柔道形
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柔道形(じゅうどうかた)とは、柔道において、攻撃防御の理合いを習得するために行われる練習で、柔道では単に「形」(かた)と呼ばれる。
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[編集] 形稽古について
形(型)(かた)による形稽古は日本の武道(日本の武術)では普遍的な稽古法であるが、柔道(柔術)では、技を掛ける「取(とり)」と技を受ける「受(うけ)」にわかれ、理合いに従って、決められた手順で技を掛け、受け止め、反撃し、それを反復することによってその理合と技を習得するものである。
柔道の前身である柔術では形稽古から順序対応法を変えた「形残り」という稽古法が工夫され、乱取り(乱捕)に発展した。現在の柔道では自由な乱取り攻防がなされている。
[編集] 柔道形の概要
柔道における形と乱取の関係は、柔道創始者嘉納治五郎によると「乱捕と形は、作文と文法の関係」[1]と説明され、そのいずれが欠けても不十分とされる。柔道形の技には、後に試合や乱取りでは禁止されたものがある。
柔道の形には投の形、固の形、極の形、講道館護身術、精力善用国民体育、柔の形、五の形、古式の形がある。剛の形も存在するが、未完成ということで、現在はほとんど行われていない。本家講道館で開催される形の講習会においては、精力善用国民体育、剛の形は扱われていない。
昇段の際には、形も審査対象となる。「講道館昇段資格に関する内規」「講道館女子柔道昇段資格に関する内規」によれば、初段で投の形(手技、腰技、足技)、二段で投の形全部、三段と四段は投の形と固の形、五段は極の形と柔の形、六段は講道館護身術と柔の形である。
[編集] 柔道形の競技会
日本国内では1997年(平成9年)には講道館と全柔連が「全日本柔道形競技大会」を開催したことで、形の競技化が始まった。10回(10年)の国内選手権大会を経てからは、形の国際大会開催の機運が高まり、第1回講道館柔道「形」国際大会が2007年(平成19年)に講道館大道場で開催された。大会は初日がすべての組による予選、二日目に予選上位3組による決勝戦が行われた。ここでは五の形、古式の形、講道館護身術を除く、4種類の形が採用されたが、すべて日本チームが優勝した。二日目には投の形、固の形、極の形、柔の形の講習会が行われた。
ヨーロッパでは2005年に欧州柔道連盟が第1回欧州柔道「形」選手権大会をロンドン郊外で開催した。さらに東南アジア地区のSEA(South East Asia)Gamesでは、2007年から投の形(捨身技を除く)と柔の形が実施されている。
2008年11月には、国際柔道連盟が形ワールドカップがパリで開催され,投の形に13カ国、18組、固の形に12カ国、16組、極の形に11カ国13組、柔の形に13カ国17組、講道館護身術に11カ国12組参加した。投の形は、内山貴之、松井孝文組がルーマニアに敗れて2位、固の形は、松本裕司、中橋政彦組が優勝、極の形は、今尾省司、清水和憲組が優勝、柔の形は、横山悦子、大森千草組が優勝、講道館護身術は、濱名智男、山崎正義組が優勝した。2009年には世界選手権が予定されている。
[編集] 投の形
投の形は手技、腰技、足技、真捨身技、横捨身技各3本ずつ、計15本からなる。各技それぞれ左右の施技を行う。手技、腰技、足技は初段の審査の対象であり、真捨身技、横捨身技と先の3つをあわせたすべてが2段の審査の対象である。
また、受(投げられるほう)が打ちかかってくる技に(背負投、浮腰、裏投、横車)があるが、これは、時代背景として渦巻による天倒への打撃が有効と見做されていたためである。
- 手技(てわざ)
- 腰技(こしわざ)
- 足技(あしわざ)
- 真捨身技(ますてみわざ)
- 横捨身技(よこすてみわざ)
[編集] 歴史
投の形が作られたのは明治17、18年頃であり、当初は10本であったとされる。15本となってからも、後に、掬投→肩車、釣落→巴投と変更されている。
[編集] 固の形
