コンテンツにスキップ

遠山の金さん

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。ぷりきゅあファン (会話 | 投稿記録) による 2012年5月9日 (水) 12:56個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎「遠山の金さん」以外で遠山景元が登場する作品)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

東映京都撮影所にある、お白州のセット

遠山の金さん(とおやまのきんさん)は、江戸町奉行遠山金四郎景元を主人公にした時代劇

物語

講談歌舞伎で基本的な物語のパターンが完成し、陣出達朗の時代小説「遠山の金さん」シリーズなどで普及した。

基本的な構成

水戸黄門」「暴れん坊将軍」と同様、「気のいい町人」が最後に「実は権力者」の正体を明かして悪を征し、視聴者はカタルシスを得る。

  1. 事件が起き、“奉行の遠山景元”が“遊び人の金さん(正体を知らない岡っ引き等には“金の字”と呼ばれていたりする)”として自ら潜入捜査を行い、事件の真相と黒幕を突き止める。その後、被害者や共犯者など関係者が全員揃った場所(多くの場合、黒幕の屋敷)に乗り込み、突き止めた悪事の数々を言い立てる。しかし悪人たちは金さんをただの遊び人と見下し、悪事を全て認めたうえで、被害者と共に抹殺しようとする。ここで金さんは「この桜吹雪、散らせるもんなら散らしてみろぃ!」などと啖呵を切って片肌を脱ぎ、桜の彫り物を見せつける(梅之助主演の初期の版では片肌ではなく両肌脱いでおり、テーマ曲でもそのように歌っていた)。この後金さんと悪人たちが入り乱れてチャンバラとなり、悪人たち全員が金さん一人に気絶させられる(金さんは多くの場合素手だが、刀などの得物を奪って峰打ちで返り討ちにする場合もある(杉良太郎松方弘樹)。高橋英樹は水を濡らした布が得物)。立ち回りの終盤、奉行所の同心たちが悪人を捕縛するためその場に駆けつけるが、金さんは彼らに姿を見られないよう、到着前に立ち去る。
  2. 後日、捕縛された悪人たちがお白洲に曳き出され、吟味に掛けられる。お白洲には「至誠一貫」と書かれた額が掲げられており、遠山奉行が「町奉行・遠山左衛門尉様、ご出座~」の声と太鼓と共に登場する。
    幕府高官が悪人の仲間である場合、必ず陪席する。
  3. 遠山が「これより**について吟味を致す、一同の者面を上げい」「さて○○(悪人)、××(罪状)とあるが相違無いか」と悪人に罪状を問いただす。悪人は犯行を否認するが、被害者は証人として“遊び人の金さん”を呼ぶよう訴える。しかし悪人は金さんの存在を否定し、遠山に罵声を浴びせる。
    幕府高官が陪席している場合、その高官が「遠山殿、これは全く意味のない白洲ですぞ。」「**奉行である身供をここに座らせるとは、御身のお立場も危ういですぞ」等と、とぼけた様に悪人の無罪を主張したり、圧力をかけたりする。
  4. 悪人や取り巻きたちの罵声が最高潮に達した時、遠山が「やかましぃやい! 悪党ども!!」「おうおうおう、黙って聞いてりゃ寝ぼけた事をぬかしやがって!」などと、今までの謹厳な口調とはガラリと変わった江戸言葉で一喝する。
  5. 遠山が「この桜吹雪に見覚えがねぇとは言わせねえぜ!」などと言いながら片肌脱ぐと、そこには“金さん”と同じ桜の彫り物(このとき金さんが桜吹雪を見せている時の映像を回想の様に流す事もある)。一同、全てを“金さん”こと遠山に見られていた事を知って驚愕する。このとき多くの悪人は「ははぁ!!畏れ入り奉りました!!」などと観念する。
    幕府の高官が陪席している場合、その高官が「おのれ遠山!」などの言葉とともに遠山に斬りかかろうとし、撥ね返される(大体、長袴で蹴り倒される)。
  6. 悪人が観念したところで遠山が姿を戻し、判決を言い渡す。主犯には大抵「市中引き回しの上)打ち首獄門」または「獄門」、共犯は「終生遠島」、高官には「御公儀(評定所・**藩)より、追って極刑(切腹)の沙汰があろう」と言う。その後「引っ立てい!」となる。悪人の手下はこの時もジタバタしている。
  7. 悪人が連れ出された後は、「さて△△(被害者)…」となり、被害者が「お奉行様とも知らずご無礼を…」などと言い、平身低頭する。被害者が軽微な犯罪を犯している場合、大概「江戸十里四方所払い(つまり江戸市中からの追放)」「寄場送り」などの温情判決を下す。最後に、小声で“金さん”になり「達者で暮らすんだぜ」「お父っつぁんを大事にしなよ」などと温かい言葉をかけ(無罪になった場合は「俺が金さんって事は内緒にしておいてくれよ」などとも言う)」、「これにて一件落着」でお開きになる。
  8. 後日、自宅で嫁と談笑したり、“金さん”として岡っ引きや行き付けの店の町人などと軽口を叩いたり、被害者のその後が語られたりして番組は終わる。
  • 作品によっては、金さんの正体を知る同心が金さんの協力者として立ち回る場合もある。岡っ引きはあくまで同心から委託を受けた民間人であるため、金さんの正体を知らなくても不自然ではない。
  • 本来火付盗賊改方の所轄である、放火強盗などは平気で裁いているのに、やけに寺社奉行には神経質になっている事が多い。
  • たった数日で金さんの顔を忘れる訳が無い」、「毎度『金さんとやらをだせ!』と凄みながら本当に金さんが来たらどうするのか?」とか「毎週事件が起こるのは遠山の管理責任だ」などと言うツッコミがあるが、そこはご都合主義の「フィクション時代劇」として割り切って見るべきである。バラエティ番組などでは金さんを自ら演じていた高橋英樹が往々にしてそういうツッコミをすることがある。
  • なお、実際の江戸町奉行は朝は江戸城へ登城し、午後からは奉行所で夜遅くまで執務するという多忙な職務であり、市内へ探索に出ているような時間はないが、これも「フィクション時代劇」として割り切って見るべきである。

