「ポイント」の版間の差分

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2010年5月21日 (金) 08:45時点における版

ポイントは、出版において使用される長さの単位で、文字のサイズや余白の幅などの、版面の構成要素の長さをいうときに使う。「pt」と略記されることが多い。「ポ」と略記されることもある(例:11ポ)。Macintoshでは「1ポイント = 1/72インチ」とされ、1インチを25.4 mmとすると、1 pt = 0.352 778 mmとなり、以後DTPアプリケーションにおいて標準となった。これはDTPポイントと呼ばれる。版面のレイアウトの単位をポイントにしておくと、文字が占める量を計算しやすいというメリットがある。なお日本の活字号数制が基本であるが、歴史上ではポイント活字も使われた時期があった。そのときは、1 pt ≒ 0.351 4 mmが用いられた。

ポイントの歴史と定義

ポイントは複数の地域や時代に種々のシステムが成立したため、定義も一様でない。一番古いポイント・システムはフルニエ・ポイント (Fournier point) とされ、次にディドー・ポイント (Didot point)(1783年頃)が成立する。これら二つのシステムは、フランスで誕生し、大陸で広く使われた。フルニエ・ポイントは、フルニエ (Pierre Simon Fournier) により提案されたものである。シセロ (Cicero) 格の1/12を基準として、ポイントを定義したのである。ディドー (François-Ambroise Didot) はこのフルニエのシステムを改善し、「王のインチ (Pied de roi)」と呼ばれる、フランスのインチ格に、1 ptを1/72インチとして適合させた。フルニエ・ポイントにおいては、1 pt ≒ 0.348 82 mm で、ディドー・ポイントでは 1 pt ≒ 0.375 9 mm に相当する。

欧州大陸では、主にディドーのポイント・システムが使用されていたが、英米では、定まったポイント・システムは普及しなかった。アメリカで活字のサイズが統一されるのは、1886年にMS&J (Mackellar, Smiths and Jordan, Letter Founder) のジョンソン・パイカを共通的に使用することが確認されてからである。これをアメリカン・ポイント (American point, American printers' point) という。ジョンソン・パイカは 83パイカ = 35 cm とするもので、1 pt = 1/12パイカ ≒ 0.0351 4 cm である。ジョンソン・パイカが 83パイカ = 35 cm とし、それが結局アメリカン・ポイントとして選択されたのは、サイズ体系を維持することで、活字の改鋳を極力避けるためであった。多くの有力な活字鋳造業者がジョンソン・パイカを使用していたため、アメリカン・ポイントを 1インチ = 6パイカ 、1パイカ = 12 pt にしようと運動したホークスの提案は退けられたのである。アメリカン・ポイントは築地活版によって1900年代後半に紹介され、日本でも普及した。

1973年、ディドー・ポイントは 1 pt = 3/8 mm (0.375 mm) と定義されなおされた[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。

互換性

金属活字のポイントには、アメリカンポイントと、ヨーロッパで使用されるディドーポイント、フルニエポイントがある。アメリカンポイント(パイカポイント)は約0.351 4 mmで、日本の出版場面ではこちらが主に使われていた[1]。ちなみにMicrosoft WordではDTPポイント(1 pt =0.352 778 mm)を採用している。

なお上述の通りアメリカン・ポイントは、DTPポイント(ビッグポイント)と異なる。このため、小さなポイント数ならばともかく紙面全体となってくるとかなりのズレが生じることになる。ゆえに、ポイント基準で製作された過去の書籍を組み直す際には、当時の組版指示書をそのまま使えないことがある。

一方、TeXはこの問題を、より微細なスケールド・ポイント(scaled point;sp, 1 sp =1/65 536 ptと定義)を導入し、これを用いて複数のポイントを定義しなおすことにより、クリアーしている。TeXにおいては1 pt = 65 536 sp = 1/72.27 in = 約0.351 4 mmであり、ビッグポイント(1 bp = 1/72 in= 約65 781 sp = 約0.352 778 mm)と(0.000 05 mm程度の誤差のもとで)併存できる。

ポイントとほかの単位系

日本においてポイントと同様な場面で使われる単位に「」というものがある(1級 = 0.25 mm)。級数制はメートル法をもとにしており、紙の寸法を含めて計算の便が良いという利点もあるが、ワープロの普及などもあり、ポイントのほうがより一般ユーザーレベルで広く使われていると言える(級、Q、歯については写真植字機を参照のこと)。日本語対応しているDTPソフトは級数を扱えるものがほとんどだが、Qで入力すると自動的にptに換算して表示するという形でのみ対応しているものもある。ちなみに日本語TeXでもQやH(歯)で文字の寸法などを指定することができる。

また、和文のワードプロセッサやワープロソフトで多くの場合10.5 ptが標準である。これは活字の大きさの単位が号数であった時代、5というサイズが公文書の本文用活字に用いられ、それが約10.5ポイントに相当することから、号数制からポイント制の移行時にもひきつづきその字の大きさが用いられていたためであった。本文の文字サイズとして可読性がよいなどの理由から、現在でも用いられている。なお公文書において5号活字と同様によく使われた4号活字のサイズは、ほぼ12ポイントに相当する。

あまり知られていないことであるが、かつて1960年代まで活版印刷によって月刊雑誌や小冊子などが発行されていた時代、8ポイントや9ポイントというサイズの活字が本文用に使われていた。5号では大きすぎ、6号では小さすぎたため、その中間のサイズで読みやすいポイント活字が使われたのである。主に9ポイントが本文、8ポイントがコラムやニュースなど補助的な記事に使われていた。すなわち雑誌編集の世界では「活字=ポイント」から「写真植字=級」へ移行し、再び「DTP=ポイント」という単位に戻ってきたのである。

脚注

  1. ^ 日本工業規格のJIS Z 8305-1962「活字の基準寸法」では「1ポイントは0.351 4 mmとする」と定められている。『日本工業規格活字の基準寸法』日本規格協会、1967年12月、1ページ。

外部リンク