乙嫁語り

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乙嫁語り
ジャンル 時代漫画
漫画
作者 森薫
出版社 企画・制作:エンターブレイン
発行:株式会社KADOKAWA
掲載誌 Fellows!ハルタ
レーベル ビームコミックス
発表期間 volume1(2008年10月14日) - 連載中
巻数 既刊6巻
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乙嫁語り』(おとよめがたり、The Bride's Stories)は、森薫による日本漫画作品。エンターブレイン発行の隔月誌『Fellows!』volume1(2008年10月発売)より連載を開始し、同誌が年10回刊『ハルタ』へと誌名変更された2013年現在も基本的に毎号連載中。同誌の看板作品となっている[1]

Fellows!(Q)』(エンターブレイン)全3号にも番外編が掲載されている[1]

概要[編集]

森薫による長編第2作目。

19世紀後半の中央アジアカスピ海周辺の地域を舞台に、「乙嫁」をキーワードに、厳しい自然の中に生きる人々の生活と文化、時に人間の愚行を織り交ぜた物語を緻密で丁寧な画で描く。

乙嫁とは、「若いお嫁さん」、「美しいお嫁さん」、或いは、「可愛いお嫁さん」という意味の古語。

あらすじ[編集]

19世紀後半の中央アジア。とある町に住むエイホン家に、北方の移牧民(半定住・半遊牧民)ハルガル家から20歳の花嫁、アミルが嫁いできた。花婿カルルクはまだ12歳の定住民の少年であった。ハルガル一族らの住む北方は、ロシアの侵攻(南下政策)で緊張状態にあった。アミルの叔父たちは、すでに嫁に出したアミルを連れ戻して、あらためて有力な部族に嫁がせようと実力行使に出るが、町をあげた抵抗にあい失敗に終わる。

一方、エイホン家の居候の英国人スミスは、エイホン家の人々に別れを告げ、アンカラへの旅につく。 途中カラザの町で諜報員と誤解され勾留されるが、案内人アリにより窮地を脱する。その後、町で出会った薄幸の未亡人タラスと恋に落ちるが、この恋は実ることなく、また旅を続けることになる。

スミスが医者として滞在していたムナク村の漁師の家の双子ライラレイリは、玉の輿を夢見て人騒がせな婿探しを繰り広げていたが、紆余曲折の末、近所の漁師の息子兄弟と結婚することになる。ライラとレイリは、披露宴でもドタバタを見せるが、どうにか周囲の人たちの祝福を受けて無事にサームサーミ兄弟と結ばれる。彼女たちの結婚式を見届けたのち、人々の暖かい心に見送られて、スミスたちも村を後にする。

一方、そのころヌマジの牧草地を追い出されて困ったハルガルは、遠縁のバダンの協力を得て、エイホン家のある町を占領しようと襲撃した。しかしバダンの裏切りにより失敗し、族長も死ぬことになる。

登場人物[編集]

エイホン家[編集]

アミル・ハルガル(第一の乙嫁)
カルルクの妻。20歳。
作者曰く「弓が上手、姐さん女房、何でもさばける(鳥とか兎とか)、野生、天然、強い、でも乙女、でもお嬢様」とのこと。
20歳という、この時代のこの地域では相当の「行き遅れ」となってからの嫁入りだったが、夫婦仲は良好。
カルルク・エイホン
アミルの夫。12歳。思いやり溢れる、穏やかな性格の少年。
いざとなれば妻を護ろうと体を張る男気にも満ちている。
アクンベク
カルルクの父。どっしり落ち着いた雰囲気の、エイホン家の当主。
サニラ
カルルクの母。物静かで、かなりの美女。
マハトベク
アクンベクの父で、カルルクの祖父。優しげな雰囲気。
バルキルシュ
アクンベクの母で、カルルクの祖母。気迫に満ちた女傑。山羊に乗って崖を登れるほど扱いが上手い。
実家はハルガル家に連なる一族で、族長のベルクワトとも面識がある。アミル同様に弓を嫁入り道具として持ってきており、扱いにも長ける。
セイレケ
カルルクの姉。子供のしつけには厳しいが、時々そそっかしい。
ユスフ
セイレケの夫。カルルクの義兄。若いながらもしっかりした父親ぶり。
ティレケ
ユスフとセイレケの長女。カルルクの姪。しっかりもの。鷹が大好き。
トルカン、チャルグ
ユスフとセイレケの息子。トルカンが長男でチャルグが次男。カルルクの甥。よくロステムをからかっている。
ロステム
ユスフとセイレケの三男。カルルクの甥。手伝いをサボっては母親に叱られている。
メルタ
セイレケとカルルクの姉。

