医療大麻

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医療大麻または大麻由来医薬品に関する各国の法規制
  合法/解禁
  非犯罪化
  法律上違法(限定的な取締り)
  違法
  不明・データなし
医療大麻

医療大麻(いりょうたいま、Medical Cannabis, Medical Marijuana)、時に医療マリファナとは、大麻に含有されるテトラヒドロカンナビノール (THC) やその他のカンナビノイド、あるいは、それらに類似した構造を持つ合成カンナビノイドを利用した生薬療法である。あくまで治療方針の一つであって、大麻の種類を指す言葉ではない。

アメリカでは2016年6月時点で全50州中25州と首都ワシントンD.C.[1][2][3]、他にカナダイスラエルベルギーオーストリアオランダイギリススペインドイツフィンランドオーストラリアコロンビアなどで認められている。通常、大麻の使用には処方箋が必要になり、地域的な法によって販売(配給)の方法が異なる。大麻の医療利用について研究が進められている[4][5][6][7]。アメリカでは、食品医薬品局(FDA)と麻薬取締局(DEA)は「大麻には医療価値はない」との見解を示しているが、各州法によって医療大麻薬局から合法的に医療用大麻を利用できる。

医療大麻には数多くの銘柄があり、含有されるカンナビノイドの配合比率が多様であるため、効能や薬理作用が異なり、したがって異なった多くの症状に特化して処方されている。アメリカ合衆国では、腰痛、消耗症候群、慢性痛、末期エイズ患者の食欲増進、ガンの化学療法に伴う吐き気の緩和などのために処方されている[8]。多くの場合、乾燥大麻として処方され、摂取方法としては喫煙であり、嗜好品としての大麻と同様にパイプにつめてから燃焼させて成分を吸引する。

合成されたTHCであるドロナビノールは、大麻の主成分であるデルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(デルタ-9-THC、通称THC)の純異性体であり、マリノールという製品名で医薬品として管理され販売されている。合成カンナビノイドのナビロンは、欧米でセサメットという製品名で販売されている。大麻抽出成分を含有するナビキシモルスは、サティベックスという商品名で、カナダや[9]イギリスにて医薬品として処方されている。これらの合成カンナビノイドや大麻抽出成分医薬品は、法律において大麻とは異なる規制管理下に置かれている。

日本では、大麻草は大麻取締法が規制し、含有されるTHCは麻薬及び向精神薬取締法の規制により[10]、医療目的であっても使用、輸入ならびに所持は禁止されている。2013年ごろから日本で規制されていない、大麻の茎や樹脂からとれた成分カンナビジオール (CBD) を含むオイルが日本に輸入されるようになっている。CBDの医療効果にもまた期待が寄せられている[11]

医療大麻とヴェポライザー英語版(気化器)
医療大麻

歴史[編集]

薬としての大麻には、少なくとも3000年の歴史があり、19世紀には西洋でも用いられ、痛み、炎症、けいれんの緩和に言及されてきた[12]

1912年の万国阿片条約が、1925年に見直された際、インド大麻草については統計的・科学的見地から研究されることが望ましいとされていたが、アフリカやアジアなど使用習慣のある国は消極的であったが、乱用が社会問題化していたエジプトの提案で大麻製剤(チンキ)の医療や学術上の目的のみの制限に加えて、国際的な取引に関する規制が行われることとなった[13]。この国際連盟の阿片条約を、国際連合と世界保健機関が引き継ぎ、後続の1961年の麻薬に関する単一条約が締結され、大麻はこの条約で規制される[13]。これを補足する1971年の向精神薬に関する条約では、2002年には、世界保健機関の専門委員会は、ドロナビノールの乱用の傾向が公衆衛生や社会への重大な危険性とはならないとして、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(デルタ-9-THC)の全ての立体化学的異性体をスケジュールIVへと指定するよう勧告した(医療用途を認めた医薬品としての規制への変更)[14]

