ハーブ・アルパート

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ハーブ・アルパート、1967年

ハーブ・アルパートHerb Alpert, 1935年3月31日 - )は、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス出身のポップ・ジャズ・トランペッター、コンポーザー、ザ・ティファナ・ブラス(The Tijuana Brass)のリーダー。また、A&Mレコードの創始者の一人である。なお、A&Mの"A"はアルパート(Alpert)を指す。

ニッポン放送系の深夜ラジオ番組、『オールナイトニッポン』のテーマソングとして「ビター・スウィート・サンバ」が長年使われている。

バイオグラフィ

A&M設立まで

ユダヤ系ルーマニア人を両親に持つ。8歳よりトランペットを習い始め、10歳代にダンスを踊るようになる。1952年にフェア・ファックス高校を卒業後、アメリカ軍に入隊し軍の式典でパフォームするようになる。除隊後、一旦は役者の道を歩もうとしたが、最終的に音楽家としての道を進む事を決めた。1950年代に南カリフォルニア大学に在籍していた間、トロジャン・マーチング・バンド(Trojan Marching Band)に2年間参加した。1954年に学士号を同大学より修得し、卒業。

彼のミュージシャンとしての幕開けは、ルー・アドラーLou Adler)と共作の、サム・クックのヒットで知られる、"Wonderful World"に始まる。しかしアルパート自身はそういうスタンダードナンバーになるような大ヒット曲を生み出しながらも作曲家としての自身の才能には執着せず、演奏家としての道を選ぶ。ドア・アルパート(Dore Alpert)の名でRCAレコードでキャリアを挙げ、ロックンロールのアーティスト、ジャン&ディーン等をプロデュースした。1962年にジェリー・モスと100ドルずつを出資しA&Mレコードを創設する。A&Mは現在こそ一大レーベルであるが、初期は自身のレコーディングの為に作った。なお、「A」はアルパート、「M」はモスの頭文字である。

ティファナ・ブラス期

アルパートは自身のガレージ内に小さいレコーディング・スタジオを起こし、彼はメキシコティファナマリアッチバンドより起こされた楽曲"Twinkle Star"を録音した。闘牛場やその群集を髣髴させる"The Lonely Bull"(邦題「悲しき闘牛」)をミックスし、アルパートは自費でこのシングルをプレスした。そしてラジオDJを通して広まり、1963年のトップ10にまで躍り出た。人気に応じて他曲も作り、ハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラス名でデビューアルバム、The Lonely Bullをリリースした。ティファナ・ブラスは彼のスタジオ・ミュージシャンである。このタイトル・カットはビルボードポップ・シングル・チャートの6位にまで達した。このアルバムがA&Mの最初のアルバムとなるが、録音したのはコーンウェイ・レコード(Conway Records)となる。

1964年の終わりになるとティファナ・ブラスはライブ出演のために増員を必要とし、オーディションを行い、セッション・マンを雇い補強した。団員の中にヒスパニックはいない。アルパートは聴衆に自分のグループは「3枚のパストラミに2つのベーグル、1つのアメリカン・チーズ」から成るといっていたように、ジョン・ピサーノ(John Pisano) (electric guitar); ロウ・パガーニ(Lou Pagani) (piano); ニック・セロリ(Nick Ceroli) (drums); パット・セネター(Pat Senatore) (bass guitar); トニー・カラッシュ(Tonni Kalash) (trumpet); ハーブ・アルパート (trumpet and vocal); ボブ・エドモンソン(Bob Edmondson) (trombone) といった構成となる。このバンドは1965年にデビューし、1969年にバンドを解散するまで活動した。尚、日本で一番有名な楽曲であろう、"ビター・スウィート・サンバ"は現在も深夜ラジオ番組の王道であるニッポン放送系の「オールナイトニッポン」のテーマソングとして親しまれており、1965年リリースのWhipped Cream & Other Delightsに収録されており、2006年にリイシューされている。ティファナ・ブラスは数多くのヒット曲を生み出したが、No.1シングルは獲得できず、アルパート唯一のNo.1ヒットはソロ名義でVocalistとして発表した"This Guy's In Love With You"であった。この曲は1968年に作詞作曲を担当したハル・デヴィッド(Hal David)と バート・バカラックにとっても初のNo.1ヒットになった。

