プランクの法則

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黒体放射スペクトル

プランクの法則(プランクのほうそく)とは物理学における黒体から輻射(放射)される電磁波分光放射輝度、もしくはエネルギー密度波長分布に関する公式。プランクの公式とも呼ばれる。ある温度 T における黒体からの電磁輻射の分光放射輝度を全波長領域において正しく説明することができる。1900年ドイツの物理学者マックス・プランクによって導かれた。プランクはこの法則の導出を考える中で、輻射場の振動子のエネルギーが、あるエネルギー素量(現在ではエネルギー量子と呼ばれている)ε = hν の整数倍になっていると仮定した。このエネルギーの量子仮説(量子化)はその後の量子力学の幕開けに大きな影響を与えている。

より一般的な導入として、黒体の項目も参照

概要[編集]

プランクの法則において、黒体から輻射される電磁波の分光放射輝度は、周波数νと温度 T の関数として

I(\nu,T) =\frac{2 h\nu^{3}}{c^2}\frac{1}{ e^{\frac{h\nu}{kT}}-1}

と表すことができる[1]。但し、ここで分光放射輝度 I (ν,T ) は、放射面の単位面積、立体角、周波数あたりの放射束を表しており、hプランク定数kボルツマン定数c光速度を表す。分光放射輝度 I (ν, T ) は hν = 2.82 k T の位置にピークをもち[2]、高周波数においては指数関数的に、低周波数においては多項式的に減少する。

また、分光放射輝度を全立体角について積分することで、分光エネルギー密度に関して

u(\nu,T)    =   {  4 \pi \over c }   I(\nu,T)  =   \frac{8\pi h\nu^3 }{c^3}~\frac{1}{e^{\frac{h\nu}{kT}}-1}

と表すこともできる[3]。ここで分光エネルギー密度 u は単位体積、単位周波数あたりのエネルギーの次元(単位はJ/(cm3 Hz))を持ち、周波数がνとν+ dνの間に存在する単位体積あたりのエネルギーはu (ν, T ) dνによって与えられる。この式を周波数について積分すれば、全エネルギー密度を得る。黒体の輻射場は光子気体と考えることができ、その場合、全エネルギー密度は光子気体の熱力学変数の一つとなる。

プランクの法則において、分光放射輝度は波長λの関数として

I'(\lambda,T) =\frac{2 hc^2}{\lambda^5}\frac{1}{ e^{\frac{hc}{\lambda kT}}-1}

という形であらわすこともできる[4]。 ここで波長と周波数はλ = c /νという関係式によって結びついている[5]。この関数は h c = 4.97 λk T の位置にピークをもつ。これはヴィーンの変位則でより一般的に用いられるピークである。

また、分光エネルギー密度についても、波長がλとλ+ dλの間にあるエネルギー密度を u' (λ, T ) dλとし、波長λの関数として表示すれば、

u'(\lambda,T) = {4 \pi \over c} I'(\lambda,T) =  {8\pi h c\over \lambda^5}{1\over e^{\frac{h c}{\lambda kT}}-1}

と表すこともできる。ここで分光エネルギー密度 u' は単位体積、単位波長あたりのエネルギーである。

周波数範囲 [ν1, ν2] または波長範囲 [λ2, λ1] = [c2, c1] において放射される放射輝度は、I (ν,T ) または I' (λ,T ) の積分として求められる。

\int_{\nu_1}^{\nu_2}I(\nu,T)\,\mathrm{d}\nu = \int_{\lambda_2}^{\lambda_1}I'(\lambda,T)\,\mathrm{d}\lambda

なお、周波数が増加するとき波長は減少するため、2つの積分では上限・下限が入れ替わっている。

次の表に、数式の中に現れるそれぞれの記号の定義とSI単位cgs単位を示す。

記号 意味 SI単位系 cgs単位系
I, I' \, 分光放射輝度 または エネルギー(単位時間表面積立体角、周波数(波長)あたり) J⋅s-1⋅m-2⋅sr-1⋅Hz-1, または J⋅s-1⋅m-2⋅sr-1⋅m-1 erg⋅s-1⋅cm-2⋅Hz-1⋅sr-1, または erg⋅s-1⋅cm-2⋅sr-1⋅cm-1
\nu \, 周波数 ヘルツ (Hz) ヘルツ
\lambda \, 波長 メートル (m) センチメートル (cm)
T \, 黒体の温度 ケルビン (K) ケルビン
h \, プランク定数 ジュール⋅秒 (J⋅s) エルグ⋅秒 (erg⋅s)
c \, 光速 メートル毎秒 (m/s) センチメートル毎秒 (cm/s)
e \, 自然対数の底, 2.718281... 無次元量 無次元量
k \, ボルツマン定数 ジュール毎ケルビン (J/K) エルグ毎ケルビン (erg/K)