パリヤとその家族及び関係者[編集]

パリヤ
エイホン家の近所に住む、年頃の少女。嫁いできたアミルの、町で初めて出来た友人。
物事をはっきり言う性格だが、同じ年頃の少年に対しては人見知りして、そっけない態度や厳しい発言をしてしまい、後に恥ずかしさと自己嫌悪に落ち込むこともしばしば。
細かい模様の入ったパン作りは上手だが、刺繍は苦手。
トゴノシュ
パリヤの父。なかなか結婚相手が決まらない娘にやきもきしている。

ハルガル家及び関係者[編集]

アゼル
アミルの兄。寡黙で、生真面目。
一族の事情により、アミルを実家へ連れ帰るよう命令された。族長でもある父に逆らうことは無いが、本意ではないようで、最初にエイホン家に来た際にはあっさりと引き下がっている。また、バダン族と手を組むことにも反対であるが、やはり父には逆らえずにいる。
バダンの裏切りが判明した際には、ジョルクやバイマトたちを逃がしつつも、自身はバダン族の長オル=タムスを弓で射殺した。
ジョルク
アゼルやアミルの従兄弟。アゼルと行動を共にしている。飄々とした性格。アゼルと同じような考え方をしているが、アゼルと違って族長(アゼルの父)に対する不満も口にする。
バイマト
アゼルやアミルの従兄弟。アゼルと行動を共にしている。寡黙。同じく、バダンと手を組むことには反対している。
ベルクワト
アミルの父。ハルガル族長。一族の牧草地のため、アミルを取り返し、ヌマジに嫁にやろうとするが失敗。ヌマジと縁が切れたことで広大な牧草地の使用権を失い、復讐と牧草地確保のためエイホン家の住む町を襲撃すべくバダン族を手を組む。
しかし、バダン族の裏切りによりハルガル族の少ない人員を失い、襲撃は失敗。傷だらけとなって逃げ延び復讐を誓うも、バルキルシュに弓で射殺される。
オル=タムス
ハルガルと遠縁のバダンの長。ロシア製の武器を持っている。ロシアに寝返ったという噂もあり、アゼルなどは耳にしているが、復讐心に捕らわれたベルクワトはその事に対し、無関心であった。
所持する大砲で、エイホン家の住む町を攻撃。その後、ハルガル族と町の住民たちとが乱戦になったところへ両者まとめて銃撃する。
裏切りを知ったアゼルに弓で射殺される。

ヘンリー・スミスとその関係者[編集]

ヘンリー・スミス
エイホン家に居候しているイギリス人。押しに弱いお人好し。
異国の風俗・習慣に興味があり、周囲に聞きまわっては書き留めている。
2巻の最後でエイホン家を去り、当初の目的だったアンカラへと向かった。
アリ
アンカラまでのスミスの案内人。口が達者で世渡り上手な青年。
自身の結婚のための結納金を稼ぐことを目的とし、高給であったスミスの案内役に就いた。

カラザの町の住人及び関係者[編集]