ティファナ・ブラス解散後

1969年にアルパートはバンドを解散、しかし数名のオリジナルのティファナ・ブラスのメンバーと新たなメンバーを加え、1971年と1973年に"the T.J.B."名で発表する。この新生ブラスは1974年と1975年に2枚のアルバムを出し、ツアーも行った。1984年にロサンゼルスオリンピックの為に、第3期のブラス・バンドを結成し演奏した。

1970年代から1990年代にかけ、ソロ・ミュージシャンとしても活躍している。ヒュー・マセケラとのジョイント・アルバムを制作後、ティファナ・ブラスを再結成するつもりでレコーディングを開始するがどうにも上手く行かず断念し、ソロ名義で1979年Riseを発表。タイトル曲でトランペッター名義としては自身初のNo.1になり、同曲でグラミー賞ベスト・ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス部門を受賞。また、アメリカ以外ではイギリスのクラブなどでは33回転シングルを45回転で流したところ評判になり、瞬く間にヒットチャートを駆け上がった。後にノトーリアス・B.I.G.が1997年に発表した"Hypnotize"にサンプリングに使用されている。

ソロ名義のアルバムの大半には、夫人でセルジオ・メンデスとブラジル'66の元ボーカリストのラニ・ホール(Lani Hall)が参加し、ボーカルでの共演曲も多い。1988年には第22回スーパーボウルで試合開始前の国歌斉唱でアメリカ国歌を演奏した。

1962年から1992年にかけてアルパートはA&Mレコードとアーティストとの契約やプロデューサーとしても活動し、中でもプロデュースした著名なアーティストとしては、カーペンターズセルジオ・メンデスビル・メドレーBill Medley)、ジャネット・ジャクソン等がいる。

今日(A&M後)

現在でも演奏家としての活動を続けており、ガトー・バルビエリGato Barbieri)やリタ・クーリッジジム・ブリックマンブライアン・カルバートソンデイヴィッド・ランツDavid Lanz)等にゲスト参加している。

1990年にA&Mをポリグラムに売却し離れる。彼は第二の人生として、抽象表現主義画家または彫刻家としても活動し始める。(アルバムMy Abstruct HeartColoursのジャケットアートはハーブ自身の筆によるものである。)ブロードウェイ・ミュージカルのプロデューサーもするようになった。

音楽活動としては1994年に新たに自身のプライベートレーベルを再びモスとアルモ・サウンズを立ち上げる。今度は双方の名前を2文字ずつとって「ALMO」とした。このレーベルからはSecond Wind(1996)、Passion Dance(1997)、Colors(1999)の3枚のソロ・アルバムをここからリリースされている。また1996年にはジェフ・ローバーのバンドとともにモントルー・ジャズ・フェスティヴァルに参加。

1997年にはパートナーであるジェリー・モスとレコード会社の役員として偉業によりGrammy Trustees Award(英語)を得た。レコード会社への貢献により、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームにモスと共に名を刻まれている。

1999年のColours以降、ソロ活動を控え、旧作アルバムの再発を積極的に監督するようになった。彼は2000年に現在のA&Mのオーナーのユニバーサル・ミュージックから権利を買い戻し、自身のアルバムのリミックスとリマスタリングをし、再発し始めている。2005年にはシャウト!ファクトリーはA&Mのアルバムをデジタル・リマスタリングしたCDを供給しており、ティファナ・ブラスの未発表曲を含めたアルバムもリリースしている。これらのアルバムは、日本では1960年代にA&Mレーベルを配給していたキングレコードから新装盤として発売されている。

2006年3月13日にモスと共に演奏者としてではなく、A&Mでの貢献によりロックの殿堂入りを果たした。

2007年4月20日NHK総合のドキュメンタリー番組「プレミアム10~カーペンターズ スーパースターの栄光と孤独~」に登場。

2009年には、妻のラニ・ホールとのライヴを収めたアルバムAnything Goesを発表。10年ぶりのアルバムとなる。

2013年Colours以来のスタジオレコーディングのアルバムsteppin' outを発表。本作は第56回グラミー賞(「ベスト・ポップ・インストゥルメンタル・アルバム」部門)を受賞した。


