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'''雰囲気'''(ふんいき、{{lang-en|atmosphere}}、{{lang|en|ambience}}{{sfn|コトバンク|loc=ambience}}、{{Lang-de|[[:de:Atmosphäre (Ästhetik)|Atmosphären]]}}{{efn2|[[空気感]]と訳されることもある{{sfn||みすず書房|n.d.}}。}}、{{lang|de|[[:de:Stimmung|Stimmung]]}}{{efn2|name=Stimmung|[[気分]]と訳されることもある{{sfn|八幡|2017}}。}})は、ある特定の場所や人物を取り巻いている[[気分]]的なものを指す語・[[概念]]である<!--本文(主に「語誌」)の要約-->。類義語としてはムード({{lang|en|mood}})が挙げられる{{sfn|佐藤|2013}}<!--文献全体-->。もとは[[大気]]を意味する語であり、冒頭の意味における雰囲気の概念がこの語のもとに集約され定着したのは20世紀初頭ごろである<!--「語誌」-->。なお[[化学]]における雰囲気{{small|({{lang|en|atmosphere}})}}は、ある特定の[[気体]]やそれで満たされた状態を指す{{sfn|コトバンク|loc=atmosphere}}{{sfn|英辞郎}}。
{{字引|date=2019年6月}}
'''雰囲気'''(ふんいき)、{{lang-en-short|ambience}}、ムード、mood)は、ある特定の場所や事物、人物を取り巻いて、感じられる[[光]]や[[音]]、[[匂い]]、気配などを総体として捉えて語ったもの。


以前から[[現象学]]や[[美学]]・[[人文地理学]]・[[心理学]]などにおいて雰囲気概念についての考察はなされてきたが、20世紀末ごろから美学や[[都市論]]においてより盛んに研究がなされるようになっている(雰囲気論的転回)<!--人文学における「雰囲気」-->。[[コミュニケーション]]にも雰囲気は関わり、[[教育学]]などにおいて研究がなされている<!--コミュニケーションと雰囲気-->。また[[物語論|ナラティブ]]や[[テクスト (批評)|テクスト]]に含まれる雰囲気についての研究や批評もある<!--ナラティブやテクストの雰囲気-->。[[音楽]]による雰囲気生成の試みもなされており、[[工学]]においても関連する研究がなされている<!--その他の分野における雰囲気-->。
[[化学]]でいう'''雰囲気'''({{lang-en-short|atmosphere}})は、ある特定の[[気体]]やそれを主とした混合気体の状態、またはその気体の条件下にある状態を指す。


== 語誌と定義 ==
「[[ふいんき]]」と読まれるこもある<ref>{{Cite web |url=https://kanjibunka.com/kanji-faq/old-faq/q0185/ |title=Q0185 よく国語の授業でも問題になる「雰囲気」という言葉の読みですが、「フインキ」と読むのはやはり間違いなのでしょうか? |website=漢字文化資料館 漢字Q&A <旧版> |publisher=[[大修館書店]] |accessdate=2021-04-18}}</ref><ref>{{Cite web|title=「雰囲気」の正しい読み方は? 知らないと恥ずかしい日本語をおさらい【ビジネス用語】|url=https://news.mynavi.jp/article/20180207-581481/|website=マイナビニュース|date=2018-02-07|accessdate=2020-07-17|language=|publisher=}}</ref>。
[[File:Thomas Baldwin, A balloon prospect from above the clouds (1786), p. 154.jpg|thumb|{{harvtxt|Gandy|2017|pp=355f.}} は、{{lang|en|atmosphere}}のダブル・ミーニングの例として、[[トーマス・スコット・ボールドウィン]]による[[熱気球]]旅行についての記述を挙げる。]]

前近代においては、オランダ語の{{lang|nl|Lucht}}の訳語として、『[[気海観瀾]]』(1827年){{efn2|<q>雰囲気者、不<sub>下</sub>啻交<sub>中</sub>諸雰気蒸気之自<sub>レ</sub>地升騰者<sub>上</sub>、気之原質亦不<sub>レ</sub>一</q>。}}などにおいて(とくに地球の)[[大気]]の意味で用いられていた<!--{{sfn|コトバンク|loc=雰囲気(精選版 [[日本国語大辞典]])}}-->。その後[[明治]]初期に英語の{{lang|en|atmosphere}}の訳語として一般化し、明治末期ごろにはある特定の場所や人物の周りに作り出される特別な[[気分]]・ムードなどの意味{{efn2|以下本記事では、この意味ににおける雰囲気を中心に記述する。}}が定着するようになった{{sfn|コトバンク|loc=雰囲気(精選版 [[日本国語大辞典]])}}。英語の{{lang|en|atmosphere}}は、[[ラテン語]]の{{lang|la|Atmosphaera}}({{lang|el|ἀτμός}}〈[[蒸気]]〉+ {{lang|el|σφαῖρα}}〈[[球体]]〉)に由来し、初出は1638年の{{仮リンク|ジョン・ウィルキンズ|en|John Wilkins}}{{efn2|[[イギリス]]の[[神学者]]・[[自然哲学者]](1614年 - 1672年){{sfn|Henry|2009}}{{sfn|コトバンク|loc=ウィルキンズ(世界大百科事典、第2版)}}。}}による月の居住可能性についての論文{{efn2|<q>命題10。{{lang|la|Atmos-Sphæra}}あるいは巨大な蒸気の球体が月という物体を直接取り巻いている</q>。{{sfn|Wilkins|1638}}{{sfn|Gandy|2017|p=354f}}}}であると考えられている{{sfn|Gandy|2017|p=354f}}。その後19世紀初頭ごろに、大気の意味に加え、<q>場所や状況を支配するムードや映画、あるいは小説によって喚起される[[感情]]のごとき文化的表現</q>といった意味でも用いられるようになった{{sfn|Gandy|2017|p=355}}。{{harvtxt|Gandy|2017|p=355}} によると、第2の意味は第1の意味を[[ダブル・ミーニング]]として保持している。

19世紀以前から、場所についての雰囲気的な感覚は詩・日記・旅行記などにおいて描写されてきたが、それらが雰囲気という語に集約され定着したのは20世紀である<!--{{sfn|滝波|2018|p=29}}-->。雰囲気は、[[風景]]・[[場所 (地理学)|場所]]・[[境界#地理|境界]]・[[距離]]といった[[概念]]とは異なりそれを指す語が用いられるようになって初めて認識されるような概念であり、雰囲気の語が多用されることにより雰囲気に対する関心が高まった考えられる{{sfn|滝波|2018|p=29}}。