派生

テレビ東京では中村梅之助の主演のテレビドラマ『そば屋梅吉捕物帳』を製作している。これは町奉行の景元に代わり、背中に彫り物を入れた瓜二つのそば屋が事件を探る、と言うもので奉行と金さんを分離してそれを一人二役で演じるというバリエーション物。また日本テレビ系で放送された中村梅之助主演のテレビドラマ『伝七捕物帳』でも紫房の十手を持つ黒門町の伝七(中村)がそっくりの顔の奉行(中村・二役)から指示を受ける場面が何度かあった。これも「遠山の金さん」が下敷きにあってのものであろう。

また、「悪を裁く立場の者が二つの顔を持つ」というパターンの類型として、さらに極端なバリエーションとしては萬屋錦之介主演のテレビドラマ『長崎犯科帳』が存在する。本質的には必殺シリーズなどと同じいわゆる裏稼業ものに分類される作品であるが、主人公・平松忠四郎は表の顔は長崎奉行でありながらも、その裏で表の奉行の顔では裁けぬ悪を許さず一刀両断してゆく闇奉行という二つの顔を持っている。

作品一覧

映画

  • 片岡千恵蔵主演の東映時代劇シリーズ
    • いれずみ判官(東映
    • 血ざくら判官(東映)
    • はやぶさ奉行(東映)
    • 火の玉奉行(東映)
    • たつまき奉行(東映)
    • さくら判官(東映)

テレビドラマ

「遠山の金さん」以外で遠山景元が登場する作品

オリジナルビデオ

小説

主題歌

関連項目