井辻朱美
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井辻 朱美 (いつじ あけみ) | |
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誕生 |
1955年12月12日(66歳)![]() |
職業 | 翻訳家、歌人、評論家、小説家 |
言語 | 日本語 |
国籍 |
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最終学歴 | 東京大学 修士(比較文学) |
ジャンル | SF・ファンタジー、短歌、評論 |
代表作 |
翻訳『エルリック・サーガ』シリーズ 翻訳『歌う石』 評論『ファンタジーの魔法空間』 |
主な受賞歴 |
短歌研究新人賞(1978年) 新書館フォアレディース賞(1980年) 星雲賞海外長篇翻訳部門(1986年) サンケイ児童出版文化賞(1996年) 日本児童文学学会賞(2003年) |
デビュー作 | 「水の中のフリュート」 |
配偶者 | 黒崎政男 |
影響を受けたもの
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影響を与えたもの
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井辻 朱美(いつじ あけみ、1955年12月12日 - )は、日本の翻訳家、ファンタジー小説家、歌人。白百合女子大学文学部児童文化学科教授。
人物[編集]
東京大学理学部生物学科卒・同大学院人文系研究科比較文学比較文化専攻修了[1]。
J・R・R・トールキンなどの正当ファンタジーの愛好家として出発し[2]、英米のファンタジー小説を多く翻訳する。また自身も、ロード・ダンセイニ[3]などの英米ファンタジーの世界観の影響を受けたファンタジー小説を多数著している。作風は軽やかで明るいものが多い[2]。ファンタジー評論家の石堂藍は、言葉への深いこだわりを持ち、徹底して空想的な世界を描く作家と評し、山尾悠子と好一対のファンタジストと述べている[2]。児童文学総合雑誌「ネバーランド」(てらいんく刊行)編集委員[4]。日本ペンクラブ会員。
歌人としては短歌結社「詩歌」にて、前田夕暮の長男である前田透に師事した後、1984年より歌人集団「かばん」創刊メンバーとして所属。本人がFT短歌(ファンタジー短歌)と呼ぶ独特の世界観を持ったファンタジックな短歌を詠む[3]。詩人・翻訳家の原葵は「壮大なスペース・ロマンが短歌の中で繰りひろげられている。どの歌もすべて物語の予感にみちている。」と評している[3]。現在、同誌発行人。
オペラが趣味でドイツ語に長じ、NHK-BSで字幕を手がけた経験もある。 裏千家茶道準教授、藤間流の日舞名取でもある。
略歴[編集]
- 1955年、東京都新宿区に生まれる。大蔵省官僚・大林組副社長となる井辻憲一(1924-1997)の長女[5]。
- 1974年、東京教育大学附属高等学校卒業。高校在学中より「ユリイカ」に詩を投稿。『指輪物語』を原書で読み、ワーグナー理解のためドイツ語を学び、ヴァイオリンを弾く。東京大学理科二類入学、大学のオーケストラで黒崎政男と出会う。4年生の頃作歌を始める。
- 1978年、東京大学理学部生物学科人類学専攻卒業、同大学院人文系研究科比較文学比較文化専攻進学。前田透主宰「詩歌」に参加。作品「水の中のフリュート」で第21回短歌研究新人賞受賞。
- 1980年、「ファンタジーの構造をめぐって-C・S・ルイスとジョージ・マクドナルド」を論文として修士号取得。SF小説「ザ・テール・オブ・ザ・スターリット・シティ」で第3回新書館フォアレディース賞受賞(選者は寺山修司)。