雰囲気は、実体を持たない曖昧な概念であるため、言語的に表現することは難しいとされる{{sfn|木村ら|2007|p=1}}{{sfn|片上ら|2016|p=143}}{{sfn|木下|2017|p=192}}。[[#20世紀末以降|後述]]の[[ゲルノート・ベーメ]]は、[[芸術]]についての言説においては言語化しにくいものを表現するために消極的かつ安易に雰囲気{{small|({{lang|de|[[:de:Atmosphäre (Ästhetik)|Atmosphären]]}})}}の語が使用されていると指摘しつつ、日常において用いられる雰囲気の語については<q>ある意味で何か不明確なもの、茫洋としたものだが、決してそれが何であるのかがはっきりしないのではなく、そのものの性格を表</q>すものとして積極的な役割を果たしていると評価している{{sfn|古川|2005|p=90}}。また{{仮リンク|トニーノ・グリッフォロ|it|Tonino Griffero}}{{efn2|イタリアの哲学者(1958年生)。}} は雰囲気の特徴について、<q>全てでありかつ何でもない</q>ことであると述べている{{sfn|Gandy|2017|p=358}}。

21世紀初頭における雰囲気の定義の例としては、次のようなものが挙げられる。
* {{harvtxt|大村ら|2014|p=1}} は音楽生成システムについての研究において、[[生活環境]]のなかで様々な[[知覚]]において得られる[[感覚]]の一つであるとしたうえで、<q>環境から知覚される[[情報]]の総体</q>として定義する。
* {{harvtxt|西藤|神宮|2015|p=21}} による[[官能検査|官能評価]]についての研究においては、刺戟と反応の曖昧な関係において連続的に変化する<q>場面を全体として受けとめて実感を伴う[[意識]]状態</q>ないし<q>[[感情]]・情緒や[[意志]]と関係する複雑な多[[感覚]]情報</q>とされる。
また、雰囲気の類義語としては英語の{{lang|en|mood}}からの[[借用語]]であるムードが挙げられ、{{harvtxt|佐藤|2013|pp=48ff.}} によるとこれらの2語は部分に還元されない全体から感じ取られる対象の性質という意味特徴を共有するが、ムードは<q>人間の情緒や感情に由来する</q>という制約を持つ{{efn2|たとえば、人間の存在が希薄な「[[アマゾン熱帯雨林|アマゾンのジャングル]]」「夜中の学校」「無人駅」などと組み合わせる場合や、「逃走した容疑者」についてなど客観的な情報を求める場合には、「ムード」の語は不自然となる{{sfn|佐藤|2013|pp=50f}}。}}点で雰囲気とは異なる。なお哲学などにおいては、気分などとも訳される[[ドイツ語]]の{{lang|de|[[:de:Stimmung|Stimmung]]}}の訳語としても用いられ、日常語とは異なる意味合いで用いられることもあるため、[[#人文学における「雰囲気」|次節]]を参照されたい{{sfn|八幡|2017}}{{sfn|古川|2016|p=39}}。

現代においては、雰囲気の語に含まれる「ンイ」という音の並びは発音しにくい{{efn2|「ンイ」を含む語の発音の変化の例としては、全員(ぜいいん)や原因(げいいん)なども挙げられる{{sfn|大修館書店|n.d.}}。}}ことから、[[誤用|誤って]]「ふいんき」と読まれることが増えている{{sfn|大修館書店|n.d.}}{{sfn|CHIGAKO|2018}}{{sfn|コトバンク|loc=雰囲気([[デジタル大辞泉]])}}。

== 人文学における「雰囲気」 ==
{{see also|気分#哲学における「気分」}}

本節では、[[哲学]]や[[美学]]・[[人文地理学]]における雰囲気[[概念]]について概観する。なお、コミュニケーションにおける雰囲気([[心理学]]や[[教育学]])および[[物語論|ナラティブ]]や[[テクスト (批評)|テクスト]]の雰囲気([[民俗学]]など)については、別途後述する。

=== 1990年ごろまで ===
[[File:Turner - Rain, Steam and Speed - National Gallery file.jpg|thumb|[[ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー|J・M・Wターナー]]はアート<!--出典のartはおそらく西洋美術のみを指しているので、そのニュアンスを独自研究にならない範囲で反映するためにカタカナ語を用いました-->における<q>雰囲気的眼差し</q>の創始者であり、[[印象派]]へと繋がった{{sfn|Volgger|Pfister|2019|p=2}}。]]
[[フリードリヒ・シェリング]]は[[風景画]]論において[[アウグスト・ヴィルヘルム・シュレーゲル]]を引きつつ、主観と客観の音楽的統一として雰囲気{{small|({{lang|de|[[:de:Stimmung|Stimmung]]}})}}{{efn2|name=Stimmung}}について論じている{{sfn|八幡|2017}}{{sfn|八幡|2018|pp=37 & 39f}}。

[[ファイル:Hermann Schmitz Foto (cropped).jpg|サムネイル|127x127ピクセル|left|シュミッツ]]
[[ルートヴィヒ・ビンスワンガー]]や{{仮リンク|ステファン・シュトラッサー|de|Stephan Strasser}}{{efn2|[[オーストリア]]出身の[[哲学者]](1905年 - 1991年)。[[トマス・アクィナス]]や後期[[エトムント・フッサール|フッサール]]の影響を受け、独自の現象学的心理学を提唱した{{sfn|木田ら編|1994|p=525r|loc=シュトラッサー}}{{sfn|コトバンク|loc=ステファン シュトラッサー(20世紀西洋人名事典)}}。}}は[[マルティン・ハイデッガー]]の『[[存在と時間]]』に依拠し、内–外・[[主体と客体|主–客]]の区別を超越し、[[気分]]と互いに超越し合うものとして雰囲気を捉えた{{sfn|魚住|1994}}。[[オットー・フリードリッヒ・ボルノウ]]もハイデッガーを踏まえ、[[場所 (地理学)|場所]]の雰囲気{{small|({{lang|de|Stimmung}})}}と人間心理とが相互に作用するとした{{sfn|滝波|2018|p=28}}{{sfn|レーマン|2019|p=94-95}}。また、[[ヘルマン・シュミッツ]]は、[[感情]]を[[内面]]的なものとして扱う西欧思想を批判したうえで、感情はあらゆる場所において[[空間]]に溢れ出る雰囲気的なものであり、それは身体の揺れ動きにより感知されると主張した{{sfn|魚住|1994}}{{sfn|古川|2005|p=91}}{{sfn|片上ら|2016|p=147}}。