1937年には、アメリカの財務省はマリファナ税法を課したが、アメリカ医師会 (AMA) は、研究が制限されることからこれに反対した[12]。1942年には、『米国薬局方』から除去された[12]。日本では「印度大麻草」および「印度大麻草エキス」は、1886年に公布された『日本薬局方』に「鎮痛、鎮静もしくは催眠剤」として収載され、さらに、1906年の第3改正で「印度大麻草チンキ」が追加収載された。これらは、1951年の第5改正日本薬局方まで収載されていたが、第6改正日本薬局方において削除された。

2016年11月30日には、世界保健機関の専門委員会は、医療大麻の使用実態や、また委員会による正式な審査を受けていないことを認め、審査のための文書の準備を開始した[15]

成分[編集]

大麻は窒素を含まない、炭素水素酸素のみからなるカンナビノイド (CB) と呼ばれる特有の成分を61種含んでいる(窒素を含まないため、植物に広く含有されるアルカロイド成分ではない)。

テトラヒドロカンナビノール[編集]

テトラヒドロカンナビノールは、THCの略称で知られている大麻の主な抗精神性の成分である。ハーバード大学の試験管およびマウスを使った研究で、THCが一般的な肺癌腫瘍の成長を半減させ、転移拡大する能力を抑えることが示されている[16]。ドイツの臨床研究ではTHCの経口投与で線維筋痛症の痛みに対して顕著な緩和効果が見られている[17]

カナビジオール[編集]

カンナビジオールは、CBDとして知られている。医療大麻の主成分のひとつであり、大麻草からおよそ40%のCBDが抽出可能である[18]。CBDには痙攣不安神経症炎症嘔吐などの緩和と癌細胞の成長の抑制に作用する[19]。さらに近年の研究により統合失調症に対する非定型抗精神病薬としての効果があることが示されている[20]。2007年11月に公表された研究報告ではCBDが試験管内で乳癌の悪性癌細胞を減らし、浸襲性を軽減することが明らかになった。これは毒性のない外因性の要因で攻撃的な腫瘍の活性低下に繋がる事を意味する[21][22]。また、CBDは神経保護作用のある抗酸化物質である[23]

CBDの神経保護能力はジブチルヒドロキシトルエンと同等(EC50=3.3〜3.7µM)とみられ、精神作用がTHCより弱く、高用量投与が可能と考えられている。その機序は、NMDA受容体カンナビノイド受容体タイプ1に関与していないと考えられている。CBD(30µM以上)は80〜90%の神経保護を達成した。THC(10µM)もCBDと同等(50%)の神経保護作用を示した[24]

2-アラキドノイルグリセロール[編集]

2-アラキドノイルグリセロール英語版 (2-AG) は、体内に自然に存在する内因性カンナビノイドであり、神経の過剰な興奮を防ぐことに有用であるとされている[25]。また、慢性疼痛、不安や抑うつ、肥満の治療に有用であるとされている[26][27]

用法[編集]

乾燥大麻、ハシシ(大麻樹脂)、チンキ、合成THC、抽出大麻成分、鎮痛・消炎パッチ、クリーム、調理大麻など様々な形態で用いられる。

乾燥大麻・大麻樹脂[編集]

大麻の品種ごとに成分が異なる。傾向としてはサティバ種にはCBDが多く含まれており、インディカ種にはCBDが少なく、THCが多く含まれている。

喫煙パイプ及びジョイント
喫煙パイプやジョイント(大麻を煙草状にしたもの)などで乾燥大麻を燃やして煙を吸う方法である。
即効性があり、効率良く効果が得られる。欠点として有害なタールが発生するため、呼吸器官への損傷が懸念される。大麻の抗癌物質が作用して発癌リスクは低いとする論文もある[28]
ヴェポライザー
ヴェポライザーと呼ばれる器具を使って、乾燥大麻から大麻成分を気化させることによってタールを発生させることなく摂取する方法である。また即効性があり、効率良く効果が得られ、効果もジョイントとほぼ同等である。病院で用いられることが多い[29]
調理大麻
大麻をクッキーやチョコレートなどにして経口摂取する方法である。
即効性が無い分、長く持続する。服用後1時間以上かかる。摂取量の調整が難しい[29]
得られる効果は大きい。

大麻製剤[編集]