- 1984年、前田透の死去により「詩歌」解散。中山明、林あまりらとともに歌人集団「かばん」創刊。
- 1986年、訳書『エルリック・サーガ』シリーズ(マイケル・ムアコック:ハヤカワ文庫)が第17回星雲賞(海外長篇翻訳部門)受賞。
- 1990年、「かばん」発行人に就任。
- 1996年、訳書『歌う石』(O・R・メリング:講談社)が、第43回サンケイ児童出版文化賞受賞。
- 1998年、白百合女子大学文学部児童文化学科助教授。
- 2003年、『ファンタジーの魔法空間』にて第27回日本児童文学学会賞受賞。訳書『影の王』(スーザン・クーパー:偕成社)が第10回BABEL国際翻訳大賞児童文学・絵本・ヤングアダルト部門受賞。
- 2004年、教授に昇進。
著書[編集]
評論・エッセイ[編集]
- 『夢の仕掛け』(NTT出版 1994)
- 『ファンタジーの森から』(アトリエOCTA 1994)
- 『とっても奇蹟な日常』(ヴォイス 1995)
- 『ファンタジーの魔法空間』(岩波書店 2002)
- 『魔法のほうき ファンタジーの癒し』(廣済堂ライブラリー 2003)
- 『ファンタジー万華鏡(カレイドスコープ)』(研究社 2005)
- 『映画にもTVにもなったファンタジー・ノベルの魅力』編著 七つ森書館 2013
- 『ファンタジーを読む』(青土社 2019)
小説[編集]
- 『風街物語』(1988・哲学書房)
- 「鍵の物語-「風街物語」異聞」 めるへんめーかー 企画・編 『魔法の鍵』収録(1989・集英社)[6]
- 『エルガーノの歌』(1990・ハヤカワ文庫)
- 『パルメランの夢』(1991・ハヤカワ文庫)
- 『ヘルメ・ハイネの水晶の塔 上下巻』(1991・講談社X文庫)
- 『トヴィウスの森の物語』(1992・ハヤカワ文庫)
- 『幽霊屋敷のコトン』(1992・講談社X文庫)
- 『完全版 風街物語』(1994・アトリエOCTA)
- 『遥かよりくる飛行船』(1996・理論社)
歌集[編集]
- 『地球追放』(1982・沖積舎)
- 『水族』(1986・沖積舎)
- 『吟遊歌人』(1991・沖積舎)
- 『コリオリの風』(1993・河出書房新社)
- 『風の千年伝説』(1996・クインテッセンス出版)
- 『井辻朱美歌集』(2001・沖積舎)
- 『水晶散歩―井辻朱美歌集』(2001・沖積舎)
- 『クラウド』(2014・北冬舎)
詩集[編集]
- 『エルフランドの角笛』(1980・沖積舎)
監修[編集]
- 『お姫さま大全 100人の物語』(2011・講談社)
- 瑞樹奈穂『グレース・ケリー (コミック版世界の伝記) 』(2014・ポプラ社)
訳書[編集]
- ベアトリス・クレスウェル/ケイト・グリーナウェイ絵『ペピト王さまの冒険』新書館 1980
- トム・リーミイ『沈黙の声』サンリオSF文庫 1981、ちくま文庫 1992
- リチャード・アダムズ『コルサンの岩山』新書館 1982
- リチャード・アダムズ『鉄のオオカミ』新書館 1982
- ベルナルド・ベルトルッチ,N.ディ・ジョバンニ『1900年』新書館 1982
- タニス・リー『白馬の王子』ハヤカワ文庫、1983
- フィリス・アイゼンシュタイン『妖魔の騎士』ハヤカワ文庫 1983
- マイケル・ムアコック『エルリック・サーガ 2-8』、『エレコーゼ・サーガ 1-3』シリーズ ハヤカワ文庫、1983-1994、2006-2007
- ローズマリー・キングスランド『ジャスト・ア・ジゴロ』新書館 1983
- ナンシー・スプリンガー『アイルの書シリーズ』全7冊 ハヤカワ文庫、1984-1985
