複素線積分

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複素解析における線積分(せんせきぶん)とは、複素平面内の道に沿った積分であり[1][2][3]、特に道が単純閉曲線の場合の線積分を周回積分(しゅうかいせきぶん)ということがある。

線積分は複素解析の手法である留数計算と密接に関連している[4]

線積分のひとつの使い方として、実変数だけの方法を使うことでは容易には分からない、実数直線に沿った積分の計算がある[5]

線積分の方法は以下を含む。

これらの積分や和を求めるために、これらのうちのひとつ、あるいは、複数を組み合わせた、また、極限をとる様々な方法を使うことができる。

複素平面内の曲線[編集]

複素解析において、積分路複素平面内の曲線の一種である。路に沿う積分では、積分路がその上で積分が適切に定義できる曲線の正確な定義を与える。複素平面内の曲線は、実数直線閉区間から複素平面への連続関数 z: [a, b] → C として定義される。

曲線のこの定義は、直感的な概念と一致するが、閉区間からの連続関数による径数付けを含む。このより正確な定義により、曲線が積分に有用なためにもたなければならない性質が何であるかを考えることができる。以下の小節では、積分できる曲線を、向きを与えることができる有限個の連続曲線から作ることのできるものだけに絞る。さらに、「断片」は互いに交わらない場合だけを考え、各断片は有限の(消えない)連続微分を持つと仮定する。これらの仮定は次のような曲線だけを考えることと対応する。例えばペンによって、切れ目なく一筆書きで、曲線の新しい断片を始める時だけ止まり、ずっとペンは持ち上げないように、たどることができる[6]

向き付けられた滑らかな曲線[編集]

積分路はしばしば向き付けられた滑らかな曲線のことばで定義される[6]。これらは、滑らかな曲線の「断片」の正確な定義を与え、積分路は断片からなる。

滑らかな曲線とは、曲線 z: [a, b] → C であって、微分が消えず連続で、各点が一度だけ通過される(z単射である)ものである、ただし終点が始点と一致する場合 (z(a) = z(b)) だけは例外である。終点が始点と一致するような場合には、曲線は閉曲線と呼ばれ、関数は他のいたるところ単射でなければならず、微分はその一致する点で連続でなければならない (z'(a) = z'(b))。閉でない滑らかな曲線はしばしば滑らかな弧と呼ばれる[6]

曲線の径数付け英語版により曲線上の点に自然な順序が入る:x < y のとき z(x)z(y) より"小さい"。このことは向き付けられた滑らかな曲線 (directed smooth curve) の概念を導く。特定の径数付けに依存しない曲線を考えるのが最も有用である。このことは同じ方向を持つ滑らかな曲線の同値類を考えることによってなされる。すると方向をもつ滑らかな曲線は、ある滑らかな曲線の像である複素平面の点の集合に(径数付けから定まる)自然な順序をいれたものとして定義できる。点のすべての順序付けが滑らかな曲線の自然な順序であるわけではないことに注意。実は、与えられた滑らかな曲線は、そのような順序付けを2つしかもたない。また、ひとつの閉曲線は任意の点を終点として持つことができるが、滑らかな弧の終点となるのは2点のみである。

積分路[編集]

積分路はその上で路に沿う積分を定義する曲線のクラスである。積分路は向き付けられた滑らかな曲線の有限列 γ1, ..., γn からなる向き付けられた曲線であって、すべての 1 ≤ i < n に対して γi の終点が γi+1 の始点と一致するようなものである(そうすると向きが上手く定まる)。積分路はすべての向き付けられた滑らかな曲線を含む。また、複素平面の一点も積分路と考える。記号 + が曲線をつないで新しい曲線を作ることを表すためにしばしば用いられる。したがって n 個の断片からなる積分路 Γ

と書くことができる。

路に沿う積分[編集]

複素関数 fː CC路に沿う積分contour integral, 曲線に沿う積分、線積分)は、実数値関数の積分の一般化である。複素平面内の連続関数に対し、路に沿う積分は線積分の類似で定義することができる。最初に向き付けられた滑らかな曲線に沿った積分を実数値のパラメータの上の積分のことばで定義するのである。より一般的な定義は、区間の分割との類似による積分路の分割とリーマン積分のことばにより与えることができる。どちらの場合も路に沿う積分は積分路を構成する向き付けられた滑らかな曲線上の積分の和として定義される。