歴史的背景[編集]

1859年、キルヒホッフは黒体の放射する輻射場の熱平衡分布は温度のみに依存することを明らかにし、その翌年、空洞放射が理想的な黒体輻射を実現することを示した。それ以降、ある温度 T における黒体輻射のエネルギー密度の分布を振動数ν(もしくは波長λ= c /ν)の関数として求めることが、実験と理論の両面から活発に進められた。プランクの公式以前、黒体輻射の分布式としては、レイリー・ジーンズの公式ヴィーンの公式が考案されていた。ヴィーンの公式はヴィルヘルム・ヴィーンが1896年に発表した公式であり、短波長(高周波数)領域においては実験データと一致するものの、長波長(低周波数)では一致しなかった。一方、レイリー・ジーンズの公式(1900年に不完全な形でレイリーが発表)は反対に長波長(低周波数)領域で実験結果とよい一致を示すもののの、短波長(高周波数)領域では合わなかった。

マックス・プランクは1900年10月(論文発行は1901年[6])に、ヴィーンの公式より良い公式を得ようとする過程でプランクの公式を考案した。プランクによるこの公式は、全ての波長領域において非常によく実験データと一致した。次に、この法則の導出方法を構築する過程で、プランクは物質中の荷電振動子の異なるモードについて、電磁エネルギー分布を考えた。これらの振動子のエネルギーが離散的になっていると仮定したところ、プランクの法則を導出することができた。具体的には、エネルギーは振動数νに比例するエネルギー素量(エネルギー量子E、即ち

E = h\nu

の整数倍の値のみ取りうるということである。

プランクはこの量子化の仮定を、アルベルト・アインシュタイン光電効果の説明のために光子の存在を仮定するよりも5年に行っていた。この時点では、プランクは量子化は空洞壁面にあるであろう微小の共鳴子resonator、現在でいう原子)にのみ適用されるものであり、光それ自身が離散的なエネルギーの束や塊を伝播する性質を有しているとは仮定しなかった。更には、プランクはこの仮定にはなんら物理的重要性はなく、公式を導くための単なる数学的な道具に過ぎないと考えていた。しかしながら、エネルギーの量子化は物理学史上、初めて導入された量子論的概念であり、その後の量子力学の形成に大きな役割を果たした。プランクによるエネルギーの量子化仮説とアインシュタインの光量子仮説は、ともに量子力学の発展における基礎となっている。

なお、プランクの公式では黒体は全ての周波数の電磁波を放出するとしているが、これは非常に多数の光子が測定される実験でのみ実際に適用できる。例えば室温 (300 K) における表面積が1平方メートルの黒体は、1000年に一度程度しか可視領域の光子を放出せず、よって通常の実験などにおいては黒体は室温では可視光線を放出されないといっても差し支えない。実験データからプランクの法則を導出する際などのこの事実の重要性については[7]で議論されている。

他の輻射法則との関係[編集]

以下にあげるように、プランクの法則から他の黒体輻射の近似的公式を導くことができる。

h\nu \gg kTを満たす高周波数(短波長)においては

\begin{align}
I(\nu, T) \sim \frac{2h\nu^3}{c^2} e^{-\frac{h\nu}{kT}}, \\
I'(\lambda, T) \sim \frac{2hc^2} {\lambda^5} e^{-\frac{hc}{\lambda kT}}
\end{align}

となり、ヴィーンの放射法則に漸近する。

また、h\nu \ll kTを満たす低周波数(長波長)においては

\begin{align}
I(\nu, T) \sim \frac{2\nu^2}{c^2}kT, \\
I'(\lambda, T) \sim \frac{2c}{\lambda^4}kT
\end{align}

