南海6200系電車

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南海6200系電車
南海6200系 6501F
(2018年7月 住吉東駅 - 沢ノ町駅間)
基本情報
製造所 東急車輛製造
製造年 1974年 - 1985年
製造数 52両
主要諸元
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1500 V架空電車線方式
最高運転速度 100 km/h
設計最高速度 120 km/h
130 km/h(更新車)[1]
起動加速度 2.5 km/h/s
減速度(常用) 3.7 km/h/s
減速度(非常) 4.0 km/h/s
全長 20,825 mm (先頭車)
20,725 mm (中間車)
全幅 2,740 mm
全高 4,160 mm
車体 ステンレス
台車 S型ミンデン式ダイレクトマウント空気ばね台車
FS-392・392B・FS-092
主電動機 直流直巻電動機
MB-3072-B
かご形三相誘導電動機
TDK6313-A(更新車)[1]
主電動機出力 145 kW(375 V時)
200 kW(更新車)[1]
駆動方式 WNドライブ
歯車比 5.31 (85:16)
編成出力 2,320 kW(6両編成)
1,160 kW(4両編成・未更新車)
1,600 kW(4両編成・更新車)
制御方式 未更新車:抵抗制御
更新車:IGBT素子採用VVVFインバータ制御
制御装置
  • いずれも日立製作所
  • 未更新車:MMC-HTB-20N4
  •  または VMC-HTB-20FA (6521Fのみ)
  • 更新車:VFI-HR1420U[2]
制動装置 電磁直通ブレーキ
発電ブレーキ併用、抑速ブレーキ付き
回生ブレーキ遅れ込め制御全電気ブレーキ)併用、抑速ブレーキ付き(更新車)
保安装置 南海型ATS
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南海6200系電車(なんかい6200けいでんしゃ)は、南海電気鉄道高野線で運用されている一般車両(通勤形電車)の一系列。1974年(昭和49年)より製造された。

なお、改造後当形式に編入された6200系50番台については、南海8200系電車の項で記述する。 また、難波方先頭車の車両番号 +F(Formation=編成の略)を編成名として表記する。

概要

高野線の難波駅 - 橋本駅間で使用される20 m・4扉・オールステンレス車体の通勤形電車である。

高野線では「大運転」と称する平坦区間と山岳区間の直通運転に対応した、15 m・2扉車体の561形1251形、17 m・2扉車体の21001系・21201系が使用されていたが、1960年代から平坦区間では沿線の住宅開発が進み通勤客が急増し、これらの大運転向け車両では輸送力が不足していた。このため高野線の平坦区間である難波駅 - 三日市町駅間には、南海本線と同様の山岳区間向け装備を省いた20 m・4扉車体の通勤形電車として6000系1962年より)・6100系1970年より)を投入してきた。その後の昇圧を機に対応改造がされなかった旧型車両は高野線から全車引退したが、利用客の増加に対応したさらなる車両増備が必要な中で、長編成化による運用適正化の観点から、車体構造や電装品を見直しコスト低減と経済効率の向上を図ったのが本系列である。

本系列をベースにして製造された車両に大阪府都市開発(現:泉北高速鉄道)の3000系がある。

車両概説

無塗装時代の6200系

車体は6000系以来のオールステンレスで、軽量化が図られた[注 1]

6000系・6100系はそれぞれ7000系7100系をそのままステンレス車体にしたような角の取れた丸みのある前面形状であったが、本系列では切妻構成とした。前面貫通扉上部に方向幕を設置し、前照灯は左右両側の窓下に下げられたため以前の車両からは顔つきが大きく変化したものとなった。また外板のコルゲートの形状も変更された。中間車の車体長は6000・6100系と同じだが、乗務員室を拡大したため先頭車の車体長は中間車より100 mm長くなっている。

機器類にも変化があり、パイオニア台車を装備して製造された6000・6100系と異なり、S型ミンデン台車住友金属工業製FS-392、392B、付随台車は092)が採用された。冷房装置は6100系の分散式×8基から集約分散式三菱電機製 CU-191型(冷房能力 10,500 kcal/h (12.20 kW) )×4基に変更された。

車種構成と変遷

本系列は以下の2形式3種で構成される。

  • モハ6201形(奇数) - 中間電動車 (M1)
  • モハ6201形(偶数) - 中間電動車 (M2)
  • クハ6501形 - 制御車 (Tc)

