「三匹の子ぶた (1933年の映画)」の版間の差分

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|作品名=三匹の子ぶた
| 作品名 = 三匹の子ぶた
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| 原題 = Three Little Pigs
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|脚本=ボリス・モルコビン
|製作=[[ウォルト・ディズニー]]
| 製作会社 = [[ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ|ウォルト・ディズニー・プロダクション]]
| 配給 = [[ユナイテッド・アーティスツ]]
|製作総指揮=
| 公開 = {{flagicon|USA}} 1933年5月25日
|出演者=[[ビリー・ブレッチャー]]
| 上映時間 = 8分
|音楽=[[フランク・チャーチル]]
| 製作国 = {{USA}}
|主題歌=
| 言語 = 英語
|撮影=
| 興行収入 = $250,000
|編集=
| 製作費 = $22,000
|配給=[[ユナイテッド・アーティスツ]]
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|公開={{Flagicon|USA}} [[1933年]][[5月27日]]
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}}『'''三匹の子ぶた'''』(さんびきのこぶた、原題: ''Three Little Pigs'')は、1933年の[[シリー・シンフォニー]]の[[短編映画|短編アニメ作品]]。[[三匹の子豚|同名の寓話]]を基に、[[ウォルト・ディズニー]]が製作、[[バート・ジレット]]が監督を務めた<ref name=":11">{{Cite book |edition=Revised & updated edition |title=Walt Disney's Silly Symphonies: a companion to the classic cartoon series |publisher=Disney Editions |date=2016 |location=Glendale, California |isbn=978-1-4847-5132-9 |first=Russell |last=Merritt |first2=J. B. |last2=Kaufman}}</ref>。製作費22,000ドル、興行収入250,000ドル<ref>{{Cite book |title=United Artists, Volume 1, 1919–1950: The Company Built by the Stars |url=https://books.google.com/books?id=QljKdIYzncoC&q=Warner+Bros.+Catalog&pg=PA116 |publisher=Univ of Wisconsin Press |date=2009-04-08 |isbn=978-0-299-23003-6 |language=en |first=Tino |last=Balio}}</ref>。シリー・シンフォニーの短編映画がスクリーンで上映されたのは1963年再公開の「[[プカドン交響楽]]」以来5年ぶりのことである。
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|言語=[[英語]]
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}}
『'''三匹の子ぶた'''』(さんびきのこぶた、原題:''Three Little Pigs'')は、[[1933年]][[5月27日]]に[[ユナイテッド・アーティスツ]]から配給された、[[ウォルト・ディズニー]]製作、[[バート・ジレット]]監督の[[アニメーション]][[短編映画]]作品である。またシリー・シンフォニーの短編映画がスクリーンで上映されたのは1963年再公開の「[[プカドン交響楽]]」以来5年ぶりのことである。


[[三匹の子豚|同題の伝統的なお伽話]]を[[原作]]としたこの短編映画は、[[シリー・シンフォニー]][[シリーズ (作品)|シリーズ]]第36作であり、1934年の[[アカデミー賞]][[アカデミー短編アニメ賞|短編アニメーション部門]]を受賞した。1994年にジェリ・ベックによる[[The 50 Greatest Cartoons]]で行われた投票では、本作はアニメーション史における11番目の重要な作品として格付けされた。2007年には[[アメリカ議会図書館]]による合衆国国立フィルム登録簿に、「文化的、歴史的、美術的に重要な作品」として収録された。
[[シリー・シンフォニー]][[シリーズ (作品)|シリーズ]]第36作であり、1934年の[[アカデミー賞]][[アカデミー短編アニメ賞|短編アニメ]]を受賞。1994年にアニメション関係者による[[The 50 Greatest Cartoons|史上最も偉大な50の漫画(The 50 Greatest Cartoons)]]で行われた投票では、本作はアニメーション史における11番目の重要な作品として格付けされた<ref>{{Cite book |edition=1st ed |title=The 50 greatest cartoons: as selected by 1,000 animation professionals |publisher=Turner Pub |date=1994 |location=Atlanta |isbn=978-1-878685-49-0 |editor-first=Jerry |editor-last=Beck}}</ref>。2007年には、「文化的、歴史的、美術的に重要な作品」として、[[アメリカ議会図書館]]による[[アメリカ国立フィルム登録簿]]に収録された。


1933年5月25日、ニューヨークの[[ラジオシティ・ミュージックホール]]で、ラジオシティが{{仮リンク|ファースト・ナショナル|en|First National Pictures}}映画『{{仮リンク|エルマー・ザ・グレート|en|Elmer, the Great}}』を公開する際の短編として公開された。
== 作品内容 ==
この短編では三匹の子ぶたに以下の名前が与えられている。[[フルート]]を吹きながらわらの家を建てる子ぶたはファイファー・ピッグ、[[ヴァイオリン]]を奏でながら木の枝の家を建てる子ぶたはフィドラー・ピッグ、[[レンガ]]の家を建てて安全を手に入れた後で初めて[[ピアノ]]を弾く子ぶたはプラクティカル・ピッグである。末の弟プラクティカルは兄たちをかくまい、[[:en:Big Bad Wolf#Disney version|ビッグ・バッド・ウルフ]]を追い払った後に兄弟にいたずらを仕掛け、ウルフや二人の兄よりも優秀であることを示してみせる。


=== 声の出演 ===
== ストーリー ==
フィファー・ピッグ、フィドラー・ピッグ、プラクティカル・ピッグは、自分たちの家を建てる[[ブタ]]の3兄弟。3人とも違う種類の[[楽器]]を演奏し、フィーファーは[[フルート]]、フィドラーは[[ヴァイオリン]]、プラクティカルは休みなく家を建てている。フィファーとフィドラーは[[藁]]と[[木]]の家をいとも簡単に建て、一日中楽器を演奏して楽しんでいる。一方、プラクティカルは「歌ったり踊ったりする時間がない。仕事と遊びは一緒にならないから」と、[[煉瓦|レンガ]]造りの丈夫な家を建てることに専念する。フィファーとフィドラーは彼をからかうが、プラクティカルは[[悪いオオカミ#三匹の子豚|ビッグ・バッド・ウルフ]]が来たら逃げられないと警告する。フィファーとフィドラーは彼を無視して遊び続け、「[[狼なんか怖くない (1933年の曲)|狼なんか怖くない]]」を歌う。
{| class="wikitable" style="text-align: center;"
|-
! キャラクター
! 原語版声優
! 日本語吹き替え
|-
| ファイファー・ピッグ || [[:en:Dorothy Compton|ドロシー・コンプトン]] || 中谷佐知子
|-
| フィドラー・ピッグ || [[:en:Mary Moder|メアリー・モーダー]] || 井上美哉子
|-
| プラクティカル・ピッグ || [[ピント・コルヴィッグ]] || 伊藤友美
|-
| ビッグ・バッド・ウルフ || [[:en:Billy Bletcher|ビリー・ブレッチャー]] || [[内田稔]]
|}