積分路の終点が始点と一致するとき、路に沿う積分を周回積分ということがある。

連続関数の場合[編集]

この方法で路に沿う積分を定義するためにはまず実変数上の複素数値関数の積分を考えなければならない。f: RC を実変数 t の複素数値関数とする。f の実部と虚部はしばしばそれぞれ u(t)v(t) と書かれる、つまり

である。すると複素数値関数 f の区間 [a, b] 上の積分は次で与えられる:

f: CC向き付けられた滑らかな曲線 γ 上の連続関数とする。z: RC をその順序(向き)と両立する γ の任意の径数付けとする。すると γ に沿った積分は

と記され、

によって与えられる[6]

この定義は well defined である。つまり、結果は選ばれた径数付けに依存しない[6]。右辺の実積分が存在しない場合には γ に沿う積分は存在しないと言われる。

リーマン積分の一般化として[編集]

リーマン積分の複素変数の関数への一般化は実数からの関数に対する定義との完全な類似でなされる。向き付けられた滑らかな曲線 γ の分割は γ 上の有限個の順序付けられた点の集合と定義される。その曲線上の積分は分割の点での関数値の有限和の極限である。極限は分割の連続する2点の(複素平面での)距離(分割の幅)の最大値が 0 に行くようにとる。

直接的な方法[編集]

直接的な方法は多変数解析学における線積分の計算と類似の手法による積分計算を含む。これは以下の手法を用いることを意味する:

  • 積分路の径数付け
積分路は実変数の微分可能な複素数値関数によって径数付けられる、あるいは積分路は断片に分けられ別々に径数付けられる。
  • 径数付けの被積分関数への代入
径数付けを被積分関数に代入することで積分が一実変数の積分となる。
  • 直接計算
積分は実変数の積分と類似の手法で計算される。

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複素解析における基本的な結果は z−1 の周回積分が 2πi であることである、ただし積分路は単位円周を反時計回りに一周するものをとる(あるいは 0 についての任意の正の向きのジョルダン曲線でもよい)。単位円周の場合には積分

を計算する直接的な方法がある。この積分の計算では、単位円周 |z| = 1z(t) = eit (t ∈ [0, 2π]) で径数付けしたものを積分路として使う。すると dz/dt = ieit であり、積分は次のように計算される。

積分定理の応用[編集]

路に沿う積分を計算するために積分定理を用いることもしばしばある。これは実数値関数が路に沿う積分の計算と一緒に同時に計算されることを意味する。

コーシーの積分公式留数定理のような積分定理は以下の手法において一般的に用いられる:

  • ある特定の閉じた積分路が選ばれる:
積分路は以下のように選ばれる。実数値積分を記述する複素平面の部分を通り、コーシーの積分公式留数定理が使えるように被積分関数の特異点を囲む。
積分は各極のまわりの小さい円周に沿う積分のみに簡約される。
  • コーシーの積分公式あるいは留数定理の適用
これらの積分公式を適用することで積分路全体の積分の値が得られる。
  • 実部と虚部に沿う積分路への積分路の分割
積分路の全体は前に選んだように実数値積分を記述する複素平面の部分を通る積分路 R と複素平面をお横断する積分路 Iに分割できる。積分路全体上の積分はこれらの積分路それぞれの上の積分の和である。
  • 複素平面を横断する積分が和に影響しないことの証明
I 上の積分が 0 であることを示すことができるか、あるいは、求める実数値積分が広義積分のときは I 上の積分が 0 に収束することを示せば、R 上の積分は積分路 R + I に沿う積分に収束する。
  • 結論
上記の段階を示すことができれば、R 上の実数値積分を計算することができる。

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次の積分を考える:

この積分を計算するために、次の複素数値関数を見る:

この関数は ii特異点を持つ。積分路として実数値積分を含む積分路を選ぶ。ここでは実数直線上に境界の直径(a から a まで)を持つ半円が便利である。この積分路を C と呼ぶ。

2つのやり方がある。コーシーの積分公式を使う方法と留数の手法によるものである:

コーシーの積分公式を使う[編集]

次に注意:

したがって

さらに次が成り立つ:

閉曲線の囲む領域内の特異点はただ1つ i のみであるから、

と書くことができ、関数が公式を直接適用できる形になる。するとコーシーの積分公式を用いて

極は二位の極だから上で一階微分を取った。つまり、(zi) が二乗だから、f(z) の一階微分を用いた。もし (zi ) が3乗なら、二階微分を 2! で割ったものを用いることになる。(zi) が1乗の場合は零階微分、すなわち単に f(z) 自身に対応する。