製造車両

6501 - 6201 - 6202 - 6203 - 6204 - 6502 (1974年11月22日竣工)
6503 - 6205 - 6206 - 6207 - 6208 - 6504 (1974年11月25日竣工)
6505 - 6209 - 6210 - 6506 (1977年6月27日竣工)
6507 - 6211 - 6212 - 6508 (1977年6月27日竣工)
6509 - 6213 - 6214 - 6510 (1977年7月11日竣工)
6511 - 6215 - 6216 - 6512 (1977年7月11日竣工)
6513 - 6217 - 6218 - 6514 (1980年3月25日竣工)
6515 - 6516 (1980年3月25日竣工)
6219 - 6220 - 6221 - 6222 (1981年8月25日竣工)
6517 - 6223 - 6224 - 6225 - 6226 - 6518 (1981年8月25日竣工)
6519 - 6227 - 6228 - 6229 - 6230 - 6520 (1981年8月25日竣工)
6231 - 6232 (1985年8月8日竣工)

編成構成が6000・6100系から変化しており、奇数番号 - 偶数番号で2両一組となった電動車ユニットを、6両編成の場合は二組、4両編成の場合は一組制御付随車に挟み込むというものになっている。制御方式は抵抗制御を踏襲しているが、超多段制御から一般的な多段制御(日立製作所製 MMC-HTB-20N4)になった。また6000・6100系が制御器1基で4個の主電動機を制御する1C4M方式であったのに対し、本系列では同8個を制御する1C8M方式となった。なお6両編成 (4M2T) と4両編成 (2M2T) とでMT比が異なるが、加速力を揃えるために制御器内に限流値切替スイッチを設けている。[要出典]

なお、1980年3月に3次車(6513 - 6217 - 6218 - 6514 と 6515 - 6516)が製造された際、6503Fから電動車ユニット1組(6207 - 6208)が移され、先頭車のみ完成した6515Fの中間車として以下のように使用された[3]

  • 6503 - 6205 - 6206 - 6504
  • 6515 - 6207 - 6208 - 6516

しかし翌1981年8月に4次車(6219 - 6220 - 6221 - 6222 と 6517F・6519F)が製造され、6515Fに組む予定の中間車4両が完成すると、以下に示すとおり6503Fは6両編成に復帰している[3]

  • 6503 - 6205 - 6206 - 6207 - 6208 - 6504
  • 6515-6219-6220-6221-6222-6516(太字が4次製造分)

※6517F・6519Fは製造当初より上掲のとおりのため省略。

1981年から4年間の中断の後、1985年には電動車ユニット1組(6231 - 6232)が増備され、4両編成であった6513Fの中間に挿入され[3]、以下のとおりとなった。この2両は当時増備されていた8200系に合わせて従来車とは一部の仕様が変更されている。この時点で52両となり、製造は終了した。

  • 6513 - 6217 - 6218 - 6231 - 6232 - 6514

他形式からの編入

初代8000系改造の6521F (住吉東 - 帝塚山駅間) 8200系改造の50番台 (天見駅)
初代8000系改造の6521F
(住吉東 - 帝塚山駅間)
8200系改造の50番台
天見駅

本形式をベースに高速域からの回生ブレーキを可能とするチョッパ制御を採用した車両として、初代8000系電機子チョッパ制御)と8200系界磁チョッパ制御)が開発されていたが、保守部品が徐々に製造されなくなり充分な部品の確保が困難となっていた。また制御器の経年劣化による故障が頻発するようになり、長期にわたって使用不能となる事態も発生していた。さらに他系列との併結に対応しておらず、運用上の支障にもなっていた。

こうした事情から両形式に対して、安定性と汎用性を本形式と同等レベルに引き上げる工事が進められた。2001年、初代8000系が抵抗制御に改造、2013年から8200系がVVVFインバータ制御に改造され、それぞれ6521Fと50番台へ改番された。これにより両形式は本系列に編入された[4][5]。編入改造により従来の6両単独での運転に加え、6000系や6300系2両と併結して8両編成での運転が可能となった[4][6]

このうち6521Fは、在来車の続番で以下のように付番された。また編入改造と同時に更新工事が施工されており、床下機器、車内の化粧板戸閉機などが在来車と異なるほか、先頭車に排障器(スカート)が設置された。

