MINIX

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MINIX
MINIX screenshot.png
MINIX 3.1.2a
開発者 アンドリュー・タネンバウム
OSの系統 Unix系
開発状況 開発継続中
ソースモデル オープンソース
最新安定版 3.3.0 / 2014年9月16日(6年前) (2014-09-16
リポジトリ ウィキデータを編集
カーネル種別 マイクロカーネル
既定のUI ash
ライセンス BSDライセンス
ウェブサイト www.minix3.org
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MINIX(ミニックス)とは、1987年オランダアムステルダム自由大学: Vrije Universiteit Amsterdam)の教授であるアンドリュー・タネンバウムが、オペレーティングシステム(OS) の教育用に執筆した著書、『Operating Systems: Design and Implementation』の中で例として開発した、Unix系オペレーティングシステム (OS) である。Minixの名は"mini-Unix"から。

歴史[編集]

UNIXソースコードAT&Tのライセンス問題により非公開になった[1]ため、OSの教材用にUNIX version 7の互換システムを再設計したものである。機能上の新しさはないが、マイクロカーネル構造を採用するなど、モダンな洗練が行われている。元々はIBM PCをターゲットとして開発されたが、その後AtariAmigaMacintoshSPARCをはじめ、日本においてはNEC PC-9800シリーズ[2]にも移植された。

特徴[編集]

初期のバージョンは非常にコンパクトであり、フロッピーディスク単体での運用もできた。2005年にリリースされたMINIX 3では動作にハードディスクを要するものの、割り込みハンドラプロセススケジューラプロセス間通信機能などを含むマイクロカーネル本体のソースコードは4000行弱に抑えられている。

1987年のリリース当初からすべてのコードは公開されていたがオープンソースではなかった。これは出版社であるPrentice Hall の意向と、タネンバウム自身による「MINIXはあくまで教育用のホビーであり、実用が目的ではない」という考えによる。とりわけ特徴的なのは、MINIXには仮想記憶が実装されていなかったことである。

なお、ライセンスは2000年に変更されて、過去のソースコードも含めてBSDライセンスが採用されるようになった[3]。また、バージョン 3.2.0 からはNetBSDとの親和性を深め、コンパイラ、ブートローダー、ユーザーランドの置き換えを順次進めている。

Linuxとの関係[編集]

MINIXの「実用を目的としない」というポリシーに対し、ニュースグループ comp.os.minix において、MINIXを実用に耐えるOSにしようという試みが提示された。しかし、タネンバウムは機能を追加することに否定的だったため、リーナス・トーバルズは新たにOSを作ることを決断し、1991年10月にはついにLinux version 0.02がリリースされるに至った。

これに対し、タネンバウムはLinuxの設計に対する批判を展開し、論争が起こった(アンドリュー・タネンバウムとリーヌス・トーヴァルズの議論[4]

結果として、後発のLinuxFreeBSDの方が広く普及することとなったが、MINIXのソースコードはコンパクトで初学者にも読みやすく、教材としての目的は十分に達しているといえる。

実装[編集]

MINIX 1.0[編集]

タネンバウムは、アムステルダム自由大学で、MINIXを彼の教科書『オペレーティングシステム: 設計と実装』(1987年)で示されている原理を例示するために作成した。

おおよそ12,000行で構成されたCによって書かれたMINIX 1.0のカーネルメモリマネージャ、ファイルシステムのソースコードは教科書の中に印刷されていた。Prentice Hallはまた、MINIXのソースコードとバイナリをリファレンスマニュアル付きでフロッピーディスクに収めリリースした。MINIX 1はSeventh Edition UNIXとシステムコールの互換性がある[5]

タネンバウムは当初、MINIXをIBM PCとIBM PC/ATマイクロコンピュータに互換性を持つように開発していた。

MINIX 1.5[編集]

MINIX 1.5は1991年にリリースされ、IBM PS/2マイクロチャンネルシステムへのサポートを含み、Motorola 68000とSPARCのアーキテクチャに移植された。MINIX 1.5は、Atari ST、Commodore AmigaApple Macintosh[6]Sun SPARCstationの各プラットフォームをサポートする。また、非公式のポートとして、Intel 386(32ビットプロテクトモード)とNational Semiconductor NS32532ARM、Inmos transputerプロセッサーに対するものがあった。

MINIX 2.0[編集]

68-kベースのアーキテクチャへの需要の衰退により、1997年にリリースされたMINIX 2.0はx86とSPARCへのみ提供された。MINIX 2.0はタネンバウムのテキストの第2版の主題であり、Albert Woodhullとともに開発され、テキストに同梱されたCD-ROMに収録された。MINIX 2.0はPOSIX.1に準拠し[7][8]32ビットモードの386プロセッサをサポートしたほか、MINIX 1.5に含まれたAmoebaネットワークのプロトコルを、TCP/IPスタックで置き換えた。

Minix-vmd[編集]

Minix-vmdは、アムステルダム自由大学の研究者によって作成されたIA-32プロセッサ用のMINIX 2のバリアントで、仮想メモリX Window Systemのサポートを追加した。

MINIX 3[編集]

MINIX 3.2 running the "top"コマンド実行中のMINIX
X11twm)実行中のMINIX

MINIX 3は、2005年10月24日、タネンバウムよってACMシンポジウムにおいてアナウンスされた。このOSは、依然としてタネンバウムとWoodhullのテキストで用いられていたが、これは「限られたリソースのシステムや組み込みコンピュータ、また高い信頼性を要求するアプリケーションで使える」ことを目指して包括的に再設計された[9]

