体化したのが旅団戦闘団(BCT: Brigade Combat Team)であった。
旅団戦闘団は、一見すると既存の旅団と大差ないように見えるが、米軍全体の再編制に伴って、大きな変化を遂げている。従来のアメリカ陸軍旅団は、典型的な師団内旅団であり、諸兵科連合作戦を遂行する能力はなく、また各種の後方支援部隊などをほとんど持たなかったため、旅団単独で海外に派遣されることはなく、部隊を動かすには、その都度、戦力を抽出して戦闘団を編成するか、あるいは師団全体を動かすしかなかった。
これに対し、旅団戦闘団(BCT)には、諸兵科連合能力と、最低限の後方支援能力が与えられることにより、最低限の追加部隊の配属のみで、世界中のどこへでも派遣しうるようになった。これらのBCTは小規模の師団として、親部隊から独立しての活動が可能となり、一方では、BCTに所属する兵士たちは3年間留まることになった。このことが準備態勢を補強して、部隊の団結を高めた。
なお、アメリカ国防総省が2010年2月1日に発表したQDRでは、陸軍全体で73個の旅団戦闘団(現役45個、予備役28個)を維持することとなっている。その内訳は、40個歩兵旅団戦闘団(現役20個、予備役20個)、8個ストライカー旅団戦闘団(現役7個、予備役1個)、25個重旅団戦闘団(予備役7個)とされている。
歩兵旅団戦闘団
歩兵旅団戦闘団(Infantry Brigade Combat Team: IBCT)は、ハンヴィー(HMMWV、High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle、高機動多用途装輪車両)で移動し戦闘時には降車する機動歩兵の大隊に基づいて組織化したものである。それぞれの旅団の形式(軽歩兵、空襲、又は空挺)も同じ組織を持つ予定である。各歩兵旅団は、それらが正式に空襲旅団として指定されようと否とに関わらず空襲作戦能力を備える。
歩兵BCTは、2個歩兵大隊と、騎兵、野戦砲兵、特別任務部隊、そして支援のそれぞれ1個大隊より構成される。総兵力は約3,500 名。
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歩兵大隊
各歩兵BCTは2つの歩兵大隊から構成される。これら2つの大隊は、それぞれが650名ほどの人員で構成され、旅団の主な作戦行動要素となる予定である。
RSTA騎兵大隊
RSTA(Reconnaissance, Surveillance, and Target Acquisition: 偵察・捜索・目標捕捉)騎兵大隊は、各種の偵察および威力偵察任務を遂行する。また、これらの部隊はTOW対戦車ミサイルを有しており、主力の掩護に用いられることもある。
- 大隊本部
- 騎兵本部中隊
- 機動偵察騎兵中隊 (HMMWVによる) ×2
- 降車騎兵中隊
- 監視騎兵中隊
野戦砲兵大隊
- 大隊本部
- 本部中隊
- 105mm牽引野戦砲兵中隊 ×2(M119を装備)
- 目標捕捉班
旅団特別任務大隊
- 大隊本部
- 本部中隊
- 軍警察小隊
- 支援小隊
- 対特殊武器情報小隊(chemical, biological, radiological, and nuclear)
- 旅団司令部
- 旅団司令部中隊
- 軍事情報中隊
- ネットワーク通信中隊
- 戦闘工兵中隊
この旅団特別任務大隊(Brigade Special Troops Battalion, BSTB)は陸軍の新たな組織である。これは旅団の戦闘支援中隊(情報と通信)と(防空砲兵や軍警察といった)他の中隊級の追加部隊に指揮統制(command and control)を与えるように計画された。
旅団支援大隊
- 大隊本部
- 本部中隊
- 補給中隊
- 整備中隊
- 医療中隊
- 前方支援中隊(歩兵)×2
- 前方支援中隊(偵察および監視)
- 前方支援中隊(野戦砲兵)
重旅団戦闘団
この重旅団戦闘団(Heavy Brigade Combat Team: HBCT)は陸軍の主要な機甲戦力なると思われる。これは、M1 エイブラムス戦車とM2 ブラッドレー歩兵戦闘車を持つ、混成大隊戦闘群もしくは諸兵科連合大隊(Combined Arms Battalion)に基づいて計画されている。
