球速

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球速(きゅうそく)はの速さを意味する。野球ソフトボールボウリングの投球に対して使う用語である。

概要

野球およびソフトボールにおける球速は投手の正規の投球の速さを指し、投手の力量をあらわす指標のひとつとしても参考にされる。投手の手から離れた直後の速度(初速)、捕手ミットもしくは打者バットに届く直前の速度(終速)、この二点間における平均速度の3つに分けられる。

計測方法はスピード測定器(スピードガン)による簡易計測が一般的である。球場テレビ中継などで表示される球速は球場やテレビ局などがそれぞれ独自に計測したものであり、近年は初速のみが表示される傾向にある。また、測定器の種類や計測条件によって計測結果に著しく差が出ることもあることから公式記録とはされていない。

野球

プロ(男子)の投手で140 km/hから150 km/h程度の球速の速球を投げる。ボールの到達時間は150 km/hで約0.41秒、140 km/hで約0.44秒となる。0.03秒で1.0 m以上の違いになる。変化球スライダーシュートが120〜140 km/h程度、カーブチェンジアップは90〜120 km/h程度と遅い。

速球の球速は速いほどボールを目で追う事が難しくなり、打者までボールが到達する時間が短くもなるので、正確にバットで捉えることが難しくなる。特に速い球は快速球剛速球と呼ばれるが、厳密な定義は無く、140 km/h後半や150 km/h台の速球がそう呼ばれたりする[1][2]。これらを投げる投手は球の速さを武器とする場合が多い。逆に130 km/h程度の速球は遅いとされ[3]、速い球を投げられない投手はコントロールや変化球を武器に投球することが多い。

ソフトボール

男子で120 km/h、女子で100 km/h前後が一流選手の一般的な球速である。ボールの大きさや投法の影響で野球ほどの球速は出ない。野球とはマウンドからホームベースまでの距離が異なるため(野球は18.44m、ソフトボールは13.11m)、到達時間で考えると、ソフトボールの114 km/hで野球の160 km/hに相当する。オリンピックに出場した日本の上野由岐子が119 km/hのボールを投げ、野球で言うと167 km/h相当の球だとして話題になった[4]。また、男子では130 km/h以上のボールを投げる選手もいる[5]

記録

野球の球速のギネス記録としては赤外線レーダーによる精密測定で、1974年に記録されたノーラン・ライアンの100.9mph(約162.4 km/h)が認定されている。

スピードガンによる記録として認められていたのは、1997年ワールドシリーズにおけるロブ・ネンの102mph(約164.2 km/h)が最速であった。スピードガンの非公式記録では、アロルディス・チャップマンが106mph、A.J.バーネットとジョエル・ズマヤとボビー・パーネルが104mphを記録している。

現在、メジャーリーグでは、スポートビジョン社の開発したPITCHf/xという投球解析装置が2006年のポストシーズンから各球場へ設置され始めた。「PICH f/x」は現在メジャーリーグ全球場に共通の機種が設置されており、MLB公式ホームページの1球速報「Gameday」でデータが一般公開されている。3方向から投球を解析するこの装置の導入により、球速に限らず投手のリリースポイントやボールの回転数、変化球の曲がり具合、落差などを解析することが可能となり、スピードガンの問題点であった機種や設置場所による精度の違いを克服した。PITCH f/xの他にも、ドップラー・レーダーを利用して投手のリリースポイントと、そこからのボールの移動速度やボールの回転数、回転速度を計測して「ボールの伸び」を解析する装置がデンマークのトラックマン社によって開発されている。PITCH f/xによる測定では、2010年9月24日にアロルディス・チャップマンが記録した105.1mph(約169.1km/h)が最高球速記録である。

日本プロ野球で計測されたもの(公式戦)

選手名 所属 計測記録 記録日 球場
伊良部秀輝*1 ロッテ 163 km/h 1993年5月3日 西武ライオンズ球場
大谷翔平*2 日本ハム 2015年9月2日 東京ドーム
マーク・クルーン[6] 巨人 162 km/h 2008年6月1日 福岡 Yahoo! JAPANドーム
由規[6]*3 ヤクルト 161 km/h 2010年8月26日 明治神宮野球場
林昌勇[6] ヤクルト 160 km/h 2009年5月15日 明治神宮野球場
スコット・マシソン[6] 巨人 2012年7月5日 横浜スタジアム

太字はプロ球団に現役選手として在籍中の選手。

*1伊良部の163km/hに関しては、テレビ中継での表示(打者伊東)[7]。このとき、当該投球に関しては球場の電光掲示板は表示されなかった[7]。それ以外の公式戦自己最高は、同日の打者清原のときの158km/h、公式戦以外では1994年オールスターゲーム第1戦(西武)で159km/hを計測している。

*2メジャースカウトのスピードガンによる計測[8][9]

*3由規の161km/hに関しては、球場の電光掲示板表示。しかし、当該投球は、テレビ中継での表示が152 km/hであったことや、当日のこの投球以外の最高は156km/hであったこと、それ以外の自己最高は2010年7月29日の158 km/hであることなどから、誤計測ともいわれる[10][11]

2014年8月5日には福谷浩司豊橋市民球場の球速表示で165km/hを計測したが、実際に計測していたスピードガンは146km/hを表示しており、誤表示であると報道された[12]

ほか、1994年の日本シリーズ第3戦では、小野和義(西武)がプレーボール直後の第1球目に216km/h、第2球目に237km/hを記録している[13]

関連項目

脚注

  1. ^ 岐阜新聞社, 岐阜大会ベスト4までの軌跡, http://www.gifu-np.co.jp/2008koya/kj20080724_1.shtml 2010年2月23日閲覧。 
  2. ^ 日刊スポーツ (2008-2-7), 「松坂大輔スタジアム」公開、剛速球体感, http://www.nikkansports.com/baseball/mlb/p-bb-tp2-20080207-317731.html 2010年2月23日閲覧。 
  3. ^ 中日スポーツ (2007-2-13), 菊地、福留を幻惑 MAX133キロ遅球で2打数無安打, http://www.chunichi.co.jp/chuspo/hold/dragons/news/2007/200702/CK2007032302102907.html 2010年2月23日閲覧。 
  4. ^ 産経ニュース (2008-7-29), 【明解要解】ソフトボール「金」へ カギ握る上野, http://sankei.jp.msn.com/beijing2008/news/080729/gba0807291602000-n1.htm 2010年2月23日閲覧。 
  5. ^ 日刊スポーツ (2003-7-30), 日本女子ソフト 史上初めて男子との練習マッチ実現, http://www.nikkansports.com/ns/sports/sportsnow/030730.html 2010年2月23日閲覧。 
  6. ^ a b c d 日本球界最速はクルーン162キロ、日本人最速は由規”. スポーツニッポン. 2015年3月14日閲覧。
  7. ^ a b スポーツニッポン1993年5月4日紙面
  8. ^ 大谷翔平、メジャースカウトのスピードガンで“日本最速163キロ”計時!? Full-count、2015年9月24日閲覧。
  9. ^ 【日本ハム】大谷出た日本最速163キロ!米スカウト「素晴らしいスピード」 スポーツ報知、2015年9月24日閲覧。
  10. ^ 【プロ野球】ヤクルト由規が161キロ!? 夢の160キロ超えか、誤作動か”. MSN産経ニュース. 2011年2月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年2月28日閲覧。
  11. ^ http://www.careernews.jp/it/1101/772.html
  12. ^ 中日福谷が165キロ!?…誤表示でした 日刊スポーツ、2014年8月11日閲覧。
  13. ^ テレビ朝日1994年10月25日中継