彼らが歌っていると、ビッグ・バッド・ウルフが本当にやってきて、2匹はそれぞれの家に逃げる。ウルフはまずフィファーの家を(屋根を除いて)吹き飛ばし、フィファーはなんとか逃げ出してフィドラーの家に隠れる。ウルフはあきらめて帰るふりをするが、羊に変装して戻ってくる。ブタたちはその変装を見破り、ウルフはフィドラーの家を(ドアを除いて)吹き飛ばす。2匹は何とか逃げ出し、兄弟を快く避難させてくれたプラクティカルの家に隠れる。プラクティカルの家で、彼の楽器が[[ピアノ]]であることが明らかになる。ウルフはフラーブラシの訪問販売員に変装してブタたちを騙し、家に入ろうとするが失敗する。その後、ウルフは頑丈なレンガ造りの家を吹き飛ばそうとするが(その過程で服を失う)、自信に満ちたプラクティカルがメロドラマチックなピアノ曲を演奏する中、それも失敗する。ついに煙突から家の中に入ろうとするが、頭のいいプラクティカルが煙突の下にある水([[テレビン油]]を加えていた)を入れた煮えたぎる鍋の蓋を外し、ウルフはその中に落ちてしまう。悲鳴を上げながらウルフは必死に逃げ回り、その間にブタたちはまた「狼なんか怖くない」を歌う。プラクティカルは、ピアノをノックするいたずらをして、ウルフが戻ってきたと兄弟たちに思わせ、プラクティカルのベッドの下に隠れる。
== 評価と反響 ==
この映画は当時の観客の間で目ざましい成功を呼び起こし、公開後何か月にもわたり上映され続けた。多くの映画館ではこの作品がどれだけロングランを続けているかの指標として、映画のポスターにあごひげを書き加えた。


== キャスト ==
アニメーション史研究家の間では、『三匹の子ぶた』は、単純な「善玉」と「悪玉」ではない個性を備えた複数のキャラクターを描き分けた、最初のアニメーション作品であると考えられている。わらの家と木の枝の家を建てた子ぶたは軽はずみで無用心であり、レンガの家を建てた子ぶたは用心深く生真面目である。
括弧内は、日本語吹替版キャスト。


* ファイファー・ピッグ: {{仮リンク|ドロシー・コンプトン|en|Dorothy Compton}}(中谷佐知子)
ビッグ・バッド・ウルフが戯画化された[[ユダヤ人]]の[[行商|行商人]]に扮装する場面は、後に配給されたフィルムでは削除され、ウルフが[[フューラー・ブラッシュ]]社(アメリカの有名なブラシ販売会社)の訪問販売員を装うという、比較的差し障りのない場面が代わりに挿入された。
* フィドラー・ピッグ: {{仮リンク|メアリー・モダー|en|Mary Moder}}(井上美哉子)
* プラクティカル・ピッグ: [[ピント・コルヴィッグ]](伊藤友美)
* [[悪いオオカミ#三匹の子豚|ビッグ・バッド・ウルフ]]: {{仮リンク|ビリー・ブレッチャー|en|Billy Bletcher}}([[内田稔]])


== 封切り ==
この作品のために[[フランク・チャーチル]]により作曲されたオリジナル曲『狼なんかこわくない』(原題:Who's Afraid of the Big Bad Wolf?)は、ベストセラー・シングルとなった。人々は[[世界恐慌]]を「大きな悪い狼」になぞらえて笑い飛ばすためにこの曲を歌い、恐慌に立ち向かうための応援歌として愛唱した<ref>カルステン・ラクヴァ『ミッキー・マウス ディズニーとドイツ』p. 68</ref>。[[第二次世界大戦]]に先立つ数年間に[[ナチス・ドイツ]]が[[ドイツ]]の領土を拡張し始めると、この歌は戦争を行うことなく[[アドルフ・ヒトラー|ヒトラー]]に領土拡張を許した欧米諸国の無関心さを非難するのに使われるようになった。
本作は1933年5月25日、ニューヨークの[[ラジオシティ・ミュージックホール]]で初公開された<ref>{{Cite book |title=Pre-Code Hollywood: Sex, Immorality, and Insurrection in American Cinema, 1930–1934 |url=https://books.google.com/books?id=tyZx10XsSbIC |publisher=Columbia University Press |date=1999-08-27 |isbn=978-0-231-50012-8 |language=en |first=Thomas |last=Doherty}}</ref>。


== 挿入歌 ==
=== ホームメディア ===
[[アメリカ合衆国|アメリカ]]では、本作は1984年に「カートゥーン・クラシック」ホームビデオ・シリーズの一部として[[VHS]]、[[ベータマックス]]、[[レーザーディスク]]で初めてリリースされた。アメリカでは1995年に「フェイバリット・ストーリーズ」コレクションの一部として、イギリスでは1996年春に「ディズニー・ストーリーブック・フェイバリット」シリーズの一部として再びVHSでリリースされた。2001年12月4日には、続編とともに『{{仮リンク|ウォルト・ディズニー・トレジャーズ: シリ―・シンフォニー|en|Walt_Disney_Treasures:_Wave_One#Silly_Symphonies}}』の一部としてリリースされ、PAL版ではユダヤ人行商人のアニメーションが再編集された台詞とともに再び残されている<ref name=":112">{{Cite book |edition=Revised & updated edition |title=Walt Disney's Silly Symphonies: a companion to the classic cartoon series |publisher=Disney Editions |date=2016 |location=Glendale, California |isbn=978-1-4847-5132-9 |first=Russell |last=Merritt |first2=J. B. |last2=Kaufman}}</ref><ref>{{Cite web |title=Walt Disney Treasures: Silly Symphonies DVD Review - Page 1 of 2 |url=https://dvdizzy.com/sillysymphonies.html |website=dvdizzy.com |access-date=2024-01-15}}</ref>。しかし、[[Disney+]]のリリースでは、すべての地域で変更されたアニメーションを使用している。
* 『[[狼なんかこわくない]]』
** 作詞作曲:フランク・チャーチル
*続編でも利用されている。