タラス(第二の乙嫁)
アンカラへ向かうスミスが、途中のカラザの町で出会った美女。
5人の夫に次々に先立たれ、今は姑と二人、町から外れた草原に住んでいる。
スミスに次第に惹かれていったが、義母と義叔父の結婚により、義叔父が義父となったことで、スミスとの仲は適わぬものとなった[2]
タラスの義母(姑)
タラスの亡くなった5人の夫の母。自分の死後、一人残されるタラスを心配している。
タラスのためにと、亡夫の弟(後述のタラスの義叔父)と結婚した。
タラスの義叔父
タラスの舅の弟。粗暴な性格。タラスの義母が持つ財産(土地と羊)を狙い、タラスを息子の後妻にしようと狙っている。
財産目当てでタラスの義母と結婚した。

ムナクの村の住人及び関係者[編集]

ライラとレイリ(第三の乙嫁)
玉の輿を狙う双子。非常にエネルギッシュで騒がしい。
素潜り漁をして家計を助けているが、家事は苦手。
父親同士の話し合いの末、サマーンとファルサーミの兄弟(後述)と結婚することになるが、その組み合わせについては互いの両親ともに忘れていた。
ライラとレイリの父親
屈強な漁師。双子のいたずらには問答無用で鉄拳制裁。
ライラとレイリの母親(ミナー)
勝気な美女。双子のしつけは、気迫で押し切る。
ライラとレイリの祖父
年甲斐も無く元気だが、体がついて行かない様子。
ライラとレイリの祖母
元気の有り余っている双子を、上手に手玉に取るおばあちゃん。
サマーン(兄)とファルサーミ(弟)
通称サームとサーミ。双子の幼馴染で、喧嘩相手。
兄弟ともにどちらかというと冷めた性格で、元気な双子を呆れて眺めている。
父親同士の話し合いの末、ライラとレイリを嫁に迎えることになる。
サマーンとファルサーミの父親
漁師。ライラとレイリの父親とは昔馴染み。家計は「海水よりしょっぱい」らしい。

書籍[編集]

単行本[編集]

  1. 2009年10月15日発売 ISBN 978-4-04-726076-4
  2. 2010年06月15日発売 ISBN 978-4-04-726586-8
  3. 2011年06月15日発売 ISBN 978-4-04-727328-3
  4. 2012年05月14日発売 ISBN 978-4-04-728083-0
  5. 2013年01月15日発売 ISBN 978-4-04-728631-3
  6. 2014年01月14日発売 ISBN 978-4-04-729396-0

外国語版[編集]

英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、インドネシア語、韓国語、中文、タイ語版が出版されている。(英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語の記載データは各国語版のAmazonより)

