レンズフィルター

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62mm UV(上)・円偏光(左)・昼色蛍光灯(右)フィルター

レンズフィルターとは、写真映像を撮影する場合や望遠鏡などで観察する際に、レンズの先端、後端、あるいは中間部分に装着して、そこを通過する光に制限を与えるフィルターである。

一般に光学フィルターは透過する光を波長偏光で制限するものであるが、ソフトな効果や光条効果などを加える物も、レンズフィルターと総称している。

効果による分類[編集]

左側は偏光フィルターなし、右側はあり。雲のコントラストを高め、青空が強調されている。
左は偏光フィルターあり、右側はなし。葉の反射光が除去され、色が鮮やかになっている。
左は偏光フィルターなし、右側はあり。水面の反射が除去され、水の底がはっきり見えている。

偏光(PL)フィルター[編集]

偏光(Polarized Light)フィルターは光の表面反射を除去するフィルターである。装着すると露出量が下がるが、効果の掛け方によって露出量の下がり方が変わるので、事実上TTL露出計が必須である。

水面やガラスの反射による写り込みを除去できるため、ショーケース内の展示物撮影のようなガラス越しの撮影に使われる。また空気中の水蒸気の反射を除去するため、青空の色調あるいは樹葉・山肌・建物などのコントラストの強調に効果がある。またをはっきり写しこんだり、逆に消したりすることができる。原理については「偏光」の項参照。

太陽を背にしている場合、もしくは、逆光の場合は効果がない。また超広角レンズに使用すると画面の両端で効果が違って不自然になるなどということもある。

円偏光(C-PL)フィルター[編集]

オートフォーカス機構やTTL露出計のためにハーフミラーを使用しているカメラが増えているが、ハーフミラーには偏光効果を使用しているものがあり、そのようなカメラに一般の偏光フィルターを使用すると誤作動の原因になるため「円偏光(Circular PL)フィルター」を用いる必要がある。ニコンF3が使用しているハーフミラーはピンホールミラーであるため、通常の平面偏光フィルターが使用できる。

使用法、効果は一般の偏光フィルターと変わらない。

シャープカット(SC)フィルター[編集]

ある波長より短い波長の光をカットする。名称は「SC」+「カットする波長(nm)/10」で表示される[1]

紫外線カット(UV)フィルター[編集]

UV (Ultra Violet)フィルターは紫外線をカットするフィルター。紫外線が大気中のちりなどによって散乱していると、例えば遠くの山などが見た目よりはっきり写らないことがあるので、これを用いる。装着しても色再現に影響はなく、また露出量も下がらない。レンズ保護用フィルターとして付けっぱなしにする人もあるが、最近はレンズコーティングの技術が進んでレンズ自体が紫外線をカットするようになっており、あまり使われなくなって来ている。

シャープカットフィルターとしての名称はSC37[2]、SC39[3]がこれに当たる。

白黒用コントラスト調整フィルター[編集]

モノクロフィルムでは短い波長の光をカットすることでコントラストが上がるため、コントラストを上げるために黄(SC48)[4]、橙(SC56)[5]、赤(SC60)[6]等を使用する。数字が大きくなる程効果が強くなるが、効果が強いと非現実的な描写となる。

白黒用整色フィルター[編集]

シャープカットフィルターではないが、似た用途なのでここで解説する。以前の白黒フィルムは緑色への感度が低かったため新緑が暗く写ったりして不自然になる場合があり、それを補正するために黄緑色または緑色のPOフィルターを使用した。その後白黒フィルムは全ての色に均等に感度を持つオルソパンクロマチックに改良されたため現在ではほとんど使用されない。

赤外フィルム用フィルター[編集]

赤外フィルムは通常の光にも感光してしまい、フィルターなしでは赤外フィルムの利点は全く出ないため、600nm以下の光をカットする赤いSC60[7]を使用しなければならない。

103aE用フィルター[編集]

コダックから天体写真用に発売されていたスペクトロスコピックフィルム「103aE」は水素輝線にのみ感光させるため、640nm以下の光をカットする赤黒いSC64[8]を使用しなければならなかった。

HFグラス[編集]

水銀灯やナトリウム灯の光をカットすることである程度光害の悪影響を減らすことができる天体撮影用フィルター。

色彩強調・効果用フィルター[編集]