合成大麻成分や抽出大麻成分の錠剤・カプセルまたはスプレーなどの医薬品。

ドロナビノール(Δ9-THCの純異性体
アメリカ合衆国ではマリノールという製品名で販売されている。即効性はなく、服用後1時間以上かかる。また得られる効果も弱い。米国規制物質法スケジュールIII薬物である。目眩・眠気・過度の多幸感・パラノイド反応(偏執病)・思考異常などの副作用が出ることがある[29]。18%の者に「高揚感、目眩、混乱、傾眠」が起こった[30]
米国国家毒性プログラムによる2年間の発癌性試験では、ラット50mg/kgでは発癌性の証拠がなく、250および 500mg/kg/日でも同様だが、125mg/kg/日では雄雌の甲状腺濾胞細胞腺腫が発現した[30]。なお、ラット50mg/kgは、HED換算で臨床用量(20mg)の約20倍に相当する。
ナビロン(THC模倣のラセミ混合物
欧米でセサメットの製品名で販売されている。米国規制物質法スケジュールII薬物である。
ナビキシモルス
サティベックスの製品名で販売される、大麻の全成分を抽出した液体状の医薬品である。スプレーの携帯で使用される。即効性は少々遅いがドロナビノールと比べると早い。得られる効果は乾燥大麻と比べると劣っている[29]
アメリカにおける摂取方法の評価[29](2006年)
セキュリティ[31]
(10)
安全性[32]
(5)
使い易さ[33]
(10)
医療効果[34]
(25)
総合評価
(50)
ドロナビノール 10 5 5 2 22
クッキーおよびチョコ 8 5 5 11 29
サティベックス 10 5 10 15 40
パイプおよびボング 7 3 8 23 41
ヴェポライザー 7 5 6 24 42
ジョイント 6 3 10 24 43

効能[編集]

大麻には鎮痛作用、沈静作用、催眠作用、食欲増進作用、抗癌作用、眼圧の緩和、嘔吐の抑制などがあり、アメリカ合衆国では慢性痛患者の8.9%が自己治療で大麻を使用している[35]。また、モルヒネなどのオピオイド系鎮痛薬やイブプロフェンのような非ステロイド系抗炎症剤に十分な効果が見られない疼痛に対して大麻が有効であるとする論文がある[36][37][38][39]。ほかに、神経保護作用や、脳細胞の新生を促す作用が存在する可能性が示唆されている[40]

大麻はHIV[41]アルツハイマー[42]うつ病[43]強迫性障害[44]不眠症[45]てんかん気管支喘息帯状疱疹多発性硬化症筋萎縮性側索硬化症クローン病パーキンソン病など、約250種類の疾患に効果があるとする論文がある[46]

医療大麻が注目される理由には

  • 身体的害(副作用)が少なく、第一選択薬として望ましい。
  • 製造、栽培が容易かつ安価。
  • 法的規制の問題を除けば、本質的には製造・入手が容易かつ安価。
  • 多くの品種が存在しており、成分(THC、CBDなど)のバランスが多様。
  • 嗜好植物としての大麻には多くの品種が存在しており、薬効成分(THC、CBDなど)のバランスが多様なため、患者の個人差・病状の差に適合した品種を見つけることができる(一種のテーラーメイド医療と言える)。
  • 化学薬品ではない。
  • 既存の治療薬の効果が薄かったり、副作用が強い患者に対して別の選択肢となりうる。(代替医療)
  • いまだ有効な治療薬が存在しない疾患、難病に対して効果が認められることがある。

などが挙げられる[47][48]

2010年代の西洋では、痛みの管理のために処方されたオピオイドの過剰摂取死の増加はオーストラリアを除いて2010年代のトレンドであり[49]、医療大麻を合法化したアメリカの州におけるそのような過剰摂取の減少から、危険性がより少ない大麻は注目される[50]

緑内障[編集]