その後、2005年8月16日に発売された『ウォルト・ディズニー・タイムレス・テールズ Vol.1』に収録され(アメリカの『[[シリー・シンフォニー]]』セットには編集版が収録)、『{{仮リンク|ハーメルンの笛吹き|en|The Pied Piper (1933 film)}}』(1933年)、『[[アリとキリギリス (映画)|アリとキリギリス]]』(1934年)、『[[うさぎとかめ (1935年の映画)|うさぎとかめ]]』(1935年)、『{{仮リンク|ミッキーの王子と少年|en|The Prince and the Pauper (1990 film)}}』(1990年)も収録された。
== 続編 ==
ディズニーは数編の『三匹の子ぶた』の続編を制作したが、いずれも最初の作品ほどには成功しなかった。最初の続編は前作と同じくバート・ジレットに監督され、[[1934年]][[4月14日]]に公開された『赤ずきんちゃん』(原題:The Big Bad Wolf)である。この作品では前作の四匹に加えて、狼が[[悪役]]として登場する別の民話から採用された[[赤ずきん]]と、そのおばあさんの二人が新キャラクターとして追加された。


1933年のオリジナル・アニメが英語とその他の外国語のオリジナル・サウンドトラック付きで最初にリリースされたその他の国々では、1933年のオリジナル・サウンドトラック付きのノーカット映像が、英語とその他の外国語のオリジナル・サウンドトラック付きで、現在もディズニー社から家庭用リリース・ビデオとしてリリースされている。
物語の筋書きは非常に単純だった。プラクティカル・ピッグは三匹のぶたが共同で住むための住居の増築に取りくんでいた。そこに通りかかった赤ずきんに、フィドラー・ピッグとファイファー・ピッグはおばあさんの家まで送っていこうと申し出る。プラクティカルからの忠告に逆らって、三人は近道として[[森林|森]]を通り抜けようとする。三人は[[女装]]したウルフに出くわし、辛くも難を逃れる。ウルフは赤ずきんに先んじておばあさんの家に駆けつける。ウルフはおばあさんを[[タンス|衣装ダンス]]に閉じ込めると、孫娘の到着を待つ。やがて赤ずきんがやって来るが、おばあさんの手助けにより衣装ダンスの中に逃げ込む。その後、フィドラーとファイファーは弟に助けを求める。駆けつけたプラクティカルが焼けた[[石炭]]と[[ポップコーン]]をウルフのズボンに入れ、ウルフを追い払う。この短編はいくつもの[[ギャグ]]が含まれていたが、前作の商業的成功を繰り返すには至らなかった。この作品は現代の視聴者から見てもそれなりに楽しめるものの、前作よりは大きく劣っている。


日本では、1988年10月7日に[[バンダイ]]よりリリースされた『[[夢と魔法の宝石箱|夢と魔法の宝石箱 ディズニーのなかまたち]]』、2012年9月5日に[[ウォルト・ディズニー・スタジオ・ホーム・エンターテイメント|ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント]]よりリリースされた『シリー・シンフォニー 限定保存版』に本編が収録された。
この続編のそれなりの、しかし、前作には遠く及ばない成功が、ディズニーをしてそれまでに得た栄誉に甘んじさせず、[[マルチプレーン・カメラ]]の開発や史上初の長編アニメーション映画『[[白雪姫 (1937年の映画)|白雪姫]]』の制作のような、リスクの大きい計画に邁進させ続けた要因となったと考えられている。ディズニーの名言は、長年にわたってしばしば繰り返されてきた。「ブタで、ブタを越えることはできないよ(you can't top pigs with pigs)」。


== 作品の評価 ==
またビッグ・バッド・ウルフは他のディズニー作品にも登場しており、「マジカルテトリスチャレンジ featuring ミッキー」ではピートの手下として登場した。
本作は当時の観客の間で驚異的な成功を収め、公開後何ヵ月にもわたり上映され続け、大きな経済的反響を得た<ref>{{Cite web |title=Chronology of the Walt Disney Company (1934) |url=http://www.islandnet.com/~kpolsson/disnehis/disn1934.htm |website=www.islandnet.com |access-date=2024-01-15}}</ref>。今でも史上最も成功した短編アニメとされており<ref>{{Cite web |title=Huffing and Puffing about Three Little Pigs – Senses of Cinema |url=http://www.sensesofcinema.com/2003/cteq/3_little_pigs/ |date=2013-07-05 |access-date=2024-01-15 |language=en-US |first=Adrian |last=Danks}}</ref>、ディズニーが1934年末までにミッキーをトップグッズのアイコンにして人気をさらに高めるまで、トップに君臨し続けた<ref>{{Cite web |title=Disney.com {{!}} The official home for all things Disney |url=https://www.disney.com/ |website=Disney Home |access-date=2024-01-15 |language=en}}</ref>。アニメーターの[[チャック・ジョーンズ]]は、「(アニメで)キャラクターに命を吹き込んだのはあれが初めてだった。見た目はそっくりで、行動は違う3人のキャラクターだった」と語った。他のアニメーション史家、特に[[ウィンザー・マッケイ]]を敬愛する人々は、「初めて」という言葉に異論を唱えたが、ジョーンズが語っていたのは、そのような個性ではなく、姿勢や動きによる性格付けのことだった。ファイファーとフィドラーは軽薄で無頓着、プラクティカルは用心深く真面目である。ストーリーとキャラクターがこれほどよく練られていたのは、ディズニーがすでに、アニメーション映画の成功は、観客の心をつかんで離さない、感情移入できるストーリーを語ることにかかっていることに気づいていたからである<ref>{{Cite book |title=Disney stories: getting to digital |publisher=Springer |date=2012 |location=New York |isbn=978-1-4614-2101-6 |first=Newton |last=Lee |first2=Krystina |last2=Madej}}</ref><ref>{{Cite book |title=Walt Disney: a biography |publisher=Greenwood |date=2010 |location=Santa Barbara, Calif. |isbn=978-0-313-35830-2 |first=Louise |last=Krasniewicz |first2=Walt |last2=Disney}}</ref>。それは、アニメーターとは別に「ストーリー部門」を設け、絵コンテアーティストを製作パイプラインの「ストーリー開発」段階に専従させるというものだった<ref>{{Cite book|和書 |title=Walt Disney: The Triumph of the American Imagination |url=https://books.google.com/books?id=41e-Ru0wRkEC&pg=PA187 |publisher=Knopf Doubleday Publishing Group |date=2007-10-09 |isbn=978-0-679-75747-4 |language=en |first=Neal |last=Gabler |pages= |page=415}}</ref>。


本作が成功を収めたことは、ウォルト・ディズニーがその成功に甘んじることなく、[[マルチプレーン・カメラ]]や初の長編アニメ映画など、リスクを伴うプロジェクトを進め続ける決断をした一因と見られている。ディズニーのスローガンは、長年にわたってしばしば繰り返されてきた<ref>{{Cite book|和書 |title=Walt Disney: The Triumph of the American Imagination |url=https://books.google.com/books?id=41e-Ru0wRkEC&pg=PA415 |publisher=Knopf Doubleday Publishing Group |date=2007-10-09 |isbn=978-0-679-75747-4 |language=en |first=Neal |last=Gabler |page=415}}</ref>。
[[リトル・バッド・ウルフ]]はディズニーの[[漫画]]に登場するキャラクターで後に「[[ハウス・オブ・マウス]]」の短編作品で登場した。悪者になろうとしないリトル・バッド・ウルフは父ビッグ・バッド・ウルフの悩みの種だった。事実、リルトのお気に入りの遊び相手は三匹の子ぶたでウルフに捕まった彼らを助けたことがある。父に内緒で家に遊びに行っている。一方で友人である子ぶた達に「良いところだってあるよ」と父のことを話したり、ウルフの治療するなど嫌っている様子はない。