となり、レイリー・ジーンズの法則に漸近する。

また、プランクの法則の周波数(波長)についての積分

\begin{align}
j^\star(T) &= \int^\infty_0 I(\nu,T)\mathrm{d}\nu \int \mathrm{d}\Omega = \pi  \int^\infty_0 I(\nu,T)\mathrm{d}\nu \\
&= \sigma T^4, \quad \sigma = \frac{2\pi^5 k^4}{15 c^2 h^3}
\end{align}

より、単位面積、単位時間当たりに放出される輻射場のエネルギーが T4 に比例するというシュテファン=ボルツマンの法則が得られる。

さらに、\partial I'(\lambda, T) / \partial \lambda = 0 よりプランクの法則の分光放射輝度 I' (λ,T ) が最大となる波長λを求めることにより、ヴィーンの変位則が得られる。

導出[編集]

以下のプランクの法則の導出は[3]などでみられる。より一般的な導出は箱の中の気体英語版を参照。

伝導壁をもち電磁波で満たされた一辺の長さ L の立方体を考える。立方体の壁では、電場の平行成分と磁場の直交成分はあってはならない。箱の中の粒子の波動関数との類似により、場は周期的な関数の重ね合わせとして表される。壁に直行する3つの方向についての3つの波長λ1, λ2, λ3

\lambda_{i} = \frac{2L}{n_{i}}

となる。ここで ni は整数である。ni のそれぞれの組について、2つの線型独立な解(モード)がある。量子論にしたがい、一つのモードのエネルギー準位は

E_{n_{1},n_{2},n_{3}}\left(r\right)=\left(r+\frac{1}{2}\right)\frac{hc}{2L}\sqrt{n_{1}^{2}+n_{2}^{2}+n_{3}^{2}} \qquad \mbox{(1)}

によって与えられる。

量子数 r はモードの中の光子数に対応している。ni のそれぞれの組の2つのモードはスピン1をもつ光子の2つの偏光状態に対応している。ここで注意すべきは、r = 0 においてもモードのエネルギーは零ではないことである。この電磁場の真空エネルギーはカシミール効果によるものである。これ以降、温度 T の箱の内部エネルギーを真空エネルギーとの相対値で計算してゆく。

統計力学に従い、特定のモードのエネルギー準位についての確率分布は

P_{r}=\frac{\exp\left(-\beta E\left(r\right)\right)}{Z\left(\beta\right)}

で与えられる。ここでβは

\beta\ \stackrel{\mathrm{def}}{=}\   1/\left(kT\right)

で定義される逆温度である。

分母 Z (β) は単モードの分配関数であり、Pr を正しく規格化する。

Z\left(\beta\right)=\sum_{r=0}^{\infty}\exp\left[-\beta E\left(r\right)\right]=\frac{1}{1-\exp\left[-\beta\varepsilon\right]}

ここで

\varepsilon\ \stackrel{\mathrm{def}}{=}\  \frac{hc}{2L}\sqrt{n_{1}^{2}+n_{2}^{2}+n_{3}^{2}}

は単一光子のエネルギーである。あるモードにおける平均エネルギーは分配関数によって

\left\langle E\right\rangle = -\frac{\mathrm{d}(\log Z)}{\mathrm{d}\beta} = \frac{\varepsilon}{\exp\left(\beta\varepsilon\right)-1}

のように表される。

これはボース=アインシュタイン統計に従う粒子の場合の公式である。全光子数に制限がないため、化学ポテンシャルμは零である。

箱の中の全エネルギーはあり得る全単一光子状態についての総和 \left\langle E\right\rangle に従う。これは L が無限大となる熱力学的極限において厳密に成り立つ。この極限ではεは連続となり、よって \left\langle E\right\rangle をεについて積分することができる。この方法により箱の中の全エネルギーを計算するには、与えられたエネルギー範囲にどの程度の光子状態があるのかを評価する必要がある。今エネルギーεとε+ dεの間にある単一光子状態の総数を g (ε) dεと表すとする。ここで g (ε) は評価しようとする状態密度である。この場合には

U = \int_{0}^{\infty}\frac{\varepsilon}{\exp\left(\beta\varepsilon\right)-1}g(\varepsilon)\,\mathrm{d}\varepsilon \qquad \mbox{(2)}