大麻の摂取が眼圧の低下をもたらすとの幾つかの論文がある。緑内障の原因として眼圧の上昇による視神経の損傷が挙げられており、これらの研究発表により多くの人が大麻摂取を用いた眼圧の低下が緑内障の治療法になると考えた。1970年代にアメリカ合衆国で行われた研究は、大麻の喫煙時に眼圧が低下することを示した[51]。大麻から抽出された薬物が緑内障治療としての効果を持つか否かを解明する試みの一環として、1978年から1984年にかけてアメリカ国立眼科研究所は調査研究を助成した。それらの研究において経口的もしくは経静脈的に投与された時、もしくは喫煙をした時に、大麻の派生物は眼圧を低下させることが証明された[52]。しかし、目への局部投与ではそれは証明されず、また、市場で流通するその他の治療薬に比べて安全にかつ有効的に眼圧を低下させるかについても証明されなかった。2003年、アメリカ眼科学会(American Academy of Ophthalmology)は「現在利用でき得る薬物に比べて、緑内障治療の為に大麻使用することによる軽減されるリスク、及び、増大する恩恵の証明を科学的な証拠は示さなかった」と見解している[51]

薬物依存症[編集]

大麻には、コカイン、アルコール、オピエート(麻薬)の依存症における渇望を緩和し、オピエート依存の治療結果を改善するという研究結果がある[53]。24人の被験者のランダム化された二重盲検の予備研究で、CBDの吸入器からの吸入は、偽薬に比較してタバコの本数を有意に減少させた[54]

適応疾患[編集]

下記は文献や診察を元にして、大麻を用いる事で何らかの治療効果が得られた疾患の表である[46]。疾患名は『国際疾病分類第9版』(ICD-9)に準拠する。

副作用[編集]

通常の摂取では目の充血、頻脈、喉の渇きなどがある。長期使用は精子の濃度が低くなることが観測されているが、短期間の大麻や大麻成分の医療使用が生殖機能を妨げるといった深刻な懸念を指摘しする研究結果はまだ出ていない[47]

大麻の医療使用では深刻な副作用が起こらないとする論文がある[55]煙による害を除けば、大麻使用による副作用は他の医薬品で許容されている副作用の範囲内にある[47]

大麻は依存性が低く、耐性もカフェイン程度に低いため[56][57]、適正使用では依存症に陥ったり、摂取量が増えたりすることはない。また、大麻が直接の原因(1次的死亡原因)による死亡例は無い[58][59]

WHOの依頼により2015年に作成された「大麻とその医療使用についての最新版」は[60]、毎日の大麻使用者の25-50%が大麻に嗜癖が形成されているという現行の推定があり、医学的監督の下で長期的に無制限に使用されるなら安全に用いられるとは確信できないとしている。

分類別死亡者数[58](1997-2005年)
分類 1次的死亡原因 2次的死亡原因
大麻 0 279
制吐剤[61] 196 429
抗痙攣剤[62] 118 56
抗精神病剤[63] 1,593 702
その他[64] 8,101 492
合計
大麻 0 279
FDA承認薬(17種) 10,008 1,679

各国の法律と医療大麻の状況[編集]

日本[編集]

日本では大麻取締法第四条第一項第二号と第三号の規定により、大麻から製造された医薬品の施用は出来ない。そのため医療目的での所持も取締りの対象となり、7年以下または10年以下の懲役刑となる。また、大学などの研究機関で主にカンナビノイド受容体作動薬を使った研究が少ないながらも行われているが、臨床試験は行われていない。

アメリカ合衆国[編集]

アメリカ合衆国の各州における大麻使用に関する法律の状況
  医療大麻が合法の州
  大麻の所持が法律において非犯罪化されている州
  医療と法律における所持の非犯罪化の両方の州
  大麻が合法化されている州
医療大麻薬局

アメリカ合衆国の州法では、医療目的の大麻の使用が認められている州が、2016年6月時点で全50州中25州あり、アラスカ州カリフォルニア州コロラド州ハワイ州メイン州メリーランド州ミシガン州モンタナ州ネバダ州ニューメキシコ州オレゴン州ロードアイランド州バーモント州ワシントン州ペンシルバニア州オハイオ州ほかである[1][2][65]。しかし、アメリカ合衆国連邦法である規制物質法の元では、大麻はスケジュールIに分類され厳しく管理されており、医療使用も認められていない。マリノールは規制物質法の基スケジュールIIIに分類され、医師による処方が許容されている。また、食品医薬品局(FDA)[66]麻薬取締局(DEA)[67]は「大麻には医療価値はない」との見解を示している。