このほか[[フーベルトゥス・テレンバッハ]]は『味と雰囲気』において[[口|口腔]]感覚に着目し、[[嗅覚]]や[[味覚]]といった雰囲気的なものが感知されることによって人と世界との出会いが準備されると考察している{{sfn|魚住|1994}}{{sfn|片上ら|2016}}。地理学においては[[ヘルベルト・レーマン (地理学者)|ヘルベルト・レーマン]]{{efn2|Herbert Lehmann。[[ドイツ]]の[[地理学者]](1901年 - 1971年)。専門は[[地形学]]など{{sfn|Semmel|1985}}。}}が、[[ゲオルク・ジンメル]]の『風景の哲学』の影響の元、風景の雰囲気{{small|({{lang|de|Landschaftsatmosphäre}})}}という概念を分析カテゴリーとして導入し、空間の切り取りである風景が特別な気分や雰囲気によって統一されるとした{{sfn|レーマン|2019|p=94}}。

ボルノウとは対称的なのが[[ジャン・ボードリヤール]]や{{仮リンク|ディーン・マッカネル|es|Dean MacCannell}}{{efn2|[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[文化人類学者]](1940年生)。[[ランドスケープ・アーキテクチャー]]、[[記号論]]、[[社会政策]]などを専門とする{{sfn|Garage|2016}}。}}であり、[[消費社会]]や[[観光産業]]について論じる中で、雰囲気を[[記号学|記号的]]・[[表象|表象的]]なものと見做している{{sfn|滝波|2018|pp=28f}}。1990年代においては、[[ジョン・アーリ]]が観光客の買う商品には場所の雰囲気も含まれるとするなど、雰囲気を[[イメージ]]と捉える傾向が優勢となっていった{{sfn|滝波|2018|pp=28f}}。

=== 20世紀末以降 ===
[[File:Gernot Böhme mit Schaal.JPG|thumb|100px|ベーメ]]
20世紀末ごろから、現象学・文化人類学・[[建築学|建築理論]]・[[文化地理学]]などにおいて雰囲気に対する関心が高まっており、雰囲気論的[[パラダイムシフト|転回]]<small>({{Lang|en|atmospheric turn}})</small>との表現も用いられている{{sfn|Gandy|2017|p=354}}{{sfn|Volgger|Pfister|2019|p=1}}。

[[ゲルノート・ベーメ]]はシュミッツを継承しつつ{{efn2|シュミッツの雰囲気概念は感情を指すのに対し、ベーメの雰囲気概念はより日常語のそれと近く、両者の間には相違点も見られる{{sfn|古川|2016|p=39}}。}}[[現象学]]の立場から、感情的・空間的な性質をもつものとして雰囲気{{small|({{lang|de|[[:de:Atmosphäre (Ästhetik)|Atmosphären]]}})}}を学術的な概念として導入した{{sfn|古川|2005|pp=89-92}}{{sfn|片上ら|2016}}。そこで雰囲気は、[[自己]]の外部たる周囲から襲い掛かり自己に情感を齎すものと定義づけられ、主–客の中間的な位置づけの準物体{{small|({{lang|de|Halbding}})}}という存在身分に置くものとされる{{sfn|立野|2011|pp=17ff}}{{sfn|立野|2014|p=142}}{{sfn|古川|2016|p=39}}。ベーメにおいては[[美]]も雰囲気の一種であり、『雰囲気と美学』では夕暮れ・都市・音響・コミュニケーションにおける雰囲気を考察の対象としている{{sfn|立野|2011|pp=14 & 22f}}{{sfn|片上ら|2016|p=147}}。ベーメは、イメージを媒介として雰囲気が伝えられるとし、町の雰囲気は音や光などの道具によっても演出可能ではあるとする一方で、町の雰囲気について、非視覚的な要素により構成される個性や感覚的に知られる日常生活であるともしており、そこにはボルノウらにつながる雰囲気を深い感情的なものと捉える考え方も残っている{{sfn|立野|2011|pp=21f}}{{sfn|立野|2014|p=142}}{{sfn|滝波|2018|pp=28f}}。

以上のように雰囲気は、記号的な側面と感情的な側面との二面から捉えられる{{sfn|滝波|2018|p=29}}。2003年のフランス語の[[地理学]]事典の「建築や都市の雰囲気{{small|({{lang|fr|Ambiance architecturale et urbaine}})}}」の項においてパスカル・アンフ―{{small|({{lang|fr|Pascal Amphoux}})}}は、現代性の雰囲気(若さや弾けること)と固有性の雰囲気(情緒や[[風土]])という両義性において雰囲気を捉え、前者を幻想にすぎないと批判する一方で、後者についても、[[現実]]そのものであるとしつつ、場所の[[神秘]]化という危険性を孕んでいると述べている{{sfn|滝波|2018|p=29}}。なお、雰囲気を場の固有性とする定義は、{{harvtxt|山内|清水|2010}} にも見られる。

なお、雰囲気概念の[[都市論]]における有用性については、定義が曖昧であり情動との混同が懸念されるといった懐疑的な見解もある{{sfn|Gandy|2017|p=353}}。

=== 西洋人文学の枠組みを超えて ===
[[File:SyunkoSugiura66d.JPG|thumb|[[山水画]]における霧]]