  • A Bride's Story (英語版) Yen Press刊 ハードカバー
  1. 2011年5月31日発売 ISBN 978-0-316-18099-3
  2. 2011年10月25日発売 ISBN 978-0-316-19446-4
  3. 2012年3月27日発売 ISBN 978-0-316-21034-8
  4. 2013年1月22日発売 ISBN 978-0-316-23203-6
  • Bride Stories (フランス語版) Ki-oon刊
  1. 2011年6月9日発売 ISBN 978-2-355-92274-9
  2. 2011年9月8日発売 ISBN 978-2-355-92308-1
  3. 2011年12月8日発売 ISBN 978-2-355-92337-1
  4. 2012年9月13日発売 ISBN 978-2-355-92435-4
  • Bride Stories - Latitudes (フランス語版 / ペーパーバック版) Ki-oon刊
  1. 2012年10月2日発売 ISBN 978-2-355-92450-7
  • I Giorni della Sposa (イタリア語版) J-Pop刊
  1. 2011年5月26日発売 ISBN 978-88-6634-048-5
  2. 2011年10月25日発売 ISBN 978-88-6634-139-0
  3. 2012年6月7日発売 ISBN 978-88-6634-238-0
  4. 2012年12月14日発売 ISBN 978-88-6634-395-0
  • Young Bride's Story (ドイツ語版) Tokyopop Gmbh刊
  1. 2011年7月14日発売 ISBN 978-3-842-00229-6
  2. 2011年12月15日発売 ISBN 978-3-842-00230-2
  3. 2012年6月13日発売 ISBN 978-3-842-00462-7
  4. 2013年5月13日発売 ISBN 978-3-842-00780-2
  • The Bride's Stories (インドネシア語版) Level Comics (Elex Media刊) ペーパーバック
  1. 2011年5月11日発行 ISBN 978-602-00-0075-6
  2. 2011年7月6日発行 ISBN 978-602-00-0613-0
  3. 2012年5月16日発行 ISBN 978-602-00-2563-6
  • 신부이야기 (花嫁物語) (韓国語版) 大元出版刊
  1. 2010年5月26日発行 ISBN 978-892-52-6270-3 (改訂版 ISBN 978-896-72-5568-8
  2. 2010年9月20日発行 ISBN 978-892-52-6806-4 (改訂版 ISBN 978-896-72-5464-3
  3. 2011年8月23日発行 ISBN 978-892-52-8304-3
  4. 2012年7月30日発行 ISBN 978-896-72-5080-5
  5. 2013年5月8日発行 ISBN 978-896-82-2301-3
  • 姊嫁物語 (少女新娘物語) (中文版) 台灣角川刊
  1. 2010年5月14日発行 ISBN 978-975-03-0723-2
  2. 2010年10月30日発行 ISBN 978-986-23-7895-3
  3. 2011年11月17日発行 ISBN 978-986-28-7443-1
  4. 2012年12月5日発行 ISBN 978-986-28-7987-0
  • เจ้าสาวแห่งทางสายไหม (タイ語版) SIAM INTER COMICS (Siam Inter Multimedia刊)
  1. 2012年2月20日発行 ISBN 978-6-160-11366-8
  2. 2012年3月23日発行 ISBN 978-6-160-11367-5
  3. 2012年10月31日発行 ISBN 978-9-749-95194-1

関連書籍[編集]

受賞歴[編集]

  • フランス・アングレーム国際漫画祭2012、世代間賞受賞。
  • アメリカ・全米図書館協会、10代向けグラフィックノベル・ベスト10選出。

その他[編集]

乙嫁コンツェルト[編集]

ゲッサン』(小学館)連載作品の石井あゆみ作『信長協奏曲』とのコラボレーション企画[3]。『マチ★アソビ vol.7』にて開催された『Fellows!』『ファミ通コミッククリア』『ゲッサン』の合同サイン会が直接の契機となり[4]、両作品とも歴史に深く関わる作品であるという事で出版社の垣根を越えて企画された[3]

これに関連して『ゲッサン』2012年3月号には『Fellows!』連載作家25人による合作漫画『フェローズのできるまで』が掲載され、『乙嫁語り』は計4コマ参加している[5]

出典[編集]

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  1. ^ a b 新人メインの兄弟誌Fellows!(Q)誕生!乙嫁&乱の番外編も”. ナタリー. ナタリー / ナターシャ (2011年11月15日). 2012年3月4日閲覧。
  2. ^ 家長の権限が強いため。特におかしな風習でもないようで、カルルクやアリも「それはしかたがない」と納得していたが、西洋人であるスミスには納得しがたいものがあった。
  3. ^ a b 「乙嫁×信長」合同フェアで主人公カップルが夢の共演”. ナタリー. ナターシャ (2012年1月30日). 2012年3月5日閲覧。
  4. ^ Twitter / fellowsmanga: 10月のサイン会では作家さんだけでなく、フェローズもゲッサン ...”. Fellows? (@fellowsmanga) - Twitter. エンターブレイン (2012年1月23日). 2013年4月20日閲覧。
  5. ^ ゲッサン「信長」カレンダー全サ&Fellows!作家25名襲来”. ナタリー. ナターシャ (2012年2月10日). 2012年3月5日閲覧。

外部リンク[編集]