医療大麻法が施行されている州では、医師による処方箋と医療大麻のライセンスを発行してもらうことで、医療大麻薬局( Dispensary)や医療大麻クラブなどで大麻を入手できる。しかし州法によって合法的に医療用大麻を販売・所持していても、連邦法では違法であるため、連邦捜査機関のDEAFBIによって逮捕されるといった問題[68]がある。そのため、2000年にエイズ治療に大麻を所持・使用していた、作家ピーター・マクウイリアムズが逮捕され、大麻を使用するための裁判を強要されたが、嘔吐による窒息で死亡するといった事態が起きている(医療大麻は制吐作用も含む)。そうした状態が、ジョージ・W・ブッシュ政権終了まで続いたが、バラク・オバマ政権において、2009年2月にホワイトハウス広報担当官は、医療大麻関連の施設へのDEAによる強制捜査を終了することを発表して[69]、DEAのミシェル・レオンハート局長とエリック・ホルダーアメリカ合衆国司法省長官は、医療大麻に対する強制捜査を終結したことを宣言した[70]

アメリカにおける医療大麻法は、1996年にカリフォルニア州の住民投票によって成立したのが始まりである。1998年にはアラスカ州、オレゴン州、ワシントン州で住民投票により成立した。アリゾナ州は住民投票で法案が通過しているが、州憲法によって執行不能である。ワシントンD.C.でも、住民投票で法案が通過しているが、連邦議会に執行を阻止される。2007年のコネチカット州では法案が議会を通過したが、知事による拒否権発動で不成立に至っている[71]。2014年に、大麻販売がコロラド州で許可され、ワシントン州でも許可される予定である。

2011年ワシントン州最高裁は「連邦法の下ではワシントン州の患者であっても合法的に大麻を使用する権利を持っているわけではない」[72]とし、2015年コロラド州の最高裁判所は、「被雇用者は州法によって医療用マリファナの使用は認められている。しかし、連邦法の下では違法であり、州法は被雇用者を擁護しない」[73]として、いずれも雇用主は医療用マリファナ使用の被雇用者を解雇できると判決した。2008年カリフォルニア州最高裁[74]、2010年オレゴン州最高裁[75]も同様の判決をしている。

カナダ[編集]

カナダ保健省大麻医療利用課は多発性硬化症、脊髄損傷、脊髄疾患、癌、HIV/エイズ、重度の関節炎、てんかんの患者を対象にして医療大麻のライセンスの発行をしている。しかし、運営がうまく機能していないため、ライセンス取得者数が少なく、ライセンス発行の遅延や品質の良い大麻が提供されていないなどの欠点がある。そのため、医療目的での大麻使用者の大半が法的には違法に大麻をディスペンサリーや医療大麻クラブなどから購入して所持・使用している。

オランダ[編集]

オランダは1976年より寛容裁策を行い、コーヒーショップで処方箋やライセンスに関係なく大麻を購入できるようになっている。2003年にすべての薬局で処方箋による大麻の取扱いを行ったが、高価で品質が良くなかったために売れ行き不振で2005年に取扱い中止に至っている。が、2006年にグローニンゲンで成分構成の違う160種類以上の効力の強い大麻を専門の薬局にて安価で販売が再開されている[76]。政府が提供する大麻にはガンマ線照射が義務づけられており、細菌のコロニー数がコーヒーショップで売られている大麻よりも圧倒的に少ない。

オーストリア[編集]

2008年7月9日、オーストリア議会は医療目的と研究のための大麻栽培を認可した[77]

イスラエル[編集]

テルアビブの医療クリニックで保健省の許可を得て、癌やエイズ患者の痛み緩和のために合法的に使用されている。保健省からライセンスを受けられるのは癌、エイズ、クローン病、その他の病気による慢性的な疼痛、治療の副作用で苦しんでいる患者に限定されている[78]

スペイン[編集]