MINIX 3は、現在IA-32ARMアーキテクチャのシステムをサポートしている。OSはLive CDのフォーマットで提供され、これはコンピュータにインストールすることなしに試すことができる。また、様々なバージョンの仮想化システム(BochsQEMUVMwareVirtualBoxVirtual PCを含む)にも対応している。

バージョン3.1.5は2009年11月5日にリリースされ、X11emacsvi、cc、gccperlpythonbash、zsh、ftp、ssh、telnet、pineなど400を超えるUNIXのユーティリティプログラムを利用することができる。X11の追加により、このバージョンはテキストのみのシステムからの移行を示す。多くの場合、実行中のプロセスに影響を与えることなく、クラッシュしたドライバを自動的に再起動することができる。このようにMINIXは自己修復機能を持ち、高い信頼性を必要とするアプリケーションでも使用することができる[10]。MINIX3はまた、仮想メモリ管理をサポートしており、これはデスクトップOSとしての利用に適している。

バージョン3.2.0では、ユーザーランドの大部分がNetBSDのものに置換され、pkgsrcのサポートが追加された。これは、MINIXで利用できるソフトウェアの数を増加させた。また、Clangは以前のコンパイラを置き換え、GNUデバッガであるGDBが移植された[11][12]

続くMINIX 3.3.0は、2014年9月にリリースされ、ARMがサポートされた。

2016年1月にはMinix 3.4.0RC(リリース候補)が利用可能になったが[13]、MINIX 3.4.0の安定版リリースはまだ発表されていない。

MINIXは、CC++FORTRANModula-2PascalPerlPythonTclなどを含むプログラミング言語をサポートしている。また、MINIX 3の開発コミュニティは2016年のMINIXCon 2016に50人以上が出席するなど、いまでも活動中の状態である[14]

2015年以降のすべてのIntelチップセットは、Intel Management Engine (英語版のソフトウェアコンポーネントとして内部的にMinix 3を実行している。[15][16]

ライセンス[編集]

MINIXの最初の開発時には、そのライセンスは比較的自由であった。ライセンス料は他のオペレーティングシステムに比べて非常に少額(69ドル)であった。タネンバウムはMINIXを学生ができるだけアクセスしやすくすることを望んだが、彼の出版社は自由にコピーできる素材(ソースコードなど)を提供したくなかったため、わずかな料金を要する制限的ライセンス(タネンバウムの本の価格に含まれている)が妥協案として適用された。これにより、MINIXを自由に配布されるソフトウェアシステムの基礎として使用できなくなった。

1990年代初頭にLinux386BSDのようなフリーでオープンソースのUnixライクなオペレーティングシステムが利用できるようになると、多くのボランティアソフトウェア開発者たちはMINIXを放棄してこれらのオペレーティングシステムを支持した。2000年4月、MINIX 2はパーミッシブ・ライセンス(BSDライセンス)のもとでフリーでオープンソースのソフトウェアとなったが[17]、この時点までに他のオペレーティングシステムがその能力を超えており、主に学生やホビイストのためのオペレーティングシステムであり続けた。

脚注[編集]

  1. ^ UNIX#UNIXの普及と展開
  2. ^ MINIXオペレーティング・システム ANDREW S. TANENABAUM著 坂本 文監修 大西 輝代翻訳 株式会社アスキー発行 1989年4月21日発行 13頁 ISBN 4-7561-0000-7
  3. ^ "MINIX is now available under the BSD license", Apr 9 2000, minix1.woodhull.com
  4. ^ ディベート:リナックスは時代遅れだ
  5. ^ Tanenbaum, Andrew S.; Woodhull, Albert S. (1997) [1986]. Operating Systems Design and Implementation (Second ed.). ISBN 0-13-638677-6. OCLC 35792209. https://archive.org/details/operatingsystems00tane 2011年8月2日閲覧。 
  6. ^ MacMinix”. 2020年8月1日閲覧。
  7. ^ Some Notes on the "Who wrote Linux" Kerfuffle, Release 1.5” (2004年5月20日). 2016年8月20日閲覧。
  8. ^ Tanenbaum, Andrew S. (2015年3月11日). “MINIX 3 FAQ”. 2016年8月20日閲覧。
  9. ^ Herder, J. N.; Bos, H.; Gras, B.; Homburg, P.; Tanenbaum, A. S. (2006). “Minix 3”. ACM SIGOPS Operating Systems Review 40 (3): 80. doi:10.1145/1151374.1151391. 
  10. ^ Schmidt, Ulrich (2010年11月10日). “New to minix”. 2011年8月2日閲覧。
  11. ^ MINIX Releases”. wiki.minix3.org. 2012年2月29日閲覧。
  12. ^ MINIX 3.2: A microkernel with NetBSD applications [LWN.net]
  13. ^ Index of /iso/snapshot/”. download.minix3.org. 2016年10月14日閲覧。
  14. ^ MINIXCon 2016”. www.minix3.org. 2016年10月14日閲覧。
  15. ^ Positive Technologies research”. blog.ptsecurity.com. 2017年9月6日閲覧。
  16. ^ Minix: Intel's hidden in-chip operating system
  17. ^ The Minix licence”. 2007年3月23日閲覧。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • Andrew S. Tanenbaum; Albert S. Woodhull (2005). Operating Systems: Design and Implementation (Third Edition ed.). Prentice Hall. ISBN 978-0-13-142938-3 
  • A.S. タネンバウム、A.S. ウットハル『オペレーティングシステム 設計と理論およびMINIXによる実装』千輝 順子、今泉 貴史、ピアソンエデュケーション、1998年、第2版。ISBN 978-4-89471-047-4
  • A.S. タネンバウム『オペレーティングシステム』吉澤康文, 木村信二, 永見明久, 峯博史、ピアソンエデュケーション、2007年、第3版。ISBN 978-4894717695

外部リンク[編集]