半円の弧を Arc と呼ぶことにすれば、Arc 上の積分が a → ∞ のとき 0 に収束することを示す必要がある。estimation lemma英語版 を用いて

ただし MArc 上の |f(z)| の上界であり、LArc の長さである。今

である。したがって

留数の方法を使う[編集]

i の周りでの f (z)ローラン展開を考える(i は考える必要のある唯一の特異点である)。すると

となる(この級数の導出はローラン級数英語版の計算例を参照)。

留数が i/4 であることは見た目から明らかである(これを確かめるには、上の等式に zi を掛けたものを考え、コーシーの積分公式を用いて両辺を積分すると、第二項のみが 0 でない値となる)。よって留数定理より

したがって前と同じ結果が得られた。

積分路についての注意[編集]

余談ではあるが、他の特異点 i を囲む半円を取らなかったことについて疑問が生じ得る。正しい向きに動いて実軸に沿って積分するには、その積分路は時計回り、つまり負の方向にまわらなければならず、積分全体の符号が逆になる。

これは級数による留数の手法の使用に影響しない。

例 II: コーシー分布[編集]

積分

積分路

確率論においてコーシー分布特性関数のスカラー倍として生じる)は初等解析学のテクニックでは困難である。それを次の積分路 C に沿った線積分の極限として表示することにより計算しよう:実数直線を a から a まで沿って行き、0 を中心とする半円に沿って a から a まで反時計回りに行く。a1 よりも大きく取って、虚数単位 i が曲線の内側に入るようにする。線積分は

である。eitz整関数(複素平面のどこにも特異点を持たない)だから、この関数は分母 z2 + 10 になる点でのみ特異点を持つ。z2 + 1 = (z + i)(zi) であるから、それは z = i あるいは z = −i でのみ起こる。これらの点のうち1つだけが積分路で囲まれる領域に含まれる。f(z)z = i における留数

である。留数定理により、

となる。積分路 C は「まっすぐな (straight)」部分と曲がった弧 (arc) とに分けられるので

でありしたがって

となる。t > 0 のとき

であることを示すことができる。よって t > 0 のとき

である。t < 0 のときi ではなく i をまわる弧を用いた類似の議論によって

が示される。よって最終的に次を得る:

t = 0 のときは積分はただちに実数値の解析学の手法が使えてその値は π である。)

Example (III) – trigonometric integrals[編集]

Certain substitutions can be made to integrals involving trigonometric functions, so the integral is transformed into a rational function of a complex variable and then the above methods can be used in order to evaluate the integral.

As an example, consider

We seek to make a substitution of z = eit. Now, recall

and

Taking C to be the unit circle, we substitute to get:

The singularities to be considered are at 3−1/2i, −3−1/2i. Let C1 be a small circle about 3−1/2i, and C2 be a small circle about −3−1/2i. Then we arrive at the following:

Example (IIIa) trigonometric integrals, the general procedure[編集]

The above method may be applied to all integrals of the type

where P and Q are polynomials, i.e. a rational function in trigonometric terms is being integrated. Note that the bounds of integration may as well be π and -π, as in the previous example, or any other pair of endpoints 2π apart.

The trick is to use the substitution where and hence

This substitution maps the interval [0, 2π] to the unit circle. Furthermore,

and

so that a rational function f(z) in z results from the substitution, and the integral becomes

which is in turn computed by summing the residues of inside the unit circle.

TrigonometricToComplex.png

The image at right illustrates this for

which we now compute. The first step is to recognize that

The substitution yields

The poles of this function are at 1 ± √2 and −1 ± √2. Of these, 1 + √2 and −1 −√2 are outside the unit circle (shown in red, not to scale), whereas 1 − √2 and −1 + √2 are inside the unit circle (shown in blue). The corresponding residues are both equal to −i√2/16, so that the value of the integral is

Example (IV) – branch cuts[編集]

Consider the real integral

We can begin by formulating the complex integral

Keyhole contour.svg

We can use the Cauchy integral formula or residue theorem again to obtain the relevant residues. However, the important thing to note is that z1/2 = e(1/2)Log(z), so z1/2 has a branch cut. This affects our choice of the contour C. Normally the logarithm branch cut is defined as the negative real axis, however, this makes the calculation of the integral slightly more complicated, so we define it to be the positive real axis.