[[日本]]においては、[[小川侃]]が現象学の立場から日本語の[[気]]に着目した論考をおこなっているほか、[[佐々木健一 (美学者)|佐々木健一]]も注目するなど、21世紀初頭現在、美学における雰囲気についての研究が増加している{{sfn|片上ら|2016|p=147}}{{sfn|青木|2017|p=107}}。{{harvtxt|青木|2017}} は、[[西ヨーロッパ|西欧]]的な[[風景]]{{small|({{lang|en|landscape}})}}では大地や[[山水|山・河川・湖沼]]といった<q>[[世界]]を安定的に形成している[[自然]]の構造</q>が重視されるのに対し、[[東アジア]]的な景色においては[[気象]]・[[季節]]・明暗の変化といった<q>[[五感]]で捉えられる情調</q>としての雰囲気が重視されると指摘する{{sfn|青木|2017|p=114}}。ベーメは雰囲気の美学が欧米で注目されていない原因を西欧哲学の[[実体]]重視志向に見ており、青木は[[ドイツ]]の雰囲気研究について西欧の物志向に由来する違和感を表明している{{sfn|青木|2017|pp=120f}}。{{Harvtxt|Gandy|2017|p=354}} も<q>雰囲気という概念に[[批評|批判的]]に関与しようとするのであれば、[[ヨーロッパ]]の[[ヒューマニズム|人文学]]という枠組みの外部に脚を踏み出す必要がある</q>と述べるが、同時に[[身体論]]・[[認識論]]・[[人間論]]などを織り交ぜた[[史学史]]へのより一層の関与も必要であるとしてる。

なお気象と雰囲気の関係について附言しておくと、[[雰囲気#語誌と定義|前述]]のとおりヨーロッパにおける{{lang|en|atmosphere}}といった語も気象関連の意味([[大気圏|大気]])のほうが原義であり{{sfn|Gandy|2017|p=354f}}{{sfn|青木|2017|p=106}}、{{harvtxt|Gandy|2017|pp=355f.}} は<q>[[持続|持続的]]な[[物質]]ないし気象的な[[実体]]が、現実的にであれ想像的にであれ、人間主体を取り巻いたり乱したりするものとして</q>雰囲気に含意されているのだと述べる。また[[ロマン主義|ロマン派]]以来の文学的伝統においても霧の雰囲気は創作に影響を与えており、気象と雰囲気とを関連付ける見方はボルノウやベーメあるいは[[#ナラティブやテクストの雰囲気|後述]]のライストナーにも見られる{{sfn|青木|2017|p=104}}{{sfn|レーマン|2019|pp=91f}}。また[[中国語]]において{{lang|en|atmosphere}}は{{lang|zh|气氛}}(日本語の気分に相当)や{{lang|zh|氛围}}(日本語の常用漢字の分囲に当たり、意味は日本語の雰囲気に相当)と訳されるが、氛の原義は霧や曇りであり、これも気象関連の語と見做せる{{sfn|青木|2017|p=106 & 120}}。

== コミュニケーションと雰囲気 ==
{{see also|場の空気}}

[[会話]]における雰囲気は、{{仮リンク|話者交換|en|Turn-taking}}時の振る舞いにより変化し、[[表情]]に大きな影響を受ける{{sfn|木村ら|2007|p=5}}{{sfn|片上ら|2016|p=146}}。[[コミュニケーション]]の場においては、言葉・表情・視線・頷きなどを通して、本人が関わる会話だけでなく[[他者]]同士の会話からも、雰囲気を容易に読み取ることが可能である{{sfn|木村ら|2007|p=1}}{{sfn|片上ら|2016|p=143}}。また、人は次に生じうる雰囲気を意識的・[[無意識]]的に予測しながらコミュニケーションをおこなっている{{sfn|片上ら|2016|p=143}}。雰囲気をうまく読み取れていないと捉えられた言動は「[[場の空気|空気]]が読めない(KY)」と揶揄的に表現される{{sfn|木村ら|2007|p=1}}。

[[学級]]・[[授業]]や会社の[[オフィス]]においても雰囲気は重要とされ、関連する研究がなされている{{sfn|大久保ら|2013|p=29}}{{sfn|片上ら|2016|p=147}}{{sfn|木下|2017|p=192}}。教育研究においては、[[学級風土]]研究や学級雰囲気が学習の[[動機づけ]]に及ぼす影響についての研究などが中心的に行われてきた{{sfn|岸ら|2010|p=45}}。学級の雰囲気についての[[心理学]]的研究は、雰囲気を測定の対象とするもの(学級風土研究)が主流であったが、それらの研究においては雰囲気そのものについての[[概念]]的理解が不足しており、[[参与観察|参与]]を重視し雰囲気を記述的に書き留める[[定性的研究|質的研究]]においても、「場の全体性と見込まれ雰囲気」が[[対象|対象化]]・[[客観性 (哲学)|客観化]]され、場・事物・他者が「雰囲気の伝達に必要な諸特徴や諸要素」として扱われるようになってしまっていると{{harvtxt|木下|2017|pp=192f}} は指摘する。また[[学級崩壊]]などの問題を考える上では、行動の背景にある授業の雰囲気が重要であると{{harvtxt|岸ら|2010|p=46}} は指摘する。授業における雰囲気についての研究は、授業中の教師と児童の発話研究が中心であり、そのほか児童や第三者に雰囲気を評定させる研究なども行われている{{sfn|大久保ら|2013|p=29}}。さらに{{harvtxt|大久保ら|2013|p=29}} は、教師の[[非言語コミュニケーション|非言語行動]]と雰囲気の形成との関連についても焦点を当てる必要があると述べる。