=== 続編作品 ===
=== 物議と検閲 ===
本作には、ビッグ・バッド・ウルフがフラーブラシの[[行商人]]に変装し、プラクティカルを騙してレンガ造りの家に侵入しようとするシーンがある。1933年に公開されたオリジナル版では、行商人の変装は{{仮リンク|ステレオタイプなユダヤ人|en|Stereotypes of Jews}}男性のもので、帽子、コート、偽ユダヤ人の鼻、眼鏡、付け髭を身に着けている。このバージョンのシーンでは、[[イディッシュ語]]の音楽が流れ、イディッシュ訛りの強い声で変装する<ref>{{Cite web |title=Wrong shelf. {{!}} UC Berkeley Library |url=https://www.lib.berkeley.edu/404 |website=www.lib.berkeley.edu |access-date=2024-01-15 |language=en}}</ref>。
いずれも本作と同じ[[シリー・シンフォニー]]シリーズの作品である。
* [[赤ずきんちゃん (1934年の映画)|赤ずきんちゃん]](1934年)
* [[オオカミは笑う]](1936年)
* [[働き子ぶた]](1939年)


公開直後、{{仮リンク|米国ユダヤ人議会|en|American Jewish Congress}}のディレクターであったJ.X.コーエンは、ウォルト・ディズニーに怒りの手紙を送り、「ユダヤ人に対する侮辱であり、下劣で、反乱的で、不必要なものである」とし、このシーンの削除を要求した<ref name=":10">{{Cite book |edition=Illustrated edition |title=Walt Disney: The Triumph of the American Imagination |url=https://www.amazon.com.au/Walt-Disney-Triumph-American-Imagination/dp/0679757473 |publisher=Vintage |date=2007-10-09 |location=New York |isbn=978-0-679-75747-4 |language=English |first=Neal |last=Gabler}}</ref>。[[ロイ・O・ディズニー]]はウォルトに代わってコーエンに「私たちにはユダヤ人の仕事仲間や友人が非常に多く、ユダヤ人やその他の人種や国籍を意図的に貶めるようなことは絶対に避けたい。このキャラクターは、多くの有名なユダヤ人コメディアンがボードビルや舞台、映画で自らを演じているのと同じように、不快なものではないと思われる」と答えた<ref name=":10" /><ref>{{Cite book |title=Call Me Walt: Everything You Never Knew About Walt Disney |url=https://www.amazon.com.au/Call-Me-Walt-Everything-Disney/dp/1683901010 |publisher=Theme Park Press |date=2017-11-13 |isbn=978-1-68390-101-3 |language=English |first=Jim |last=Korkis}}</ref><ref>{{Cite web |title=Debunking Myths About Walt Disney |url=https://www.mouseplanet.com/11885/Debunking_Myths_About_Walt_Disney |website=www.mouseplanet.com |date=2017-09-20 |access-date=2024-01-15}}</ref>。
== その他 ==
ディズニーの短編アニメ、ミッキーマウスシリーズ初のカラー作品である『[[ミッキーの大演奏会]]』に[[チューバ]]奏者として出演し、[[ドナルドダック]]の友達でもある[[ピーター・ピグ]]は三匹の子ぶた達のおじである。


1948年9月に再公開された際、ウルフの変装は、前述の帽子とコートに加え、眼鏡が変わっただけで、このシーンは再アニメ化された。変装した彼の声にはもうイディッシュ訛りはなく、比較的差し障りのないシーンに変更された。[[ジャック・ハンナ]]と彼のグループは、この変更に対応した。ハンナは歴史家のジム・コーキスに、ウォルト・ディズニーからこの変更を依頼されたのだと語ったが、その理由は外部からの圧力があったわけではなく、単に[[第二次世界大戦]]後、このシーンが笑えなくなり、傷つく可能性があると感じたからだという<ref>{{Cite web |title=Debunking Meryl Streep: Part One |url=https://www.mouseplanet.com/10605/Debunking_Meryl_Streep_Part_One |website=www.mouseplanet.com |date=2014-02-19 |access-date=2024-01-15}}</ref>。
== スタッフ ==
* 製作:[[ウォルト・ディズニー]]<ref name="imdb">[[Internet Movie Database|IMDB]]での作品解説ページより。</ref><ref name="bcdb">[[Big Cartoon DataBase|BCDB]]での作品解説ページより。</ref>
* 監督:[[バート・ジレット]]<ref name="imdb" /><ref name="bcdb" />
* 作画:[[アート・バビット]]、[[ディック・ランディ]]、[[ノーマン・キング]]、[[フレッド・ムーア]]、[[ノーム・ファーガソン]]<ref name="imdb" /><ref name="bcdb" />
* 脚本:Boris V. Morkovin<ref name="imdb" />
* 音楽:[[フランク・チャーチル]]<ref name="imdb" /><ref name="bcdb" />


== 日本での公開 ==
=== 挿入歌 ===
本作のために[[フランク・チャーチル]]が作曲したオリジナル曲「[[狼なんか怖くない (1933年の曲)|狼なんか怖くない]]」は、ベストセラー・[[シングル]]となり、[[世界恐慌]]の「大きな悪い狼」に対する人々の決意を映し出し、この曲は実際に世界恐慌に立ち向かうための応援歌として愛唱された<ref>{{Cite web |title=Disney News {{!}} Disney |url=https://news.disney.com/ |website=Disney News |access-date=2024-01-15 |language=en-US}}</ref>。[[第二次世界大戦]]前の数年間、[[ナチス]]が[[ドイツ]]の領土を拡大し始めたとき、この歌は、[[アドルフ・ヒトラー]][[総統]]が戦争をすることなくかなりの領土を獲得することを許した西側世界の自己満足を表すために使われ、カナダの戦争努力のためのディズニー・アニメーションで顕著に使われた<ref>{{Cite web |title=The 100 Most Influential Sequences in Animation History |url=https://www.vulture.com/article/most-influential-best-scenes-animation-history.html |website=Vulture |date=2020-10-05 |access-date=2024-01-15 |language=en |first=Eric Vilas-Boas, John |last=Maher}}</ref>。
=== 収録 ===
* 『夢と魔法の宝石箱 ディズニーのなかまたち』(VHS、[[バンダイ]])
* 『シリー・シンフォニー 限定保存版』(DVD、[[ウォルト・ディズニー・スタジオ・ホーム・エンターテイメント|ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント]])