Then, we use the so-called keyhole contour, which consists of a small circle about the origin of radius ε say, extending to a line segment parallel and close to the positive real axis but not touching it, to an almost full circle, returning to a line segment parallel, close, and below the positive real axis in the negative sense, returning to the small circle in the middle.

Note that z = −2 and z = −4 are inside the big circle. These are the two remaining poles, derivable by factoring the denominator of the integrand. The branch point at z = 0 was avoided by detouring around the origin.

Let γ be the small circle of radius ε, Γ the larger, with radius R, then

It can be shown that the integrals over Γ and γ both tend to zero as ε → 0 and R → ∞, by an estimation argument above, that leaves two terms. Now since z1/2 = e(1/2)Log(z), on the contour outside the branch cut, we have gained 2π in argument along γ (by Euler's Identity, eiπ represents the unit vector, which therefore has π as its log. This π is what is meant by the argument of z. The coefficient of 1/2 forces us to use 2π), so

Therefore:

By using the residue theorem or the Cauchy integral formula (first employing the partial fractions method to derive a sum of two simple contour integrals) one obtains

Example (V) – the square of the logarithm[編集]

KeyholeContourLeft.png

This section treats a type of integral of which

is an example.

To calculate this integral, one uses the function

and the branch of the logarithm corresponding to .

We will calculate the integral of f(z) along the keyhole contour shown at right. As it turns out this integral is a multiple of the initial integral that we wish to calculate and by the Cauchy residue theorem we have

Let R be the radius of the large circle, and r the radius of the small one. We will denote the upper line by M, and the lower line by N. As before we take the limit when R → ∞ and r → 0. The contributions from the two circles vanish. For example, one has the following upper bound with the ML-lemma:

In order to compute the contributions of M and N we set on M and on N, with 0 < x < ∞:

which gives

Example (VI) – logarithms and the residue at infinity[編集]

ContourLogs.png

We seek to evaluate

This requires a close study of

We will construct f(z) so that it has a branch cut on [0, 3], shown in red in the diagram. To do this, we choose two branches of the logarithm, setting

and

The cut of z3/4 is therefore (−∞, 0] and the cut of (3−z)1/4 is (−∞, 3]. It is easy to see that the cut of the product of the two, i.e. f(z), is [0, 3], because f(z) is actually continuous across (−∞, 0). This is because when z = −r < 0 and we approach the cut from above, f(z) has the value

When we approach from below, f(z) has the value

But

so that we have continuity across the cut. This is illustrated in the diagram, where the two black oriented circles are labelled with the corresponding value of the argument of the logarithm used in z3/4 and (3−z)1/4.

We will use the contour shown in green in the diagram. To do this we must compute the value of f(z) along the line segments just above and just below the cut.

Let z = r (in the limit, i.e. as the two green circles shrink to radius zero), where 0 ≤ r ≤ 3. Along the upper segment, we find that f(z) has the value

and along the lower segment,

It follows that the integral of

along the upper segment is −iI in the limit, and along the lower segment, I.

If we can show that the integrals along the two green circles vanish in the limit, then we also have the value of I, by the Cauchy residue theorem. Let the radius of the green circles be ρ, where ρ < 1/1000 and ρ → 0, and apply the ML-inequality. For the circle CL on the left, we find

Similarly, for the circle CR on the right, we have

Now using the Cauchy residue theorem, we have

where the minus sign is due to the clockwise direction around the residues. Using the branch of the logarithm from before, clearly

The pole is shown in blue in the diagram. The value simplifies to

We use the following formula for the residue at infinity:

Substituting, we find

and

where we have used the fact that −1 = eiπ for the second branch of the logarithm. Next we apply the binomial expansion, obtaining

The conclusion is that

Finally, it follows that the value of I is

which yields

積分表現[編集]

関数の積分表現 (integral representation) とは路に沿う積分を含む関数の表示である。様々な積分表現が多くの特殊関数に対して知られている。積分表現は理論的な理由で重要となり得る。例えば解析接続関数等式やときには数値評価を与える。

ハンケルの積分路

例えば、リーマンのゼータ関数 ζ(s)ディリクレ級数を用いたもともとの定義

Re(s) > 1 に対してのみ有効である。しかし

(ただし積分はハンケルの積分路英語版 H 上する)はすべての複素数 s に対して有効である。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

関連文献[編集]

外部リンク[編集]