== ナラティブやテクストの雰囲気 ==
[[file:Morgen-Nebel im Wald.jpg|thumb|left|霧の発生の雰囲気が伝説を生む]]
{{仮リンク|アルブレヒト・レーマン|de|Albrecht Lehmann}}{{efn2|[[ドイツ]]の[[民俗学|民俗学者]](1939年生){{sfn|日本民俗学会|2010}}。}}は、{{仮リンク|口承文芸研究|de|Erzählforschung|label=語り研究}}{{efn2|{{lang|de|Erzählforschung}}。口承文芸研究や説話研究とも訳されるが、[[口承文学|口承文芸]]や[[説話|民間説話]]だけでなくインタビュー、巷の話題、[[物語論|ナラティブ]]、{{仮リンク|ライフ・ヒストリー|en|Life history (sociology)}}、戦争の経験談など、あらゆる種類の<q>人々の語り</q>を扱う{{sfn|レーマン|2019|p=96|loc=訳注1}}。}}において[[気分]]{{small|({{lang|de|Stimmung}})}}や雰囲気{{small|({{lang|de|Atmosphäre}})}}が語りに与える影響が十分に考察されてこなかったと指摘している<!--{{sfn|法橋|2018|pp=20f}}{{sfn|レーマン|2019|p=74}}-->。そのうえでA・レーマンは、雰囲気は<q>[[主観|主観的]]に体験される</q>が<q>個人的なものを超えて、[[文化]]の一部をなし</q>、<q>音や匂い、視覚的印象として[[経験]]され、あらかじめ用意されたパターン({{lang|de|Muster}}<small>[ムスター]</small>)を基準に体験されてから、これにもとづき[[言語|言葉]]で伝達される</q>ものであり、したがって語り研究においては[[テクスト (批評)|テクスト]]全体から、そこに保存された雰囲気を取り出すことができるのだと主張する{{sfn|法橋|2018|pp=20f}}{{sfn|レーマン|2019|p=74}}。なおA・レーマンは、[[メルヘン]]の語り手の雰囲気に着目した{{仮リンク|リンダ・デグ|en|Linda Dégh}}{{efn2|[[ハンガリー]]の[[民俗学者]]・[[口承文学|口承文芸]]研究者(1920年 - 2014年){{sfn|金城ハウプトマン|2019|p=102}}{{sfn|Lloyd|2014}}。}}や、デグの解釈に類似して雰囲気が語り手から聞き手に転写するとした{{仮リンク|マティアス・ツェンダー|de|Matthias Zender}}{{efn2|[[ドイツ]]の[[民俗学者]](1907年 - 1993年)。専門は語り研究・[[崇敬|聖人崇敬]]の研究など。『{{仮リンク|ドイツ民俗学地図|de|Atlas der deutschen Volkskunde}}』への貢献でも知られる{{sfn|Döring|n.d.}}。}}を、[[#人文学における「雰囲気」|上述]]の[[ヘルマン・シュミッツ|シュミッツ]]や[[ゲルノート・ベーメ|ベーメ]]と並べ雰囲気研究の先駆者として挙げている{{sfn|レーマン|2019|p=85}}{{sfn|金城ハウプトマン|2019|p=102}}。

[[file:Federico Paolo Nerly, Canale Grande in Venedig mit Santa Maria della Salute bei Mondschein 3.jpg|thumb|『[[クトゥルフの呼び声 (曖昧さ回避)<!--小説・TRPGの双方を含む-->|クトゥルフの呼び声]]』においては、[[ヴェネツィア]]の建造物も恐怖の雰囲気の一部となる{{sfn|ファルネ|2019|p=22}}。]]
またA・レーマンは、[[霧]]の発生の雰囲気が[[伝説]]を生むとした{{仮リンク|ルートヴィヒ・ライストナー|en|Ludwig Laistner}}{{efn2|[[ドイツ]]の[[文化史家|文学史家]]・作家(1845年 - 1896年)。[[サガ]]の研究などによって知られる{{sfn|Theiner|1982}}。}}や同様に霧の雰囲気について論じたボルノウを引きつつ、[[孤独]]体験こそ太古の伝説的な経験を齎す雰囲気であるとし、『[[ブレア・ウィッチ・プロジェクト]]』といった現代の[[映画]]においてもこの雰囲気は援用されているとも述べる{{sfn|レーマン|2019|p=92}}。[[コズミック・ホラー]]の創始者である[[ハワード・フィリップス・ラヴクラフト]]も、信憑性は作品の構成ではなく[[感情]]の喚起によって生まれるのであり、それゆえ雰囲気が最も重要な要素であるしている{{sfn|ファルネ|2019|p=21}}。それを受け{{harvtxt|ファルネ|2019|p=21}} は、[[クトゥルフ神話]]のような[[小説]]や[[テーブルトークRPG|ロール・プレイング・ゲーム]]においては雰囲気こそが主人公を務めているのだと述べる。また[[物語論|ナラティブ]]・ゲームと呼ばれる[[コンピュータゲーム|コンピューター・ゲーム]]作品は、[[日本]]においては雰囲気ゲーとも呼ばれることがある{{sfn|小野|2019}}。この雰囲気ゲーという言葉は、雰囲気のみについて肯定的でストーリなどについては否定的との意味合いを持つことも多い{{sfn|浅葉|2019}}{{sfn|徳岡|2013}}。これは、映画や小説とは異なり、個々の[[プレイヤー (ゲーム)|プレイヤー]]に雑多な情報群から物語を作り出すことが委ねられているがゆえに、作品に対して抱く感想もそれぞれ異なり、感動にまで至らないことが多いためであると考えられる{{sfn|小野|2019}}。

== 音響の雰囲気と雰囲気の工学 ==
[[#20世紀末以降|上述]]の[[ゲルノート・ベーメ|ベーメ]]は、雰囲気を作り出す上で[[実践]]知識が重要であるとし、[[デザイナー]]や[[広告]]専門家、あるいは百貨店における音楽の専門家といった美学的作業をする人たちが雰囲気の構造を問うスペシャリストであるとした{{sfn|レーマン|2019|p=89}}。{{harvtxt|Gandy|2017|pp=358ff.}} は、[[都市]]における[[サウンドスケープ]]や音楽と雰囲気の関係について考察している。{{harvtxt|坂井ら|2018|p=1}} も、空間の雰囲気を形成する要素として[[視覚]]情報とともに[[聴覚]]情報が重要であり、[[バックグラウンドミュージック|BGM]]により少ない労力で雰囲気を変えることができるとしており、[[マーケティング]]やムード演出のために音楽は広く使われている{{sfn|Gandy|2017|p=358}}。作曲家による雰囲気の解釈や雰囲気の生成の試みの例としては、[[エリック・サティ]](「[[家具の音楽]]」など)や[[ジョン・ケージ]]、あるいは[[ブライアン・イーノ]]が提唱した[[環境音楽]]が挙げられる{{sfn|片上ら|2016|p=145}}。

[[人工知能]]や親和型[[ロボット]]の開発においては、雰囲気を[[測定]]・[[評価]]する手法が必要とされ、関連する研究もなされている{{sfn|西藤|神宮|2013|p=36}}{{sfn|aueki|2016}}。また、[[遠距離恋愛|離れて暮らす恋人]]や家族との[[コミュニケーション]]や[[テレワーク]]において雰囲気を[[通信|伝達]]するためのシステムについても開発がおこなわれている{{sfn|櫻井|2012|p=46}}{{sfn|片上ら|2016|pp=144f}}。2013年以降片上大輔らを中心に、雰囲気工学<small>({{lang|en|Mood Engineering}})</small>の名の下、<q>人工的な雰囲気の[[工学]]的な[[モデル (自然科学)|モデル]]を作成すること</q>を目指し、分野横断的な研究活動が行われている{{sfn|片上|2016}}。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{notelist2|45em}}
<references />
=== 出典 ===
{{reflist|20em}}