カラーフィルム使用時に特定の色を強調する、または特定の色を加味する。

モノクロフィルム用のシャープカットフィルターをカラー用の色彩強調用フィルターとして流用したり、また幻想的な写真にするためCC-M40を使用することがある。

NDフィルターの減光により低速シャッターが可能になり、モーションブラー効果が出た例。

減光(ND)フィルター[編集]

減光(Neutral Density)フィルターはレンズに入る光の量を減少させるフィルターである。これを使うことで撮影の際の絞りを開いたり、シャッタースピードを下げることが可能になる。これにより明るいレンズ使用時の屋外ポートレート撮影など晴天時でも開放状態で後ろをボカして撮影する、川の流れを糸の集まりのように撮影する、人通りのある街並みを人を消して撮影するなど長時間露出による特殊効果を出して撮影する等が可能になる。NDフィルターの中には大きな照度差がある被写体を撮影する目的で中央部だけND効果が得られたり、画面片側半分だけ減光効果が得られるものもある。一般的なNDフィルターは灰色または黒色で、その濃さの度合いによりND2、ND4、ND8、ND400などがあり、日食など太陽を撮影するためにND10000やND100000といった高い露出倍率のフィルターも販売されている。ND2であれば光量は1/2、ND400であれば1/400の光量となる。色再現に影響を与えずに減光するのが建前であるが、製品によっては色再現に影響が出るものもあり特に濃度が高いものは黄色にカブるものが多い。特殊な製品では金属を蒸着したものもあり、この場合フィルターの色は銀色になる。

色温度変換(LB)フィルター[編集]

フィルムはデイライトタイプで通常色温度5500K程度、タングステンタイプで通常色温度3200K程度で自然な発色をするように製造されている。しかし実際の光は多様であり、例えば日の出や日没時で色温度2000〜4000K、電球やフラッドランプの光は色温度2800〜3200Kと低く赤っぽい光であるし、エレクトロニックフラッシュの光は一般に色温度6000K前後、晴天の日陰や曇天の元では色温度6500K前後と高くなり青っぽい光である。フィルムが想定している色温度より低い色温度の光の下で撮影すると赤っぽく、また高い色温度の下で撮影すると青っぽくなってしまうため、補正するために使われるのが色温度変換(Light Balancing)フィルターである。

色温度を下げるアンバー(LB-A[9])と上げるブルー(LB-B[10])がある。

例えばカタログ上で商品の色が現物と違うと困るので補正し「正しい」色にする必要もあるわけだが、例えば夕焼けのシーンで画面が赤っぽくなるのは自然なことであり補正することでその場の雰囲気を殺してしまうことになるため風景写真では必ずしも使用が推奨されるものではなく、逆に夕日にLB-Aを使用して強調することもある。

デジタルカメラビデオカメラカムコーダ)では内蔵されたホワイトバランス機能がこれらの代わりとなり、近年ではデジタルカメラの普及に伴い次第に使われなくなってきている。

色補正(CC)フィルター[編集]

色補正(Color Compensating)フィルターは適切な色状態での撮影を行なうために用いる。

シートフィルターではシアン(CC-C)、マゼンタ(CC-M)、イエロー(CC-Y)の三原色、そしてその補色であるレッド(CC-R)、グリーン(CC-G)、ブルー(CC-B)があり、それぞれ濃度が1.25、2.5、5、7.5、10、20、30、40、50等と多種が発売されている。カラーメーターでの測定結果に従ってこれらを組み合わせることであらゆる状態に対応することができる。ガラスフィルターではよく使われる色と濃度のみ発売されている。

デジタルカメラビデオカメラカムコーダ)では内蔵されたホワイトバランス機能がこれらの代わりとなり、近年ではデジタルカメラの普及に伴い次第に使われなくなってきている。

蛍光灯(FL-W)フィルター[編集]

デイライトタイプのフィルムを使用し蛍光灯下で撮影すると緑色にかぶるが、それを補正するために使用する。CCフィルターの一種で、個別のCCフィルターではCC-M30かCC-M40M、場合によってはそれにCC-10RまたはCC-R20や、CC-Y10またはCC-Y20Yを加えることで同じ効果が得られる。

蛍光灯はそのメーカー、種類、使用時間によって色が異なるため、厳密な補正にはカラーメーターとCCフィルターが必要である。

TV画面撮影用(TV-CC)フィルター[編集]