と書くことができる。

状態密度を計算するためには、等式(1)を

\varepsilon\ \stackrel{\mathrm{def}}{=}\  \frac{hc}{2L}n

と書き換える。ここで n はベクトルのノルム(長さ)

n=\sqrt{n_{1}^{2}+n_{2}^{2}+n_{3}^{2}}

である。

零以上の整数成分のベクトル \vec{n} について、それぞれ2つの光子状態がある。言い換えると、ある n -空間領域での光子状態の数は、その領域の体積の2倍である。dεのエネルギー範囲は n -空間では dn = (2L /h c ) dεの厚さの殻に対応する。\vec{n} の要素は符号が正でなくてはならないため、この殻は丁度球の八分の一領域にわたる。よってエネルギー範囲 dεにある光子状態の数 g (ε) dεは

g(\varepsilon)\,\mathrm{d}\varepsilon = 2\frac{1}{8}4\pi n^{2}\,\mathrm{d}n = \frac{8\pi L^{3}}{h^{3}c^{3}}\varepsilon^{2}\,\mathrm{d}\varepsilon

で与えられる。

この式を方程式 (2) に代入して

U =L^{3}\frac{8\pi}{h^{3}c^{3}}\int_{0}^{\infty}\frac{\varepsilon^{3}}{\exp\left(\beta\varepsilon\right)-1}\,\mathrm{d}\varepsilon \qquad \mbox{(3)}

を得る。

この方程式から、周波数の関数 u (ν, T ) または波長の関数 u (λ, T ) として分光エネルギー密度を容易に導出することができる。

\frac{U}{L^3} = \int_0^{\infty}u(\nu,T)\, d\nu

ここで

u(\nu,T) = {8\pi h\nu^3\over c^3}{1\over e^{h\nu/kT}-1}

である。この u (ν, T ) は黒体スペクトルとして知られる。これが単位周波数、単位体積あたりの分光エネルギー密度の関数である。

更に

\frac{U}{L^3} = \int_0^\infty u'(\lambda,T)\, \mathrm{d}\lambda

も導くことができる。ここで

u'(\lambda,T) = {8\pi h c\over \lambda^5}{1\over e^{h c/\lambda kT}-1}

である。

これは同様に、単位波長、単位体積あたりの分光エネルギー密度の関数である。ボース気体とフェルミ気体の計算に現れるこの形の積分は多重対数関数によって表される。しかし今回の場合には閉形式の積分を初等関数を用いて表すことができる。方程式 (3) において

\varepsilon = kTx

と置換すると、積分変数を無次元量の割り算にすることができ

u(T) =\frac{8\pi (kT)^{4}}{(hc)^{3}} J

である。ここで J

J=\int_{0}^{\infty}\frac{x^{3}}{\exp\left(x\right)-1}\,dx = \frac{\pi^{4}}{15}

によって与えられる。この計算の証明は#附則において後述する。

よって箱の中の全電磁エネルギーは

{U\over V} = \frac{8\pi^5(kT)^4}{15 (hc)^3}

によって与えられる。ここで V = L3 は箱の体積である。(註: これはシュテファン=ボルツマンの法則ではない。即ち、黒体によって放射される全エネルギーではない)放射は全方向 4πに等しく起き、またその伝播速度は光速 c であるため、分光放射輝度は

I(\nu,T) = \frac{u(\nu,T)\,c}{4\pi}

である。よって

I(\nu,T) = \frac{2 h\nu^3 }{c^2}~\frac{1}{e^{h\nu/kT}-1}

を得る。

この式を波長についての I' (λ, T ) の形式へと変換するためには、νを c /λで置き換え、

I'(\lambda,T) = I(\nu,T)\left|\frac{d\nu}{d\lambda}\right|

の式を計算する。

百分率[編集]

プランクの法則のグラフの形状は温度に依存しない。よって波長に温度をかけた値を基準として、全放射輝度の百分位点を示すことができる。以下の表では、1行目は放射輝度の百分位点、2行目には対応する波長に温度をかけた値 x = λT [μm⋅K] を示した。例えば、20% の 2676 というのは、0 - 2676 [μm⋅K] が全放射輝度の 20% を占めるということを意味している。

百分位点 10% 20% 25.0% 30% 40% 41.8% 50% 60% 64.6% 70% 80% 90%
x = λ T [μm⋅K] 2195 2676 2898 3119 3582 3670 4107 4745 5099 5590 6864 9376

波長と周波数のピークはそれぞれ 25.0 % と 64.6 % にあり、表中に太字で示した。41.8 % の点は波長と周波数の中間ピークである。これらはそれぞれ、プランクの式のうち 1/λ5, ν3, (ν/λ)2 が最大となる点である。