==関連項目==
== 参考文献 ==
;書籍
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[[Category:コミュニケーション|ふんいき]]
[[Category:化学|ふんいき]]
{{wiktionary|雰囲気}}
{{wiktionary|雰囲気}}

{{DEFAULTSORT:ふんいき}}
[[Category:コミュニケーション]]
[[Category:教育学]]
[[Category:現象学]]
[[Category:美学の概念]]
[[Category:人文地理学]]
[[Category:感情]]
[[Category:化学]]

2021年5月31日 (月) 01:26時点における版

雰囲気(ふんいき、英語: atmosphereambience[1]ドイツ語: Atmosphären[注 1]Stimmung[注 2])は、ある特定の場所や人物を取り巻いている気分的なものを指す語・概念である。類義語としてはムード(mood)が挙げられる[4]。もとは大気を意味する語であり、冒頭の意味における雰囲気の概念がこの語のもとに集約され定着したのは20世紀初頭ごろである。なお化学における雰囲気atmosphereは、ある特定の気体やそれで満たされた状態を指す[5][6]

以前から現象学美学人文地理学心理学などにおいて雰囲気概念についての考察はなされてきたが、20世紀末ごろから美学や都市論においてより盛んに研究がなされるようになっている(雰囲気論的転回)。コミュニケーションにも雰囲気は関わり、教育学などにおいて研究がなされている。またナラティブテクストに含まれる雰囲気についての研究や批評もある。音楽による雰囲気生成の試みもなされており、工学においても関連する研究がなされている。

語誌と定義

Gandy (2017, pp. 355f.) は、atmosphereのダブル・ミーニングの例として、トーマス・スコット・ボールドウィンによる熱気球旅行についての記述を挙げる。

前近代においては、オランダ語のLuchtの訳語として、『気海観瀾』(1827年)[注 3]などにおいて(とくに地球の)大気の意味で用いられていた。その後明治初期に英語のatmosphereの訳語として一般化し、明治末期ごろにはある特定の場所や人物の周りに作り出される特別な気分・ムードなどの意味[注 4]が定着するようになった[7]。英語のatmosphereは、ラテン語Atmosphaeraἀτμός蒸気〉+ σφαῖρα球体〉)に由来し、初出は1638年のジョン・ウィルキンズ英語版[注 5]による月の居住可能性についての論文[注 6]であると考えられている[11]。その後19世紀初頭ごろに、大気の意味に加え、場所や状況を支配するムードや映画、あるいは小説によって喚起される感情のごとき文化的表現といった意味でも用いられるようになった[12]Gandy (2017, p. 355) によると、第2の意味は第1の意味をダブル・ミーニングとして保持している。

19世紀以前から、場所についての雰囲気的な感覚は詩・日記・旅行記などにおいて描写されてきたが、それらが雰囲気という語に集約され定着したのは20世紀である。雰囲気は、風景場所境界距離といった概念とは異なりそれを指す語が用いられるようになって初めて認識されるような概念であり、雰囲気の語が多用されることにより雰囲気に対する関心が高まった考えられる[13]

雰囲気は、実体を持たない曖昧な概念であるため、言語的に表現することは難しいとされる[14][15][16]後述ゲルノート・ベーメは、芸術についての言説においては言語化しにくいものを表現するために消極的かつ安易に雰囲気Atmosphärenの語が使用されていると指摘しつつ、日常において用いられる雰囲気の語についてはある意味で何か不明確なもの、茫洋としたものだが、決してそれが何であるのかがはっきりしないのではなく、そのものの性格を表すものとして積極的な役割を果たしていると評価している[17]。またトニーノ・グリッフォロイタリア語版[注 7] は雰囲気の特徴について、全てでありかつ何でもないことであると述べている[18]

21世紀初頭における雰囲気の定義の例としては、次のようなものが挙げられる。

  • 大村ら (2014, p. 1) は音楽生成システムについての研究において、生活環境のなかで様々な知覚において得られる感覚の一つであるとしたうえで、環境から知覚される情報の総体として定義する。
  • 西藤 & 神宮 (2015, p. 21) による官能評価についての研究においては、刺戟と反応の曖昧な関係において連続的に変化する場面を全体として受けとめて実感を伴う意識状態ないし感情・情緒や意志と関係する複雑な多感覚情報とされる。

また、雰囲気の類義語としては英語のmoodからの借用語であるムードが挙げられ、佐藤 (2013, pp. 48ff.) によるとこれらの2語は部分に還元されない全体から感じ取られる対象の性質という意味特徴を共有するが、ムードは人間の情緒や感情に由来するという制約を持つ[注 8]点で雰囲気とは異なる。なお哲学などにおいては、気分などとも訳されるドイツ語Stimmungの訳語としても用いられ、日常語とは異なる意味合いで用いられることもあるため、次節を参照されたい[3][20]

現代においては、雰囲気の語に含まれる「ンイ」という音の並びは発音しにくい[注 9]ことから、誤って「ふいんき」と読まれることが増えている[21][22][23]

人文学における「雰囲気」

本節では、哲学美学人文地理学における雰囲気概念について概観する。なお、コミュニケーションにおける雰囲気(心理学教育学)およびナラティブテクストの雰囲気(民俗学など)については、別途後述する。

1990年ごろまで

J・M・Wターナーはアートにおける雰囲気的眼差しの創始者であり、印象派へと繋がった[24]

フリードリヒ・シェリング風景画論においてアウグスト・ヴィルヘルム・シュレーゲルを引きつつ、主観と客観の音楽的統一として雰囲気Stimmung[注 2]について論じている[3][25]

シュミッツ

ルートヴィヒ・ビンスワンガーステファン・シュトラッサードイツ語版[注 10]マルティン・ハイデッガーの『存在と時間』に依拠し、内–外・主–客の区別を超越し、気分と互いに超越し合うものとして雰囲気を捉えた[28]オットー・フリードリッヒ・ボルノウもハイデッガーを踏まえ、場所の雰囲気Stimmungと人間心理とが相互に作用するとした[29][30]。また、ヘルマン・シュミッツは、感情内面的なものとして扱う西欧思想を批判したうえで、感情はあらゆる場所において空間に溢れ出る雰囲気的なものであり、それは身体の揺れ動きにより感知されると主張した[28][31][32]