スペインでは1990年代後半から2000年代前半にかけて医療大麻の非犯罪化と合法化運動が行われ、2001年にカターニャの議会は全会一致で医療大麻が合法化された。それに次いでアラゴンバレアレス諸島の議会でも合法化された。スペインの刑法では大麻の販売が禁止されているが、使用は禁止されていない。2000年前半まで刑法では大麻の医療使用とリクリエーション使用とが区別されていなかった。しかし次第に、いくつかの判例では使用目的によって判決に変化が見られるようになった。2006年からは大麻種子の販売が合法化され、公共の場での所持・使用は禁止されたが、プライベートでの所持・使用は認可された。さらに個人の土地で大麻の栽培が認可された。

いくつかの研究では癌、エイズ、多発性硬化症、発作、喘息などの患者に治癒効果があることが報告されている。これらの研究は様々なスペインの機関が指揮を執り、マドリード・コンプルテンセ大学のエマニエル・グスマン教授を筆頭にラ・ラグーナ病院のルイス・ゴンザレス・フェリア神経科医またはバルセロナ大学によって行われた。

法律制定後、いくつかの大麻クラブがバスク国カタルーニャ州で設立された。これらのクラブは欧州内でも初めての非営利団体で会員は大麻の栽培費用を負担する形式になっている。2006年にはクラブの会員は裁判で大麻の所持と販売を放免された。

フィンランド[編集]

フランス[編集]

薬物政策に対しては欧州内でも保守的な立場だったが、2013年6月に保健省は従来の政策を転換し、大麻の活性成分の医療目的利用を認める方針を発表した。さらに、2014年1月に同省は大麻由来の医薬品の処方を解禁すると発表した。フランス医薬品・保険製品安全庁(ANSM)による初の販売許可を受けた措置である。 [79] [80] [81]

ドイツ[編集]

医療大麻は薬局で慢性痛多発性硬化症トゥレット症候群などで保健省から大麻の使用を認可された患者を対象にして販売している。販売されている大麻はオランダから輸入したTHC含有量18%の大麻で15ユーロ(約1800円)とオランダの薬局で売られている大麻の2倍の値段である[82]

ベルギー[編集]

マケドニア[編集]

2016年6月、マケドニアで大麻の医療利用が合法化された。マケドニア医薬品庁のマリア・ダルコフスカ・セラフィモフスカ長官は報道陣に対し、医師は今後、大麻の主要な精神活性成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)を0.2%未満含有する薬剤を処方することが可能となり、薬局での購入が可能となると述べた。 [83]

スリランカ[編集]

伝統療法のアーユルヴェーダには大麻を使った調剤が多くあり、現在でも使われている。しかし大麻禁止措置がとられているため、医療目的の大麻の栽培は行われていない。そのため現在はその大部分が違法栽培で押収された大麻が使われている。が、品質と量が安定しないなどの問題点がある[84]

オーストラリア[編集]

2016年2月、オーストラリア議会は麻薬法を改正し、医療大麻が合法化された。この改正によって、医療目的と科学的研究目的の栽培が認められるようになった。[85]

メキシコ[編集]

大麻の使用は法律上は違法だが、2015年11月、メキシコの最高裁判所は「大麻を使用する目的での栽培禁止は違憲である」とし、大麻の合法化を訴えた原告に対し、自家用栽培と使用を認める判決を下した。これにより、広範囲な合法化に繋がる可能性が生まれた。[86]また、2015年9月、1日に400回以上のてんかん発作に苦しむ8歳の少女に対し、メキシコ政府は例外的な措置として大麻の使用を認めた。[87]さらに、2016年4月、メキシコのエンリケ・ペニャニエト大統領は医療用大麻の合法化を提言した。[88]

コロンビア[編集]

2015年12月、コロンビアのフアン・マヌエル・サントス大統領は、医療大麻の合法化と規制を定めた大統領令に署名した。[89]

ブラジル[編集]

2016年5月、ブラジル政府はMedical Marijuana, Inc.社の大麻オイルであるRSHO(Real Scientific Hemp Oil)を処方薬として承認した。適用疾患は、ガンてんかんパーキンソン病慢性疼痛となっている。[90]