デイライトタイプのフィルムを使用しTV画面を撮影する際に使用するフィルター。

ホワイトバランス取得用フィルター[編集]

装着した状態でマニュアルホワイトバランスを取得することで、その光源下での正確なホワイトバランス状態を得ることができる。

変則反射除去(DR)フィルター[編集]

アニリン系の染料で染めた布などではある特定の波長に激しい吸収帯があり、その結果撮影したカラー画像が本来の色と異なって表現される場合があり、これを変則反射という。この現象を抑えるために開発されたのが変則反射除去フィルターであり、これはケンコーの商品名である。

ソフトフィルター[編集]

フォギーフィルターを使用した一例

軟焦点レンズで撮ったような、少しぼやけたような効果を出すフィルター。幻想的な効果を出せるため、おもに女性・子供などを撮るときに用いることが多い。デュート、ソフトン、フォギー等多種類がある。

  • デュート(Duto) - 無色透明のガラスに同心円状に腐食処理を施し弱いソフト効果を出すフィルター。
  • ソフトン(Softon) - 無色透明のガラスまたはプラスチックに不規則な凹凸を作ることでソフト効果を出すフィルター。
  • フォギー(Foggy) - 霧が掛かったような効果を出すフィルター。寒い時であればレンズに軽く息を吹きかけて曇らせることで代用できる。

クロスフィルター[編集]

光っている部分に光条を発生させるフィルター。水面が太陽光で光っているところや、ライトアップされた夜景などを写すと、キラキラと光っている感じが強調される。単にクロスフィルターと言う場合、光条4本のものが一般的である。ケンコーでは、光条6本のものをスノークロス、光条8本のものをサニークロス、光条4本だがその角度を調整できるものをバリクロスと称している。

レンズ保護用フィルター(プロテクター)[編集]

無色透明で、前球レンズを衝撃や汚れから保護するだけの機能しか持たないフィルター(レンズプロテクター・MCプロテクター)。レンズ本体の光学性能や描写能力を低下させると一部のカメラマンからは敬遠されるが、現在市販されているものではほとんどレンズ本体の能力に影響しない。但し夜景撮影や逆光状態においてはレンズフレアなどが発生する原因となるので、現在でも外すのが妥当である。

高級モデルでは耐久性や防汚性が高くなっている。

紫外線カットフィルターやスカイライトフィルターを保護用フィルターとして代用することがあるが、スカイライトフィルターは赤っぽくなるため注意が必要である。

クローズアップレンズ[編集]

厳密にはフィルターではないが、同じ使われ方をしており、一般にフィルターの一種という扱いの場合も多いので、ここで解説する。このレンズを装着することで接写撮影が可能になる。

ただし、他のフィルター類と併用する場合、クローズアップレンズを最もレンズ本体と近い位置に装着する必要があり、またマクロレンズに比べてピントあわせに制約がある。

番号は焦点距離(≈主レンズのピントリングを無限遠とした時の撮影距離)を表しているが、メーカーにより表示方法が違うので注意が必要である。ニコンの場合No.0は1400mm、No.1は670mm、No.2は340mm、No.3Tは664.8mm、No.4Tは341mmである。ケンコーの場合No.1は1/1m=1m、No.2は1/2m=50cm、No.3は1/3m≈33cm、No.10は1/10m=10cmである。

赤外線フィルター[編集]

肉眼では感じることができない、赤外線のみを透過するフィルター。赤外線フィルムに使用する。またデジタルカメラの撮像素子は赤外線を感知する性質があり、このフィルターを利用することで変わったイメージの画像を撮影できる。機種により赤外線の感知領域が異なる他、可視光に比べ赤外線の波長が長いため、撮影は手動で調整する必要がある。

材質による分類[編集]

ガラスフィルター[編集]

ガラスにフィルター効果となる成分を混ぜ合わせ板状にしたもの。円板状にして枠に嵌めてありレンズ先端部のねじ山部分(ナット様になっている)にねじ込んではめ込む形式のものが多いが、超望遠レンズの場合は専用のホルダーを使ってスロット部にはめ込むものが多い。各カメラ・レンズメーカーが純正品として出しているほかケンコーやマルミ光機などのフィルター専門メーカーも存在する。過去には東芝も製造していた。