どのピークを用いるかは応用する場合による。便利な選択は、ヴィーンの変位則による25.0%の波長ピークである。いくつかの目的には、全放射輝度を1/2に分ける中央値(50 % の点)がより適している。放射輝度は短波長では指数的に、長波長では多項式的に減少するため、後者は波長ピークよりも周波数ピークにより近い。同じ理由により、中間ピークは中央値よりも短い波長に位置する。

太陽はT = 5778 K の黒体放射体とする近似が非常によく成り立ち、10 % - 90 % の百分位点を以下のように表にすることができる。2行目はナノメートル単位の波長である。

百分位点 10% 20% 25.0% 30% 40% 41.8% 50% 60% 64.6% 70% 80% 90%
波長 [nm] 380 463 502 540 620 635 711 821 882 967 1188 1623

これは大気の上部に到達する放射輝度である。400 nm 以下(紫外線)の放射輝度はおよそ 12 % であり、一方 700 nm 以上(赤外線)は全体の 51 % である。大気はこの分布を大きく変化させる。具体的には大部分の紫外線とかなりの赤外線を吸収し、可視光線の比率を上昇させる。

歴史に関する補遺[編集]

一部の物理学の教科書を含む、量子理論の説明の多くは、プランクの法則の説明において重大な間違いを犯している。この間違いは1960年代よりも前に物理学史の研究者によって指摘されたものの、現状が示しているようにこの間違いを根絶するのは難しい。Helge Kraghの論文により、実際には何が起きたのかについてのはっきりした説明が与えられた[8]

広く知られている通説に反し、プランクは光を量子化しなかった。この根拠としては、プランクの1901年のオリジナルの論文[6]と、その中に参考文献としてあげられている彼の1901年以前の論文があげられる。また、著書 "Theory of Heat Radiation" においてプランク定数はヘルツ振動子 (Hertzian oscillator) を示していると説明している。量子化の概念は別の第三者によって、現在では量子力学として知られるものの中に開発された。この流れの中で次に重要な段階を踏んだのはアルベルト・アインシュタインであった。アインシュタインは光電効果を研究し、光は塊や光子として放出されるだけでなく、吸収もされるという模型と方程式を提出した。そして1924年、サティエンドラ・ボースがプランクの法則を理論的に導出することができる光子の統計力学を考え出した。

また別の通説に反し、プランクは紫外発散の問題を解決しようとしてこの法則を導いたわけではなかった。紫外発散とはポール・エーレンフェストによって与えられた用語であり、黒体放射に古典統計力学のエネルギー等配分の法則を適用すると、空洞の全エネルギーが無限大になってしまうという矛盾である。プランクは等配分則が普遍的に成り立っているとは考えておらず、よって「発散」の問題にも気づいていなかった。紫外発散は5年ほど後の1905年にアインシュタイン、レイリー卿ジェームズ・ジーンズによって独立に発見された。

附則[編集]

シュテファン=ボルツマンの法則をはじめとした、いわゆる前期量子論の中でマックス・プランクは1900年にプランクの法則を発表し、その中でリーマンゼータ函数の 4 での特殊値がπ2/90 へ収束するというオイラー以来のゼータ函数に関する結果が有効に使われている。古典電磁気学マックスウェルの方程式が単位当たりのエネルギーの導出に失敗することに対し、実験結果に一致するプランクの法則の正当性を支えているのは、このゼータ函数の性質であり、ひいてはアインシュタインの光量子論を経て、量子力学へ繋がっている.なお、プランクの法則ではゼータの特殊値は 4 での値であり、明らかに収束するが、カシミール効果の導出にもゼータの -3 での特殊値が使われており、これは解析接続した先でのゼータ函数の特殊値となっている.

