駆逐艦母艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
アレン・M・サムナー級駆逐艦と駆逐艦母艦クロンダイク

駆逐艦母艦(アメリカ英語:Destroyer tender、イギリス英語:Destroyer depot ship)は、海軍における支援艦艇の一つ。駆逐艦などの小型艦艇に対する消耗品などの補給や駆逐艦乗員の休息設備を提供するものである。

概要[編集]

20世紀中頃までの駆逐艦は小型の艦艇であり、食料・水などの搭載能力は乏しく、また乗員の休息設備も不足しているなど、長期作戦行動には不向きであった。そのため、艦隊に随伴し、水雷部隊(駆逐艦部隊)に対して消耗物資の輸送・補給を行い、駆逐艦乗員の休息設備を提供する艦船として駆逐艦母艦が整備された。日本語では同じ「母艦」という名称が用いられているが、航空母艦のように「対象を搭載して作戦海域まで輸送し、作戦行動の後に収容して整備・補給を行う」艦ではなく、補給艦と同様の任務を行う軍用艦艇である。

その目的から駆逐艦母艦は物資積載能力が重視されており、また、個々の艦艇のみでは不可能なレベルの整備や損傷の修理を行えるよう、小規模ながら工作艦としての能力も備える。展開した部隊の旗艦としても用いることができるように、指揮・通信能力を充実させて司令部設備を持つ指揮艦としての能力を付与されたものもあった。

この他、駆逐艦乗員の休息・保養に用いるために、居住設備を充実させており、地上設備の充実していない泊地などで艦隊が休養する際には、駆逐艦を駆逐艦母艦に接舷した状態で停泊させ、駆逐艦乗員が母艦に移動して宿泊艦として利用された。艦の規模から限界のある駆逐艦の医療体制を補うため、医療設備を充実させて病院船としての機能をもつ艦もある。

第一線で運用される戦闘艦艇ではないため、装甲や武装の搭載能力といったものは重視されていないが、艦隊行動に随伴する必要性があるものには速力や航続力が要求されるため、支援艦艇としてはそれらの性能は重視される傾向にあった。このため、専用に建造された艦も多いが、輸送船を改装したものも多く用いられた。アメリカ海軍では補助巡洋艦(auxiliary cruiser.日本海軍でいうところの特設巡洋艦)を改装して転用したものが複数用いられている。

第二次世界大戦後もアメリカ海軍を始めとして、軍港から離れた海域に展開する任務を持つ海軍で用いられたが、駆逐艦の大型化、居住性の向上に伴い、その必要性は薄れ、アメリカ海軍のものは1997年までに全艦が退役した。

関連項目[編集]

アメリカ海軍の駆逐艦母艦
アメリカ海軍の駆逐艦母艦(補助巡洋艦改装艦)