この曲は{{仮リンク|1966年の映画|en|Who's Afraid of Virginia Woolf? (film)}}とは何の関係もないため、1963 年の演劇『[[ヴァージニア・ウルフなんかこわくない]]』のインスピレーションとしても使用された。
== 脚注 ==
{{reflist}}


1989年9月、[[フロリダ州]][[タンパ]]の{{仮リンク|WFLZ|en|WFLZ-FM}}が、{{仮リンク|WRBQ|en|WRBQ-FM}}がタンパ・ベイ地区で唯一の[[トップ40]]/{{仮リンク|CHR|en|Contemporary hit radio}}ラジオ局となるための身代金を満たせなかった後、近隣の競合局WRBQと競い合うという演出の中でパロディ化された。WFLZはその後、「狼なんか怖くない(''Who's Afraid of the Big Bad Wolf?'')」と題したパロディ「''Who's Afraid of the Big Bad Q?''」など、競合局をあざけり、けなし始めた。
== 参考文献 ==
*カルステン・ラクヴァ 柴田陽弘監訳 眞岩啓子訳『ミッキー・マウス ディズニーとドイツ』現代思潮新社、2011年


=== 続編とその後の出演 ===
== 外部リンク ==
ディズニーは本作の続編をいくつか製作したが、どれもオリジナルほど成功しなかった。最初の続編は、同じく[[バート・ジレット]]監督の『{{仮リンク|赤ずきんちゃん|en|The Big Bad Wolf (1934 film)}}(''The Big Bad Wolf'')』で、1934年4月14日に公開された<ref>{{Cite web |title=Big Bad Wolf, The (film) |url=https://d23.com/a-to-z/big-bad-wolf-the-film/ |website=D23 |access-date=2024-01-15 |language=en-US}}</ref>。前作の4匹のキャラクターに加え、オオカミが[[悪役]]として登場する別の童話から採用された[[赤ずきん]]と、そのおばあさんの2人が新キャラクターとして追加された。
* {{imdb title|0024660|Three Little Pigs}}
* {{bcdb title|3887|Three Little Pigs}}
* [http://www.disneyshorts.org/years/1933/threelittlepigs.html Disney Shorts - Three Little Pigs]{{en icon}}
* {{IMDb title|0024660|Three Little Pigs}}


1936年、三匹の子ぶたとビッグ・バッド・ウルフを主役にした2作目のアニメが、『[[嘘をつく子供]]』を基にしたストーリーで続いた。この短編は『{{仮リンク|オオカミは笑う|en|Three Little Wolves (film)}}』と題され、ウルフの3匹の息子たちを登場させたが、みんな父親と同じようにブタの味を知りたがっていた<ref>{{Cite web |title=Three Little Wolves (film) |url=https://d23.com/a-to-z/three-little-wolves-film/ |website=D23 |access-date=2024-01-15 |language=en-US}}</ref>。

3作目のアニメ『{{仮リンク|働き子ぶた|en|The Practical Pig}}』は1939年に公開された<ref>{{Cite web |title=Practical Pig, The (film) |url=https://d23.com/a-to-z/practical-pig-the-film/ |website=D23 |access-date=2024-01-15 |language=en-US}}</ref>。この中で、ファイファーとパイパーは、プラクティカルの警告にもかかわらず、泳ぎに行くが、ウルフに捕まり、ウルフはプラクティカルの後を追うが、プラクティカルの新しく作った嘘発見器に引っかかる。

1941年、4作目のアニメ『{{仮リンク|倹約家のぶた|en|The Thrifty Pig}}』が[[カナダ国立映画庁]]から配給された。このアニメの大部分はオリジナルのアニメからの再利用映像で構成されており、実用的なブタはカナダの戦時国債で家を建て、ナチス・ドイツを代表するビッグ・バッド・ウルフは彼の家を吹き飛ばすことができなかった<ref>{{Cite web |title=Thrifty Pig, The (film) |url=https://d23.com/a-to-z/thrifty-pig-the-film/ |website=D23 |access-date=2024-01-15 |language=en-US}}</ref>。

ファイファー、フィドラー、ビッグ・バッド・ウルフは『[[ロジャー・ラビット]]』にも登場した。

テレビシリーズ『[[ハウス・オブ・マウス]]』や、その直撮り映画『[[ミッキーのマジカル・クリスマス/雪の日のゆかいなパーティー]]』(2001年)、『[[ミッキーの悪いやつには負けないぞ!]]』(2002年)にも登場した。シリーズの第2話では、ウルフは「ビッグ・バッド・ウルフ・ダディ」という芸名を持つ人気[[ジャズ]]・トランペッターとして描かれ、ブタたちは彼のバックバンドとして演奏する。これはおそらく、ワーナー・ブラザースのカートゥーン『[[3匹の子ブタロック]]』のパロディだと思われる。エピソード「ピートの悪党の家」には、ウルフが息子にブタの狩り方を教える短編もある。

[[ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ]]100周年記念作品『[[ワンス・アポン・ア・スタジオ -100年の思い出-]]』では、最後の記念写真の場面のみに登場する<ref>{{Cite web |title=Disney’s “Once Upon a Studio” – List of Characters in Order of Appearance |url=https://www.laughingplace.com/w/disney-entertainment/disneys-once-upon-a-studio-list-of-characters-in-order-of-appearance/ |website=LaughingPlace.com |date=2023-10-17 |access-date=2024-01-15 |language=en-US |first=Alex |last=Reif}}</ref>。

== コミックの映画化 ==
『[[シリー・シンフォニー]]』日曜版は、1936年1月18日から8月23日まで、『三匹の子ぶたのさらなる冒険』と呼ばれる本作の続編を7か月にわたって連載した。続いて、1938年5月1日から8月7日まで、『実用的なぶた』と呼ばれるストーリーが続いた<ref>Taliaferro, Al; Osborne, Ted; De Maris, Merrill (2016). ''Silly Symphonies: The Complete Disney Classics, vol 2''. San Diego: IDW Publishing.</ref>。

