地震雲

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地震雲(じしんぐも、じしんうん)とは、地震の前後に観測されると言われるの形、またその現象を言う。なお、専門的な地球科学気象学からは地震の発生と地震雲とよばれる雲との関連は存在しないとされている。

概要[編集]

古くからの地震予知研究においては、誰かが前兆と思った現象の報告と地震の発生状況などを照らし合わせるなどして得られた、経験則に基づいて研究や予知が行われた。地震雲もその一種であり、観測者にとって見慣れない、もしくは何らかの形で特徴的だと思われた雲をその対象としている。

身近に且つ手軽に観察できる「雲」を対象としているため、一般市民が参加した観測・報告による研究も行われている。しかしながら、それら全ては民間やアマチュア学者による独自の研究である。

独自研究によって地震雲を説明するアマチュア学者や学説は多く発表されているが、地震発生の過程と観測される雲の発生する原因との因果関係はまったく証明されておらず、科学的な根拠について説明する研究もそれほど多くはない。また、地震雲か否かの識別方法に明確な基準もなく、地震予知の方法であるととして広まっているのが現状である。

前述の通り、公的機関や学術団体は総じて地震の観測と地震雲と呼ばれるものに科学的な因果関係がないとする見解をとっている。日本地震学会は「地震研究者の間では一般に関係性はないとされているが、関係が皆無であると断言はできない。しかし過去の報告例は大地震の前にたまたま特異な形の雲を見たことで地震と雲を結びつけてしまう一方、地震が起きなかった場合には雲のことを忘れてしまうと考えられる」としている。気象庁は「無いと言いきるのは難しいが、仮にあるとしても『地震雲』とはどのような雲で、地震とどのような関係で現れるのか科学的な説明がなされていない」としている。大多数の科学者や政府・行政の公式的な見解は「報告された『地震雲』とされるものの中には明らかに地震と関係のない雲も多く含まれており、その観測や報告は正確性について疑問が残るうえ、地震雲と地震との関係性も明らかになっていない」としている。ここで注意すべきは、科学者はその基本的な立場として、たとえ可能性が0%に近くても「その出来事がまったくない」とは言えないことである。

現状で「地震雲研究」は、その手法が科学的妥当性を欠いているとされており、わざわざ研究する価値がないと考える専門家がほとんどである。

さらに、地震予知の可能性を検証したいとする者が日本や中国などのアマチュア研究者の中にいる反面[1]、「地震雲」はオカルト疑似科学だとして全面否定する意見もあり、「地震雲」の情報がカルト詐欺に悪用されているという指摘もある[2]。 近年ではTwitterなどSNSが発達したことで、マスコミや個人、そして一部のトンデモ本作者が注目や利益を集める目的で、でたらめに取り上げることが多いとの指摘もある。

また、毎日雲を撮影し、たまたま大地震が起こると「当たった」と騒ぎ立てる個人も存在するので、注意が必要である。確証バイアス承認欲求も参照。

地震雲の発生メカニズムと言われているもの[編集]

現在のところ、地震雲の発生メカニズムについて合意が広く得られた説明はなく、また雲の発現と地震の発生との間に因果関係も明らかにされていない。しかし、地震雲発生メカニズムの仮説としては、例えば、有明海の地下500メートルの坑道の気温と湿度の関係の観測結果から考えると、地震雲は「断層付近の地下の歪みにより気温の異常増加が起こり、その様な断層線があればその上で起こる」との説明を真鍋大覚がしている[3] など、いくつかのメカニズムが示されている。

典型的な仮説としては、震源周辺から発生する電磁波が雲の生成に影響を与えるというものがある[4]地球の磁場宇宙線太陽風による磁場などがあるが、この仮説の電磁波は、それらの磁場の異常または他の原因によってできた磁場によるものである。

地震の発生前には、断層周辺に大きな圧力がかかり、その圧力によってさまざまな現象が起こると考えられている。岩石の中には圧力を加えると電磁波を発生させるものがあり、大きな規模で圧力がかかると大きな電磁波と磁場が発生すると考えられている。また、圧力によって地中の磁性体が変性・変形して磁場を変えたり、岩盤の破壊や圧力変性による地電流の異常が磁場を変えたりすることも要因として考えられている。

