ノート:日本人論/2006年5月13日(土)(UTC)の提案

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日本人論(にほんじんろん)とは、日本人について論じる論、著作、報告のこと。


概要[編集]

日本人論の起源としては、古くは安土桃山や江戸時代宣教師の母国への報告書や、海難・漂流体験からロシアカナダなどを見る経験を得た日本人漁師や船頭の経験譚が挙げられる。幕末から明治にかけては、日本からの海外視察団による報告や、来日外国人による文化人類学的な観察記録やエッセイなどに日本人論を見ることができる。日清日露戦争、そして二度の世界大戦を経て、海外で日本人の戦略や戦術、道義心、忠君愛国の背景にあるものへの関心が深まると、ルース・ベネディクトの『菊と刀』やオイゲン・ヘリゲルの『弓と禅』といった日本研究が進んだ。戦後には、日本経済の驚異的な躍進から再びその成功を支える社会的基盤に対する関心が高まって様々な日本人論が著されることになる。日本人を包括的に均一な集団としてとらえ、外国・異文化との比較を通してその独自性を論じるところを共通項とする論が多い。ベストセラーもいくつか出るほどの人気分野となっており、このような現象は日本を除いて世界に類がない、という見方がある。

文化人類学社会学的研究としての日本人論もある一方で、民族主義的心情に基づく日本人自身による自国、自民族の特殊性を殊更強調するように書いた論考も数多く出版されている。そのため、Peter N. Dale(1986)、ハルミ・ベフ(1987)、 吉野耕作(1992)他、日本人論を文化的ナショナリズムの発露の一形態として批判的に研究する学者もいる。

主要な日本人論の著作[編集]

外国文化との比較[編集]

モンスーン砂漠・牧場の気候・風土を主眼に置いた比較文化論。
西欧文化は倫理基準を内面に持つ「罪の文化」であるのに対し、日本文化は外部(世間体・外聞)に持つ「恥の文化」と規定した。第二次世界大戦中、アメリカの日本占領政策を検討するために書かれたもので、戦後、日本でも刊行されベストセラーになった。
ユダヤ人との比較で、日本人は安全と水はタダだと思っている、と論じた。
野球を通して日米の文化について比較考察する。書名はルース・ベネディクトの『菊と刀』より。
イエズス会司祭上智大学東京純心女子大学英語を教える著者が、イギリス人と日本人について比較考察する。
イギリス生まれで外交官としていくつかの国・文化と接した著者が、いくつかの国と日本との体感する違いを把握しようとして、感性主義と知性主義、個別主義と普遍主義という概念での認識に行き着き、これを提示・提案する。

日本文化論[編集]

経済学を勉強した著者が、理論が力を持つということは、持たないということはどういうことか、という視点から、日本における社会認識の仕方、社会科学書の読み方について論ずる。
太平洋をはさんで戦争を戦った二人が、日本人戦争観やモラル日本文化誕生などについて語る。
1946年生まれの著者が、本居宣長のいう「漢意(からごころ)」を実感として分かってしまった、とこれを逡巡・考察する。

経済的な成功の背景[編集]

1970年代後半頃から、終身雇用・年功序列などの「日本的経営」が日本の経済発展の基盤にあるという論調が多く見られるようになった(日本的経営論)。

日本社会の構造[編集]

親分子分といった擬制家族関係から日本社会の封建制を批判した

思想[編集]

1914年生まれの日本政治思想史家が、日本の思想の伝統見取り図を作ろうと試みた本。

日本の紹介[編集]

外国人による日本紹介[編集]

日本人による日本紹介[編集]

海外向けに英語で書かれた著書。後に日本語訳された。

アメリカ人に持ち、キリスト教徒で、学者として日本と欧米で活動をした著者が、日本の道徳理念・慣習について問われ、逡巡した後その源は武士道だと行き着き、これを解説、説明する書。
アーネスト・フェノロサに付いて日本美術の調査をしたのをきっかけに日本に目覚めた著者が、帝国主義全盛時代の欧米に、を通して自己充足の在り方を投げかけた書。

日本を描いた文芸[編集]

映画で描かれたもの[編集]

外国映画[編集]