ゼラチンフィルター[編集]

ゼラチンアセテートなどの素材に染料などフィルター効果となる成分を混ぜ合わせ、薄いシート状にしたもの。元祖であるコダックラッテンフィルターがゼラチン製であったため、同様の方法で使用されるアセテート製の富士フィルターも「ゼラチンフィルター」と俗称される。色補正が細かくできるため、デジタルカメラ普及以前はプロが色補正のために多用した。薄いシート状であるためホルダーに何枚重ねて挟んでもケラレる危険性はほとんどない。ハサミで切って超広角レンズの後ろ玉に貼り付けたり、エレクトロニックフラッシュの発光部にセロハンテープで貼り付ける等特殊効果のための使用もできる。

耐久性が低く、特にゼラチン製フィルターは水に濡らすと形状はそのままで弾力のある柔らかいゴム状になってしまうため湿気を避ける必要がある。アセテート性フィルターは濡らしても変化は起こらない。

プラスチックフィルター[編集]

円形状のプラスチック板にフィルター効果となる成分を混ぜ合わせ、または塗布、コーティングしたもの。プラスチックは形状を変化させるのが簡単であるため、ソフトフィルター等特殊効果用フィルターにも多い。ゼラチンフィルター程ではないが傷がつきやすいので扱いには注意が必要である。

形状による分類[編集]

シートフィルター[編集]

ゼラチンフィルターやアセテートフィルターがこれに当たる。75×75mmと100×100mmの製品がある。

円形フィルター[編集]

ガラスまたはプラスチックフィルターの大多数はこの形状である。

角型フィルター[編集]

イギリスのリーフィルター(Lee Filters)、フランスのコッキン(Cokin)[11]の製品が知られている。

取り付け規格による分類[編集]

ネジ式[編集]

ほとんどのフィルターはこの形式である。丸い金属枠に嵌められており、アタッチメントネジで装着する。レンズ前端に装着する製品が多いが、超望遠レンズで前端が大口径である場合や超広角レンズでそもそも前端にフィルターが装着できない場合には後端に装着する場合もある。

バヨネット式[編集]

丸い金属枠に嵌められており、アタッチメントバヨネットで装着する。ハッセルブラッドローライコンタレックスアルパなどがそれぞれ専用の規格を持っている。またペンタックス67用レンズの一部でも採用されているほか、ニコンの超広角レンズの一部には後端に装着するバヨネット式フィルターを使用する製品がある。交換が簡単迅速であるがフィルターが高価になる場合が多く、汎用性がないため種類も限られ、また製造中止後入手が難しくなるのが欠点。これを避けるためコンタレックスやペンタックス67用レンズにはネジ式も併用可能な製品もある。

シリーズ式[編集]

丸形のガラス板のみ、またはそれが丸い金属枠に嵌められている形状。フードやホルダーに挟み込んで使用する。古い製品にのみ見られる。

差し込み式[編集]

レンズ鏡胴に横から開けられるスロットが設けられ、差し込む形で装着する。前端が大口径になってしまう超望遠レンズなどで主に採用されている。スロットへ装着するフィルターは、一般的なレンズと共用するためなどの理由で、ネジ式と同じものである場合も多い。

ホルダー式[編集]

シートフィルター、角型フィルターは専用のホルダーに入れて使用する。

購入上の注意[編集]

フィルターはレンズのアタッチメント規格に合ったものでないと装着できないので、購入するときはあらかじめ装着するレンズのアタッチメント規格を調べておく必要がある。ただし、例えばあるレンズにそれより大きい径のフィルターを装着したいような場合は「ステップアップリング」と呼ばれるアダプターをレンズとフィルターの間に挟むことで装着が可能になることもある。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 例えば560nm以下の光をカットするフィルターはSC56である。
  2. ^ JIS記号ではL37。
  3. ^ JIS記号ではL39。
  4. ^ JIS記号ではY48。
  5. ^ JIS記号ではO56。
  6. ^ JIS記号ではR60。
  7. ^ JIS記号ではR60。
  8. ^ JIS記号ではR64。
  9. ^ ケンコーの記号ではW。
  10. ^ ケンコーの記号ではC。
  11. ^ 日本ではともにケンコーが取り扱っている。

外部リンク[編集]