重旅団戦闘団は、2つの諸兵科連合大隊と、武力偵察、野戦砲兵、特殊部隊、そして支援のそれぞれ1個大隊より構成される。総兵力は約3,800 名。
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諸兵科連合大隊
偵察騎兵大隊
- 大隊本部
- 騎兵本部中隊
- 武装偵察騎兵中隊 ×3
- 武装偵察騎兵小隊 ×2
- M3ブラッドレー騎兵戦闘車 ×3
- M1114 装甲強化武器運搬型HMMWV(ハンヴィー)(LRAS3 長射程先進斥候監視システム搭載) ×5
- 120mm重迫撃砲班
- 武装偵察騎兵小隊 ×2
野戦砲兵大隊
- 大隊本部
- 砲兵本部中隊
- 155mm自走砲兵中隊 ×2(M109A6パラディンを装備)
- 目標捕捉班
旅団特別任務大隊
- 大隊本部
- 本部中隊
- 軍警察小隊
- 支援小隊
- 対特殊武器情報小隊(chemical, biological, radiological, and nuclear)
- 旅団司令部と司令部中隊
- 軍情報中隊
- ネットワーク通信中隊
旅団支援大隊
- 大隊本部
- 本部中隊
- 補給中隊
- 整備中隊
- 医療中隊
- 前方支援中隊(諸兵科連合)×2
- 前方支援中隊(偵察および監視)
- 前方支援中隊(野戦砲兵)
ストライカー旅団戦闘団
ストライカー旅団戦闘団(Stryker Brigade Combat Team: SBCT)は、完全に新たなストライカー装輪装甲車両に基づいて計画された。このストライカー旅団は、歩兵旅団戦闘団や重旅団戦闘団と異なった組織になっている。
ストライカー旅団戦闘団は3つのストライカー歩兵大隊、1つの騎兵大隊、1つの野戦砲兵大隊、1つの旅団支援大隊、1つの旅団司令部と司令部中隊、1つのネットワーク通信中隊、1つの軍情報中隊、1つの工兵中隊、そして1つの対戦車中隊より構成される予定である。歩兵と重BCTにある、旅団特別任務大隊や5つの機動要素のための旅団支援大隊の中の前方支援中隊はもたない。総兵力は約3,900名。
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ストライカー大隊
- 大隊本部および本部中隊(HHC: Headquarters and Headquarters Company)
- 偵察小隊: M1127ストライカーRV×4両
- 迫撃砲小隊: M1129ストライカーMC×4両(M121 120mm 迫撃砲を搭載)
- 衛生小隊
- 通信班
- 狙撃分隊
- 3個ストライカー中隊
-
- 将校×1名+曹士×44名; M1126ストライカーICV×4両
- 機動砲小隊(MGS Platoon)
- 小隊長(少尉)+小隊軍曹(一等軍曹)+3号車車長(二等軍曹)+射手(三等軍曹)×3+運転手(上等兵)×3
- M1128ストライカーMGS×3両
- 迫撃砲分隊(Mortar Section)
- 分隊長(二等軍曹)+班長(三等軍曹)+射手(三等軍曹)×2+上等兵×6(M1129ストライカーMC×2両; M252 81mm 迫撃砲を搭載)
- 救急搬送チーム
- 衛生兵×2+運転手×1(M1133 ストライカーMEV×1両)
- 火力支援チーム
- 砲兵前進観測将校+下士官+特技兵(M1131ストライカーFSV×1両)
- 狙撃チーム
- 三等軍曹×1+伍長×1+上等兵×1(XM107×1+M24×1+M203×1)
騎兵(RSTA)大隊
- 大隊本部および本部中隊
- 3個偵察中隊(M1127 ストライカーRV×13両、M1131 ストライカーFSV×1両、M1129ストライカーMC×2両)
- 1個監視中隊
- 地上センサー・システム小隊(電子情報車×3両、地上監視レーダー×3基、遠隔監視センサー×3基)
- 無人機小隊(無人偵察機×4機)
- NBC防護小隊(M1135 ストライカーNBC偵察車×3両)
野戦砲兵大隊
旅団支援大隊
- 大隊本部
- 本部中隊
- 補給中隊
- 整備中隊
- 医療中隊
その他旅団直属部隊
- 対戦車中隊(M1134 ストライカー対戦車車両×9両)
- 工兵中隊(M1132 ストライカーESV×9両)
- 3個戦闘機動小隊
- 1個機動支援小隊
- ネットワーク通信中隊
- 軍情報中隊