日本映画[編集]

  • 家族 
  • 萌の朱雀

小説・評論[編集]

小説[編集]

評論[編集]

  • 司馬遼太郎『この国のかたち』1~5 文藝春秋 1993-1999年

インターネット上にある日本人論(外部リンク)[編集]

日本人論論[編集]

日本人論を論ずる著作・報告[編集]

江戸幕末から現代までの、外国人42人による日本論・日本人論を紹介、論考する。
  • 青木保『「日本文化論」の変容―戦後日本の文化とアイデンティティー』中公文庫 1990年 ISBN 4480085912
  • Peter N. Dale『The Myth of Japanese Uniqueness』(Macmillan、1991年)ISBN 0312046294
  • 南博『日本人論-明治から今日まで』岩波書店 1994年 ISBN 4-00-001707-1
1914年生まれで京都大学、コーネル大学で学んだ社会心理学者が、日本人論500点について論考する。
上巻 ザビエルから幕末の日本人論について 2000年 ISBN 4061594494
下巻 福沢諭吉から現代の日本人論について 2000年 ISBN 4061594508
明治・大正・昭和時代に書かれた日本人15人による日本論・日本人論を紹介、論考する。
1948年生まれの文化人類学者が、日本と西洋の間で揺れ動くアイデンティティの問題として、明治以降の日本人論を考察する。

野村総合研究所の調査による日本人論の出版数・分類[編集]

野村総合研究所(1978)の調査によると、1946年から1978年の間に「日本人論」というジャンルに分類される書籍が698冊出版されている。このうち58%が1970年以降、25%以上が1976年から1978年の3年間に出版された。内訳は以下の通りである:

【一般書籍(著者のプロフィール別)】

  • 哲学者 -- 5.5%
  • 作家・劇作家 -- 4.5%
  • 社会文化人類学者 -- 4.5%
  • 歴史・民俗学者 -- 4.5%
  • 政治・法・経済学者 -- 4.5%
  • 科学者 -- 4.0%
  • 言語・文学者 -- 3.5%
  • 外交官・評論家・ジャーナリスト -- 3.5%
  • 心理学者 -- 3.5%
  • 外国人学者 -- 4.0%
  • 外国人ジャーナリスト -- 5.5%
  • 外国人 -- 7.0%
  • その他 -- 5.5%

【調査レポート(テーマ別)】

  • 国民性総論 -- 7.0%
  • 欲求と満足度 -- 3.5%
  • 勤労に関する意識 -- 4.0%
  • 貯蓄に関する意識 -- 4.0%
  • 諸意識 -- 6.5%
  • 日本人の生活時間 -- 3.5%
  • 外国人の見た日本の経済活動 -- 6.5%
  • 海外の対日世論調査 -- 4.5%

杉本良夫とマオアによる日本人論の特徴[編集]

杉本とマオア(1982)は、日本人論の多くは以下の3つの根本的主張を共有していると指摘している:

  1. 個人心理のレベルでは、日本人は自我の形成が弱い。独立した「個」が確立していない。
  2. 人間関係のレベルでは、日本人は集団志向的である。自らの属する集団に自発的に献身する「グルーピズム」が、日本人同士のつながり方を特徴づける。
  3. 社会全体のレベルでは、コンセンサス・調和・統合といった原理が貫通している。だから社会内の安定度・団結度はきわめて高い。

青木保による戦後日本人論の変容[編集]

その一方、日本人論の論調はその時代時代の社会情勢を反映して変化してきている。例えば戦後の荒廃時は、民主主義国として再構築を目指す中、日本に独特な封建的残滓などがアメリカや西欧諸国と比較され批判的に検証された。高度経済成長期に入ると逆に日本の特殊性が肯定的に見直されるようになる。青木保(1990)は斯様な戦後日本人論の変容を4つの時代に区分している。

  • 第1期「否定的特殊性の認識」(1945-54)
  • 第2期「歴史的相対性の認識」(1955-63)
  • 第3期「肯定的特殊性の認識」前期(1964-1976)、後期(1977-1983)
『「甘え」の構造』(1973年)など
  • 第4期「特殊から普遍へ」(1984-)

関連項目[編集]