アンソロジー・コミック『{{仮リンク|ウォルト・ディズニー・コミックス&ストーリーズ|en|Walt Disney's Comics and Stories}}』の52号(1945年1月)で、ビッグ・バッド・ウルフの息子であるリル・バッド・ウルフという新キャラクターが登場した<ref>{{Cite web |title=United States: Walt Disney's Comics and Stories # 52 {{!}} I.N.D.U.C.K.S. |url=https://inducks.org/issue.php?c=us/WDC++52 |website=inducks.org |access-date=2024-01-15}}</ref>。リル・バッド・ウルフは父親であるビッグ・バッド・ウルフをいつも悩ませていた。実際、彼のお気に入りの遊び相手は三匹の子ぶただった。リル・バッド・ウルフの新しい物語は7年間定期的にWDC&Sに掲載され、最後のものは259号(1962年4月)に掲載された<ref>{{Cite web |title=United States: Walt Disney's Comics and Stories # 259 {{!}} I.N.D.U.C.K.S. |url=https://inducks.org/issue.php?c=us/WDC+259 |website=inducks.org |access-date=2024-01-15}}</ref>。

== 脚注 ==
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== 外部リンク ==
* {{Allcinema title|id=52757|title=三匹の子ぶた}}
* {{Kinejun title|id=81975|title=三匹の子ぶた}}
* {{Movie Walker|id=mv82846|title=三匹の子ぶた}}
* {{Amg movie|id=96270|title=Three Little Pigs}}
* {{IMDb title|id=0024660|title=Three Little Pigs}}
* {{Rotten Tomatoes|three-little-pigs1933|Three Little Pigs}}
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2024年1月15日 (月) 16:54時点における版

三匹の子豚 > 1933年のディズニーアニメ映画
三匹の子ぶた
Three Little Pigs
監督 バート・ジレット
原作 三匹の子豚
製作 ウォルト・ディズニー
出演者 ドロシー・コンプトン英語版
メアリー・モダー英語版
ピント・コルヴィッグ
ビリー・ブレッチャー英語版
音楽 カール・スターリング
フランク・チャーチル
製作会社 ウォルト・ディズニー・プロダクション
配給 ユナイテッド・アーティスツ
公開 アメリカ合衆国の旗 1933年5月25日
上映時間 8分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $22,000
興行収入 $250,000
前作 ノアの箱船
次作 おとぎ王国英語版
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三匹の子ぶた』(さんびきのこぶた、原題: Three Little Pigs)は、1933年のシリー・シンフォニー短編アニメ作品同名の寓話を基に、ウォルト・ディズニーが製作、バート・ジレットが監督を務めた[1]。製作費22,000ドル、興行収入250,000ドル[2]。シリー・シンフォニーの短編映画がスクリーンで上映されたのは1963年再公開の「プカドン交響楽」以来5年ぶりのことである。

シリー・シンフォニーシリーズ第36作であり、1934年のアカデミー賞短編アニメ賞を受賞。1994年にアニメーション関係者による「史上最も偉大な50の漫画(The 50 Greatest Cartoons)」で行われた投票では、本作はアニメーション史における11番目の重要な作品として格付けされた[3]。2007年には、「文化的、歴史的、美術的に重要な作品」として、アメリカ議会図書館によるアメリカ国立フィルム登録簿に収録された。

1933年5月25日、ニューヨークのラジオシティ・ミュージックホールで、ラジオシティがファースト・ナショナル英語版映画『エルマー・ザ・グレート英語版』を公開する際の短編として公開された。

ストーリー

フィファー・ピッグ、フィドラー・ピッグ、プラクティカル・ピッグは、自分たちの家を建てるブタの3兄弟。3人とも違う種類の楽器を演奏し、フィーファーはフルート、フィドラーはヴァイオリン、プラクティカルは休みなく家を建てている。フィファーとフィドラーはの家をいとも簡単に建て、一日中楽器を演奏して楽しんでいる。一方、プラクティカルは「歌ったり踊ったりする時間がない。仕事と遊びは一緒にならないから」と、レンガ造りの丈夫な家を建てることに専念する。フィファーとフィドラーは彼をからかうが、プラクティカルはビッグ・バッド・ウルフが来たら逃げられないと警告する。フィファーとフィドラーは彼を無視して遊び続け、「狼なんか怖くない」を歌う。

彼らが歌っていると、ビッグ・バッド・ウルフが本当にやってきて、2匹はそれぞれの家に逃げる。ウルフはまずフィファーの家を(屋根を除いて)吹き飛ばし、フィファーはなんとか逃げ出してフィドラーの家に隠れる。ウルフはあきらめて帰るふりをするが、羊に変装して戻ってくる。ブタたちはその変装を見破り、ウルフはフィドラーの家を(ドアを除いて)吹き飛ばす。2匹は何とか逃げ出し、兄弟を快く避難させてくれたプラクティカルの家に隠れる。プラクティカルの家で、彼の楽器がピアノであることが明らかになる。ウルフはフラーブラシの訪問販売員に変装してブタたちを騙し、家に入ろうとするが失敗する。その後、ウルフは頑丈なレンガ造りの家を吹き飛ばそうとするが(その過程で服を失う)、自信に満ちたプラクティカルがメロドラマチックなピアノ曲を演奏する中、それも失敗する。ついに煙突から家の中に入ろうとするが、頭のいいプラクティカルが煙突の下にある水(テレビン油を加えていた)を入れた煮えたぎる鍋の蓋を外し、ウルフはその中に落ちてしまう。悲鳴を上げながらウルフは必死に逃げ回り、その間にブタたちはまた「狼なんか怖くない」を歌う。プラクティカルは、ピアノをノックするいたずらをして、ウルフが戻ってきたと兄弟たちに思わせ、プラクティカルのベッドの下に隠れる。

キャスト

括弧内は、日本語吹替版キャスト。

封切り

本作は1933年5月25日、ニューヨークのラジオシティ・ミュージックホールで初公開された[4]

ホームメディア

アメリカでは、本作は1984年に「カートゥーン・クラシック」ホームビデオ・シリーズの一部としてVHSベータマックスレーザーディスクで初めてリリースされた。アメリカでは1995年に「フェイバリット・ストーリーズ」コレクションの一部として、イギリスでは1996年春に「ディズニー・ストーリーブック・フェイバリット」シリーズの一部として再びVHSでリリースされた。2001年12月4日には、続編とともに『ウォルト・ディズニー・トレジャーズ: シリ―・シンフォニー英語版』の一部としてリリースされ、PAL版ではユダヤ人行商人のアニメーションが再編集された台詞とともに再び残されている[5][6]。しかし、Disney+のリリースでは、すべての地域で変更されたアニメーションを使用している。

その後、2005年8月16日に発売された『ウォルト・ディズニー・タイムレス・テールズ Vol.1』に収録され(アメリカの『シリー・シンフォニー』セットには編集版が収録)、『ハーメルンの笛吹き』(1933年)、『アリとキリギリス』(1934年)、『うさぎとかめ』(1935年)、『ミッキーの王子と少年』(1990年)も収録された。

1933年のオリジナル・アニメが英語とその他の外国語のオリジナル・サウンドトラック付きで最初にリリースされたその他の国々では、1933年のオリジナル・サウンドトラック付きのノーカット映像が、英語とその他の外国語のオリジナル・サウンドトラック付きで、現在もディズニー社から家庭用リリース・ビデオとしてリリースされている。