  • 6521 - 6233 - 6234 - 6235 - 6236 - 6522

50番台についても、編入にあたり大規模な更新工事が実施されているが、詳細は8200系の記事を参照されたい。

VVVFインバータ制御への更新

本形式の4両編成は、制御器や空気圧縮機電動発電機(MG)を1基ずつしか備えていないため、故障時の冗長性を確保する目的で、同形式や6000系、6300系を併結し6両編成や8両編成で使用されていた。しかし輸送人員減少に伴い4両編成の運用が増加して以降、単独で運用できない本形式の4両編成は、日中の運用が限定され運用効率の悪い車両となっていた[7]

そのため2009年から、制御方式を8000系(2代)と同様のIGBT素子VVVFインバータ制御に変更する更新工事が開始された[5][注 2]。制御装置、静止形インバータ(SIV)、空気圧縮機を全て2重系にするとともに、制御装置を8000系と同型にすることで、コストダウンと保守の統一化が図られている[7]。また先頭車に排障器(スカート)が設置された。

室内についてもバリアフリーを考慮し、LED車内案内表示器非常通報装置ドアチャイム開扉誘導鈴・扉開閉警告ランプ・扉開閉予告放送[注 3]が設置され、各車両には車椅子スペースも整備された[7]。また座席端の仕切りパイプの形状と化粧板が変更される[7]とともに、ドアエンジンを交換し戸閉減圧機構も装備された[1]

なお本工事により、各車の形式名が以下の通り変更されている[8]

  • クハ6501形(奇数)→ クハ6511形
  • モハ6201形(奇数)→ モハ6215形
  • モハ6201形(偶数)→ モハ6216形
  • クハ6501形(偶数)→ クハ6512形

本工事ではブレーキ指令は変更されていない[注 4]ため、未更新車や6000系、6300系(いずれも抵抗制御車)との併結が引き続き可能である。なお本工事により、他車との併結時には自動的に相手車両を識別するとともに、抵抗制御車との併結の場合は、制御方式の違いによる加減速性能の不統一を避けるため、自車の運転特性を併結相手に合わせる機能が搭載された[7]

6511Fは、2009年9月中旬に試運転が始まり[9]、同年11月に6000系2両と併結した6両編成で営業運転を開始した。この後も年に1本のペースで工事が進められ、2010年6月に6507F、2011年7月に6505F、2012年6月に6509Fがそれぞれ更新工事を終えている[8]

更新工事完了後、客室灯がLED照明に変更されている[5]。また6509Fのうち難波方の2両については、2017年4月より電気式ドアエンジンの長期試験に供されている[10]

6両編成(6521F、50番台除く)については、製造後40年以上経過した2023年9月現在でも更新工事は行われていない[8]

編成表

6両編成
← 難波
橋本・和泉中央 →
形式 クハ6501

(Tc1)

モハ6201

(M1)

モハ6201

(M2)

モハ6201

(M1)

モハ6201

(M2)

クハ6501

(Tc2)

備考
搭載機器 CON1, PT×2 MG, CP CON1, PT×2 MG, CP
車両番号 6501 6201 6202 6203 6204 6502
6503 6205 6206 6207 6208 6504 前面貫通幌撤去
6513 6217 6218 6231 6232 6514
6515 6219 6220 6221 6222 6516
6517 6223 6224 6225 6226 6518 前面貫通幌撤去
6519 6227 6228 6229 6230 6520 前面貫通幌撤去
6521 6233 6234 6235 6236 6522 元8501F
4両編成
← 難波
橋本・和泉中央 →
形式 クハ6511

(Tc1)

モハ6215

(M1)

モハ6216

(M2)

クハ6512

(Tc2)

更新竣工年[8]
搭載機器 CP CON2, SIV, PT×2 CON2, CP SIV
車両番号 6505 6209 6210 6506 2011年
6507 6211 6212 6508 2010年
6509 6213 6214 6510 2012年
6511 6215 6216 6512 2009年
凡例
  • CON1:主制御器(抵抗制御)
  • CON2:主制御器(VVVFインバータ制御)
  • PT:集電装置
  • MG:電動発電機
  • SIV:静止形インバータ
  • CP:空気圧縮機

運用

製造当初は高野線難波駅 - 三日市町駅間と泉北高速線で使用されていたが、1985年6月16日のダイヤ改正林間田園都市駅まで、1995年9月1日のダイヤ改正で橋本駅まで入線可能となったため、現在では難波駅 - 橋本駅間と泉北高速線で使用される。

