ホワイトカラー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。116.83.14.175 (会話) による 2011年10月11日 (火) 03:52個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎概要)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ホワイトカラー(White-Collar 白い襟)とは、主に事務に従事する人々を指す職種・労働層を指す言葉。業務内容で、例えると、精神労働者になる。対義語にはブルーカラーが挙げられ、関連語にはサラリーマンが挙げられる。

概要

これらの職種は主に(を基調とした)ワイシャツを着用する事からこのように呼ぶ。一方、現業で作業する人はブルーカラーと呼ばれる。ステレオタイプ分類の一種であり、厳密にどの職種がホワイトカラーに相当するかは話し手により異なる。

又、技術系職種の中でも研究開発職等のいわゆる高学歴層が中心の理系はホワイトカラーに属するのかブルーカラーに属するのかメタルカラーの範疇に加えるべきなのか迷うところではある。これらの職種は清浄・快適な空間で作業していることが多いため、ホワイトカラーに属するという見方がある(少なくともブルーカラーには属さない)。

一方で一部のプログラマのように過酷な作業内容からIT土方などと別称される職種もあり、室内・室外、事務・現業、安全・過酷などといったステロタイプの分類になじまない職種も多い。公務員のうち警察官の上級職(刑事や役職付き)や消防吏員は白いシャツを着用する事もあるが、あまり意識してホワイトカラー(主に事務職)とは呼ばれない。

この辺りは警官や自衛官なども事務中心の役職や部署も少なからず存在しているが、いずれも一般からはホワイトカラーの範疇としては見なされない傾向が見られる。これらは一般の民間企業とは異なる業務形態にも絡むが、その一方では一般との接点に乏しく、その日常業務の内容が余り知られていない事にも絡むと考えられる。そのためホワイトカラーと一般に述べた場合は、主に民間企業ないし公務員でも役所勤めといった範疇であるといえよう。

「白いシャツ・白い襟」について近年では社会的風潮や職場文化の変化もあって、必ずしも「白を基調としたシャツを着ている」とは限らず、淡い色付きシャツを着ているケースも多い。また職場によっては原色のシャツ着用が認められている場合もあり、言葉だけが残っている面がある。

日本での動向

日本では1950年代以降に急速に発展した工業で、世界市場に様々な製品を提供するようになった事から、単なる生産や加工・またはそれらの設計や開発だけではなく、その製品を売ってくる商業や、売るための事務処理をこなす職種の必要性が増大している。また会社組織が巨大化するにつれ、これを維持し生産管理や労働者の給与管理等もするためにも事務職が必要となる。

このため同年代以降ではホワイトカラーが全労働者に占める割合が増え、生産活動には直接従事しないこれらの労働人口増大にあわせて、労働者を供給する教育の場も変化を求められた。

だが1980年代に差し掛かる頃には、機械油にまみれたり怪我をする危険性の高い工作機械を扱う(3Kと呼ばれる)ブルーカラーよりも清潔で安全な職場(に少なくとも見える)ホワイトカラー層への就職希望者が殺到するようになり、次第に供給過剰状態に陥ってきている(肉体的負担の大きいブルーカラーの賃金がホワイトカラーより安く待遇が釣り合わない場合があるのも遠因、との見方もある)。

なおこのホワイトカラー就職指向は、高い進学率にも影響を与えている。

1990年代に入ってコンピュータ技術者プログラマーシステムエンジニア)等の、工場ではなく事務所内で働く種類の、直接的に製品の生産に従事する職種が出てきて、この余剰労働力を吸収している傾向も見られる。

2000年代に入って、職場での服装規定があまり厳しくない所も出てきている。ある程度、カラフルなシャツを着る人もよく見られる。主にパステルカラーに代表される淡い色合いのシャツを好む人も見られる一方、顧客と顔を合わせる機会の少ない情報処理業界を中心にラフな服装での出社が容認される企業の増加、更には2005年クール・ビズに代表される服装規定の見直しといった変化で、同語は外見に依らず「単なる言葉上の区分」となる傾向もある。

職場環境とホワイトカラー

かつて日本においてホワイトカラー職種は、ブルーカラー職種よりも安全で快適、かつ身体的には楽な仕事だと見なされていた。このため労働者層のホワイトカラー指向が社会的に高まったが、実際にはホワイトカラー職種にも、固有の労働問題が発生しうる。

1980年代には、キーパンチャーなどの職種で腱鞘炎ストレスといった問題が取り沙汰されていたが、この他にも残業の常態化や冷房の利き過ぎなど、職場環境や雇用環境による自律神経失調症冷え性といった身体的な異常や、うつ病を含む精神疾患など、ホワイトカラー職種の職業病として扱われる各種疾患が取り沙汰されている。なおこれらでは、ブルーカラー職種の職業病とは違い、直接的な因果関係が仕事との間に見出し難い事も多く、労働災害と認定され難い傾向も見られる。

1990年代には喫煙に絡む受動喫煙の問題が注目され始め、分煙が進んだ。なお分煙化以前は、オフィスのデスクや会議室での喫煙は当然の行為であり、一部の職種では紫煙で部屋の空気がよどむこともしばしば発生しており、呼吸器疾患の持ち主や喫煙を好まない側からは、職場環境の改善が求められることもあった。OA機器の普及以降は、これに用いるコンピュータなどの情報機器に煙草の煙や灰が吸入されて故障しやすくなるので良くないとされ、情報処理関連職種より分煙化が進むという皮肉な事態となった。またコンピュータの普及によりドライアイなどの症状を訴える人の割合も増加している。

2000年に前後して、うつ病による自殺社会問題として扱われるようになり、職場環境と精神医学分野への関心の高まりから、ホワイトカラー職種の職場環境の見直しが進んでいる。これには2000年問題に絡んで様々なシステムの刷新が求められ、情報処理業界で急激な需要増加に対応しきれずに超過労働が常態化、更には過労死の問題を生んだ反省だともいえよう。しかしそれでもホワイトカラー職種に採用されたが精神的に病んだり、または仕事に失望して脱サラしたり無職化する者も少なからず見られ、社会問題視されている。

関連項目