- ウィリアム・H・ホジスン『夜の声』創元推理文庫 1985
- トム・リーミイ『サンディエゴ・ライトフット・スー』サンリオSF文庫 1985
- R・A・マカヴォイ『魔法の歌』ハヤカワ文庫、1986-1987
- タニス・リー『影に歌えば』早川文庫 1986
- フランシーン・パスカル「スイート・ヴァレー・ハイ シリーズ」ハヤカワ文庫、1986-1987
- C.A.スミス『イルーニュの巨人』創元推理文庫 1986
- タニス・リー『銀色の恋人』早川文庫 1987
- メレディス・アン・ピアス『ダークエンジェル』早川文庫 1987
- マイケル・ムアコック『ブラス城年代記』創元推理文庫、1988-1989
- スーザン・デクスター『アレール姫の指環』社会思想社・現代教養文庫 1988
- ウィル・シェタリー/エンマ・ブル編『緑の猫 魔法都市ライアヴェック2』竹生淑子共訳 社会思想社・現代教養文庫 1989
- ガイ・ゲイブリエル・ケイ『フィオナヴァール・タペストリー』ハヤカワ文庫、1989
- タニス・リー『ドラゴン探索号の冒険』社会思想社・現代教養文庫 1990
- ジェイン・ヨーレン『光と闇の姉妹』ハヤカワ文庫 1991
- ジェイン・ヨーレン『白い女神』ハヤカワ文庫 1991
- ナンシー・スプリンガー『赤の魔術師』社会思想社・現代教養文庫 1992
- エレン・カシュナー『吟遊詩人トーマス』早川文庫 1992
- ジョーン・エイキン『ぬすまれた夢』くもん出版 1992
- アラン・アルバーグ『だれも欲しがらなかったテディベア』講談社 1993
- テリー・ブルックス『妖魔をよぶ街』『魔法の王国売ります!』魔術師の大失敗、大魔王の逆襲、見習い魔女にご用心(『ランドオーヴァー』シリーズ)』ハヤカワ文庫、1989-1996
- R.A.マカヴォイ『ナズュレットの書』ハヤカワ文庫、1993
- リジア・ダンテス『まだ見ぬ自分を探して』ヴォイス 1993
- エレン・カシュナー『剣の輪舞』ハヤカワ文庫 1993
- メルバ・コルグローブほか『ロストラブサバイバルブック 愛するなにかを、なくしたあとに』ヴォイス 1994
- ジョン・ロジャー、ピーター・マクウィリアムズ『豊かさって、なんですか?』ヴォイス 1994
- O・R・メリング『ドルイドの歌』『妖精王の月』『夏の王』『歌う石』『光をはこぶ娘』『夢の書』講談社、1995-2007
- ジョーン・エイキン『夜八時を過ぎたら…』くもん出版 1995
- アラン・アルバーグ『ジャイアント・ベイビー』講談社 1996
- フィリス・アイゼンシュタイン『氷の城の乙女』ハヤカワ文庫 1997
- エマ・テナント『まぼろしの少年リック』金の星社 1997
- アラン・アルバーグ『とんでもないブラウン一家』講談社 1997
- ジョン・ロジャー、ピーター・マクウィリアムズ『あなたが与えたものが、あなたが受けとるもの』ヴォイス 1997
- アネット・グッドハート『人生は、すべてが笑える』ヴォイス 1998
- ピーター・S・ビーグル『ユニコーン・ソナタ』早川書房、1998
- ノーマン・レッドファーン、マリア・オニール「テディーとアニー・シリーズ」河出書房新社 1999-2000
- テリー・ブルックス『妖魔をよぶ街』早川書房 1999
- バリー・ニール・カウフマン『幸福学のすすめ』ハヤカワ文庫 1999
- デニス・プレーガー『幸せになりたい人ほど、不幸になる それでも幸せになりたい人のための幸福ガイド』ヴォイス 1999
- イングリ&エドガー・ドーレア『トロールのばけものどり』福音館書店 2000