電磁波の放射によって、地上にも磁場変化や電磁波放射が及ぶ。高エネルギーの電磁波は気体分子イオン化させる(霧箱参照)ため、大気中に増加したイオンが水蒸気凝結核となって雲の成長を促進し、地震雲が作られるとされている[5]。また、磁場の変化の場合、強い磁場の中に反磁性体の雲粒や凝結核があるとそれが浮上することが知られており、このようなメカニズムで地震雲が作られるとされている[6]

しかし、磁場変化や電磁波放射の発生あるいは電磁波による雲の生成については一定の理解が得られているものの、『地下で発生した磁場変化や電磁放射が厚い地面や大気という媒体をどのように通過するのかについて』は理解が得られるような説が出されていない。そのため、俗説として扱われるにとどまっている。また、人工的な電磁波発生源(レーダー、スマートフォン、テレビ、ラジオの電波)が多数あるにもかかわらず、その電磁波によって雲の発生が観測されていないのはおかしいといった批判もある[7]

そして、雲の形状や高度を多角的に多くの観測点で観測すると、震源地の方位や、地震の規模、日時などが特定できるとしている地震雲研究者がいるものの、その多くが経験則に基づくものであり、基本的な統計すら現在の所はない

テレビ番組などでは「みのもんたのSOSシリーズ」の2005年9月30日の第4弾の中で「"科学的" 検証」が放映されたりしたが、根拠までは提示されていないのが現状である。

地震雲と言われるものの特徴と分類[編集]

地震雲とされやすい帯状の雲、ポーランドのズデーテン山地にて撮影された山岳波によるレンズ雲

一般的に地震雲は、気象現象として説明可能な雲と間違えやすいとされる。間違えられやすいのが、巻雲高積雲層積雲飛行機雲などである。地震雲の形状はいずれも通常の雲とは異なるという考え方、逆にいずれも通常の雲と同一で発生メカニズムが異なるだけだという考え方、あるいはその両方であるという考え方などがある。一般的に地震雲とされる雲の特徴は以下のとおりである[4]

  • 比較的低い位置(低い高度)に発生することが多い。
  • 風に流されない(流されにくい)。
  • 長時間形を変えず消えない。
  • 大地震だけに限らず、小規模な地震の前にも地震雲が発生する。
  • 雨天や曇天など、空が広く雲に覆われている時には、地震雲とそうでない雲の判別が難しい。

地震雲の分類については、いくつかのものがある。広く合意を得られたものや学術的な名称となったものではないが、一般的な例として以下に挙げる[4][8]

断層型
雲とがあるラインを境にくっきりと分かれるような雲。断層状あるいは状などと形容される。
筋状・帯状
地面と平行に細長く伸びる雲。すじ状、状、状、などと形容される。
洗濯板状
洗濯板の凹凸のように、細長い雲が平行に多数並ぶもの。
肋骨状・波紋状
広がる波紋のように、同心円状に複数の弧が並ぶ雲。魚の骨にも例えられる。
放射状
ある点から広がるように、放射線状に広がる筋状・帯状の雲。
弓状
1つのの形をした雲。(カマ)にも例えられる。
竜巻型・螺旋状
地面に対して鉛直あるいは斜めに伸びる、竜巻漏斗雲のような雲。のようにくびれをともなったり、のように螺旋状になったりするものもある。
稲穂型・鞘豆型・レンズ状
細長くを引く、稲穂あるいは彗星のような形状の雲。鞘のように短く尾を引くものもある。また、レンズ状に固まったものもある。ウナギUFOなどにも例えられる。大きく固まったものもあり、「熊のジョン」とも呼ばれる。
色関連
夕焼け朝焼けなどのときに、空や雲の色、色彩コントラストが異常なものとなるもの。黄色金色などがある。

脚注[編集]

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  1. ^ 「建議重視『地震雲』観測研究(中国科学院物理所)」1979年8月2日光明日報
  2. ^ 似非科学・・・特に地震天体起源説や地震雲説・・・を追放すべし。 横井和夫、2005年2月25日。
  3. ^ 鎌田忠三郎『これが地震雲だー雲は嘘をつかないー』中日新聞社 1980年8月 P.147
  4. ^ a b c 地震雲について 地震情報サイトJIS 地震防災ネットワーク
  5. ^ 地震雲 地震被害0をめざして
  6. ^ 地震雲モデル Archived 2007年5月7日, at the Wayback Machine. マックスの夢世界
  7. ^ 地震雲批判(2) 横井調査設計
  8. ^ 地震雲の基本形 Archived 2008年1月6日, at the Wayback Machine. 地震は予知できる!?

出典[編集]

関連項目[編集]