クリップオンフラッシュ

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National PE-200S
(GN20、外光式オート)

クリップオンフラッシュとは、カメラアクセサリーシューに取り付けて使う小型のエレクトロニックフラッシュ(以下単にフラッシュ)のこと。

概要[編集]

グリップタイプのフラッシュに比べ、小型で取り付けも簡単である。初期のフラッシュはカメラ側端子シンクロケーブルの取り付けが必要だったが、後にシンクロ接点(X接点とも多く呼ばれる)のついたホットシューが普及して、ワンタッチでフラッシュ撮影が可能になった。

初期のクリップオンフラッシュは、光量がガイドナンバー20程度までの小型のフラッシュだったが、次第に光量が増えガイドナンバー36以上などと大型化した。その他望遠対応、マクロ対応など多機能化した。複数の画角に対応させるため、交換式拡散パネルやズーム機能を持つ機種もある。

大型化したフラッシュをファインダー交換式でファインダー上部にシューがある機種で使うと、ファインダーに対する機械的な負荷が問題になる。そのような場合は、市販のブラケットで擬似的にグリップタイプとして使用することもできる。ただしこの場合は、フラッシュをシンクロケーブルでカメラに接続する必要がある[1]

調光方法[編集]

ナショナルPE-200Sの背面。距離に応じた絞り値が表になっている

オート調光ができるのは、自動調光機能を持つフラッシュだけである。スタジオ撮影や集合写真などで使う大型フラッシュでは、光量調節がマニュアルのみのものもある。

マニュアル[編集]

初期のフラッシュでは光量が固定(調節すら不可)だったため、ガイドナンバー(およびISO感度)に合わせて絞り値を調整する。

現在の多くのフラッシュでは、これらの数値はフラッシュ操作部などで一覧表示されており、簡単な撮影の場合は暗算する必要がないようになっている。

フラッシュマチック[編集]

マニュアルフラッシュ撮影での露光計算の手間をなくすため、カメラ側に搭載されたフラッシュ撮影用自動絞り調節装置。

外光式オート[編集]

フラッシュの指定する特定の絞り値に設定しておけば、レリーズを押した時点でフラッシュ側で被写体の距離に合わせて(被写体から返ってくる反射光の強さを測定して)光量を自動的に調節する仕組みである。測光部がフラッシュ本体に設置されているために、望遠撮影・マクロ撮影では大きな誤差が生じることがあって調光対応ができない。この対策として、測光部を取り外しレンズ先端に取り付けることでマクロ撮影に対応する製品もある。

TTL自動調光[編集]

通常のTTL測光と同じく、撮影用レンズを通った光でフラッシュ光量を調節する仕組み。したがって、望遠撮影でもマクロ撮影でも正確で、特別な調整は不要である。これにより、マクロでフラッシュを併用することが格段に便利になった[2]

TTL自動調光に対応したカメラは、オリンパスOM2やペンタックス LXなど中級以上の一眼レフが大半だが、ローライフレックス2.8FXは二眼レフでありながらTTL自動調光に対応している。

近年のオートフォーカス式一眼レフカメラやデジタル一眼レフカメラでは、TTL自動調光による露出決定に、装着しているレンズの焦点距離(ズームレンズなら画角も)・ピント距離や、AF測距点からのメイン被写体の位置情報などの情報を加味することで、より正確に調光できるものが大半である。 もっとも、これらの機能を最大限利用するためには、シンクロ信号以外の各カメラメーカーごとに異なる仕様のデータを正確に読み取り・反映させることのできる専用のフラッシュ機種が必要となる。

シンクロ信号の電圧における注意点[編集]

1960年代から1980年代頃に製造されたフラッシュの多くは、シンクロ信号の電圧が数十ボルトから数百ボルトあり、最近のオートフォーカスカメラデジタルカメラは対応していない。これらのフラッシュを新しいカメラに使うと、最悪の場合はカメラを故障させる恐れがある。機械式シャッターの場合、接点は機械スイッチであったため高電圧の影響は受けなかったが、現在のほとんどのカメラやフラッシュは電子的に制御されているため、信号電圧が数ボルトしかないことを前提に設計されている。したがって、旧式のフラッシュを新しいカメラで使用する場合は、メーカーに仕様を問い合わせる必要がある。これは、ホットシュータイプだけでなくシンクロコードを用いる場合でも同様である[3]

注釈[編集]

  1. ^ ホットシューアダプターをカメラ側接点に接続してブラケットに取り付けると、アダプターをカメラから取り外すまではホットシューのように使用できる。
  2. ^ TTL自動調光フラッシュであっても、等倍接写などではレンズが陰になってしまい対応できない。この場合は、専用のマクロリングフラッシュを用いる。
  3. ^ スレーブユニットを使う場合や、全機械式のビューカメラなどで使う場合はこの限りではない。

関連項目[編集]