海兵遠征旅団

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海兵遠征旅団(かいへいえんせいりょだん、Marine Expeditionary Brigade、MEBとは、アメリカ合衆国海兵隊海兵空地任務部隊 (MAGTF) の一種。海兵遠征軍(Marine Expeditionary Force、MEF)よりも小さく、海兵隊遠征隊(MEU)よりも大きい。

他の日本語訳には海兵機動展開旅団[1]がある。

概要[編集]

海兵遠征旅団(MEB)は、増強された海兵隊歩兵連隊、海兵航空群、戦闘支援連隊、そして司令部部隊より編成されている。指揮官は海兵隊少将、総兵員は、編成によって変わるが、約3000名~2万名で、航空戦闘部隊を除けば、陸軍旅団戦闘団におおむね相当する。

MEBの特徴は、諸兵科混成で独立して作戦行動が可能な規模の地上戦力と、固定翼機V/STOL機回転翼機により前線防空から近接航空支援までを遂行できる航空戦力とを統合、独立した作戦行動能力を有する戦闘単位として常設し、さらに、独自の兵站部隊により、30日間に渡っての戦闘継続を可能にしたことにある。これにより、MEBは、小規模ではあるが、完全に自己完結した陸空の戦力を有することとなった。また、MEB司令部部隊は、MEF司令部から要員増強を受けることにより、統合任務群の司令部機能を務める能力を有している。

MEBは、比較的大規模な部隊であるので、機動性はMEUに劣る。MEUが遠征打撃群 (ESG) の3隻の揚陸艦のみで展開可能であるのに対し、旅団の強襲部隊(AE)は、海軍の両用艦船20隻ないし26隻に搭載され、また、強襲第2弾部隊(AFOF)は、11隻の一般船舶に分乗することとなっている。その一方、陸戦力は比較的軽装備であるので、火力は陸軍の機甲部隊には及ばない。また、その航空戦力は、前線防空および近接航空支援に重点を置いているため、制空や阻止攻撃については、海軍航空隊空軍の支援を必要とする。しかし一方、MEBはこれらの重装備の部隊よりもはるかに優れた戦略機動性を有しており、この特性を生かして、紛争の初期に投入されたMEUの増強部隊として、きわめて重要な役割を担っている。

編成と装備[編集]

1980年代には、6個のMEB(第1、第4、第5、第6、第7、第9)が常設されていた。その後、海兵隊の体制の変更などにより、現在では、第1、第2、第3海兵遠征軍(MEF)それぞれの隷下に第1、第2、第3と1個ずつのMEBが編成されるようになっている。

このうち、日本に所在する第3海兵遠征軍隷下の第3海兵遠征旅団については、司令部部隊のみが常設され、各戦闘部隊については、必要に応じて、第3海兵師団など第3MEF指揮下の他部隊より抽出して編成することとなっている。

地上戦闘部隊[編集]

地上戦闘部隊(Ground Combat Element、GCE)は、MEBにおいては、海兵連隊歩兵連隊)を中核とした諸兵科混成部隊である。1個歩兵連隊を基幹として、戦車、対戦車、砲兵、軽装甲偵察、水陸両用強襲、工兵の各部隊から編成されており、最大編成においては1万5千人の兵員を擁する。

航空戦闘部隊[編集]

航空戦闘部隊(Aviation Combat Element、ACE)は、MEBにおいては、海兵航空群がこれにあてられている。揚陸艦より運用される回転翼機・V/STOL機に加え、地上基地あるいは航空母艦から運用される固定翼の戦闘攻撃機電子戦機、さらには空中給油機を有している。また、地上部隊に対して防空援護を提供するため、MANPADSチームも編成されている。

兵站戦闘部隊[編集]

兵站戦闘部隊(Logistics Combat Element、LCE)は単独での作戦に必要なあらゆる兵站専門の部隊である。MEBにおいては戦闘兵站連隊(CLR: Combat Logistics Regiment)がこれに充てられており、輸送、整備、建設工兵、医療、歯科、その他の技術の専門技術を提供する。

指揮部隊[編集]

指揮部隊(Command Element、CE)は、海兵遠征旅団司令官とその幕僚を含み、他の3つの実戦部隊に対し命令と統制(Command and Control)を行なう。その中には海軍からの火力支援調整将校、偵察、監視、特殊通信、電子偵察、民事作戦に関する分遣隊が含まれる。

主要装備一覧[編集]

陸上戦闘部隊 (GCE) 兵站戦闘部隊 (LCE) 航空戦闘部隊 (ACE)
AAV7水陸両用強襲車 47両 桁橋 1基 AH-1W/Z攻撃ヘリコプター 12機
LAV装輪装甲車 27両 30tクレーン 1基 UH-1N/Y汎用ヘリコプター 12機
M1A1戦車 17両 7.5tクレーン 5基 CH-46中輸送ヘリコプター 48機
155mm榴弾砲[2] 24門 キャタピラー D7ブルドーザー 5両 CH-53E重輸送ヘリコプター 32機
M252 81mm 迫撃砲 24門 TX51-19Mフォークリフト 116両 AV-8B攻撃機 40機
M224 60mm 迫撃砲 36門 Mk 48 LVS大型輸送車 F/A-18戦闘攻撃機 24機
TOW対戦車ミサイル 24基 7トントラック 75両 EA-6B電子戦機 4機
ジャベリン携行対戦車ミサイル 24基 600 kgal燃料システム 2基 KC-130空中給油機 6機
100 kw発電装置 44基
逆浸透膜浄水装置 9基
ハンヴィー 多数 MANPADSチーム 45

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • 北村淳, 北村愛子『アメリカ海兵隊のドクトリン』、芙蓉書房、2009年

関連項目[編集]