アルゼンチン[編集]

2009年8月、アルゼンチン最高裁は個人使用のための大麻所持を罰する法は違憲であるとした。最高裁裁判長長官リカルド・ロレンゼッティは、「他者に対して明確な危険を与えない限り、私的な行動は合法である」とした。 [91]

合法化運動[編集]

医療大麻の合法化を求めるデモ行進

欧米では医療大麻の合法化運動などの活動が長年の間行われている。2009年1月にはバラク・オバマ陣営が大統領就任前に立ち上げた「市民の提言集」[92]では“大麻規制の終了”が投票によって1位にランクインされている。また、政権への提案を募ったChange.orgでも、“大麻合法化”提案が約20000票を獲得して2位に4500票の差で1位にランクインした[93]

大麻合法化の活動団体であるマリファナ・ポリシー・プロジェクト(MPP)は2010年の住民投票において、オハイオ、マサチューセッツ、アリゾナの3州で医療大麻法の成立を目標に掲げている。また議会による医療大麻法の制定に向けてイリノイ、ミネソタ、ニューハンプシャー、ニューヨーク、デラウエア、アイオワ、ノースカロライナ、ペンシルベニア、バージニアの9州でロビー活動を展開している[94]

医療大麻合法化の著名な支持者は、ノーベル賞受賞者のミルトン・フリードマンハーバード大学医学部のL・グリンスプーン準教授といった学者、ウィリー・ネルソンスヌープ・ドッグなどのアーティスト、ロン・ポール共和党議員[95]など多岐にわたる。中には過去に大麻規制派に属していた支持者もおり、"麻薬のないアメリカ財団(Drug Free America Foundation)"の副理事長だったデイビッド・クラールや1996年のワシントンDCでバー修正法によって医療大麻法の執行を阻止したボブ・バー元下院議員などが医療大麻のためのロビー活動に合意している[96][97]

医療大麻を支持する団体としてはアメリカ内科医師会、アメリカ医師会医学生部会、アメリカ家庭医学会、アメリカ公衆衛生協会など[98]の約300の医療機関が支持している。また、アメリカ精神医学会が総会で全会一致で医療大麻の支持を採択した[99]

アメリカ家庭医学会は、若干の州が医療大麻の使用を合法化したことを支持しないとする[100]。アメリカ精神医学会は、2013年の文書で、医療大麻研究の推進を支持するものの、マリファナと精神障害の関係を警告し、副作用についての十分な臨床所見が得られるまでは、現在の方針と施策は変えられてはならないとする[101]

日本でも小規模ながらも合法化運動や医療大麻に関する裁判[102][103]が行われている。

脚注[編集]

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注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b “New York Becomes Twenty-Third State to Legalize Medical Marijuana”. TIME. (2014年7月8日). http://time.com/2966900/new-york-medical-marijuana/ 2014年8月10日閲覧。 
  2. ^ a b “ニューヨーク制限付医療大麻合法化 23州目”. webdice. (2014年6月23日). http://www.webdice.jp/topics/detail/4261/ 2014年8月10日閲覧。 
  3. ^ abc NEWS: Pa. Ohio Becomes Latest State to Legalize Medical Marijuana
  4. ^ Peer-Reviewed Medical Studies Involving Cannabis and Cannabis Extracts (1990 - 2008) Medical Marijuana ProCon.org
  5. ^ Medical Use National Organization for the Reform of Marajuana Laws
  6. ^ Medical Marijuana Science and Studies Marajuana Policy Project
  7. ^ New Studies Expose Government Lies About Medical Pot Paul Armentano National Organization to Reform Marijuana Laws Foundation AlterNet, Independent Media Institute
  8. ^ Marijuana Concerns, アメリカ食品医薬品局
  9. ^ SATIVEX Fact Sheet, カナダ保健省
  10. ^ 具体的な成分は「麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令」(平成二年八月一日政令第二百三十八号)で指定されている。大麻取締法で規制される大麻草およびその製品に含有されるデルタ8THC、デルタ9THCを精製するのに必要なものは除外され、かつ分解反応以外の化学反応によって得られたものが指定されている。
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参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]