- ドクター・スース『グリンチ』アーティストハウス 2000
- パット・ロドガスト、ジュディス・スタントン『エマヌエル愛の本』ナチュラルスピリット 2000
- ディリア・マーシャル・ターナー『半熟マルカ魔剣修行!』ハヤカワ文庫 2000
- ブライアン・フラウド『いたずら妖精ゴブリンの仲間たち』東洋書林 2001
- マイケル・コーレン『トールキン 『指輪物語』を創った男』原書房 2001
- ウェイン・G.ハモンド、クリスティナ・スカル『トールキンによる『指輪物語』の図像世界』原書房 2002
- ポール・フェリーニ『無条件の愛 キリスト意識を鏡として』ナチュラルスピリット 2002
- ニアル・マクナマラ『ほのぼの妖精レプラコーンの仲間たち』東洋書林 2002
- スーザン・クーパー『影の王』偕成社、2002
- 『ベーオウルフ 妖怪と竜と英雄の物語―サトクリフ・オリジナル〈7〉』原書房、2002
- ジェーン・チャンス『指輪の力 隠された『指輪物語』の真実』早川書房 2003
- アーニー・J.ゼリンスキー『スローライフの素602』ヴォイス 2003
- シャーロット・ゲスト『マビノギオン ケルト神話物語』原書房 2003
- デイヴィッド・デイ『図説トールキンの指輪物語世界 神話からファンタジーへ』原書房 2004
- ブライアン・シブリー ジョン・ハウ地図・挿画『トールキン<中つ国>地図 『指輪物語』世界を旅する ファンタジーアトラス』原書房 2004
- デイヴィッド・デイ『ホビット一族のひみつ』東洋書林 2004
- キャサリン・フィッシャー『サソリの神・三部作』原書房、2005
- パトリシア・A・マキリップ『影のオンブリア』ハヤカワ文庫、2005
- ローズマリー・サトクリフ『トリスタンとイズー』沖積舎、2005
- パット・ハッチンス『かえりみちをわすれないで』福音館書店 2006
- パット・ハッチンス『がたごとばんたん』福音館書店 2007
- タニス・リー『銀色の愛ふたたび』ハヤカワ文庫 2007
- エヴァ・モンタナーリ『とんがりぼうしのクロチルダ』光村教育図書 2008
- エレン・カシュナー、デリア・シャーマン『王と最後の魔術師』ハヤカワ文庫 2008
- エレン・カシュナー『剣の名誉』ハヤカワ文庫 2008
- フィリップ・リーヴ『アーサー王ここに眠る』東京創元社、2009
- ケイト・フォーサイス『エリアナンの魔女』1-6 徳間書店 2010-2012
- キャサリン・フィッシャー『インカースロン 囚われの魔窟』原書房 2011
- ジュリア・エクルスシェア編『世界の絵本・児童文学図鑑』監訳 柊風舎 2011
- タリエシン原作 ロバート・グレイヴス英語『木の戦い = The battle of the trees』エクリ 2013
- キャサリン・M・ヴァレンテ『孤児の物語』1-2 東京創元社 2013 海外文学セレクション
- キャサリン・フィッシャー『サフィーク 魔術師の手袋』原書房 2013
- マーヴィン・ピーク&メーヴ・ギルモア 『タイタス・アウェイクス (ゴーメンガースト4)』創元推理文庫 2014
関連項目[編集]
脚注[編集]
- ^ 「これまでの本、これからの本」第2回 井辻朱美 教授 Knowledge Worker
- ^ a b c 石堂藍「挑戦するファンタジー」『幻想文学58 特集 女性ファンタジスト2000』、幻想文学企画室 編集、アトリエOCTA、2000年
- ^ a b c 井辻朱美『ヘルメ・ハイネの水晶の塔 下』講談社、1991年8月20日
- ^ 他に、ときありえ、菊永謙、矢崎節夫
- ^ 『人事興信録』1995
- ^ 国立国会図書館サーチ