かつては平日朝の泉北高速線と直通する区間急行準急行の10両編成の列車に本形式も使用されていたが、2005年10月16日のダイヤ改正で南海車を使用した10両運転が廃止されたため、本形式も8両編成以下での運転となった。他方このダイヤ改正では、2000系による橋本駅以北の運用の一部を代替したため、運用数が増加した[注 5]

同ダイヤ改正では日中の乗客減を受け、昼間時の各駅停車の一部に4両編成の列車が十数年ぶりに復活した[11]が、本形式の4両編成は故障時の冗長性を担保できないことから、当初は充当されることがなかった。しかし更新工事を受けたことにより問題を克服したため、2009年から4両編成の列車にも使用されるようになった[12]

現在は4両、6両、8両の各列車に充当され、各駅停車から快速急行まで各種別の列車に幅広く運用されている。本形式の4両編成と6両編成(50番台含む)には、難波方から4両目となる車両に女性専用車両ステッカーが貼られており、平日朝ラッシュ時の8両編成の上り急行・区間急行で運用される場合、この車両が女性専用車両となる。

参考文献

  • 南海電気鉄道車両部・井上広和(編)『日本の私鉄9 南海(カラーブックス547)』保育社、1981年、60-61・143頁。

脚注

注釈

  1. ^ 本系列の設計段階ではコスト削減のためにセミステンレス車体にすることも検討されていたが、工法見直しやパイオニア台車の廃止によりオールステンレスでもコスト面でクリアできたので、本系列もオールステンレス車体で製造された。
  2. ^ 既存車両のVVVF化工事が行われる例は近年になって少なからず見られるようになったが、車両製造後35年以上経過した営業用車両がVVVF制御化工事が行われた事例は相鉄3000系くらいである。相鉄3000系の場合1946年製のモハ3001が約40年後の1986年に行われた。ただし同車両は1964年に車体及び台枠が新製品に交換されている。
  3. ^ 進行方向左側の扉開閉案内は女性の声、右側は男性の声と使い分けられている。6両または8両編成での運転時は、本更新車が後部に連結されている場合にのみ使用でき、またこの場合には、前部に連結されている車両(6000系・6300系含む)に対しても扉開閉が予告放送される。
  4. ^ 厳密には発電ブレーキ併用のHSC-Dから回生ブレーキ併用のHSC-Rに更新されているが、電磁直通ブレーキを採用しているという点で変更はない。
  5. ^ 従来、ラッシュ時に2000系で運用されていた列車を6000系列などの20m車に置き換えることで混雑緩和が図られている。

出典

  1. ^ a b c d 南海電気鉄道株式会社6200系車両用電機品」『東洋電機技報』第119号、東洋電機製造、2009年3月、2024年3月7日閲覧 2023年5月25日時点におけるWARP提供のアーカイブ。
  2. ^ 「南海電気鉄道 現有車両主要諸元表」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、278-279頁。
  3. ^ a b c 藤井信夫『車両発達史シリーズ 6 南海電気鉄道 下巻』関西鉄道研究会、1998年12月、105-106頁。
  4. ^ a b 「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2008年8月臨時増刊号(通巻807号)、電気車研究会、2008年、50頁。
  5. ^ a b c 「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、55頁。
  6. ^ "【南海】6551編成、併結運転を開始". 鉄道ホビダス. 2013年12月18日. 2013年12月28日閲覧
  7. ^ a b c d e 南海電気鉄道(編)「6200系VVVF更新車 解説」『南海電鉄車両大全第1巻(チョッパー&VVVF制御車)』2017年、27-28頁。
  8. ^ a b c d 「南海電気鉄道 現有車両履歴表」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、288頁。
  9. ^ “【南海】南海6200系VVVF改造車が出場”. RMニュース. (2009年9月11日). https://rail.hobidas.com/rmnews/229545/ 
  10. ^ 電気式戸閉装置の開発」『東洋電機技報』第136号、東洋電機製造、2017年、2024年3月7日閲覧 2023年5月25日時点におけるWARP提供のアーカイブ。
  11. ^ 「NEWS 南海だより」『関西の鉄道』2006年新春号(通巻50号)、関西鉄道研究会、2006年、93頁。
  12. ^ 「NEWS 南海だより」『関西の鉄道』2010年新緑号(通巻58号)、関西鉄道研究会、2010年、99頁。

関連項目