日本では、1988年10月7日にバンダイよりリリースされた『夢と魔法の宝石箱 ディズニーのなかまたち』、2012年9月5日にブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメントよりリリースされた『シリー・シンフォニー 限定保存版』に本編が収録された。

作品の評価

本作は当時の観客の間で驚異的な成功を収め、公開後何ヵ月にもわたり上映され続け、大きな経済的反響を得た[7]。今でも史上最も成功した短編アニメとされており[8]、ディズニーが1934年末までにミッキーをトップグッズのアイコンにして人気をさらに高めるまで、トップに君臨し続けた[9]。アニメーターのチャック・ジョーンズは、「(アニメで)キャラクターに命を吹き込んだのはあれが初めてだった。見た目はそっくりで、行動は違う3人のキャラクターだった」と語った。他のアニメーション史家、特にウィンザー・マッケイを敬愛する人々は、「初めて」という言葉に異論を唱えたが、ジョーンズが語っていたのは、そのような個性ではなく、姿勢や動きによる性格付けのことだった。ファイファーとフィドラーは軽薄で無頓着、プラクティカルは用心深く真面目である。ストーリーとキャラクターがこれほどよく練られていたのは、ディズニーがすでに、アニメーション映画の成功は、観客の心をつかんで離さない、感情移入できるストーリーを語ることにかかっていることに気づいていたからである[10][11]。それは、アニメーターとは別に「ストーリー部門」を設け、絵コンテアーティストを製作パイプラインの「ストーリー開発」段階に専従させるというものだった[12]

本作が成功を収めたことは、ウォルト・ディズニーがその成功に甘んじることなく、マルチプレーン・カメラや初の長編アニメ映画など、リスクを伴うプロジェクトを進め続ける決断をした一因と見られている。ディズニーのスローガンは、長年にわたってしばしば繰り返されてきた[13]

物議と検閲

本作には、ビッグ・バッド・ウルフがフラーブラシの行商人に変装し、プラクティカルを騙してレンガ造りの家に侵入しようとするシーンがある。1933年に公開されたオリジナル版では、行商人の変装はステレオタイプなユダヤ人英語版男性のもので、帽子、コート、偽ユダヤ人の鼻、眼鏡、付け髭を身に着けている。このバージョンのシーンでは、イディッシュ語の音楽が流れ、イディッシュ訛りの強い声で変装する[14]

公開直後、米国ユダヤ人議会英語版のディレクターであったJ.X.コーエンは、ウォルト・ディズニーに怒りの手紙を送り、「ユダヤ人に対する侮辱であり、下劣で、反乱的で、不必要なものである」とし、このシーンの削除を要求した[15]ロイ・O・ディズニーはウォルトに代わってコーエンに「私たちにはユダヤ人の仕事仲間や友人が非常に多く、ユダヤ人やその他の人種や国籍を意図的に貶めるようなことは絶対に避けたい。このキャラクターは、多くの有名なユダヤ人コメディアンがボードビルや舞台、映画で自らを演じているのと同じように、不快なものではないと思われる」と答えた[15][16][17]

1948年9月に再公開された際、ウルフの変装は、前述の帽子とコートに加え、眼鏡が変わっただけで、このシーンは再アニメ化された。変装した彼の声にはもうイディッシュ訛りはなく、比較的差し障りのないシーンに変更された。ジャック・ハンナと彼のグループは、この変更に対応した。ハンナは歴史家のジム・コーキスに、ウォルト・ディズニーからこの変更を依頼されたのだと語ったが、その理由は外部からの圧力があったわけではなく、単に第二次世界大戦後、このシーンが笑えなくなり、傷つく可能性があると感じたからだという[18]

挿入歌

本作のためにフランク・チャーチルが作曲したオリジナル曲「狼なんか怖くない」は、ベストセラー・シングルとなり、世界恐慌の「大きな悪い狼」に対する人々の決意を映し出し、この曲は実際に世界恐慌に立ち向かうための応援歌として愛唱された[19]第二次世界大戦前の数年間、ナチスドイツの領土を拡大し始めたとき、この歌は、アドルフ・ヒトラー総統が戦争をすることなくかなりの領土を獲得することを許した西側世界の自己満足を表すために使われ、カナダの戦争努力のためのディズニー・アニメーションで顕著に使われた[20]

この曲は1966年の映画とは何の関係もないため、1963 年の演劇『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』のインスピレーションとしても使用された。

1989年9月、フロリダ州タンパWFLZ英語版が、WRBQ英語版がタンパ・ベイ地区で唯一のトップ40CHRラジオ局となるための身代金を満たせなかった後、近隣の競合局WRBQと競い合うという演出の中でパロディ化された。WFLZはその後、「狼なんか怖くない(Who's Afraid of the Big Bad Wolf?)」と題したパロディ「Who's Afraid of the Big Bad Q?」など、競合局をあざけり、けなし始めた。

続編とその後の出演

ディズニーは本作の続編をいくつか製作したが、どれもオリジナルほど成功しなかった。最初の続編は、同じくバート・ジレット監督の『赤ずきんちゃんThe Big Bad Wolf)』で、1934年4月14日に公開された[21]。前作の4匹のキャラクターに加え、オオカミが悪役として登場する別の童話から採用された赤ずきんと、そのおばあさんの2人が新キャラクターとして追加された。

1936年、三匹の子ぶたとビッグ・バッド・ウルフを主役にした2作目のアニメが、『嘘をつく子供』を基にしたストーリーで続いた。この短編は『オオカミは笑う英語版』と題され、ウルフの3匹の息子たちを登場させたが、みんな父親と同じようにブタの味を知りたがっていた[22]

3作目のアニメ『働き子ぶた英語版』は1939年に公開された[23]。この中で、ファイファーとパイパーは、プラクティカルの警告にもかかわらず、泳ぎに行くが、ウルフに捕まり、ウルフはプラクティカルの後を追うが、プラクティカルの新しく作った嘘発見器に引っかかる。

1941年、4作目のアニメ『倹約家のぶた英語版』がカナダ国立映画庁から配給された。このアニメの大部分はオリジナルのアニメからの再利用映像で構成されており、実用的なブタはカナダの戦時国債で家を建て、ナチス・ドイツを代表するビッグ・バッド・ウルフは彼の家を吹き飛ばすことができなかった[24]

