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スーパーハイビジョン

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スーパーハイビジョン

  1. NHKが中心となって研究開発を進めている超高精細映像システム。本稿で記述する。
  2. HOYAの眼鏡レンズ用コーティング処理技術。同社の登録商標である。

SD・HDとの比較

スーパーハイビジョン (英称: Ultra High Definition Television (UHDTV, Ultra HDTV))はNHK放送技術研究所が中心となって研究開発を行っているデジタルビデオフォーマットである。HDTVの16倍の画素数を持ち、IMAXとほぼ同程度の解像度と言われている[1][2]

SMPTEで定められている英称はUltra High Definition Televisionだが、NHKは海外でもSuper Hi-Visionとして提唱している。

概要

スーパーハイビジョンの暫定仕様:

  • 画素数: 7,680 × 4,320
  • アスペクト比: 16:9
  • 標準観視距離: 0.75H
  • 標準視角: 100°
  • 表色系: Rec.1361
  • フレームレート: 120Hz プログレッシブ
  • ビット深度: 10, 12
  • 音響システム: 22.2ch
    • サンプリング周波数: 48kHz, 96kHz
    • ビット長: 16, 20, 24
    • プリエンファシス: 無し
    • チャンネル数: 24
      • 上層: 9ch
      • 中層: 10ch
      • 下層: 3ch
      • LEF: 2ch

NHK放送技術研究所は1995年からハイビジョンを越える「超高精細映像システム」の研究を開始し、2000年に「走査線4000本級」の超高精細映像システムの研究に着手した。

2002年5月に同研究所にて行われた「第56回NHK放送技術研究所一般公開」(2002技研公開)にて初披露。当時は「走査線4000本級超高精細映像システム[3]」という名称を用いていたが、2004年5月の「技研公開2004」から「スーパーハイビジョン」の愛称を使用している[4]

2005年に発表されたロードマップではスーパーハイビジョンの伝送として検討されている21GHz帯を用いたBS実験放送が2015年に予定されており、本放送は2025年を目指している事が発表された[5][6]。また画素数の多さを生かして立体テレビ放送への応用等の研究も進められている[7]

2007年2月にはヨーロッパ公共放送・研究機関であるBBC(英国放送協会)、RAI(イタリア放送協会)、IRT(ドイツ放送技術機構)と相互連携協定を締結しスーパーハイビジョンの高圧縮符号化技術や21GHz帯放送衛星による伝送技術の共同研究を進めている[8]

音響システムについては、22.2マルチチャンネル - 上層に9チャンネル、中間層に10チャンネル、下層に3チャンネルの3層に配したスピーカーと、2チャンネルのLFE(低域効果)スピーカーを利用する。 また、家庭用には、3.1チャンネルや8.1チャンネルで22.2チャンネルを簡易的に再現するシステムが検討されている。

映像機器

カメラ

プロトタイプカメラヘッド(2006年)
プロトタイプカメラヘッド (2009年)

当初は3300万画素に対応した動画用撮像素子が存在しなかったため、800万画素CCDを4枚使用した4板画素ずらし方式(デュアルグリーン方式)[9]を採用していた。

2007年の「技研公開2007」で3300万画素の動画用CMOS撮像素子が発表され、2008年の「技研公開2008」で同素子を3枚使用した3板式カラー撮像実験、2009年の「技研公開2009」で同素子を使用した3板式カラーカメラの試作機が公開された。2010年の「技研公開2010」ではカメラヘッドに新開発の光波長多重伝送装置を内蔵した、3板式スーパーハイビジョン・フル解像度カメラシステムが公開されている[10]

プロジェクター

当初は3300万画素を直接表示可能なデバイスが存在しなかったためカメラと同様に800万画素LCDを4枚使い、4板画素ずらし方式を採用したプロジェクターで表示していた。

また、2004年から2008年まで日本ビクターの開発した4K-2K D-ILAプロジェクターを2機使用してのみ画素ずらしを行うことで4,000TV本解像度を実現していた。そのため、及びについては4,000TV本の解像度は表現されていなかった。