固の形(かためのかた)は、抑込技、絞技、関節技、各5本からなる固め技の形。試合では禁止されている技(足緘:膝関節を極める技)も含んでいる。1884年(明治17年)、1885年(明治18年)頃、「投の形」とともに制定された。「投の形」と併せて「乱取の形」ともいっている。
- 抑込技(おさえこみわざ)
- 絞技(しめわざ)
- 関節技(かんせつわざ)
[編集] 極の形
柔道の技法(投げ技、固め技、当身技)を駆使した実戦的な形。両者座って行う「居取」8本、両者立って行う「立合」12本からなる。
- 居取(いどり)
- 両手取(りょうてどり)
- 突掛(つっかけ)
- 摺上(すりあげ)
- 横打(よこうち)
- 後取(うしろどり)
- 突込(つっこみ)
- 切込(きりこみ)
- 横突(よこづき)
- 立合(たちあい)
- 両手取(りょうてどり)
- 袖取(そでとり)
- 突掛(つっかけ)
- 突上(つきあげ)
- 横打(よこうち)
- 蹴上(けあげ)
- 後取(うしろどり)
- 突込(つっこみ)
- 切込(きりこみ)
- 抜掛(ぬきがけ)
- 切下(きりおろし)
[編集] 講道館護身術
講道館護身術は、1956年(昭和31年)に制定された現代護身術としての柔道技術を形としたもの。徒手の部12本、武器の部9本からなる。拳銃を想定した形が特徴的であり、また、一度柔道体系から削除された手首関節技(小手挫(小手捻)、小手返)が天神真楊流から再採用されている。制定には1952年(昭和27年)、「講道館講道館護身法制定委員会」を設けて検討した。委員は永岡秀一十段、三船久蔵十段、佐村嘉一郎十段や、小田常胤九段、栗原民雄九段、中野正三九段をはじめ、菊池揚二八段、工藤一三八段、子安正男八段、長畑功八段、早川勝八段や富木謙治八段(当時七段)ら合計25名が尽力した。
1995年(平成7年)世界柔道選手権大会での演武では演武者が学生、チンピラなどに扮してコント風に演じられた。
- 徒手の部
- 甲、組み付かれた場合
- 両手取(りょうてどり)
- 左襟取(ひだりえりとり)
- 右襟取(みぎえりとり)
- 片腕取(かたうでとり)
- 後襟取(うしろえりどり)
- 後絞(うしろじめ)
- 抱取(かかえどり)
- 乙、離れた場合
- 斜打(ななめうち)
- 顎突(あごつき)
- 顔面突(がんめんつき)
- 前蹴(まえげり)
- 横蹴(よこげり)
- 甲、組み付かれた場合
- 武器の部
- 甲、短刀の場合
- 突掛(つっかけ)
- 直突(ちょくづき)
- 斜突(ななめづき)
- 乙、杖の場合
- 振上(ふりあげ)
- 振下(ふりおろし)
- 双手突(もろてづき)
- 丙、拳銃の場合
- 正面附(しょうめんづけ)
- 腰構(こしがまえ)
- 背面附(はいめんづけ)
- 甲、短刀の場合
[編集] 補足
三船久蔵十段が創案した護身術の形の草案が映像として市販もされている。
[編集] 精力善用国民体育
精力善用国民体育の形は、体育的要素を取り込んだ1人でできる当身技の形の「単独動作」23本と、2人が組んで行う「相対動作」20本がある。「国民体育」というように、体育的に行う。
- 単独動作
- 第一類(15本)
- 五方当(5本)その場で足を動かさずに当身の動作
- 左前斜当
- 右当
- 後当
- 前当
- 上当
- 大五方当(5本)足を踏み込んで当身の動作
- 大左前斜当
- 大右当
- 大後当
- 大前当
- 大上当
- 五方蹴(5本)
- 前蹴
- 後蹴
- 左前斜蹴
- 右前斜蹴
- 高蹴
- 五方当(5本)その場で足を動かさずに当身の動作
- 第二類(13本)
- 鏡磨
- 左右打
- 前後突
- 上突
- 大上突
- 左右交互下突
- 両手下突
- 斜上打
- 斜下打
- 大斜上打
- 後隅突
- 後突
- 後突前下突
- 第一類(15本)
- 相対動作(20本)
- 第一類(極式練習、10本)
- 居取
- 両手取
- 振放
- 逆手取
- 突掛
- 切掛
- 立合
- 突上
- 横打
- 後取
- 斜突
- 切下
- 居取
- 第二類(柔式練習、10本)
- 一教
- 突出
- 肩押
- 肩廻
- 切下
- 片手取
- 二教
- 片手上
- 帯取
- 胸押
- 突上
- 両眼突
- 一教
- 第一類(極式練習、10本)