ファイファー、フィドラー、ビッグ・バッド・ウルフは『ロジャー・ラビット』にも登場した。

テレビシリーズ『ハウス・オブ・マウス』や、その直撮り映画『ミッキーのマジカル・クリスマス/雪の日のゆかいなパーティー』(2001年)、『ミッキーの悪いやつには負けないぞ!』(2002年)にも登場した。シリーズの第2話では、ウルフは「ビッグ・バッド・ウルフ・ダディ」という芸名を持つ人気ジャズ・トランペッターとして描かれ、ブタたちは彼のバックバンドとして演奏する。これはおそらく、ワーナー・ブラザースのカートゥーン『3匹の子ブタロック』のパロディだと思われる。エピソード「ピートの悪党の家」には、ウルフが息子にブタの狩り方を教える短編もある。

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ100周年記念作品『ワンス・アポン・ア・スタジオ -100年の思い出-』では、最後の記念写真の場面のみに登場する[25]

コミックの映画化

シリー・シンフォニー』日曜版は、1936年1月18日から8月23日まで、『三匹の子ぶたのさらなる冒険』と呼ばれる本作の続編を7か月にわたって連載した。続いて、1938年5月1日から8月7日まで、『実用的なぶた』と呼ばれるストーリーが続いた[26]

アンソロジー・コミック『ウォルト・ディズニー・コミックス&ストーリーズ英語版』の52号(1945年1月)で、ビッグ・バッド・ウルフの息子であるリル・バッド・ウルフという新キャラクターが登場した[27]。リル・バッド・ウルフは父親であるビッグ・バッド・ウルフをいつも悩ませていた。実際、彼のお気に入りの遊び相手は三匹の子ぶただった。リル・バッド・ウルフの新しい物語は7年間定期的にWDC&Sに掲載され、最後のものは259号(1962年4月)に掲載された[28]

脚注

  1. ^ Merritt, Russell; Kaufman, J. B. (2016). Walt Disney's Silly Symphonies: a companion to the classic cartoon series (Revised & updated edition ed.). Glendale, California: Disney Editions. ISBN 978-1-4847-5132-9 
  2. ^ Balio, Tino (2009-04-08) (英語). United Artists, Volume 1, 1919–1950: The Company Built by the Stars. Univ of Wisconsin Press. ISBN 978-0-299-23003-6. https://books.google.com/books?id=QljKdIYzncoC&q=Warner+Bros.+Catalog&pg=PA116 
  3. ^ Beck, Jerry, ed (1994). The 50 greatest cartoons: as selected by 1,000 animation professionals (1st ed ed.). Atlanta: Turner Pub. ISBN 978-1-878685-49-0 
  4. ^ Doherty, Thomas (1999-08-27) (英語). Pre-Code Hollywood: Sex, Immorality, and Insurrection in American Cinema, 1930–1934. Columbia University Press. ISBN 978-0-231-50012-8. https://books.google.com/books?id=tyZx10XsSbIC 
  5. ^ Merritt, Russell; Kaufman, J. B. (2016). Walt Disney's Silly Symphonies: a companion to the classic cartoon series (Revised & updated edition ed.). Glendale, California: Disney Editions. ISBN 978-1-4847-5132-9 
  6. ^ Walt Disney Treasures: Silly Symphonies DVD Review - Page 1 of 2”. dvdizzy.com. 2024年1月15日閲覧。
  7. ^ Chronology of the Walt Disney Company (1934)”. www.islandnet.com. 2024年1月15日閲覧。
  8. ^ Danks, Adrian (2013年7月5日). “Huffing and Puffing about Three Little Pigs – Senses of Cinema” (英語). 2024年1月15日閲覧。
  9. ^ Disney.com | The official home for all things Disney” (英語). Disney Home. 2024年1月15日閲覧。
  10. ^ Lee, Newton; Madej, Krystina (2012). Disney stories: getting to digital. New York: Springer. ISBN 978-1-4614-2101-6 
  11. ^ Krasniewicz, Louise; Disney, Walt (2010). Walt Disney: a biography. Santa Barbara, Calif.: Greenwood. ISBN 978-0-313-35830-2 
  12. ^ Gabler, Neal(英語)『Walt Disney: The Triumph of the American Imagination』Knopf Doubleday Publishing Group、2007年10月9日。ISBN 978-0-679-75747-4https://books.google.com/books?id=41e-Ru0wRkEC&pg=PA187 
  13. ^ Gabler, Neal(英語)『Walt Disney: The Triumph of the American Imagination』Knopf Doubleday Publishing Group、2007年10月9日、415頁。ISBN 978-0-679-75747-4https://books.google.com/books?id=41e-Ru0wRkEC&pg=PA415 
  14. ^ Wrong shelf. | UC Berkeley Library” (英語). www.lib.berkeley.edu. 2024年1月15日閲覧。
  15. ^ a b Gabler, Neal (2007-10-09) (English). Walt Disney: The Triumph of the American Imagination (Illustrated edition ed.). New York: Vintage. ISBN 978-0-679-75747-4. https://www.amazon.com.au/Walt-Disney-Triumph-American-Imagination/dp/0679757473 
  16. ^ Korkis, Jim (2017-11-13) (English). Call Me Walt: Everything You Never Knew About Walt Disney. Theme Park Press. ISBN 978-1-68390-101-3. https://www.amazon.com.au/Call-Me-Walt-Everything-Disney/dp/1683901010 
  17. ^ Debunking Myths About Walt Disney”. www.mouseplanet.com (2017年9月20日). 2024年1月15日閲覧。
  18. ^ Debunking Meryl Streep: Part One”. www.mouseplanet.com (2014年2月19日). 2024年1月15日閲覧。
  19. ^ Disney News | Disney” (英語). Disney News. 2024年1月15日閲覧。
  20. ^ Maher, Eric Vilas-Boas, John (2020年10月5日). “The 100 Most Influential Sequences in Animation History” (英語). Vulture. 2024年1月15日閲覧。
  21. ^ Big Bad Wolf, The (film)” (英語). D23. 2024年1月15日閲覧。
  22. ^ Three Little Wolves (film)” (英語). D23. 2024年1月15日閲覧。
  23. ^ Practical Pig, The (film)” (英語). D23. 2024年1月15日閲覧。
  24. ^ Thrifty Pig, The (film)” (英語). D23. 2024年1月15日閲覧。
  25. ^ Reif, Alex (2023年10月17日). “Disney’s “Once Upon a Studio” – List of Characters in Order of Appearance” (英語). LaughingPlace.com. 2024年1月15日閲覧。
  26. ^ Taliaferro, Al; Osborne, Ted; De Maris, Merrill (2016). Silly Symphonies: The Complete Disney Classics, vol 2. San Diego: IDW Publishing.
  27. ^ United States: Walt Disney's Comics and Stories # 52 | I.N.D.U.C.K.S.”. inducks.org. 2024年1月15日閲覧。
  28. ^ United States: Walt Disney's Comics and Stories # 259 | I.N.D.U.C.K.S.”. inducks.org. 2024年1月15日閲覧。

外部リンク