彼は音楽教育と後進の育成のために様々な貢献を行なっている。

1980年代に、彼は莫大な私財を投じ、音楽教育を支援するための非営利法人アルパート財団(The Herb Alpart Foundation)[1]を設立した。また、カリフォルニア芸術大学アルパート賞(The Alpart Awards)[2]を設け、若き才能をサポートしている。

2000年からは、アルパート財団を通じて、ボストンのバークリー音楽院ハーブアルバート記念客員教授(Herb Alpert Visiting Professor)を設け、世界の音楽業界で活躍するトップ・ミュージシャン毎年同学院に招聘している[3][4]。また、2000年には、バークリー音楽院から名誉博士号を授与された[5]

さらに、2007年には、3千万ドルをカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に寄付し、UCLAは音楽学部門をThe UCLA Herb Alpert School of Music[6][7]と命名した。

日本への影響

"Bittersweet Samba"以外の日本への影響としては、

  • 1980年代前半、A&Mレーベルは日本国内の販売契約をアルファ・レコードと結んでいた関係で、1980年にYMOがロサンゼルスのチャップリン・メモリアル・スタジオでのライブ会場から日本へ衛星中継を行った際、ホストとしてYMOを紹介したのが、当時A&Mの副会長だったハーブ・アルパートだった。
  • "TIJUNA TAXI"(ティファナ・タクシー)は、1989-91年のラジオ番組「コサキン増刊号」のオープニングテーマとしても使用された。

ディスコグラフィ

ハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラス名義

  • The Lonely Bull (1962)
  • Volume 2 (1963) (1966 re-release)
  • South of the Border (1964)
  • Whipped Cream & Other Delights (1965)(※「Whipped Cream」は、TBSラジオで放送されている「毒蝮三太夫のミュージックプレゼント」(パーソナリティは毒蝮三太夫)のテーマソングとして使用されているものと同曲である)
  • Going Places (1965)
  • What Now My Love (1966)
  • S.R.O. (1966)
  • Sounds Like... (1967)
  • Herb Alpert's Ninth (1967)
  • The Beat of the Brass (1968)
  • The Herb Alpert & The Tijuana Brass Christmas Album (1968)
  • Warm (1969)
  • Greatest Hits (1970)
  • The Brass Are Coming (1969)
  • Summertime (1971)
  • Solid Brass (compilation, 1972)
  • Four Sider (compilation, 1973)
  • You Smile - The Song Begins (1974)
  • Coney Island (1975)
  • Greatest Hits Vol. 2 (compilation, 1977)
  • Bullish (1984)
  • Classics Volume 1 (compilation, 1987)
  • Definitive Hits (compilation, 2001)
  • Lost Treasures (2005)
  • Whipped Cream & Other Delights Rewhipped (remix, 2006)

ハーブ・アルパート(ソロおよびラニ・ホールとの共演)名義

  • Just You and Me (1976)
  • Herb Alpert/Hugh Masekela (1978)
  • Main Event Live! (1978)
  • Rise (1979)
  • Beyond (1980)
  • Magic Man (1981)
  • Fandango (1982)
  • Blow Your Own Horn (1983)
  • Wild Romance (1985)
  • Classics Volume 20 (compilation, 1987)
  • Keep Your Eye On Me (1987)
  • Under a Spanish Moon (1988)
  • My Abstract Heart (1989)
  • North on South St. (1991)
  • Midnight Sun (1992)
  • Second Wind (1996, ALMO)
  • Passion Dance (1997, ALMO)
  • Colours (1999, ALMO)
  • Definitive Hits (compilation, 2001, Interscope)
  • Anything Goes (2009, Concord Jazz)
  • I Feel You ( & Lani Hall, 2011, Concord Jazz)
  • steppin' out ( featuring Lani Hall, 2013, Shout Factory)
  • In The Mood ( featuring Lani Hall, 2014, Shout Factory)
  • Come Fly With Me (2015)

外部リンク