このほかフーベルトゥス・テレンバッハは『味と雰囲気』において口腔感覚に着目し、嗅覚味覚といった雰囲気的なものが感知されることによって人と世界との出会いが準備されると考察している[28][33]。地理学においてはヘルベルト・レーマン[注 11]が、ゲオルク・ジンメルの『風景の哲学』の影響の元、風景の雰囲気Landschaftsatmosphäreという概念を分析カテゴリーとして導入し、空間の切り取りである風景が特別な気分や雰囲気によって統一されるとした[35]

ボルノウとは対称的なのがジャン・ボードリヤールディーン・マッカネルスペイン語版[注 12]であり、消費社会観光産業について論じる中で、雰囲気を記号的表象的なものと見做している[37]。1990年代においては、ジョン・アーリが観光客の買う商品には場所の雰囲気も含まれるとするなど、雰囲気をイメージと捉える傾向が優勢となっていった[37]

20世紀末以降

ベーメ

20世紀末ごろから、現象学・文化人類学・建築理論文化地理学などにおいて雰囲気に対する関心が高まっており、雰囲気論的転回atmospheric turnとの表現も用いられている[38][39]

ゲルノート・ベーメはシュミッツを継承しつつ[注 13]現象学の立場から、感情的・空間的な性質をもつものとして雰囲気Atmosphärenを学術的な概念として導入した[40][33]。そこで雰囲気は、自己の外部たる周囲から襲い掛かり自己に情感を齎すものと定義づけられ、主–客の中間的な位置づけの準物体Halbdingという存在身分に置くものとされる[41][42][20]。ベーメにおいてはも雰囲気の一種であり、『雰囲気と美学』では夕暮れ・都市・音響・コミュニケーションにおける雰囲気を考察の対象としている[43][32]。ベーメは、イメージを媒介として雰囲気が伝えられるとし、町の雰囲気は音や光などの道具によっても演出可能ではあるとする一方で、町の雰囲気について、非視覚的な要素により構成される個性や感覚的に知られる日常生活であるともしており、そこにはボルノウらにつながる雰囲気を深い感情的なものと捉える考え方も残っている[44][42][37]

以上のように雰囲気は、記号的な側面と感情的な側面との二面から捉えられる[13]。2003年のフランス語の地理学事典の「建築や都市の雰囲気Ambiance architecturale et urbaine」の項においてパスカル・アンフ―Pascal Amphouxは、現代性の雰囲気(若さや弾けること)と固有性の雰囲気(情緒や風土)という両義性において雰囲気を捉え、前者を幻想にすぎないと批判する一方で、後者についても、現実そのものであるとしつつ、場所の神秘化という危険性を孕んでいると述べている[13]。なお、雰囲気を場の固有性とする定義は、山内 & 清水 (2010) にも見られる。

なお、雰囲気概念の都市論における有用性については、定義が曖昧であり情動との混同が懸念されるといった懐疑的な見解もある[45]

西洋人文学の枠組みを超えて

山水画における霧

日本においては、小川侃が現象学の立場から日本語のに着目した論考をおこなっているほか、佐々木健一も注目するなど、21世紀初頭現在、美学における雰囲気についての研究が増加している[32][46]青木 (2017) は、西欧的な風景landscapeでは大地や山・河川・湖沼といった世界を安定的に形成している自然の構造が重視されるのに対し、東アジア的な景色においては気象季節・明暗の変化といった五感で捉えられる情調としての雰囲気が重視されると指摘する[47]。ベーメは雰囲気の美学が欧米で注目されていない原因を西欧哲学の実体重視志向に見ており、青木はドイツの雰囲気研究について西欧の物志向に由来する違和感を表明している[48]Gandy (2017, p. 354) も雰囲気という概念に批判的に関与しようとするのであれば、ヨーロッパ人文学という枠組みの外部に脚を踏み出す必要があると述べるが、同時に身体論認識論人間論などを織り交ぜた史学史へのより一層の関与も必要であるとしてる。

なお気象と雰囲気の関係について附言しておくと、前述のとおりヨーロッパにおけるatmosphereといった語も気象関連の意味(大気)のほうが原義であり[11][49]Gandy (2017, pp. 355f.) は持続的物質ないし気象的な実体が、現実的にであれ想像的にであれ、人間主体を取り巻いたり乱したりするものとして雰囲気に含意されているのだと述べる。またロマン派以来の文学的伝統においても霧の雰囲気は創作に影響を与えており、気象と雰囲気とを関連付ける見方はボルノウやベーメあるいは後述のライストナーにも見られる[50][51]。また中国語においてatmosphere气氛(日本語の気分に相当)や氛围(日本語の常用漢字の分囲に当たり、意味は日本語の雰囲気に相当)と訳されるが、氛の原義は霧や曇りであり、これも気象関連の語と見做せる[52]

コミュニケーションと雰囲気

会話における雰囲気は、話者交換英語版時の振る舞いにより変化し、表情に大きな影響を受ける[53][54]コミュニケーションの場においては、言葉・表情・視線・頷きなどを通して、本人が関わる会話だけでなく他者同士の会話からも、雰囲気を容易に読み取ることが可能である[14][15]。また、人は次に生じうる雰囲気を意識的・無意識的に予測しながらコミュニケーションをおこなっている[15]。雰囲気をうまく読み取れていないと捉えられた言動は「空気が読めない(KY)」と揶揄的に表現される[14]

学級授業や会社のオフィスにおいても雰囲気は重要とされ、関連する研究がなされている[55][32][16]。教育研究においては、学級風土研究や学級雰囲気が学習の動機づけに及ぼす影響についての研究などが中心的に行われてきた[56]。学級の雰囲気についての心理学的研究は、雰囲気を測定の対象とするもの(学級風土研究)が主流であったが、それらの研究においては雰囲気そのものについての概念的理解が不足しており、参与を重視し雰囲気を記述的に書き留める質的研究においても、「場の全体性と見込まれ雰囲気」が対象化客観化され、場・事物・他者が「雰囲気の伝達に必要な諸特徴や諸要素」として扱われるようになってしまっていると木下 (2017, pp. 192f) は指摘する。また学級崩壊などの問題を考える上では、行動の背景にある授業の雰囲気が重要であると岸ら (2010, p. 46) は指摘する。授業における雰囲気についての研究は、授業中の教師と児童の発話研究が中心であり、そのほか児童や第三者に雰囲気を評定させる研究なども行われている[55]。さらに大久保ら (2013, p. 29) は、教師の非言語行動と雰囲気の形成との関連についても焦点を当てる必要があると述べる。