積分

J=\int_{0}^{\infty}\frac{x^3}{e^x-1}\,\mathrm{d}x

を計算する簡単な方法は、まず一般化した場合について計算し、最後に比較して答えを出すことである。積分

\int_{0}^{\infty}\frac{x^n}{e^x-1}\,\mathrm{d}x = \int_{0}^{\infty}\frac{x^n e^{-x}}{1 - e^{-x}}\,\mathrm{d}x

を考える。右辺の分母は常に1よりも小さいため、等比数列の総和の公式を用いて収束する数列へと式変形する。

 \frac{1}{1-e^{-x}} = \sum_{k=0}^{\infty} e^{-kx}

つまり、左辺の分数は無限等比級数の総和 1 + e^{-x} + e^{-2x} + e^{-3x} + \cdots に等しい。初項は 1、公比は e-x である。よって

\int_{0}^{\infty}x^{n} e^{-x} \sum_{k=0}^{\infty} e^{-kx}\,\mathrm{d}x

とすることができる。

総和の左側の e-x を総和の中に入れることを考える。すると 1 + e^{-x} + e^{-2x} + \cdotse^{-x} + e^{-2x} + e^{-3x} + \cdots へと変化するため、e-x を取り除く代わりに総和の下限を 0 から 1 にずらし

\int_{0}^{\infty}x^{n}  \sum_{k=1}^{\infty} e^{-kx}\,\mathrm{d}x

となる。

変数を u = k x と変えると、xn と dx はそれぞれ x^n = u^n/k^n\mathrm{d}x = \mathrm{d}u/k となる。よって

\int_{0}^{\infty}\frac{u^n}{k^n} \sum_{k=1}^{\infty} e^{-u}\frac{\mathrm{d}u}{k}

または

\int_{0}^{\infty}u^n \sum_{k=1}^{\infty}\frac{1}{k^{n + 1}} e^{-u}\mathrm{d}u

となる。

総和のそれぞれの項は収束する積分であるため、総和を積分の外へ出すことができ

\sum_{k=1}^{\infty} \frac{1}{k^{n+1}} \int_{0}^{\infty}u^{n} e^{-u}\,\mathrm{d}u

と式変形することができる。

左の総和はゼータ関数 ζ(n +1) であり、右の積分はガンマ関数 Γ(n +1) である。以上より一般的な結果

\int_{0}^{\infty}\frac{x^{n}}{e^x-1}\,\mathrm{d}x = \zeta(n+1) \Gamma{\left(n+1\right)}

または

\int_{0}^{\infty}\frac{x^{n-1}}{e^x - 1}\,\mathrm{d}x = \zeta{\left(n\right)} \Gamma{\left(n\right)}

を得ることができた。

もともと考えていた問題は x3 の場合であったが、この場合の答えは

J=\zeta{\left(4\right)} \Gamma{\left(4\right)} = \frac{\pi^{4}}{90} \times 6 = \frac{\pi^4}{15}

である。以上より、問題の積分を計算することができた。

ここで

\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{4}} = \frac{\pi^4}{90}

という等式を用いた。この式はゼータ関数の特殊値である。この値はウォリス積 (Wallis product#Finding Zeta(4)) や閉路積分留数定理を用いたり、他にも f(x)=x^2(-\pi<x<\pi)のフーリエ級数の係数をパーシバルの等式に代入することで導くことができる。また、ガンマ関数の計算は公式 Γ(n +1) = n ! により求めることができる。

今回扱った積分の異なる計算例は、シュテファン=ボルツマンの法則でのゼータ函数の使用例を参照。また関連した積分として、ボース=アインシュタイン統計における積分計算で現れる多重対数関数も参照。

脚注[編集]

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  1. ^ (Rybicki & Lightman 1979, p. 22)
  2. ^ Kittel, Thermal Physics p.98
  3. ^ a b Brehm, J.J. and Mullin, W.J., "Introduction to the Structure of Matter: A Course in Modern Physics," (Wiley, New York, 1989) ISBN 047160531X.
  4. ^ (Rybicki & Lightman 1979, p. 22)
  5. ^ (Rybicki & Lightman 1979, p. 1)
  6. ^ a b Planck, Max, "On the Law of Distribution of Energy in the Normal Spectrum". Annalen der Physik, vol. 4, p. 553 ff (1901)
  7. ^ Ribaric, M. and Sustersic, L., arxiv:0810.0905.
  8. ^ Kragh, Helge Max Planck: The reluctant revolutionary Physics World, December 2000.

参考文献[編集]

  • Rybicki, G. B.; Lightman, A. P. (1979), Radiative Processes in Astrophysics, New York: John Wiley & Sons, ISBN 0-471-82759-2 
  • Thornton, Stephen T., Andrew Rex (2002). Modern Physics. USA: Thomson Learning. ISBN 0-03-006049-4. 

より詳しくは、

  • Peter C. Milonni (1994). The Quantum Vacuum. Academic Press. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]