指定管理者制度

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指定管理者制度(していかんりしゃせいど)は、それまで地方公共団体やその外郭団体に限定していた公の施設の管理・運営を、株式会社をはじめとした営利企業・財団法人NPO法人・市民グループなど法人その他の団体に包括的に代行させることができる(行政処分であり委託ではない)制度である。

概要[編集]

地方自治法の一部改正で2003年6月13日公布、同年9月2日に施行された。小泉内閣発足後の日本において急速に進行した「公営組織の法人化・民営化」の一環とみなすことができる。

公の施設」には、いわゆるハコモノの施設だけでなく、道路水道公園等も含まれるとされている。ただし、道路・河川・公園・港湾・空港・下水道などでは、個別の法律によって、管理者は原則として国や地方公共団体とされている。例えば、道路法では、「国道の新設又は改築は、国土交通大臣が行う」(12条)、「都道府県道の管理は、その路線の存する都道府県が行う」(15条)、「市町村道の管理は、その路線の存する市町村が行う」(16条1項)。したがって、法律によって管理者が国・地方公共団体とされているものについては、管理運営を一括して民間事業者に行われることはできない。もちろん、道路建設などの公共工事は、従来から請負契約によって民間の建設会社に委託してされてきたし、管理者が特定されている場合でも、設置や管理運営のうちの一部を民間に行わせることは可能である。

指定管理者制度による道路の管理の範囲については、国土交通省が、以下のような解釈を示している。

「指定管理者が行うことができる道路の管理の範囲は、行政判断を伴う事務(災害対応、計画策定及び工事発注等)及び行政権の行使を伴う事務(占用許可、監督処分等)以外の事務(清掃、除草、単なる料金の徴収業務で定型的な行為に該当するもの等)であって、地方自治法第244条の2第3項及び第4項の規定に基づき各自治体の条例において明確に範囲を定められたものであること。なお、これらを指定管理者に包括的に委託することは可能です。」[1]

手続き[編集]

各地方公共団体が定める条例に従ってプロポーザル方式総合評価方式などで指定管理者(以下、管理者)候補の団体を選定し、施設を所有する地方公共団体の議会の決議を経ることで、最終的に選ばれた管理者に対し、管理運営の委任をすることができる。

管理者は民間の手法を用いて、弾力性や柔軟性のある施設の運営を行なうことが可能となり、その施設の利用に際して料金を徴収している場合は、得られた収入を地方公共団体との協定の範囲内で管理者の収入とすることができる(地方自治法244条の2 8項)。

意義と問題点[編集]

意義[編集]

一般的には以下の意義があるとされる。

  • 利用時間の延長など施設運営面でのサービス向上による利用者の利便性の向上。
  • 管理運営経費の削減による、施設を所有する地方公共団体の負担の軽減。

問題点[編集]

一般に指摘されている問題点には以下のものがある。

  • 特に地方では、後述の職員人事より以前に管理者選定の段階から既に「出来レース」となっている場合が極めて多く、「適切な管理者が見当たらない」という理由だけで自治体幹部職員の天下り先となっている外郭団体などに管理委託を継続して委ねる事例が見られる。
  • 制度導入の真の狙いが運営費用と職員数の削減にあることから、行政改革の面だけが過剰に着目される。
  • 管理者の「弾力性や柔軟性のある施設運営」の名のもとに、公共施設として不適切かつ問題のある例が以下のような事例として多く見られている。
  • 「弾力性や柔軟性のある施設運営」という建前がありながら、実際には地方公共団体担当者の理解不足や条例施行規則等に阻まれることで、民間の実力が十分に発揮できない。
  • 地方公共団体が出資者となる第三セクターなどが指定管理者となり、指定管理料以外の費用を地方公共団体側が負担していることがある。この場合、財政支出の項目が二種以上にわたるため、実際に当該施設の運営に対して、地方公共団体がどのくらい経費を負担しているのかが極めて分かりにくい。
  • 指定期間の満了後も同じ団体が管理者として継続して指定を受けられる保証は無く、選考に漏れるなどによって管理者が変更した場合は殆どの職員が入れ替わってしまうことも考えられる。また、指定期間が3~5年程度と短期間であれば正規職員を雇用して配置することが困難となるなど人材育成は極めて難しくなり、職員自身にも公共施設職員としての自覚や専門性が身につかない。
  • 指定期間の短さは人材育成と同時に設備投資や運営面での長期的計画も阻んでいる。特に教育・娯楽関連の施設では経費節減のために「場当たり的な運営」しか出来なくなることで集客力が減少し、それに伴う収益の減少によって必要経費も充分捻出できなくなり、結果として更に客足が遠のくといった悪循環に陥る可能性が高い。
  • 医療・教育・文化など、本来なら行政が直接その公的責任を負わなければならない施設までもが制度の対象となっている。

運用上の留意点[編集]

指定管理者制度は施設の管理運営全般を管理者に委ねるため、「公の施設が民営化される」という見方をされることが多い。しかし、税金で設置された施設が一管理者によって私物化されるのを防ぐという観点からも、下記の項目などを地方公共団体の条例や協定書および仕様書などに盛り込んでいくことが必要となる。

  • 定期的な収支報告会・運営協力会議などを設ける。
  • 利用者であり本来の所有者でもある市民のチェック制度をきちんと機能させる。
  • 管理者自身がサービス向上と改善のための情報収集を行う。
  • 管理を指定した地方公共団体及び第三者機関による監査
  • 管理を指定した地方公共団体職員の頻繁なる訪問(業務によっては常駐)による指導。
  • 社会保険・労働保険の加入、加入すべき職員についての手続きすべてを指定管理者が漏らさず行うこと。
  • 地方公共団体からの派遣も含めた、一定率以上の正規職員が占める割合の担保

また移行の際に自治体や旧管理者の正規職員が採用されず契約職員だけが残り、雇用だけでなく施設運営そのものに悪影響を及ぼす事例も多数存在する。移行期には、公務員として制度導入以前から勤務していた職員と制度導入以降に管理者が独自に採用した職員とが混在することになる。さらに制度導入と同時に委託元の地方公共団体との人事交流が事実上なくなるため、当該職員らに対する給与・勤務体系だけでなく人事異動も含めた身分の扱いなどが問題となる。

適用[編集]

現在、地方公共団体の所有する施設のうち、下記の施設を中心に制度の導入が図られている。指定管理者の指定は地域の公益法人NPOなどが多いが、民間のビルメンテナンス会社などの指定もある。

ただし、施設の運営に関して設置者が地方公共団体であることなどを求める法律(「個別法」という)がある施設や特定の者のみがサービスを享受する学校給食センターなどはこの制度から除外されたり、複数ある同種施設の業務の一部のみを「管理者が行う業務」として委任することがある。

指定管理者制度が適用される施設には次のようなものがある。

スポーツ関連
プール体育館、市民球場テニスコート等
公園関連
一般の公園霊園植物園動物園水族館
文化関連
図書館、郷土資料館、博物館美術館ホール
医療関係
公立病院、(リハビリテーションなどの)特定機能病院等
福祉関連
高齢者施設、障害者施設、保育所児童館保養所福祉作業所
生活関連
下水道斎場駐車場駐輪場
教育関連
林間学校生涯学習センター等

資格[編集]

施設を管理する上で、資格者の配置が求められる場合がある。

脚注[編集]

  1. ^ 指定管理者制度による道路の管理について - 指定管理者制度推進研究所

関連項目[編集]

外部リンク[編集]