恐怖

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Maria Yakunchikova Fear. 1893-95年頃の作品

恐怖(きょうふ、: fear, horror)は現実もしくは想像上の危険、喜ばしくないリスクに対する強い生物学的な感覚

ジョン・ワトソンパウル・エクマンなどの心理学者は恐怖をほかの基礎的な感情である喜び怒りとともに、これらをすべての人間に内在する感情だと主張している。恐怖は防御的、生存的な本能的感情で、多くの生命体で発達していったと思われる。通常、恐怖は特定の刺激に対する反応である。例えば、蜘蛛を見た人はそれに対して恐怖を感じるかもしれない。恐怖はまた、安全への退避の動機を起こす役目を果たしている。

人間が恐怖状態に陥ると、などの筋肉血液が集中され、これにより人間はより素早く行動することが可能となる。また、身体は瞬時の凝固を起こし、これはより優れる反応(例:隠れる)の有無を大脳に判断させるためである。大脳では、ホルモンが分泌され、これにより脅威に対する集中が高まり、最も正確な反応を分析する。

原因

恐怖は内在する脳内反応であるが、恐怖の対象を覚えさせることは可能とされている。これは心理学において恐怖条件付け (en:fear conditioning) として研究されている。その最初のものはワトソンが1920年に行ったリトルアルバート実験 (en:Little Albert experiment)で、この研究では、生後11ヶ月の幼児が実験室の白鼠に対し恐怖を感じるように条件付けることに成功した。また実際の世界において、トラウマ的な事故により特定の対象に対し恐怖するようになることもある。例えば、子供が井戸に落ち、脱出するべくもがきつづけると、彼/彼女は密閉空間(閉所恐怖症)、もしくは(水恐怖症)に対し恐怖を感じるようになるかもしれない。

研究により、特定の対象(例:動物、高さ)が他の対象(例:)に比べより恐怖を引き起こしやすいことが発見されている。また、被験者にこれらの対象に対し恐怖を植付けることもより容易である。生理学的には、恐怖に対する反応は大脳辺縁系扁桃体の活動にリンクしており、扁桃体に異常をきたしたウルバッハ・ビーテ病の患者は恐怖を感じることがないという[1]

恐怖を感じる対象はまた社会的な基準、価値観によって影響されることがあるかもしれない。19世紀英国における最も大きい恐怖の一例は、人々に嘆かれず、忘れ去られ、貧乏に死に、最後には解剖台に乗せられることであった。20世紀では、多くの人が小児麻痺、身体の一部を不具にし、残りの人生で動かなくなるという病気を患うことを恐れた。9.11以降では、テロリズムに対する恐怖がアメリカヨーロッパに大きく広がった。

行動

恐怖状態にあるネコ

恐怖状態において、人はいくつのもの感情的な段階を経ると思われる。「追い詰められた」というのはその良い例である。鼠は捕食者によって最終的に追い詰められるまでは逃走を図ろうとするが、いざその状況になると好戦的な態度に転じ、逃走できるか捕らえられるまで反撃をするようになる。

同じことがほとんどの動物に適用される。人間は恐怖により怯えた状態になり、他者の望みに一方的に従うことがある。その一方、人間は同様に暴力的にもなり、命を懸けて戦うこともある。これはアドレナリンの分泌によって起される生理的な反応である。これは多くの訴訟において、死刑がなされない理由になっている。

に現れる恐怖の表現は以下を含む。

  • が広がる(次に起こることが予想を越えたため)
  • 瞳孔が広がる(より多くの光を取り入れるため)
  • 上唇が膨らむ
  • 額を寄せる
  • が水平に伸びる

脚注

関連項目