2008年5月、日本ビクターが3500万画素のD-ILAデバイスを開発し[11]、2009年に同デバイスを使用したスーパーハイビジョン フル解像度D-ILAプロジェクターを開発し[12]、同年開催の「技研公開2009」で展示された。

2012年5月、NHKJVCケンウッドは解像度7640x4320相当で120Hz駆動可能なスーパーハイビジョンプロジェクターを開発した。[13]

圧縮符号化装置

24Gbpsのスーパーハイビジョン信号をリアルタイムで圧縮符号化する装置として、MPEG-4 AVC/H.264符号化方式で映像信号を1/100〜1/200に圧縮する装置が開発されている。なおHDTVの16倍の情報を処理するため、16系統(空間8分割・時間2分割)のAVC/H.264 HDTV エンコーダ/デコーダユニット(1080/30P符号化装置)を並列動作させることでスーパーハイビジョン映像信号のリアルタイム圧縮エンコード/デコードを行っている[14]。2009年度には新たに富士通研究所と共同開発した1080/60P対応の符号化装置8台(空間8分割のみ)を用いる事で符号化装置の削減と画質の向上、圧縮率の効率化を図っている。このSHVリアルタイム圧縮符号化装置は、2010年の「技研公開2010」で展示された[15]

特徴

自然な立体感
2Dでも自然な立体感を得られる[16]。運動視差も働いているため、カメラがパンした際に手前の物体は動きが速く、奥の物体は動きが遅い、手前の物体ははっきり見えて、奥の物体は適度にぼける、そうした違いが高精細な画面で再現されていることが立体感につながったと考えられている[16]。展示会では「3Dはいらない」という感想も多い[16]

展示

国際標準化

  • Rec. ITU-R BT.1201-1 (2004)
  • Rec. ITU-R BT.1706 (2006)
  • SMPTE 2036-1 (2009)
  • SMPTE 2036-2 (2008)
  • SMPTE 2036-3 (2010)

脚注

  1. ^ Latest Research Activities of NHK Science and Technical Research Laboratories From Open House 2002
  2. ^ Progress on Large, Wide-screen Image Presentation NHK STRL, Broadcast Technology No.18, Spring 2004
  3. ^ 技研公開2002 展示資料 走査線4000本級超高精細映像システム、NHK放送技術研究所
  4. ^ NHK、「放送技術研究所一般公開 2004」を開催AV Watch2004年5月27日
  5. ^ 20年後の本放送開始を目指す「スーパーハイビジョン」、AV Watch、2005年5月27日
  6. ^ 【NHK技研公開】超高精細映像「スーパーハイビジョン」の実現スケジュールを初公開 - Tech-On!日経BP、2005年5月26日
  7. ^ スーパーハイビジョンを用いた インテグラル立体テレビ、3Dコンソーシアム、2008年12月19日
  8. ^ 海外研究機関との連携、NHK
  9. ^ RGB3色に対して緑2枚、赤、青各1枚、計4枚の素子を用い人間の視覚解像度に大きく作用する緑の素子のみ斜め方向に1/2画素分ずらして配置する事で水平・垂直方向に等価的に2倍の解像度を得る方式
  10. ^ スーパーハイビジョン・フル解像度カメラを開発、NHK INFORMATION「技術情報 一覧」、2010年5月18日
  11. ^ 「1.75インチ8K4K D-ILAデバイス」を新開発、日本ビクター、2008年5月2日
  12. ^ スーパーハイビジョン フル解像度D-ILAプロジェクターを新開発、日本ビクター、2009年5月12日
  13. ^ 高フレームレートSHVプロジェクターを開発、NHK、2012年5月17日
  14. ^ AVC/H.264 によるスーパーハイビジョンコーデックの開発社団法人情報処理学会、2007年9月
  15. ^ スーパーハイビジョン映像伝送システム用コーデック装置を開発、富士通、2010年5月26日
  16. ^ a b c 芹澤隆徳 (2011年6月7日). “スーパーハイビジョンが見せた不思議な立体感”. 麻倉怜士のデジタル閻魔帳. ITmedia. pp. p. 1. 2011年7月16日閲覧。

関連項目

外部リンク

NHKの公式サイト

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