ナラティブやテクストの雰囲気

霧の発生の雰囲気が伝説を生む

アルブレヒト・レーマンドイツ語版[注 14]は、語り研究ドイツ語版[注 15]において気分Stimmungや雰囲気Atmosphäreが語りに与える影響が十分に考察されてこなかったと指摘している。そのうえでA・レーマンは、雰囲気は主観的に体験される個人的なものを超えて、文化の一部をなし音や匂い、視覚的印象として経験され、あらかじめ用意されたパターン(Muster[ムスター])を基準に体験されてから、これにもとづき言葉で伝達されるものであり、したがって語り研究においてはテクスト全体から、そこに保存された雰囲気を取り出すことができるのだと主張する[59][60]。なおA・レーマンは、メルヘンの語り手の雰囲気に着目したリンダ・デグ英語版[注 16]や、デグの解釈に類似して雰囲気が語り手から聞き手に転写するとしたマティアス・ツェンダードイツ語版[注 17]を、上述シュミッツベーメと並べ雰囲気研究の先駆者として挙げている[64][61]

クトゥルフの呼び声』においては、ヴェネツィアの建造物も恐怖の雰囲気の一部となる[65]

またA・レーマンは、の発生の雰囲気が伝説を生むとしたルートヴィヒ・ライストナー英語版[注 18]や同様に霧の雰囲気について論じたボルノウを引きつつ、孤独体験こそ太古の伝説的な経験を齎す雰囲気であるとし、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』といった現代の映画においてもこの雰囲気は援用されているとも述べる[67]コズミック・ホラーの創始者であるハワード・フィリップス・ラヴクラフトも、信憑性は作品の構成ではなく感情の喚起によって生まれるのであり、それゆえ雰囲気が最も重要な要素であるしている[68]。それを受けファルネ (2019, p. 21) は、クトゥルフ神話のような小説ロール・プレイング・ゲームにおいては雰囲気こそが主人公を務めているのだと述べる。またナラティブ・ゲームと呼ばれるコンピューター・ゲーム作品は、日本においては雰囲気ゲーとも呼ばれることがある[69]。この雰囲気ゲーという言葉は、雰囲気のみについて肯定的でストーリなどについては否定的との意味合いを持つことも多い[70][71]。これは、映画や小説とは異なり、個々のプレイヤーに雑多な情報群から物語を作り出すことが委ねられているがゆえに、作品に対して抱く感想もそれぞれ異なり、感動にまで至らないことが多いためであると考えられる[69]

音響の雰囲気と雰囲気の工学

上述ベーメは、雰囲気を作り出す上で実践知識が重要であるとし、デザイナー広告専門家、あるいは百貨店における音楽の専門家といった美学的作業をする人たちが雰囲気の構造を問うスペシャリストであるとした[72]Gandy (2017, pp. 358ff.) は、都市におけるサウンドスケープや音楽と雰囲気の関係について考察している。坂井ら (2018, p. 1) も、空間の雰囲気を形成する要素として視覚情報とともに聴覚情報が重要であり、BGMにより少ない労力で雰囲気を変えることができるとしており、マーケティングやムード演出のために音楽は広く使われている[18]。作曲家による雰囲気の解釈や雰囲気の生成の試みの例としては、エリック・サティ(「家具の音楽」など)やジョン・ケージ、あるいはブライアン・イーノが提唱した環境音楽が挙げられる[73]

人工知能や親和型ロボットの開発においては、雰囲気を測定評価する手法が必要とされ、関連する研究もなされている[74][75]。また、離れて暮らす恋人や家族とのコミュニケーションテレワークにおいて雰囲気を伝達するためのシステムについても開発がおこなわれている[76][77]。2013年以降片上大輔らを中心に、雰囲気工学Mood Engineeringの名の下、人工的な雰囲気の工学的なモデルを作成することを目指し、分野横断的な研究活動が行われている[78]

脚注

  1. ^ 空気感と訳されることもある[2]
  2. ^ a b 気分と訳されることもある[3]
  3. ^ 雰囲気者、不啻交諸雰気蒸気之自地升騰者、気之原質亦不
  4. ^ 以下本記事では、この意味ににおける雰囲気を中心に記述する。
  5. ^ イギリス神学者自然哲学者(1614年 - 1672年)[8][9]
  6. ^ 命題10。Atmos-Sphæraあるいは巨大な蒸気の球体が月という物体を直接取り巻いている[10][11]
  7. ^ イタリアの哲学者(1958年生)。
  8. ^ たとえば、人間の存在が希薄な「アマゾンのジャングル」「夜中の学校」「無人駅」などと組み合わせる場合や、「逃走した容疑者」についてなど客観的な情報を求める場合には、「ムード」の語は不自然となる[19]
  9. ^ 「ンイ」を含む語の発音の変化の例としては、全員(ぜいいん)や原因(げいいん)なども挙げられる[21]
  10. ^ オーストリア出身の哲学者(1905年 - 1991年)。トマス・アクィナスや後期フッサールの影響を受け、独自の現象学的心理学を提唱した[26][27]
  11. ^ Herbert Lehmann。ドイツ地理学者(1901年 - 1971年)。専門は地形学など[34]
  12. ^ アメリカ文化人類学者(1940年生)。ランドスケープ・アーキテクチャー記号論社会政策などを専門とする[36]
  13. ^ シュミッツの雰囲気概念は感情を指すのに対し、ベーメの雰囲気概念はより日常語のそれと近く、両者の間には相違点も見られる[20]
  14. ^ ドイツ民俗学者(1939年生)[57]
  15. ^ Erzählforschung。口承文芸研究や説話研究とも訳されるが、口承文芸民間説話だけでなくインタビュー、巷の話題、ナラティブライフ・ヒストリー英語版、戦争の経験談など、あらゆる種類の人々の語りを扱う[58]
  16. ^ ハンガリー民俗学者口承文芸研究者(1920年 - 2014年)[61][62]
  17. ^ ドイツ民俗学者(1907年 - 1993年)。専門は語り研究・聖人崇敬の研究など。『ドイツ民俗学地図ドイツ語版』への貢献でも知られる[63]
  18. ^ ドイツ文学史家・作家(1845年 - 1896年)。サガの研究などによって知られる[66]

出典

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参考文献

書籍
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