[編集] 柔の形
柔の形(じゅうのかた)は、1887年(明治20年)頃に作られた。最初は10本くらいで、1907年(明治40年)頃に今日の15本になった。
攻防の理合いの動きをゆっくりと正確に行う。また平服で行え、稽古する人の体力に応じ、動きの速さを加減するように勧められている。
柔の形は、攻撃防御の方法を、緩やかな動作で、力強く、表現的、体育的に組み立てられたもので、第一教から第三教まで各5本の計15本から成り立っている。
講道館は柔の形の特徴を次のように説明している。
- どんな服装でも、どんな場所でも、どんな時でも、自由に練習することができる。
- 老若男女の区別な区、誰でも楽しく柔道の理論を学ぶことができる。
- 攻撃防御の動作を緩やかな動作で行うから、その理合(りあい)を正確かつ容易に学ぶことができる。
- 伸筋を働かせたり、体を反らせたりすることが多いので、乱取りと併せ行うことによって、体の円満な発達をはかることができる。
- 自然な体さばきと、無理のない変化により、美的な情操を養うことができる。
- 第一教
- 突出(つきだし)
- 肩押(かたおし)
- 両手取(りょうてどり)
- 肩廻(かたまわし)
- 腮押(あごおし)
- 第二教
- 切下(きりおろし)
- 両肩押(りょうかたおし)
- 斜打(ななめうち)
- 片手取(かたてどり)
- 片手挙(かたてあげ)
- 第三教
- 帯取(おびとり)
- 胸押(むねおし)
- 突上(つきあげ)
- 打下(うちおろし)
- 両眼突(りょうがんつき)
[編集] 五の形
五の形(いつつのかた)は1887年(明治20年)に作られた攻防の理合いを「水」にたとえて表現したもの。5本の動きからなるが、それぞれには名前がない。天神真楊流に極意口伝として伝えられていた形であったという説もあり、押返(おしかえし)、曳下(曳外)(えいげ)、巴分(ともえわかれ)、浪引(ろういん)、石火分(せっかのわかれ)がこれらに相当するとみられる。
- 一本目(水の押し流す力のように受を押し倒す)
- 二本目(受の押しに逆らわず、引き落とす)
- 三本目(渦巻く波のように回り、その流れのまま取は横に身を捨て投げる)
- 四本目(波が引く動きのようにして受を倒す)
- 五本目(波と波とがぶつかり合うように、受と取がぶつかる直前、受の足元に身を投げ出し受を倒す)
[編集] 古式の形
嘉納治五郎は柔術の「起倒流」と「天神真楊流」を学んだが、古式の形は起倒流の竹中派に伝えられていた形をそのまま保存したものである。現在の乱取り等は着衣のみの軽装で行われるが、この形は甲冑組討を想定している。初期には「起倒流・表裏の形」「起倒流の形」などと称されていた。
嘉納師範は、柔道の勝負上の精妙な理合いの原則を理解させる為に古式の形を残した。表の形14本、裏の形7本であり、表は荘重優雅に段をつけて、裏は敏速果敢に段をつけずに動作する。
1894年(明治27年)5月20日、小石川下富坂町に、講道館道場が新築され、落成式の際に嘉納が小田勝太郎を相手に演じ、勝海舟が感極まったといわれ次のような書を贈っている。「無心而入自然之妙、無為而窮変化之神」(無心にして自然の妙に入り、無為にして変化の神を究む)。ちなみに、勝自身も起倒流の修行経験があった。
- 表
- 体(たい)
- 夢中(ゆめのうち)
- 力避(りょくひ)
- 水車(みずぐるま)
- 水流(みずながれ)
- 曳落(ひきおとし)
- 虚倒(こだおれ)
- 打砕(うちくだき)
- 谷落(たにおとし)
- 車倒(くるまだおれ)
- 錣取(しころどり)
- 錣返(しころがえし)
- 夕立(ゆうだち)
- 滝落(たきおとし)
- 裏
- 身砕(みくだき)
- 車返(くるまがえし)
- 水入(みずいり)
- 柳雪(りゅうせつ)
- 坂落(さかおとし)
- 雪折(ゆきおれ)
- 岩波(いわなみ)
[編集] 注
[編集] 関連書
- 小谷澄之、大滝忠夫『最新柔道の形』不昧堂出版 1987年(昭和62年) ISBN 4829300930
- 小俣幸嗣 『昇段審査のための柔道の形入門[投の形][柔の形]』大泉書店 2007年(平成19年) ISBN 978-4-278-04695-3


